- ラフタークレーンって、他の移動式クレーンと何が違うの?
- 「25t」って、25tまでならどこでも吊れるって意味じゃないの?
- 能力表をもらったけど、縦と横のどこを見ればいいのか分からない
- フックや吊り具の重さって、吊り荷の重さに足すの?
- 25tと50t、どっちを呼べばいいか自分で決めたい
- アウトリガーを全部張り出せない狭い現場はどうすればいい?
- 自分は運転しないけど、オペさんに要る資格くらいは知っておきたい
上記の様な悩みを解決します。
ラフタークレーンは、1台の車両で走行もクレーン作業もできる移動式クレーンです。「25t」は、タダノGR-250N(Ⅴ)のデータシートで、アウトリガ最大張出・9.35mブーム・8本掛、作業半径3.5m以内のときの定格総荷重で、どの距離でも25t吊れる意味ではありません。同じ条件で半径4.0mは23.50t、5.0mは19.60tと下がり、この値にはフックやつり具の質量も含まれています。
ラフタークレーンは、鉄骨や設備機器の揚重で元請の担当者が手配する機会の多い重機です。ところが検索すると、出てくるのは求人、中古車の売り物、メーカーの製品ページ、労災事例ばかりで、手配する側が「何tを呼べば足りるのか」「どこに据えるのか」を判断する手順はほとんど書かれていないんですよね。今回は定義・25tと50tの能力・資格といった基本を押さえた上で、製品ページでは数字だけになりがちな「定格総荷重表の読み方(フック質量込み・半径と張出幅で下がる)」と、クレーン等安全規則の転倒防止の条文を「据付位置を決める順番」に並べ直した手順まで、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、クレーン会社に「何t要りますか」と聞かれて詰まった方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
ラフタークレーンとは?1台で走ってそのまま吊れる移動式クレーン
ラフタークレーン(ラフテレーンクレーン)とは、結論「1台の車両で走行とクレーン作業の両方を行う移動式クレーン」のことです。25t・50tといった呼び方は最大つり上げ能力を表していて、「25tまでならどの位置でも吊れる」という意味ではありません。どこまで吊れるかは、後で説明する定格総荷重表で決まります。
タダノの製品情報では、この種類のクレーンは「ラフテレーンクレーン」という区分で載っています(タダノ 製品情報 ラフテレーンクレーン一覧、2026年10月18日確認)。「ラフタークレーン」という言葉は今回確認したタダノの資料には出てこないので、この記事では、現場や検索でそう呼ばれる車種として、この区分の機種(GR-250N、GR-500N)を例にします。
英語の Rough Terrain は「荒れた地面・不整地」を指す言葉ですが、「ラフター」という呼び名の由来を言い切れる資料は見つからなかったので、ここでは断定しません。現場の呼び名とメーカー資料の区分名が違う、とだけ押さえておけば手配で困りません。
他の移動式クレーンとの違いを一般的な説明の範囲で言うと、トラッククレーンが走行用の運転室とクレーン操作用の運転室を分けて持つのに対して、ラフタークレーンは1つの運転室で走行とクレーン操作をこなすつくりが一般的です。とはいえ、現場に合う機種は名前ではなく、定格総荷重表と据付条件で決まります。移動式クレーンのうち、つり上げ荷重の小さい機種については小型移動式クレーンの解説で整理しています。
25t・50tの能力と車体の大きさ|タダノ2機種の資料で並べる
25tと50tの違いを、タダノの2機種の資料で並べてみます。25t級はGR-250N、50t級はGR-500Nです。数値と単位はメーカー資料のとおりです。
| 項目 | GR-250N(25t級) | GR-500N(50t級) |
|---|---|---|
| 最大つり上げ能力 | 9.35mブーム 25,000kg × 3.5m(8本掛) | 9.6 mブーム 50,000 kg × 2.3 m(6本掛×2) |
| 最大地上揚程 | ブーム 31.3m/ジブ 44.2m | ブーム 38.1 m/ジブ 55.7 m |
| 最大作業半径 | ブーム 27.9m/ジブ 34.0m | ブーム 33.0 m/ジブ 38.0 m(標準性能)、39.0 m(前方特別性能) |
| ブーム長さ | 9.35m~30.5m(4段ブーム) | 9.6 m~37.0 m(5段ブーム) |
| アウトリガ最大張出幅 | 6.6m | 7.0 m |
| 全長 | 11,530mm | 12,600 mm |
| 全幅 | 2,620mm | 2,780 mm |
| 全高 | 3,475mm | 3,745 mm |
| 車両総重量 | 25,495kg | 35,795 kg |
表の出典は、GR-250Nがタダノ GR-250N 製品ページ(主要諸元)とGR-250N (Ⅴ) データシート(2025年版)、GR-500Nがタダノ ラフテレーンクレーン GR-500N型 仕様書(スペック番号 GR-500N-2-00101、2015年版)です。GR-500Nは、タダノ公式の国内ラフテレーンクレーン一覧(2026年10月18日確認)には載っておらず、ここで使った数値は2015年版の仕様書の値です。実際に手配する機種の数値は、クレーン会社からその機種の資料をもらって確認します。
表を見るときに気をつけたいのが、最大つり上げ能力の条件です。GR-250Nは「9.35mブーム 25,000kg × 3.5m(8本掛)」、GR-500Nは「9.6 mブーム 50,000 kg × 2.3 m(6本掛×2)」で、ブームの長さも作業半径も掛け本数も違います(タダノ GR-250N (Ⅴ) データシート 2025年版/GR-500N型 仕様書 2015年版)。「50tは25tの2倍吊れる」と同じ条件で比べたように読むと判断を誤ります。どちらで足りるかは、次の章の定格総荷重表で、必要な作業半径の欄を見て決めます。
車体の大きさは、全長・全幅・全高・車両総重量のどれもGR-500Nのほうが大きくなっています。全幅は2,620mmと2,780mm、車両総重量は25,495kgと35,795kgです(同上)。搬入路に余裕がない現場では、能力だけで50t級を選ぶと「吊れるけれど入れない」が起こりえます。能力表より先に、搬入路の図面に両機種の全長・全幅を当ててみる順番がおすすめです。
定格総荷重表の読み方|「25t」が成り立つのは9.35mブーム・半径3.5m以内
能力表(定格総荷重表)は、作業半径とブームの長さの組み合わせごとに、吊ってよい重さを並べた表です。結論から言うと、「25t」はGR-250Nが9.35mブーム・8本掛・アウトリガ最大張出で作業半径3.5m以内のときの定格総荷重で、半径が延びれば同じブームでも値は下がります(タダノ GR-250N (Ⅴ) データシート 2025年版)。ここを押さえると、「25tで足りますか」という問いに自分で答えられるようになります。
同じ9.35mブームでも、半径が延びると値は下がる
GR-250Nのデータシートの「ブーム定格総荷重表」から、アウトリガ最大張出6.6m・360°・9.35mブームの欄を抜き出すと、次のとおりです(タダノ GR-250N (Ⅴ) データシート 2025年版 ブーム定格総荷重表)。
| 作業半径 | 定格総荷重(9.35mブーム・アウトリガ最大張出6.6m・360°) |
|---|---|
| 2.5m | 25.00t |
| 3.0m | 25.00t |
| 3.5m | 25.00t |
| 4.0m | 23.50t |
| 4.5m | 21.50t |
| 5.0m | 19.60t |
| 5.5m | 17.80t |
| 6.0m | 16.30t |
| 6.5m | 15.10t |
2.5m・3.0m・3.5mは25.00tで並んでいて、4.0mで23.50tに下がります(同データシート)。つまりデータシートの「25,000kg × 3.5m」の3.5mは、25tが保たれる一番遠い作業半径です。「3.5mの位置でだけ25t吊れる」という意味でも、「3.5m先まではどんな条件でも25t」という意味でもありません。6.5mまで延びると15.10tで、「25tのラフター」と呼ばれる機種でも、半径6.5mの欄の値は15.10tになる、というのが能力表の感覚です。
表の値が何で決まっているかは、データシートの注意事項に書かれています。表の太線より上はクレーンの強度によって、下はクレーンの安定度によって定められています(タダノ GR-250N (Ⅴ) データシート 2025年版 定格総荷重表注意事項1)。表の値は、強度で決まる欄と、倒れにくさ(安定度)で決まる欄に分かれている、と押さえておくと、能力表が単純な足し算や引き算では読めないことが分かります。
アウトリガの張出幅でも値は変わる
同じ9.35mブームでも、アウトリガ張出3.6m(中間)の表では、作業半径3.5mで20.00t、作業半径4.0mで15.40tです(タダノ GR-250N (Ⅴ) データシート 2025年版)。最大張出6.6mのときの作業半径3.5mで25.00t、4.0mで23.50tと比べると、張出幅が狭いだけで表の値がはっきり下がることが分かります。データシートの注意事項にも、側方域でのつり上げ性能はアウトリガ張出幅によって異なり、張出幅に応じた性能で作業するようにと書かれています(同データシート 定格総荷重表注意事項7)。狭い現場ほど、最大張出の表だけを見て安心しないことが大切です。
ブーム長さごとの最大能力は「別の4つの最大値」
データシートの「クレーン容量」には、ブームの長さごとの最大能力が書かれています(タダノ GR-250N (Ⅴ) データシート 2025年版 クレーン容量)。
| ブーム長さ | 最大能力(定格総荷重 × 作業半径・掛け本数) |
|---|---|
| 9.35m | 25,000kg × 3.5m(8本掛) |
| 16.4m | 18,000kg × 5.0m(6本掛) |
| 23.45m | 12,500kg × 6.0m(4本掛) |
| 30.5m | 8,000kg × 9.0m(4本掛) |
この4つは、同じブームが半径によって下がっていく様子を並べたものではありません。ブームの長さが違う4つの最大値です(同データシート)。ブームを長くするほど最大値は小さくなり、一緒に書かれている作業半径は3.5m・5.0m・6.0m・9.0mと広がっていきます。高い位置や遠い位置へ吊るためにブームを伸ばすと、短いブームで近くを吊るときほどの重さは扱えない、と覚えておくと表の見え方が変わります。表に無い半径やブーム長さの値を、前後の数字から間を取って推定するのはやめておきましょう。必要な条件の欄は、クレーン会社に出してもらうのが確実です。「この半径とこのブーム長さの欄を見せてください」と頼めば、話はそれだけで具体的になります。
データシートの注意事項で押さえる4点
能力表の数字だけを抜き出すと、注意事項に書かれた前提が抜け落ちます。GR-250Nのデータシートの注意事項から、手配する側が押さえておきたいのは次の4点です(タダノ GR-250N (Ⅴ) データシート 2025年版 定格総荷重表注意事項【アウトリガ使用時】)。
- 定格総荷重は、ブーム作業時はつり具と主巻フック質量(220kg)を、ジブ作業時はつり具と補巻フック質量(60kg)を含んだ値。水平堅土上でクレーンを水平に設置した状態での値でもある(注意事項1)
- 作業半径は、ブームとジブのたわみを含んだ実際の値なので、作業時は必ず作業半径を基準にする(注意事項2)
- 表の太線より上はクレーンの強度、下はクレーンの安定度によって定められている(注意事項1)
- 側方域でのつり上げ性能は、アウトリガ張出幅によって異なる(注意事項7)
1つ目が「フックや吊り具の重さは足すの?」への答えです。表の値はつり具と主巻フックの質量(ブーム作業時220kg)を含んでいるので、吊り荷の重さだけで表と比べるのではなく、フックとつり具を足した重さで比べます(同データシート 注意事項1)。ただし、玉掛けワイヤーやシャックルが注記の「つり具」にどこまで含まれるかは、注記には書かれていません。ここは断定せず、手配のときにクレーン会社へ確認しておくのが安全です。フックや玉掛け用具そのものの基本は玉掛けの基本をまとめた記事で押さえられます。
作業半径は、一般にクレーンの旋回の中心から吊り荷(フック)までの水平の距離として扱われます。注意事項2のとおり、データシートの作業半径はブームのたわみを含んだ実際の値です(同データシート 注意事項2)。図面上のブーム角度から計算した距離ではなく、実際の作業半径で表を見る、というのが注記の意味です。
条文の「定格荷重」とデータシートの「定格総荷重」は別の言葉
クレーン等安全規則 第1条第6号では、移動式クレーンの「定格荷重」を、構造やブームの傾斜角・長さなどに応じて負荷させることができる最大の荷重から「フツク、グラブバケツト等のつり具の重量に相当する荷重を控除した荷重」と定めています(クレーン等安全規則 第1条第6号)。一方、データシートの「定格総荷重」は、つり具と主巻フックの質量を含んだ値です。名前が似ていても、フックの質量が入っているかどうかが逆の、別の言葉です。
第69条は、移動式クレーンに「その定格荷重をこえる荷重をかけて使用してはならない」と定めています(クレーン等安全規則 第69条)。条文を読むときと能力表を読むときで、フックやつり具の扱いが違う、という点を頭に置いておくと、打ち合わせで言葉が食い違ったときにすぐ気づけます。
25tで足りるかを決める読み順
手配の前に能力表を読むときは、次の順番で見ると迷いません。まず、吊り荷の質量にフックとつり具の質量を足します。次に、据付位置から吊り上げる位置・下ろす位置までの作業半径のうち、一番遠いものを出します。その半径に届くブームの長さを決め、アウトリガをどこまで張り出せるかも決めたうえで、該当する欄の定格総荷重が、さきほど足した重さを上回っているかを確かめます。25t級で足りなければ、同じ手順を50t級の表でやり直す、という流れです。この読み順をクレーン会社との最初の打ち合わせでそのまま確認していくと、機種選定の話が進めやすくなります。
据付位置の決め方|地盤・埋設物・アウトリガーを条文の順に確認する
据付位置は、クレーン等安全規則の転倒防止に関する4つの条文を順番に当てはめていくと決めやすくなります。条文の主語はいずれも「事業者」で、元請・クレーン会社・協力会社のうち誰がどこまで担うかは、条文には書かれていません。だからこそ、手配の段階で「誰が何を確認するか」を現場ごとに決めておく必要があります。
手順1:場所・荷・クレーンを考慮して3つの事項を定め、周知する(第66条の2)
第66条の2は、移動式クレーンを用いて作業を行うときに、あらかじめ、作業に係る場所の広さ、地形及び地質の状態、運搬しようとする荷の重量、使用する移動式クレーンの種類及び能力等を考慮して、「移動式クレーンによる作業の方法」「移動式クレーンの転倒を防止するための方法」「移動式クレーンによる作業に係る労働者の配置及び指揮の系統」の3つを定めるよう求めています。さらに、定めた事項は作業の開始前に関係労働者へ周知しなければなりません(クレーン等安全規則 第66条の2)。条文が求めているのは「定めて、周知する」ことまでで、書面の形式は条文には書かれていません。
据付位置を考えるうえでは、この条文が挙げる「場所の広さ、地形及び地質の状態」「荷の重量」「移動式クレーンの種類及び能力」が、そのまま確認の出発点になります。前の章で能力表から決めた作業半径とアウトリガ張出幅は、ここでいう「能力」の確認そのものです。
手順2:軟弱な地盤や埋設物の上でないかを確かめる(第70条の3)
第70条の3は、地盤が軟弱であること、埋設物その他地下に存する工作物が損壊するおそれがあること等により移動式クレーンが転倒するおそれのある場所では、移動式クレーンを用いて作業を行ってはならないと定めています。ただし、その場所に、移動式クレーンの転倒を防止するため必要な広さ及び強度を有する鉄板等が敷設され、その上に移動式クレーンを設置しているときは、この限りでないとされています(クレーン等安全規則 第70条の3)。
「埋設管の上に据えてはダメ」と言われるのは、埋設物が損壊するおそれがあって移動式クレーンが転倒するおそれのある場所に当たる場合がある、というこの条文の話です。ただし書きは「鉄板を敷けば可」という単純な話ではなく、「必要な広さ」「必要な強度」「その上に設置している」の3つがそろって初めて例外になります(同条)。鉄板の枚数や厚さは条文にもメーカー資料にも書かれていないので、この記事では数字を出しません。地盤が軟らかいかどうか、鉄板等で足りるかどうかは、地盤や埋設物の資料をもとにクレーン会社と詰めるのが現実的です。地盤が軟らかいかの見方は軟弱地盤の見分け方と対策にまとめています。
手順3:鉄板等の上で、倒れない位置にアウトリガーを置く(第70条の4)
第70条の4は、前条ただし書の場合、つまり鉄板等を敷いてその上に移動式クレーンを設置する場合に、アウトリガーを使用する移動式クレーンを用いて作業を行うときは、アウトリガーを当該鉄板等の上で移動式クレーンが転倒するおそれのない位置に設置しなければならないと定めています(クレーン等安全規則 第70条の4)。この条文は、鉄板等を使う場合の規定です。鉄板を敷くと決めたら、敷く範囲だけでなく、アウトリガーをその上のどこに置くかまで含めて決めておく、という順番になります。
データシートには、アウトリガーまわりの数字として「最大ジャッキ反力(作業時最大路面荷重)ブーム 26.9t/ジブ 17.8t」という欄もあります(タダノ GR-250N (Ⅴ) データシート 2025年版)。ただ、この値から地盤の可否や鉄板の枚数を割り出す方法はデータシートに書かれていないので、この記事ではこの値を計算には使いません。資料にこういう欄がある、と知っておくくらいで十分です。
手順4:アウトリガーは最大限に張り出す。例外は条件つき(第70条の5)
第70条の5は、アウトリガーを有する移動式クレーンを用いて作業を行うときは、アウトリガーを最大限に張り出さなければならないと定めています。ただし、アウトリガーを最大限に張り出すことができない場合であって、その移動式クレーンに掛ける荷重が、アウトリガーの張り出し幅に応じた定格荷重を下回ることが確実に見込まれるときは、この限りでないとされています(クレーン等安全規則 第70条の5)。
読み違えやすいのは3点です。原則は「最大限に張り出す」で、例外は「最大限に張り出すことができない場合」に限られること。基準になるのは最大張出のときの値ではなく、実際の張り出し幅に応じた定格荷重であること。そして、掛ける荷重がそれを「下回ることが確実に見込まれる」ことが条件で、「たぶん大丈夫」では足りないことです(同条)。
前の章で見たように、GR-250Nの9.35mブーム・作業半径3.5mの欄は、アウトリガ最大張出6.6mで25.00t、張出3.6m(中間)で20.00tでした(タダノ GR-250N (Ⅴ) データシート 2025年版)。条文の「定格荷重」はつり具の質量を控除した値、データシートの値はつり具と主巻フックの質量を含んだ「定格総荷重」なので、そのまま同じ物差しではありません。それでも、張り出せる幅が狭くなるだけで見るべき表が変わり、値も下がる、という感覚は、狭い現場の据付位置を決めるうえで欠かせません。張り出せる幅を先に決めてから、その幅の表で足りるかを確かめる順番が安全側です。
4つの条文を据付位置の決め方として並べ直すと
ここまでをまとめると、据付位置は次の順で絞り込んでいけます。まず第66条の2が挙げる項目(場所の広さ・地形・地質、荷の重量、クレーンの種類と能力)を集めます。次に第70条の3で、候補の場所が軟弱な地盤や埋設物の上でないかを確かめ、該当するなら必要な広さと強度の鉄板等を敷いてその上に設置できるかを検討します。鉄板等を使うなら第70条の4で、アウトリガーを鉄板等の上のどこに置くかまで決めます。そして第70条の5で、アウトリガーを最大限に張り出せるかを確かめ、張り出せないなら張り出し幅に応じた能力で荷重が確実に下回るかを見ます。最後に、決めた内容を第66条の2の3事項として定め、作業の開始前に関係労働者へ周知します。
この順番で見ると、「アウトリガーを全部張り出せない」「埋設管がある」「地盤が軟らかいかもしれない」といった現場の悩みが、それぞれどの条文のどの条件の話なのかがはっきりします。張り出せないなら第70条の5の例外の条件を満たせるか、埋設物があるなら第70条の3のただし書きと第70条の4で対応できるか、という形で、協力会社やクレーン会社と同じ言葉で話せるようになります。
据付位置は「空いている場所」から選ぶものではなく、この順番で条件を消していった結果として残る場所、と捉えると整理しやすくなります。協力会社との認識がずれるのは、この順番のどこかを飛ばして「とりあえずここで」と決めてしまうときではないでしょうか。
運転の資格と、作業中に人を入れない範囲
移動式クレーンの運転に必要な資格は、つり上げ荷重で3つに分かれます。つり上げ荷重1トン以上の移動式クレーンの運転(道路上を走行させる運転を除く)は就業制限の業務で(労働安全衛生法施行令 第20条第7号)、移動式クレーン運転士免許を受けた者でなければ就かせてはなりません。ただし1トン以上5トン未満の小型移動式クレーンは、小型移動式クレーン運転技能講習の修了者を就かせることができます(クレーン等安全規則 第68条)。1トン未満は特別の教育の対象です(クレーン等安全規則 第67条)。
| つり上げ荷重 | 運転の業務に就くために必要なもの | 根拠 |
|---|---|---|
| 1トン未満 | 特別の教育 | クレーン等安全規則 第67条 |
| 1トン以上5トン未満(小型移動式クレーン) | 移動式クレーン運転士免許、または小型移動式クレーン運転技能講習の修了 | クレーン等安全規則 第68条ただし書 |
| 5トン以上 | 移動式クレーン運転士免許 | 労働安全衛生法施行令 第20条第7号/クレーン等安全規則 第68条 |
令第20条第7号と第67条には、どちらも「道路上を走行させる運転を除く」という括弧書きがあり(労働安全衛生法施行令 第20条第7号/クレーン等安全規則 第67条)、この表はクレーンとしての運転の話です。
GR-250NとGR-500Nの資料に書かれている語は「最大つり上げ能力」で、法令の「つり上げ荷重」という語ではありません。そのうえで、最大つり上げ能力が25,000kg・50,000kgであることから(タダノ GR-250N 製品ページ/GR-500N型 仕様書 2015年版)、この記事では25t・50t級のラフターは5トン以上、つまり移動式クレーン運転士免許の区分に当たると読んでいます。資格の取り方や種類の比較はクレーンの資格の記事が詳しいです。
合図を行う者を指名する(第71条)
第71条は、移動式クレーンを用いて作業を行うときは、移動式クレーンの運転について一定の合図を定め、合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせなければならないと定めています。ただし、運転者に単独で作業を行わせるときは、この限りでないとされています。作業に従事する労働者は、その合図に従わなければなりません(クレーン等安全規則 第71条)。合図者は、第66条の2の「労働者の配置及び指揮の系統」を定める段階で一緒に決めておくと漏れません。合図と玉掛けの動きは玉掛けの実技の流れで具体的に追えます。
旋回範囲とつり荷の下に人を入れない(第74条・第74条の2)
第74条は、作業従事者が移動式クレーンの上部旋回体と接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所に立ち入ることについて、禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により禁止しなければならないと定めています(クレーン等安全規則 第74条)。表示だけで終わらせず、範囲を区切る方法も組み合わせるのが現実的です。
つり荷の下は、第74条の2が、次のいずれかに当たるときに、つり上げられている荷(第6号の場合はつり具を含む)の下への立入りを禁止するよう定めています(クレーン等安全規則 第74条の2)。
- ハッカーを用いて玉掛けをした荷がつり上げられているとき
- つりクランプ1個を用いて玉掛けをした荷がつり上げられているとき
- ワイヤロープ等を用いて1箇所に玉掛けをした荷がつり上げられているとき(荷に設けられた穴やアイボルトにワイヤロープ等を通して玉掛けをしている場合を除く)
- 複数の荷が一度につり上げられていて、結束や箱詰めなどで固定されていないとき
- 磁力または陰圧で吸着させるつり具・玉掛用具を用いて玉掛けをした荷がつり上げられているとき
- 動力下降以外の方法で荷またはつり具を下降させるとき
「今の吊り方は何号か」を現場で判定するより、吊り荷の下には入らないと最初から決めるほうが、KYの指示も通りやすくなります。
公道を走らせるときの車種区分
道路交通法施行規則 第2条の表では、大型特殊自動車の欄に「ホイール・クレーン」が挙げられています(道路交通法施行規則 第2条)。また、GR-500Nの仕様書の見出しは「GR-500N 型 50ton ホイールクレーン」です(タダノ GR-500N型 仕様書 2015年版)。ただ、この表に「ラフタークレーン」「ラフテレーンクレーン」の語は無く、免許の種類を定めた条文も確認できていないので、公道走行に要る免許はここでは断定しません。回送の運転手と免許はクレーン会社に確認します。
クレーン会社へ手配するときに現場側でそろえておく情報
「何tを何日に」と頼むだけでは、機種も据付位置も決まりません。手配の前に現場側でそろえておきたい情報は次の6つです。
- 吊り荷の質量と寸法、吊り点の位置(フックとつり具を足した重さで能力表と比べるため)
- 据付位置から、吊り上げる位置・下ろす位置までの距離(必要な作業半径とブーム長さを決めるため)
- 搬入路の幅・曲がり角・高さの制約と、据付位置までのルート
- 据付位置の地盤の状態と、埋設物・地下の工作物の有無
- アウトリガーを最大限に張り出せるか、張り出せないならどこまで張り出せるか
- 第66条の2で定めて周知する3事項(作業の方法・転倒を防止するための方法・労働者の配置と指揮の系統)を、誰がいつ関係者に伝えるか
上の2つが「25tか50tか」、3つ目が「入れるか」、4つ目と5つ目が「どこに据えるか」の材料です。搬入路を仮設の道路として計画する場合の考え方は仮設道路の計画の記事で整理しています。
最後の1つは、気になりやすい「作業計画書に何を書く?」への答えでもあります。第66条の2が求めているのは、特定の書面を作ることではなく、3つの事項を定めて作業の開始前に関係労働者へ周知することです(クレーン等安全規則 第66条の2)。社内の様式に落とす場合も、この3事項が抜けていないかを見る、という使い方が合っています。
僕の見立てでは、この6つを1枚のメモにまとめて最初の問い合わせで渡すだけで、クレーン会社からの「で、半径は何mですか」という聞き返しは減らしやすくなります。
ラフタークレーンに関する情報まとめ
- ラフタークレーンとは:1台で走行とクレーン作業を行う移動式クレーン(タダノの区分名はラフテレーンクレーン)
- 25tと50tの比較:最大つり上げ能力の条件が違うので同条件の比較として読まない。車体は50t級が大きい
- 能力表の読み方:25tは9.35mブーム・8本掛・アウトリガ最大張出で半径3.5m以内の定格総荷重。フック・つり具込みで、半径と張出幅で下がる
- 据付位置の決め方:第66条の2→第70条の3→第70条の4→第70条の5の順に当てはめる。アウトリガーは最大限に張り出すのが原則
- 資格と立入禁止:5トン以上は移動式クレーン運転士免許。合図者を指名し、旋回範囲とつり荷の下に人を入れない
- 手配の準備:吊り荷・作業半径・搬入路・地盤と埋設物・張出幅・第66条の2の3事項をそろえて渡す
以上がラフタークレーンに関する情報のまとめです。
ラフタークレーンの手配は、「何tを呼ぶか」を決める前に、「どこに据えて、何m先へ、何tを、どの張出幅で吊るか」を決める仕事です。能力表は答え合わせの道具、条文は据付位置を絞り込む順番の道具と捉えると、打ち合わせで受け身にならずに済みます。次の揚重では、吊り荷の重さと一番遠い作業半径だけでも自分で出してから電話してみてください。
25tのラフターで何t吊れますか?
作業半径とブーム長さ、アウトリガ張出幅で変わります。GR-250Nの9.35mブーム・アウトリガ最大張出6.6mの欄では、半径3.5m以内で25.00t、5.0mで19.60t、6.5mで15.10tです(タダノ GR-250N (Ⅴ) データシート 2025年版)。値はつり具と主巻フックの質量込みです。
ラフタークレーンの運転に必要な資格は?
つり上げ荷重5トン以上の移動式クレーンの運転は、移動式クレーン運転士免許の区分です(労働安全衛生法施行令 第20条第7号/クレーン等安全規則 第68条)。25t・50t級は、最大つり上げ能力からこの区分に当たると読めます。
アウトリガーを最大限に張り出せないときは?
原則は最大限に張り出します。例外は、最大限に張り出すことができない場合であって、掛ける荷重が張り出し幅に応じた定格荷重を下回ることが確実に見込まれるときに限られます(クレーン等安全規則 第70条の5)。
