- カニクレーンって結局なに?正式な名前はあるの?
- ユニック(積載形トラッククレーン)とは何が違うの?
- 「2.82t吊り」って、ブームを伸ばしても2.82t吊れるってこと?
- アウトリガーを張る場所はどれくらい要る?片側だけ縮めて使っていい?
- 幅の狭い通路を通れる機種はある?
- 運転にはどの資格が要る?玉掛けも要る?
- 0.5t未満の機種は資格不要って本当?
- カニクレーンの事故って、どんな形で起きている?
上記の様な悩みを解決します。
カニクレーンは、走行用のクローラにアウトリガーを備えたクローラクレーンの通称で、法令上は移動式クレーンに当たります。厚生労働省の災害事例は4本のアウトリガーを持つクローラクレーンを通称「カニクレーン」と書いています。メーカーの表示する最大の能力が出るのはアウトリガーを最大に張り出し作業半径が最小のときだけで、運転に要る資格は機械のつり上げ荷重で決まります。
カニクレーンは、改修工事や設備更新で狭い場所に機材を入れるときに、協力会社から名前が出てくる機械です。ところが検索して出てくるのは、レンタル会社や建機メディアのコラムで、「2.9t吊り」「狭小地に強い」といった最大値と特徴の紹介が中心なんですよね。今回は定義・機種・資格の基本を押さえた上で、今回確認した上位のコラムでは扱いが見当たらなかった「最大の能力が作業半径1.4m以下でしか出ないこと」「アウトリガーを張り出せないと能力がどこまで落ちるか」「通称カニクレーンの横転事例」まで、カタログの表と法令の条文を突き合わせて、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、協力会社から「カニで吊ります」と言われて作業計画の書き方に迷っている方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
カニクレーンとは?アウトリガーを張るクローラクレーンの呼び名
「カニクレーンって正式には何?」と聞かれたら、結論は「法令上は移動式クレーンで、その中のクローラクレーンに当たる機械の通称」です。
まず法令の位置づけです。移動式クレーンの定義は施行令の定義規定の第8号にあり、「原動機を内蔵し、かつ、不特定の場所に移動させることができるクレーンをいう」とされています(労働安全衛生法施行令 第1条第8号)。クレーン等安全規則の側も、移動式クレーンという言葉はこの号を指すと決めています(クレーン等安全規則 第1条第1号)。カニクレーンはエンジンやモーターを積み、自分のクローラで走って場所を変えるので、この定義の側に入ります。
次に足回りです。厚生労働省が技能講習向けに公開している補助教材(小型移動式クレーン運転技能講習)は、クローラクレーンを「走行用にクローラを装備した走行フレームに上部旋回体を架装したもの」と説明し、同じ節で、アウトリガーを付けたクローラクレーンの機種を「通称ミニクローラクレーン」と呼んでいます(厚生労働省 補助教材 p.9)。
一方、厚生労働省の職場のあんぜんサイトの災害事例は、つり上げ荷重2.32tで「4本のアウトリガーを有するクローラクレーンで、通称「カニクレーン」と呼ばれるもの」と書いています(職場のあんぜんサイト 労働災害事例 No.101220)。教材の「ミニクローラクレーン」と事例の「カニクレーン」を同じものだと明記した一次資料は見つからなかったので、この記事では2つを並べるだけにしておきます。
メーカー側では、前田製作所が製品一覧の見出しを「かにクレーン」(ひらがな)としています(前田製作所 マエダ製品「かにクレーン」製品一覧、2026年10月20日確認)。「カニ」という呼び名の由来は、今回確認した一次資料に出てこなかったので書きません。
積載形トラッククレーンとの違いは、クレーン装置をどこに載せているかです。補助教材は積載形を、トラックの荷台と運転室の間などにクレーン装置を搭載したもので「つり上げ荷重が3トン未満の機種が多い」と説明しています(同 補助教材 p.7)。移動式クレーン全体の中での位置はクレーンの種類の整理で法令の名前ごとに並べています。
カニクレーンはどれくらい吊れる?2.82tが出るのは作業半径1.4m以下だけ
「何トンまで吊れるの?」「2.82t吊りは、どこまで伸ばしても2.82t?」という疑問への答えは、「表示の最大値が出るのは、旋回中心のすぐ近くで吊るときだけ」です。ここを1機種の表で確かめていきます。
つり上げ荷重と定格総荷重の関係
法令の言葉から押さえます。施行令第10条第1号の括弧書きによると、つり上げ荷重とは機械の「構造及び材料に応じて負荷させることができる最大の荷重」のことです(労働安全衛生法施行令 第10条第1号)。条文はこの最大値がどの姿勢で出るかまでは書いていません。そこを補っているのが補助教材で、アウトリガーを目一杯張り、ジブを一番短く縮め、一番立てた姿勢、言い換えると作業半径がいちばん小さい姿勢で掛けられる最大の荷重がつり上げ荷重だと説明しています。この値にはフックやグラブバケットといったつり具の分も入っています(厚生労働省 補助教材 p.5)。
実際の作業で見る値は、つり上げ荷重ではなく定格総荷重です。補助教材の説明では、定格総荷重は定格荷重にフックなどつり具の分の質量を足したもので、表の中で一番大きな定格総荷重がつり上げ荷重に当たります(同 補助教材 p.6)。作業半径は「旋回中心からフックの中心を通る鉛直線までの水平距離」で、ブームの根元のフートピンからフックまでの距離ではありません(同 補助教材 p.4)。
MC285C-3の定格総荷重表で見る能力の落ち方
具体的な数字は、前田製作所のMC285C-3のカタログで見てみます。メーカーはこの機種の能力を「クレーン容量 2.82t×1.4m」と表示しています(前田製作所 MC285C-3カタログ、2026年10月20日確認)。法令上のつり上げ荷重がいくつかをメーカーが明記した資料は今回確認できなかったので、ここではカタログの表示をそのまま使います。カタログの「定格総荷重表(4本掛け時)」のうち、アウトリガ最大張出時の値を抜き出すと次のとおりです。
| ブーム長さ | 作業半径(m) | 定格総荷重(kg) |
|---|---|---|
| 2.535m/4.075m | 1.40以下 | 2,820 |
| 2.535m/4.075m | 1.50 | 2,520 |
| 2.535m/4.075m | 2.00 | 1,920 |
| 2.535m/4.075m | 3.00 | 1,220 |
| 2.535m/4.075m | 3.705 | 920 |
| 8.575m | 4.00以下 | 550 |
| 8.575m | 6.00 | 270 |
| 8.575m | 8.205 | 150 |
出典は前田製作所 MC285C-3カタログの定格総荷重表(4本掛け時)アウトリガ最大張出時で、表の途中の行は省いています。5.575mと7.075mのブームの行も同じ表に載っています。カタログでは表の下に4つの注記が付いていて、表の値とセットで読む必要があります(同カタログ 2頁)。
- 表は水平堅土上の値で、アウトリガの設置状態・地面の状態等により転倒することもある
- 表は、負荷時のたわみを含んだ実際の作業半径にもとづいている
- 定格総荷重はフックブロック(30kg)の重量を含んだ重量である
- アウトリガの張出状態及び張り具合によっては、定格総荷重を吊り上げると転倒する場合がある
表を上から読むと、2,820kgが出るのは作業半径1.40m以下の行だけです。同じブームでも1.50mで2,520kg、2.00mで1,920kg、3.00mで1,220kgと下がります。ブームを8.575mまで伸ばすと、半径4.00m以下でも550kgで、最大作業半径の8.205mでは150kgです。カタログの「最大作業半径 8.205m×0.15t」という表示も、この最後の行と同じ数字です(同カタログ)。「2.82t吊り」の機械でも、8.575mブームで作業半径8.205mまで振れば150kgの機械になる、ということが表から読み取れます。
同じ表には、間の長さのブームの値もあります。5.575mブームは半径3.00m以下で1,220kg、最大の5.205mで530kg、7.075mブームは半径3.60m以下で820kg、最大の6.705mで330kgです(前田製作所 MC285C-3カタログ 定格総荷重表)。ブームが長くなるほど、各ブームの一番上の行の値そのものが小さくなっていくのが分かります。
最大吊能力の数字が出る作業半径は、機種ごとに違います。MC285C-3は「クレーン容量 2.82t×1.4m」、MC305C-5は「クレーン容量 2.98t 2.5m」と表示されています(前田製作所 MC285C-3カタログ・MC305C-5カタログ)。カタログの見出しの数字だけを並べて機種を比べず、使う半径での値をそれぞれの定格総荷重表で確かめる必要があります。
注記の2つ目も見落としやすいところです。表の作業半径は、荷を吊ってブームがたわんだ状態の実際の距離です。荷を吊る前に測った距離をそのまま表に当てはめず、カタログの注記がこの前提で書かれていることを頭に置いておく必要があります。注記の3つ目のとおり、表の値にはフックブロック30kgが入っているので、最大作業半径の150kgのように値が小さい行ほど、荷に回せる分の割合は小さくなります。
「クローラだから全周同じ能力」とは言えない
「クローラクレーンなら、どの向きでも同じだけ吊れるのでは?」という疑問もあると思います。補助教材は、クローラクレーンの場合は作業領域が全周共通で、定格総荷重も全周同一値だと説明しています(同 補助教材 p.48)。ただしこれはクローラクレーン一般の説明で、アウトリガーを持つMC285C-3のカタログは「最大張出時」と「最大張出時以外」で別の表を載せています。アウトリガーをどう張ったかで使える表が変わる、という点は次の章で見ます。
定格荷重(表の定格総荷重からフックなどのつり具の質量を引いた値)をこえる荷重をかけることは、法令でも禁止されています。クレーン等安全規則は「移動式クレーンにその定格荷重をこえる荷重をかけて使用してはならない」と定めています(クレーン等安全規則 第69条)。定格総荷重表の縦軸・横軸の読み方そのものはラフタークレーンの定格総荷重表の読み方で手順を追って説明しているので、表を初めて見る方はそちらとあわせて読むと迷いません。
たとえば荷を半径3.00mの位置に下ろす計画なら、2.535m/4.075mのブームの3.00mの行も、5.575mブームの3.00m以下の行も1,220kgです。同じ機械でも、荷の位置を旋回中心から1.4m以内に寄せられるかどうかで、表の値は2,820kgと1,220kgのどちらにもなります。荷の置き場所を図面上で動かせるなら、半径を詰めることがそのまま能力の確保になります。
現場目線で言えば、作業計画に書くべきなのは「2.82t吊り」という機械の名札ではなく、「何mのブームで、半径何mの位置に、何kgの荷を下ろすか」の3点です。アウトリガーの張り方、ブームの長さ、荷を置く作業半径が決まれば、使う表と行は1つに決まり、比べるのは荷の重さにフックブロックの質量(MC285C-3では30kg)を足した値です。
アウトリガーの張り方で能力が変わる|最大張出しが原則、置き場所も条文で確認
「アウトリガーを張る広さはどれくらい要る?」「片側だけ縮めて使っていい?」という疑問には、法令とカタログの両方から答えが出ます。結論は、最大限に張り出すのが原則で、張り出せないときに使える例外には2つの条件が付いている、です。
第70条の5は「最大限に張り出す」が本文
クレーン等安全規則のアウトリガーの規定は、本文とただし書で次のように書かれています。
「事業者は、アウトリガーを有する移動式クレーン又は拡幅式のクローラを有する移動式クレーンを用いて作業を行うときは、当該アウトリガー又はクローラを最大限に張り出さなければならない。ただし、アウトリガー又はクローラを最大限に張り出すことができない場合であつて、当該移動式クレーンに掛ける荷重が当該移動式クレーンのアウトリガー又はクローラの張り出し幅に応じた定格荷重を下回ることが確実に見込まれるときは、この限りでない。」(クレーン等安全規則 第70条の5)
ただし書に頼れるのは、まず現場の事情で最大まで張れないこと、そのうえで、その張り出し幅での定格荷重より荷が確実に軽いと見込めること、この2つが両方とも成り立つときだけです。張れるのに作業の都合で縮めるのは本文に反しますし、張れない場所でも、荷が軽いと確実に言えなければ例外にはなりません。補助教材も移動式クレーン一般について、アウトリガーは最大張り出しが原則で、左右均等で最大に張り出してロックピンで固定し、設置場所が狭く最大張り出しができない場合に限り中間張り出し・最小張り出しにできるが、その場合もロックピンで固定する、と説明しています(厚生労働省 補助教材 p.49)。
最大張出時以外の表で、能力はここまで下がる
では、張り出しきれないと能力はどれくらい落ちるのか。MC285C-3のカタログには、アウトリガ最大張出時以外の定格総荷重表もあります(前田製作所 MC285C-3カタログ 定格総荷重表)。最大張出時の表と同じ作業半径で並べると、差がはっきりします。
2.535m/4.075mのブームでは、最大張出時に半径1.50mで2,520kgだったところが、最大張出時以外の表では1.50m以下で1,720kgです。半径3.705mでは、最大張出時の920kgに対して、最大張出時以外は350kgまで下がります。8.575mのブームでは、半径4.00m以下が550kgから330kgへ、最大作業半径の8.205mは150kgから60kgへと下がります。2.82tの機械が、張り方しだいで最遠では60kgの機械になるということです。個人的には、この60kgという数字こそ、計画の打合せで最初に共有しておきたい値です。
カタログは、張出状態に応じたクレーン作業規制ができる仕組みとして、アウトリガ1本が「最大張出以外」の例を図で示し、最大張出の定格総荷重で作業できる領域と、最大張出以外の定格総荷重で作業できる領域を分けています。旋回時は過負荷領域の手前で自動ストップし、アウトリガの張出条件によっては作業ができない、とも書いています(同カタログ 1頁)。アウトリガーの張出しはマルチアングルで、張出角度は6パターンあるとされています(同カタログ 1頁)。張り方の選択肢が多い分、どの張り方でどの表を使うかを事前に決めておかないと、旋回した途中で止まる段取りになります。
MC285C-3のカタログは、アウトリガインターロックとモーメントリミッタを標準装備とし、安全装置としてアウトリガ安全装置、作業範囲規制装置、過負荷防止装置・警報ブザーなどを挙げています(前田製作所 MC285C-3カタログ)。一方、第66条の2が事業者に求めているのは、作業の方法・転倒を防止するための方法・労働者の配置及び指揮の系統をあらかじめ定めることです。安全装置が付いていても、この3つを定める義務がなくなるわけではありません。
張り出したときの寸法と、置く場所の地盤
アウトリガーを張るために要る広さは、カタログの寸法で確かめます。MC285C-3の主要諸元では、最大張出幅が(左右)4,782mm×(前)4,718mm×(後)3,990mmです。外形図には最小の寸法も載っていて、左右は最小3,232mm、前は最小2,498mm、後は最小2,180mmです(前田製作所 MC285C-3カタログ 主要諸元・外形図)。機体幅750mmの機械でも、最大に張り出すと左右は4,782mmになる、ということです。搬入経路の幅と、作業する位置の広さは別々に確認する必要があります。最小に縮めても左右は3,232mmあり、張り方はこの最小と最大の間で選ぶことになります。どの張り方を選んだかで、前の項で見た2つの表のどちらを使うかが変わります。
置く場所の地盤については、クレーン等安全規則の第70条の3が、地盤が軟らかい、地下の埋設物などを壊すおそれがある、といった理由で転倒のおそれがある場所では、移動式クレーンを使った作業そのものを禁じています。例外は、転倒を防ぐのに足りる広さと強さの鉄板などを敷き、その上にクレーンを据えた場合です(クレーン等安全規則 第70条の3)。補助教材も、軟弱な地盤ではアウトリガーフロートの下に十分な強度を持った敷材(角材、敷板、鉄板等)を敷き、フロートが地面にめり込まないようにすると説明しています(厚生労働省 補助教材 p.49)。敷材の厚さや地盤の強さの数値は、今回の資料には出てこないので、ここでは示しません。
地盤や床を確かめる材料として、クローラの数字もカタログに載っています。MC285C-3は、クローラ接地長×幅が975mm×200mm、接地圧が50.0kPa(電動併用仕様は54.3kPa)、走行速度が0〜2.2km/h、登坂能力が20°です(前田製作所 MC285C-3カタログ 主要諸元)。搬入経路の床や勾配を確かめるときに、協力会社と見ておきたい数字です。
こうした条件を作業前に決めて現場に伝えることも、規則で求められています。第66条の2は、作業場所の広さ、地形・地質、運ぶ荷の重さ、使うクレーンの種類と能力などを踏まえて、事業者があらかじめ次の3つを決め、作業を始める前に関係する作業者へ知らせるよう定めています(クレーン等安全規則 第66条の2)。
- クレーンでどう作業するか(作業の方法)
- クレーンを倒さないために何をするか(転倒防止の方法)
- 誰をどこに配置し、誰が指揮するか(配置と指揮の系統)
カニクレーンの場合、2つ目の転倒防止の方法に、アウトリガーをどの寸法まで張り出せるか、最大張出時と最大張出時以外のどちらの表を使うか、敷材をどう置くかを書き込んでおくと、現場で読み違えにくくなります。建物の中で使えるかどうかは、今回の資料では確認できなかったので、この記事では可否を言い切りません。
計画の順番に直すと、まず作業位置で張れるアウトリガーの寸法を測り、最大まで張れるなら最大張出時の表、張れないなら最大張出時以外の表を選び、そのうえで荷を置く半径と荷の重さを表の行に当てる、という流れになります。表を選ぶ前に荷の重さから機種を決めてしまうと、張出しの条件で能力が足りなくなったときに機種選びからやり直しになります。
僕は、アウトリガーの章で一番効くのは、搬入前に張出し寸法を図面に描いてしまうことだと考えています。左右4,782mmの線を作業位置に引いて、壁や柱、開口の縁にぶつかるなら、その時点で「最大張出時以外の表」で計画を組み直せます。
機種の大きさの例|機体幅600mmから、電動・バッテリー仕様、0.495t機まで
「幅はどれくらい?狭い通路を通れる?」「電動やバッテリーの機種はある?」という疑問には、メーカーの製品一覧の数字で答えます。前田製作所の製品一覧から5機種を抜き出すと次のとおりです。数値はメーカー公表値で、特定の機種をすすめる意図はありません。
| 機種 | 最大吊能力(t) | 最大作業半径(m) | 全幅(mm) | 機械質量(kg) | 動力装置 |
|---|---|---|---|---|---|
| MC285C-3 | 2.82 | 8.205 | 750 | 1,990(2,160) | ディーゼルエンジン(200V電動ユニット) |
| MC285CB-3 | 2.82 | 8.205 | 750 | 1,995 | バッテリーユニット |
| MC305C-5 | 2.98 | 12.16 | 1,280 | 3,970(4,110) | ディーゼルエンジン(200V電動ユニット) |
| MC405C-5 | 2.98 | 16.0 | 1,380 | 5,640(5,780) | ディーゼルエンジン(200V電動ユニット) |
| MC054C | 0.495(メーカー表示) | 5.1 | 600 | 1,050 | ガソリンエンジン |
出典は前田製作所 かにクレーン製品一覧の諸元表(2026年10月20日確認)で、機械質量の括弧内は電動仕様、動力装置の括弧内はオプションです。
バッテリー仕様のMC285CB-3
MC285CB-3は、前田製作所が「シリーズ史上初の完全電動モデル」として2020年9月1日に発売した機種です。リチウムイオン電池を搭載し、1回の充電で約9時間30分のクレーン作業が可能で、AC200Vでの充電時は2時間20分で80%の充電ができ、充電しながらの作業も可能とされています(前田製作所 ニュース「かにクレーン『MC285CB-3』新発売」)。
0.495t機の「資格不要」表示と法令の関係
「0.5t未満の機種は資格不要って本当?」という疑問には、メーカーの表示と法令を並べて答えます。前田製作所は0.495t機(MC054C・MC055C)を製品一覧で「資格不要」の見出しの下に載せていて、MC054Cのカタログ1頁にも「資格不要」とあります。一方で、同じカタログの2頁には「使用のための所持推奨資格」として、クレーンの運転に小型移動式クレーン運転技能講習修了証、玉掛作業に玉掛技能講習修了証が挙がっています(前田製作所 製品一覧・MC054Cカタログ)。
法令の側では、クレーン等安全規則は「クレーン、移動式クレーン又はデリックで、つり上げ荷重が〇・五トン未満のもの」にはこの省令を適用しない、と定めています(クレーン等安全規則 第2条第1号)。この記事では「資格がなくても運転できる」とは書きません。なお、0.495t機は法令上の小型移動式クレーン(つり上げ荷重1t以上5t未満)には当たりません。
0.495tという数字の読み方にも注意が要ります。一覧の「0.495t×5.1m」は容量と最大作業半径を並べた表示で、5.1mで495kg吊れる意味ではありません。MC054Cの定格総荷重表では、アウトリガ最大張出時の5.30mブームで、作業半径3.00m以下が495kg、5.10mが200kg、最大張出以外の状態では2.40m以下で295kg、5.10mで60kgです。フックブロック15kgを含む値です(前田製作所 MC054Cカタログ 2頁)。
機種選びでは、全幅だけでなく張出し後の寸法も見ておく必要があります。通路を通れても、作業位置で最大まで張れなければ、使える能力は最大張出時以外の表の値まで下がります。
カニクレーンの運転と玉掛けに必要な資格
「運転に必要な資格は?」「玉掛けも要る?」への答えは、区分は機械のつり上げ荷重で決まり、吊る荷の重さでは決まらない、です。補助教材も、資格の区分は実際につり上げる荷の質量によるものではないと説明しています(厚生労働省 補助教材 p.3)。
| 機械のつり上げ荷重 | 運転に必要な資格 | 根拠 |
|---|---|---|
| 5t以上 | 移動式クレーン運転士免許 | 施行令 第20条第7号・クレーン則 第68条 |
| 1t以上5t未満 | 移動式クレーン運転士免許か、小型移動式クレーン運転技能講習(修了者) | クレーン則 第68条(ただし書) |
| 0.5t以上1t未満 | 特別の教育 | クレーン則 第67条 |
表の根拠は、施行令が就業制限の業務に「つり上げ荷重が一トン以上の移動式クレーンの運転」を挙げていること(同令 第20条第7号)、クレーン等安全規則がこの業務を免許を受けた者に限りつつ、1t以上5t未満の小型移動式クレーンは技能講習の修了者でもよいとしていること(クレーン等安全規則 第68条)、1t未満の運転の業務に特別の教育を求めていること(同 第67条)です。いずれも道路上を走行させる運転は除かれています。つり上げ荷重0.5t未満は、前の章のとおりクレーン等安全規則の適用除外です(同 第2条第1号)。
メーカーの表示では、MC285C-3のカタログが「運転及び作業に必要な資格」として、クレーンの運転に小型移動式クレーン運転技能講習修了証、玉掛作業に玉掛技能講習修了証を挙げています(前田製作所 MC285C-3カタログ)。技能講習の中身や小型移動式クレーンの使いどころは小型移動式クレーンの記事に、クレーン系の資格全体の比べ方はクレーンの資格の解説に、荷を掛ける側の資格と作業は玉掛けの解説にまとめています。
カニクレーンの事故事例から見る作業前の確認
「カニクレーンの事故はどんなもの?」の答えとして、職場のあんぜんサイトに通称カニクレーンと明記された事例があります。事例の表題は「小型移動式クレーンが転倒し、作業者がジブに押されて墜落」で、事故の型は墜落・転落、被害は休業1人です(職場のあんぜんサイト 労働災害事例 No.101220)。
桟橋上に設置したつり上げ荷重2.32tのクローラクレーン(4本のアウトリガーを有する通称「カニクレーン」)で、足場用単管の束を4m下の台船に下ろそうとしたときの災害です。作業は作業者A〜Cの3人が担当していました(事例ページは、原因の一つに1人作業を挙げていますが、3人の担当との関係は説明していません)。横転したとき、アウトリガーの張り出し状態と作業半径から定格荷重は160kgでしたが、つり荷は290kgで過荷重でした。2.32tの機械が、この状態では160kgの機械になっていたわけです。設置場所が狭く、左右のアウトリガーの張り出し状態が異なっていました。アウトリガーは4隅にあり、張り出し方向と幅をそれぞれ3段階で調整できるものでした。Aは運転を停止し、運転位置を離れて資材カゴからつり荷を外そうとしたときに、クレーンが横転しました。Aは玉掛け技能講習を修了していましたが、運転の資格(移動式クレーン運転士免許または小型移動式クレーン運転技能講習修了)は持っていませんでした(同 事例 No.101220)。
事例が挙げている原因は次の3つです(同 事例 No.101220)。
- つり荷を移動中に過荷重になったこと
- 資格がない者に移動式クレーンを運転させたこと
- 1人作業であったこと
対策として事例は、定格荷重を超える荷をつり上げないこと(アウトリガーの張り出しを左右同じにし、安定した状態で使用することも重要)、つり上げ荷重に応じた資格を持つ作業者に運転させること、移動式クレーン作業は2人以上の作業者に行わせることを挙げています(同 事例 No.101220)。
これとは別に、事例の原因には挙がっていませんが、移動式クレーンの作業では立入禁止の規定もあります。第74条は旋回する上部の機体にぶつかって危ない範囲への立入りを、第74条の2は荷をワイヤロープ等で1箇所だけに掛けて吊っているとき(荷の穴やアイボルトに通して玉掛けしている場合を除く)など6つの場面で吊り荷の下への立入りを、事業者が禁止するよう定めています(クレーン等安全規則 第74条・第74条の2)。吊り荷の向きを整えるのに使う介錯ロープについては別の記事で扱っています。
実務だと、この事例から自分の現場に持ち帰る確認は3つに絞れます。張り出し状態ごとにどの表を使うか、運転者の修了証が機械のつり上げ荷重に合っているか、運転者のほかにもう1人を付けているか。どれも作業開始前に書類と人の配置で確かめられることです。
カニクレーンに関する情報まとめ
- カニクレーンとは:アウトリガーを持つクローラクレーンの通称で、法令上は移動式クレーン(施行令 第1条第8号)
- 吊れる重さ:MC285C-3の2,820kgは作業半径1.40m以下の値で、8.575mブームの8.205mでは150kg
- アウトリガー:最大限に張り出すのが原則で、例外は「張り出せない」と「定格荷重を確実に下回る」の両方がそろうとき
- 機種の大きさ:5機種で全幅600〜1,380mm、バッテリー仕様あり、0.495t機はメーカー表示が分かれる
- 資格:機械のつり上げ荷重で決まり、1t以上5t未満は免許か小型移動式クレーン運転技能講習の修了
- 事故事例:定格荷重160kgに290kg、左右の張り出しが不ぞろい、運転資格なし、1人作業で横転
以上がカニクレーンに関する情報のまとめです。
カニクレーンで作業計画に使う数字は、機械の名札ではなく、張り出せる寸法と作業半径から決まる表の1行です。機種名を聞いたら定格総荷重表を取り寄せ、張出し寸法を図面に描き、荷を置く半径の値を確かめる。そのうえで、地盤と敷材、第66条の2で定める3つの事項、修了証と人の配置を確かめます。
Q1:カニクレーンは何トン吊れますか?
作業半径とアウトリガーの張り方で変わります。MC285C-3はメーカー表示で「クレーン容量 2.82t×1.4m」ですが、2,820kgが出るのはアウトリガ最大張出時の作業半径1.40m以下だけで、8.575mブームの8.205mでは150kgです(前田製作所 MC285C-3カタログ)。
Q2:カニクレーンの運転に必要な資格は何ですか?
機械のつり上げ荷重で決まり、1t以上5t未満なら免許か小型移動式クレーン運転技能講習の修了、0.5t以上1t未満なら特別の教育です(クレーン等安全規則 第67条・第68条)。玉掛けは、MC285C-3のカタログが玉掛技能講習修了証を挙げています。
Q3:アウトリガーを全部張り出せないときはどうすればいいですか?
第70条の5のただし書に頼れるのは、現場の事情で最大まで張れず、かつ、その張り出し幅での定格荷重より荷が確実に軽いと見込めるときだけです(クレーン等安全規則 第70条の5)。MC285C-3なら「最大張出時以外」の表で荷の重さと半径を確かめます。
