- 現場の言葉が分からない。まず何から覚えればいい?
- 「通り芯」「天端」って図面のどこを見ればいいの?
- 「ここふかして」って言われたけど、何をすればいい?
- 「納まり」「取り合い」が会話に出てくるたびに固まる
- 「捨てコン」って、あとで捨てるコンクリートなの?
- 土台・大引き・根太・間柱、どれがどこにある木材?
- 「養生しといて」の養生は、何をすること?
- 設計図書・施工図・竣工図はどう違うの?
- 元請・下請・現場代理人・監督職員…人の呼び方が分からない
- 法律でいう「建築物」「主要構造部」「延べ面積」って何を指す?
- 法律の言葉と現場の言い方で、意味がずれていることはある?
上記の様な悩みを解決します。
建築用語には、建築基準法などで意味が決まっている言葉と、図面や現場の会話で通じる言葉があります。たとえば「建築」は、同法第2条第13号で建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することと決まっていて、主要構造部の過半の修繕・模様替は「大規模の修繕」「大規模の模様替」として別に定義されています(第14号・第15号)。一方、通り芯・天端・墨出しは、建築基準法と同施行令、建設業法の条文には出てきません。
建築用語は、配属された初日から朝礼・打合せ・図面の注記に当たり前のように出てくる言葉です。ところが用語集の多くは五十音順や分野別の辞書の形で、法令で意味が決まっている言葉と現場の言い方が食い違う部分や、公共工事の書類で使う言葉にはほとんど触れていないんですよね。今回は図面と墨出し・基礎と躯体・木造と内装下地・仕上げといった基本の言葉を工程の順に押さえた上で、用語集では薄くなりがちな「建築基準法と施行令の号番号つきの定義」「現場の言い方とずれやすい3組」「公共建築工事標準仕様書の書類用語」まで、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、建築の現場に入ったばかりの方や、建築以外の学科から転職してきた方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
建築用語とは?法令で意味が決まる言葉と、現場で通じる言葉の2種類
建築用語とは、結論「建物の計画・設計・施工・維持管理の場面で使われる専門の言葉」のことです。ひとくちに建築用語といっても、どこで意味が決まっているかで2つに分けて考えると、覚えるときの混乱がかなり減ります。
1つ目は、法令が「この法律において」と前置きして意味を決めている言葉です。建築基準法第2条には建築物・建築設備・居室・主要構造部・設計図書・建築などの号が並び、建築基準法施行令第1条には敷地・地階・構造耐力上主要な部分、施行令第2条第1項には建築面積・床面積・延べ面積の算定方法が書かれています(建築基準法 第2条/建築基準法施行令 第1条・第2条第1項)。人の呼び方では、発注者・元請負人・下請負人が建設業法第2条第5項で定義されています。こうした言葉は号ごとに文言が決まっているので、意味は条文を開けば確かめられます。
2つ目は、図面や現場の会話で通じている言葉です。通り芯・天端・墨出し・ふかし・納まり・躯体・捨てコン・野縁などがこれにあたり、建築基準法第2条・施行令第1条・第2条第1項・建設業法第2条の定義には出てきません。こちらは図面の凡例や、職長・先輩とのやり取りの中で意味をつかんでいく言葉です。
この記事は、現場の言葉を工程の順(図面と墨出し→基礎と躯体→木造と内装下地→仕上げと養生)に並べ、そのあとに書類と人の呼び方、最後に法令で意味が決まっている言葉をまとめました。表の見方は次のとおりです。
- 各用語の行に、読み・ひとことの意味・詳しい解説記事へのリンクを並べた
- 現場の用語の表には寸法や数値を入れていない(数値は各記事で確かめる)
- 法令の用語は、条文の要点と条・号の出典をセットにした
- 意味を取り違えやすい組み合わせは、表の下で個別に取り上げた
個人的には、全部を一度に覚えようとするより、いま担当している工程の表だけを先に押さえ、知らない言葉に出会ったらこのページに戻ってくる使い方が合っていると思います。
図面と墨出しで最初に出てくる用語
着工して最初に覚えることになるのが、図面の線と現場の床をつなぐための言葉です。「天端そろえて」「通りから追って」「ここふかして」のように、指示の中にさらっと混ざって出てくるので、意味を知らないと手が止まります。まずはこの5語を押さえておきましょう。
| 用語 | 読み | ひとことで | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 通り芯 | とおりしん | 柱や壁を配置する位置の拠りどころとして、図面に引かれた線 | 通り芯の読み方と図面での使い方 |
| 天端 | てんば | 基礎・梁・部材の上の面。高さを合わせるときの目印として呼ばれる | 天端の意味とレベル管理 |
| 墨出し | すみだし | 図面どおりの位置と高さを、床や壁に線と印で書き出す作業 | 墨出しの種類とやり方 |
| ふかし | ふかし | 壁や部材の面を図面の面より外へ出すこと。出した部分も指す | 建築のふかしの種類と施工 |
| 納まり | おさまり | 部材どうしが寸法と取り合いの面で無理なく組み合わさるかどうか | 納まりの考え方と検討の進め方 |
読みでつまずきやすいのは「天端(てんば)」と「納まり(おさまり)」で、どちらも漢字から音を想像しにくい言葉です。
通り芯と墨出しは「図面の線」と「現場に写す作業」の関係
通り芯は図面の上にある線で、建物の柱や壁がどの位置に並ぶかを決める拠りどころになります。図面では通り芯に記号が振られ、寸法はこの線から線までの距離で書かれています。一方の墨出しは、その線や位置を現場の床・壁に実際に書き出す作業の名前です。つまり、通り芯は「何を写すか」、墨出しは「写す作業」と、役割の違う2語がセットで動いています。
通り芯の線上には、これから柱や壁が立ちます。そこで現場では、通り芯から決めた距離だけずらした位置に墨を出し、そこから測って位置を追うことがあり、この墨を「逃げ墨」と呼びます。「逃げ墨から追って」と言われたら、ずらした墨を基準に寸法を取り直して位置を出す、という意味で受け取ってください。どれだけずらすかは現場や図面の取り決めで変わるので、墨出しの記事で考え方を確かめておくと安心です。
ふかしと納まりは「手段」と「判断」の関係
ふかしと納まりは打合せで続けて出てくることもある言葉ですが、指しているものは別です。納まりは、部材どうしがぶつからずに取り付くか、取り付けたあとの見た目や性能に無理がないかという「判断や状態」の呼び名です。ふかしは、壁や部材の面を図面の面より外側へ出して厚くするという「具体的な手」の名前です。
たとえば「この配管、壁の中に納まらないね」という話になったとき、選択肢のひとつとして「壁をふかす」という手が出てくる、という並び方で理解しておくと、会話の筋が追いやすくなります。あわせて覚えておきたいのが「取り合い」で、これは2つ以上の部材や工種が接する部分を指す言葉です。
「天端そろえて」は、隣り合う部材の上の面の高さを合わせてほしい、という意味の指示です。
基礎と躯体の用語
墨が出たら、次は基礎と躯体の工事です。ここは用語の数がいちばん多く、コンクリート・鉄筋・鉄骨の言葉が一気に増えます。表では工事が進む順番に近い並びにしました。
| 用語 | 読み | ひとことで | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 躯体 | くたい | 建物の骨組みにあたる構造の部分。仕上げ材を張る前の本体 | 躯体の読み方と構造体との違い |
| フーチング | フーチング | 基礎の底で幅を広げた部分。上からの力を地盤へ渡す | フーチングの役割と配筋 |
| 根入れ | ねいれ | 基礎などが地盤面より下へ入り込んでいる深さ | 根入れ深さの決め方 |
| 捨てコン | すてこん | 基礎の下、掘削した地面の上に打つコンクリートの呼び名 | 捨てコンの目的と打ち方 |
| 型枠 | かたわく | 打ち込んだ生コンを受け止め、柱や壁の形に成形する仮設の型 | 型枠と存置期間の考え方 |
| かぶり | かぶり | 鉄筋の外側からコンクリート表面までを覆う部分の厚み | かぶりコンクリートの役割 |
| 継手 | つぎて | 鉄筋・鉄骨・配管などをつないで、1本の部材として扱えるようにする接合部 | 継手の種類と定着との違い |
| スランプ | スランプ | 固まる前のコンクリートの軟らかさを表す値と、それを測る試験 | スランプ試験の方法 |
| スラブ | スラブ | コンクリートでつくる床や屋根の板の部分 | スラブの種類と注意点 |
| 柱と梁 | はしら・はり | 縦に立つ柱と、柱の間を横に渡す梁。骨組みの基本の組み合わせ | 柱と梁の役割と接合部 |
| 建方 | たてかた | 鉄骨や木の骨組みを現場で据え付け、組み上げていく工程 | 建方の流れと建方検査 |
かぶりの厚さ、スランプの値、根入れの深さのように、この表の言葉は数値とセットで使われます。必要な値は部位や設計図書の指定で変わるので、表には載せていません。各記事と現場の設計図書で確かめてください。
読みで迷いやすいのは「躯体(くたい)」「継手(つぎて)」「建方(たてかた)」です。法令の条文では「はり」とひらがなで書かれる箇所もあるので、条文を読むときは「はり=梁」と置き換えて読むと迷いません(建築基準法 第2条第5号)。
躯体と仕上げの境目
現場では「躯体」と「仕上げ」を対にして使います。躯体は柱・梁・壁・床・基礎のように建物の骨組みにあたる部分で、仕上げはその表面に張ったり塗ったりして、見た目や使い勝手をつくる部分です。その間に、仕上げ材を留めるための「下地」が入ります。工程で言えば、基礎と躯体の工事が終わって下地をつくり、最後に仕上げる、という流れです。
ここで1つ注意したいのは、「躯体」は建築基準法第2条や施行令第1条の定義にある言葉ではない、という点です。法令には、建物の骨組みに関わる言葉として「主要構造部」(建築基準法 第2条第5号)と「構造耐力上主要な部分」(建築基準法施行令 第1条第3号)が別々に定義されています。この2つの違いは、法令の用語の章で並べて比べます。
捨てコンは「捨てる」コンクリートなのか
名前だけ見ると、あとで撤去して捨てるコンクリートのように読めます。ただ、捨てコンが指しているのは、基礎の下、掘削して均した地面の上に打つコンクリートです。略さずに言えば「捨てコンクリート」です。
何のために打つのか、どのくらいの厚みや強度で考えるのかは、現場の条件や設計図書の指定とあわせて理解したほうが誤解がありません。目的や打ち方の整理は、表の捨てコンの記事で順を追って解説しています。
木造の骨組みと内装下地の用語
木造住宅の現場や、RC造・S造の内装工事に入ると、床・壁・天井の下地にあたる言葉が増えます。似た名前の材料が多いので、「どの面の、どの高さにある材か」で覚えるのが近道です。
| 用語 | 読み | ひとことで | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 土台 | どだい | 木造で基礎の上に据え、柱の足元を受け止める木材 | 木造の土台の役割と施工 |
| 大引き | おおびき | 1階の床下に通し、その上に並ぶ根太を受ける太めの木材 | 大引きと根太の関係 |
| 根太 | ねだ | 大引きや梁の上に並べ、床の下地板を受ける角材 | 根太の役割と根太レス工法 |
| 間柱 | まばしら | 柱と柱のあいだに立て、壁の下地や仕上げ材を留める細い縦材 | 間柱と本柱の違い |
| 胴縁 | どうぶち | 外壁材やボードを留めるために、柱や間柱へ取り付ける下地の桟 | 胴縁の縦と横の違い |
| 野縁 | のぶち | 天井ボードを留め付ける、天井下地のいちばん下にある材 | 野縁と天井下地の組み方 |
位置関係を下から順に並べると、次のようになります。床は、基礎の上に土台が据わり、床下に大引きが通り、その上に根太が並んで、根太の上に床の下地板が張られます。壁は、土台の上に柱が立ち、柱と柱のあいだに間柱が入り、外壁側ではそこに胴縁を取り付けて外壁材を留めます。天井は、上から吊った下地の最下段に野縁が組まれ、そこに天井ボードを留め付けます。床は「下から支える材」、壁は「縦に立つ材と、面材を留める材」、天井は「上から吊られた材」という見分け方をしておくと、現場で名前を聞いたときに場所が浮かびやすくなります。
胴縁(どうぶち)と野縁(のぶち)はどちらも「縁(ぶち)」と読みますが、胴縁は壁、野縁は天井と、付く面が違います。
なお、間柱は建築基準法第2条第5号の主要構造部の定義の中で、除かれる部分の1つとして名前が挙がっています(建築基準法 第2条第5号)。土台は施行令第1条第3号の構造耐力上主要な部分の列挙に入っています(建築基準法施行令 第1条第3号)。同じ木造の材でも、法令の言葉に当てはめると扱いが分かれるので、詳しくは法令の用語の章で確認してください。
仕上げと養生の用語
躯体と下地ができると、仕上げの工程に入ります。ここでは、仕上げの現場で毎日のように聞く4語をまとめました。数は少ないものの、「養生」のように場面で意味が変わる言葉が含まれます。
| 用語 | 読み | ひとことで | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 目地 | めじ | タイル・ボード・コンクリートなど、部材と部材のあいだの継ぎ目 | 目地の種類と役割 |
| シーリング | シーリング | 目地や隙間にゴム状の材料を詰めて、水や空気の通り道をふさぐこと | シーリング工事の注意点 |
| ケレン | ケレン | 塗装の前に、鉄部のさびや古い塗膜を落として下地を整える作業 | ケレンの種類と施工方法 |
| 養生 | ようじょう | 打ったコンクリートを守ることと、仕上げ材などを覆って保護すること | 養生の種類とコンクリート養生 |
目地とシーリングは、セットで覚えておきたい組み合わせです。目地は部材のあいだに設けた「すき間の部分」の名前で、シーリングはそこに材料を詰める「作業や材料」の名前です。「目地にシール打っといて」と言われたら、目地という場所にシーリング材を充填する、という意味になります。
「養生」には2つの意味がある
養生は、同じ言葉で2つの別の作業を指します。1つ目は、打ち込んだコンクリートが固まっていく間、乾燥や温度の変化などから守って、必要な品質に育てる意味の養生です。コンクリート工事の打合せで「養生期間」と言うときは、たいていこちらを指します。
2つ目は、仕上げた床や壁、建具、既存の設備などを、傷や汚れから守るためにシートや板で覆う意味の養生です。内装の現場で「エレベーターまわり、養生しといて」と言われたら、こちらの意味になります。コンクリートの話なら前者、仕上がった物の話なら後者、と対象で見分けられます。
書類と人の呼び方の用語
現場の言葉と並んで若手が戸惑うのが、書類の名前と、関係する人や会社の呼び方です。ここには、法令や公共建築工事標準仕様書で定義されている言葉と、現場で通じている言葉が混ざっています。表では両方を並べ、定義がある語は表の下で条文の文言に沿って説明します。
| 用語 | 読み | ひとことで | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 設計図書 | せっけいとしょ | 工事用の図面と仕様書。建築基準法第2条第12号に定義がある | 設計図書の種類と優先順位 |
| 特記仕様書 | とっきしようしょ | 標準の仕様書に対し、その工事に限った条件を書き足した書類 | 特記仕様書の役割と読み方 |
| 施工図 | せこうず | 現場で作るために、設計図の内容を寸法や納まりまで詳しく描いた図 | 施工図と設計図の違い |
| 躯体図 | くたいず | 柱・梁・壁・床など、躯体の形と位置を描き表した図面 | 躯体図の記号と読み方 |
| 竣工図 | しゅんこうず | 完成時の建物の姿を、工事中の変更も反映して記録した図面 | 竣工図の書き方と読み方 |
| 工事関係図書 | こうじかんけいとしょ | 工程表・施工計画書・施工図等・工事写真など、施工の報告と記録 | (下の本文で解説) |
| 発注者 | はっちゅうしゃ | 他から請け負ったものを除いた、建設工事の注文者 | (下の本文で解説) |
| 元請負人 | もとうけおいにん | 下請契約で注文する側にいる建設業者 | 元請けと下請け・孫請けの違い |
| 下請負人 | したうけおいにん | 下請契約で請け負う側 | (下の本文で解説) |
| 現場代理人 | げんばだいりにん | 請負側が現場に置く代理人。公共建築工事の標準仕様書では「受注者等」に入る | 現場代理人の仕事と常駐 |
| 監督職員 | かんとくしょくいん | 公共建築工事で、契約書に基づいて工事を監督する職員など | (下の本文で解説) |
| ゼネコン・サブコン | ゼネコン・サブコン | 一般には総合建設会社と専門工事会社の呼び名。条文の語ではない | ゼネコンとサブコンの違い |
| KY活動 | ケーワイかつどう | KYは危険予知の略。作業前に危険を出し合い、対策を決める活動 | KY活動の流れと具体例 |
| 野帳 | やちょう | 測量の値や現場の記録を、その場で書き込む縦長の手帳 | 野帳の書き方と記入例 |
| 出来形管理 | できがたかんり | 仕上がった形や寸法、位置を測り、設計図書と照らして記録する管理 | 出来形管理の基準と進め方 |
読みで迷いやすいのは「設計図書」です。「せっけいとしょ」のほか「せっけいずしょ」と読む人もいます。「出来形(できがた)」「野帳(やちょう)」も、漢字だけ見ると読みを外しやすい言葉です。
設計図書と施工図は、定義が書かれている場所が違う
設計図書は、建築基準法で次のように定義されています。「建築物、その敷地又は第八十八条第一項から第三項までに規定する工作物に関する工事用の図面(現寸図その他これに類するものを除く。)及び仕様書をいう。」(建築基準法 第2条第12号)。図面だけでなく仕様書も含むこと、そして現寸図その他これに類するものは除かれていることが、条文から読み取れるポイントです。
一方の施工図は、建築基準法第2条には号がありません。国土交通省官庁営繕部の公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版では、施工図単独ではなく「施工図等」として、「施工図、現寸図、工作図、製作図その他これらに類するもので、契約書に基づく工事の施工のための詳細図等をいう。」と定義されています(公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版 1.1.2)。建築基準法の設計図書の定義では現寸図が除かれ、標準仕様書の施工図等には現寸図が入っている、という違いは、用語を条文で確かめるときに覚えておきたい点です。
発注者・元請負人・下請負人は「下請契約」で決まる
人の呼び方のうち、発注者・元請負人・下請負人は建設業法で定義されています。条文は「この法律において「発注者」とは、建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者をいい、「元請負人」とは、下請契約における注文者で建設業者であるものをいい、「下請負人」とは、下請契約における請負人をいう。」です(建設業法 第2条第5項)。
その「下請契約」は、同じ条の第4項で「建設工事を他の者から請け負つた建設業を営む者と他の建設業を営む者との間で当該建設工事の全部又は一部について締結される請負契約」と定義されています(建設業法 第2条第4項)。元請負人と下請負人は、会社の規模で決まる呼び名ではなく、下請契約の中で注文する側か請け負う側か、という契約上の立場で決まる言葉です(元請負人は、下請契約における注文者のうち建設業者であるもの)。同じ会社でも、ある契約では下請負人、その先の契約では元請負人になる、という読み方ができます。
ゼネコンとサブコンは、建設業法・建築基準法の条文に出てくる言葉ではありません。一般には、元請として建物全体を請け負う総合建設会社をゼネコン、その下で電気・空調などの専門工事を請け負う会社をサブコンと呼び分けます。条文の上での立場は、あくまで上の下請契約の定義で決まる、と分けて押さえておくと整理しやすいです。
公共建築工事の書類で使う言葉
官公庁の建物の工事では、公共建築工事標準仕様書の用語が書類に出てくることがあります。この標準仕様書は法律ではなく、国土交通省官庁営繕部が定めた公共建築工事の仕様書で、用語の意味は1.1.2にまとめて書かれています。主なものは次のとおりです(公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版 1.1.2)。
「監督職員」は「契約書に基づく監督職員、監督員又は監督官をいう。」、「受注者等」は「当該工事請負契約の受注者又は契約書に基づく現場代理人をいう。」と定義されています。現場代理人は、この標準仕様書の上では受注者と並んで「受注者等」に含まれる立場です。書類のやり取りでよく出てくる「監督職員の承諾」は、受注者等が書面で申し出た事項を監督職員が書面で了解すること、「監督職員の指示」は、監督職員が受注者等に必要な事項を書面で示すことを指します。ここでいう「書面」も「発行年月日及び氏名が記載された文書をいう。」と決められています。
書類の名前では、「工事関係図書」が「実施工程表、施工計画書、施工図等、工事写真その他これらに類する施工、試験等の報告及び記録に関する図書をいう。」と定義されています。施工図等は、この工事関係図書の一部として列挙されています。
現場目線で言えば、承諾・指示は日常の会話でも使う言葉なので、標準仕様書の定義では「書面」が前提になっている点を早めに押さえておくと、書類の段取りを組みやすくなります。
建築基準法と施行令で意味が決まっている用語
最後は、法令が「この法律において」と前置きして意味を決めている言葉です。図面の注記、確認申請の書類、施工計画書の冒頭などで目にする機会があり、現場の言い方と少しずつ意味がずれているものも含まれます。ここでは2026年10月時点の条文をもとに、条・号の出典つきで要点を並べました。
| 用語 | 条文の要点 | 出典 |
|---|---|---|
| 建築物 | 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む)、これに附属する門・塀、観覧のための工作物、地下・高架の工作物内に設ける事務所・店舗などの施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設、跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽などを除く)。建築設備を含む | 建築基準法 第2条第1号 |
| 建築設備 | 建築物に設ける電気/ガス/給水/排水/換気/暖房/冷房/消火/排煙/汚物処理の設備、又は煙突/昇降機/避雷針 | 建築基準法 第2条第3号 |
| 居室 | 居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室 | 建築基準法 第2条第4号 |
| 主要構造部 | 壁/柱/床/はり/屋根/階段。構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する部分を除く | 建築基準法 第2条第5号 |
| 構造耐力上主要な部分 | 基礎/基礎ぐい/壁/柱/小屋組/土台/斜材(筋かい、方づえ、火打材など)/床版/屋根版/横架材(はり、けたなど)で、建築物の自重・積載荷重・積雪荷重・風圧・土圧・水圧・地震その他の震動・衝撃を支えるもの | 建築基準法施行令 第1条第3号 |
| 建築 | 建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転すること | 建築基準法 第2条第13号 |
| 大規模の修繕 | 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕 | 建築基準法 第2条第14号 |
| 大規模の模様替 | 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替 | 建築基準法 第2条第15号 |
| 敷地 | 一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地 | 建築基準法施行令 第1条第1号 |
| 地階 | 床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの三分の一以上のもの | 建築基準法施行令 第1条第2号 |
| 建築面積 | 外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積。地階で地盤面上1m以下の部分は除く。軒・ひさしなどが中心線から水平距離1m以上突き出ている場合は、その端から水平距離1m後退した線で囲む(特例の定めあり) | 建築基準法施行令 第2条第1項第2号 |
| 床面積 | 建築物の各階又はその一部で、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積 | 建築基準法施行令 第2条第1項第3号 |
| 延べ面積 | 建築物の各階の床面積の合計。容積率の算定の基礎となる延べ面積では、自動車車庫等・備蓄倉庫などの部分の床面積を算入しない扱いがある(容積率の最低限度に関する規制に係るものを除く) | 建築基準法施行令 第2条第1項第4号 |
| 建ぺい率 | 敷地面積に対する建築面積の割合(条文では「建蔽率」と表記)。数値と緩和は 建ぺい率の計算と緩和 で解説 | 建築基準法 |
表のうち、建築物・建築設備・居室・主要構造部・建築・大規模の修繕・大規模の模様替は建築基準法第2条、構造耐力上主要な部分・敷地・地階は建築基準法施行令第1条、建築面積・床面積・延べ面積は施行令第2条第1項の各号です(建築基準法 第2条/建築基準法施行令 第1条・第2条第1項)。なお、「敷地」は建築基準法第2条の号にはなく、施行令第1条第1号で定義されています。これらの言葉が実際の手続きの中でどう使われるかは、建築確認申請の流れと必要書類の記事でつながりが見えてきます。
以下では、この中から現場の言い方とずれやすい3組を取り上げます。
ずれやすい1組目:「建築」と「修繕・模様替」
日常の会話では、建物に手を入れることを広く「建築」と呼ぶことがあります。ところが建築基準法の「建築」は、「この法律において」の定義として、建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することの4つに限られています(建築基準法 第2条第13号)。
修繕や模様替は、この「建築」の4つには入っていません。そのうえで、主要構造部の一種以上について行う過半の修繕が「大規模の修繕」、過半の模様替が「大規模の模様替」として、別の号で定義されています(建築基準法 第2条第14号・第15号)。条文を読むときは、「建築」と書いてあれば新築・増築・改築・移転の4つ、「大規模の修繕」「大規模の模様替」と書いてあればそれぞれの号の意味、と言葉ごとに読み分けるのが正確です。修繕・模様替一般の扱いは、この定義だけでは決まらないので、該当する条文や手続きの記事で個別に確かめてください。
ずれやすい2組目:「主要構造部」と「構造耐力上主要な部分」
名前がよく似ていますが、別の法令の別の号で定義された、別の言葉です。主要構造部は建築基準法第2条第5号で「壁、柱、床、はり、屋根又は階段」を挙げたうえで、構造上重要でない間仕切壁・間柱・付け柱・揚げ床・最下階の床・回り舞台の床・小ばり・ひさし・局部的な小階段・屋外階段その他これらに類する部分を除く、と定めています(建築基準法 第2条第5号)。
構造耐力上主要な部分は、建築基準法施行令第1条第3号で、基礎・基礎ぐい・壁・柱・小屋組・土台・斜材・床版・屋根版・横架材を挙げ、そのうち「建築物の自重若しくは積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるもの」と絞り込んでいます(建築基準法施行令 第1条第3号)。
2つの列挙を並べると、違いがはっきりします。
- 基礎・基礎ぐい・土台は、構造耐力上主要な部分の列挙にあり、主要構造部の列挙にはない
- 階段は、主要構造部の列挙にあり、構造耐力上主要な部分の列挙にはない
- 壁・柱は、両方の列挙に名前がある
- 主要構造部には除く部分の列挙があり、構造耐力上主要な部分には「…を支えるもの」という絞り込みがある
2つの言葉は、どちらを指しているかで含まれる部分が変わります。書類や条文でこの2語を見かけたら、列挙を見比べて読むようにしておくと、取り違えを防げます。
ずれやすい3組目:「建築面積」「床面積」「延べ面積」
3つとも「面積」ですが、どの線で囲むか、何を合計するかが違います。床面積は、各階又はその一部で「壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」です(建築基準法施行令 第2条第1項第3号)。現場では区画の中心線のことを「壁芯」と呼ぶことがありますが、これは条文の言葉ではなく現場の言い方です。
延べ面積は、建築物の各階の床面積の合計です(建築基準法施行令 第2条第1項第4号)。ただし同じ号のただし書で、容積率の算定の基礎となる延べ面積には、自動車車庫等部分・備蓄倉庫部分・蓄電池設置部分・自家発電設備設置部分・貯水槽設置部分・宅配ボックス設置部分の床面積を算入しないとされています(容積率の最低限度に関する規制に係るものを除く)。「延べ面積=各階の床面積の合計」と覚えるだけでなく、容積率の計算では一部を含めない扱いがある、とセットで覚えておくのが安全です。
建築面積は、外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積が基本です。地階で地盤面上1m以下にある部分は除かれ、軒・ひさし・はね出し縁などが中心線から水平距離1m以上突き出ている場合は、その端から水平距離1m後退した線で囲みます(建築基準法施行令 第2条第1項第2号)。この号には、建蔽率の算定に限った特例軒等の扱いや、高い開放性を有する構造のただし書もあるので、該当しそうな建物では条文を直接確かめてください。
床面積と建築面積は、囲む線が「区画の中心線」と「外壁又はこれに代わる柱の中心線」で違います。建ぺい率はこの建築面積の敷地面積に対する割合なので、上限の数値や緩和は表の建ぺい率の記事で確かめてください。
僕は、法令の用語は「意味を覚える」より「号番号と一緒に覚える」ほうが、あとで条文を引き直すときに役立つと考えています。
建築用語に関する情報まとめ
- 建築用語とは:法令で意味が決まる言葉と、図面や現場の会話で通じる言葉の2種類がある
- 図面・墨出しと基礎・躯体:通り芯は図面の線、墨出しは写す作業。捨てコンは基礎の下に打つコンクリートの呼び名
- 木造と内装下地:床は土台→大引き→根太、壁は柱→間柱→胴縁、天井は野縁という並びで覚える
- 仕上げと養生:目地は場所、シーリングは詰める作業。養生はコンクリートの養生と保護の養生の2つ
- 書類と人:発注者・元請負人・下請負人は建設業法第2条第5項、監督職員・受注者等・施工図等は公共建築工事標準仕様書1.1.2で定義
- 法令の用語:「建築」は新築・増築・改築・移転の4つ。主要構造部と構造耐力上主要な部分、床面積と建築面積は別の言葉
以上が建築用語に関する情報のまとめです。
現場の言葉は、表で意味の当たりを付けてから、実際の図面と作業の中で何度か使ってみると定着します。法令の言葉は、条と号をメモしておき、書類や打合せで出てきたらその場で条文を引き直す。この2つの覚え方を分けておくと、言葉の取り違えで手戻りを出す場面がぐっと減るはずです。まずは今いる工程の表から、詳しい記事を1本ずつ開いてみてください。
