- クレーンって全部で何種類あるの?名前が多すぎて整理できない
- 移動式クレーンと、据え付けて使うクレーンは何が違う?
- デリックって何?クレーンの仲間なの?
- ラフタークレーンって、法令では何という名前になってる?
- トラッククレーンとラフターの違いを説明できない
- ユニック(積載形トラッククレーン)もクレーンに入る?
- タワークレーンや天井クレーンは法令上どの種類?
- 何トンから設置届や検査証が要るの?
- 運転資格はクレーンの種類で変わる?
- 機種を選ぶとき、作業計画で何を決めればいい?
上記の様な悩みを解決します。
クレーンの種類は、法令ではまず「クレーン」「移動式クレーン」「デリック」の3つに分かれます。クレーン等安全規則もこの3つで章を分けていて、移動式クレーンは原動機を内蔵し不特定の場所へ移動できるクレーン、それ以外のクレーンには天井クレーン・ジブクレーン・橋形クレーンなどがあります。どれに当たるかとつり上げ荷重の大きさで、必要な手続きと運転資格が変わります。
クレーンは、揚重計画の打合せで毎回のように名前が出てくるのに、ラフター・クローラ・ユニック・タワーといった呼び名と、作業計画書や届出で使う名前がずれていて混乱しやすい機械です。検索して出てくる解説も、レンタル会社や買取業者のコラムが多く、現場の通称で「固定式と移動式の2種類」に分ける説明がほとんどで、今回見た上位のページには法令の名前で種類を並べたものが見当たりませんでした。今回は種類の一覧・移動式クレーンの違い・運転資格といった基本を押さえた上で、通称の分類記事では抜けがちな「法令上の3区分」「クレーン等安全規則の別表にある正式な種類名」「通称と法令の名前の対応」「つり上げ荷重の何トンで手続きが変わるか」まで、条文と厚生労働省の講習教材を出典にして整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、施工計画書の機種欄を自分で書けるようになりたい方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
クレーンの種類は法令だと3つ|クレーン・移動式クレーン・デリック
クレーンの種類とは、結論、法令の上では「クレーン」「移動式クレーン」「デリック」の3つです。現場で使う細かい機種名(天井クレーン、トラッククレーン、クローラクレーンなど)は、まずこの3つのどれに当たるかを考えると整理しやすくなります。
いちばん分かりやすい根拠は、クレーン等安全規則(クレーン則)の章立てです。目次は「第二章 クレーン/第三章 移動式クレーン/第四章 デリツク」と3つに分かれていて、どの章にも「製造及び設置」「使用及び就業」「定期自主検査等」「性能検査」「変更、休止、廃止等」の節が置かれています(クレーン等安全規則 目次、2026年4月1日施行版)。どの章に入るかで、読むべき条文がまるごと入れ替わるわけです(原文は「デリツク」「デリック」の表記が混在)。
同じ3つは、労働安全衛生法の別表第一にも「三 クレーン/四 移動式クレーン/五 デリック」と並んでいます。ただしこの表は種類の定義ではなく、法第37条第1項で「特に危険な作業を必要とする機械等として別表第一に掲げるもので、政令で定めるもの(以下「特定機械等」という。)」とされる、製造許可の対象(特定機械等)の元になる一覧です(労働安全衛生法 第37条第1項・別表第一)。
移動式クレーンだけは政令に定義がある
3つのうち、言葉の定義が条文にあるのは移動式クレーンだけです。労働安全衛生法施行令第1条第8号は、移動式クレーンを「原動機を内蔵し、かつ、不特定の場所に移動させることができるクレーンをいう。」と定めています(労働安全衛生法施行令 第1条第8号、2026年10月1日施行版)。
一方で「クレーン」と「デリック」を定義する文は、法・施行令・クレーン則・構造規格2本の全文を検索しても見当たりません。手がかりになるのは、厚生労働省が公開している床上操作式クレーン運転技能講習の補助テキストで、テキストは「クレーンとは,動力を用いて荷をつり上げ(人力によるものは含まない),及びこれを水平に運搬する(人力によるものも含む)ことを目的とする機械装置のうち,移動式クレーン及びデリックを除いたもの」と説明しています(厚生労働省 技能講習補助教材 床上操作式クレーン運転技能講習 補助テキスト 第1章2)。これは講習の教材の文で、条文ではない点に注意してください。
「固定式クレーン」は法令の言葉ではない
よく見る「固定式クレーン」という言い方は、法・施行令・クレーン則・構造規格2本・厚労省の補助テキスト2本のどこにも出てきません(全文検索で0件)。法令の側は、施行令第10条第1号やクレーン則第1条第6号の括弧書きで「クレーン(移動式クレーンを除く。以下同じ。)」と書き、移動式と分けたものを単に「クレーン」と呼んでいます。
しかもこの法令上の「クレーン」には、レールの上を走る走行クレーンも含まれます。クレーン則第5条は設置届の添付書面に「走行クレーンにあつては、走行する範囲」を挙げていて、クレーン構造規格(平成7年労働省告示第134号)第39条第2項にも走行クレーンの緩衝装置の規定があります。「固定式=据え付けて動かないもの」と覚えると走行するクレーンの扱いで迷うので、法令の区分は「移動式か、そうでないか(とデリック)」で覚えるのが安全です。
移動式ではない「クレーン」の種類|別表の名前で見る天井・ジブ・橋形ほか
法令上の「クレーン」の種類名は、クレーン則の別表にまとまっています。この別表は、第5条の設置届に添える強度計算書について「別表の上欄に掲げるクレーンの種類に応じてそれぞれ同表の下欄に掲げる構造部分」と引用される表で、種類ごとにどの部分の強度を計算するかが決まっています。種類名と構造部分を、原文の行のまとまりのまま並べると次のとおりです(クレーン等安全規則 別表)。
| 大きな種類 | 別表の種類名(原文の行のまま) | 強度計算書を付ける構造部分 |
|---|---|---|
| 天井クレーン | 旋回マントロリ式天井クレーン | クレーンガーダ及びジブ |
| 天井クレーン | すべり出し式天井クレーン | クレーンガーダ及びすべり出しけた |
| 天井クレーン | 旋回マントロリ式天井クレーン及びすべり出し式天井クレーン以外の天井クレーン | クレーンガーダ |
| ジブクレーン | つち形クレーン又は塔形ジブクレーン | ジブ、塔及び脚 |
| ジブクレーン | ポスト形ジブクレーン | ジブ及びポスト |
| ジブクレーン | 低床ジブクレーン又は壁クレーン | ジブ |
| ジブクレーン | 高脚ジブクレーン、片脚ジブクレーン又は引込みクレーン | ジブ、架構及び脚 |
| 橋形クレーン | ジブクレーン式橋形クレーン、引込みクレーン式橋形クレーン又は旋回マントロリ式橋形クレーン | クレーンガーダ、カンチレバ、脚及びジブ |
| 橋形クレーン | ジブクレーン式橋形クレーン、引込みクレーン式橋形クレーン及び旋回マントロリ式橋形クレーン以外の橋形クレーン | クレーンガーダ、カンチレバ及び脚 |
| アンローダ | 旋回マントロリ式アンローダ又は引込みクレーン式アンローダ | クレーンガーダ、カンチレバ、脚及びジブ |
| アンローダ | 旋回マントロリ式アンローダ及び引込みクレーン式アンローダ以外のアンローダ | クレーンガーダ、カンチレバ及び脚 |
| ケーブルクレーン | (細分なし) | メインロープ、レールロープ、塔、支柱及び控え |
| テルハ | (細分なし) | 走行はり |
表の「大きな種類」の列は別表の列ではなく、別表の行をまとめて見やすくするために付けたこの記事側の整理です。まとめると、天井クレーン・ジブクレーン・橋形クレーン・アンローダ・ケーブルクレーン・テルハの6つになります。「つち形クレーン又は塔形ジブクレーン」のように「又は」でまとめられた行は、構造部分も1つにまとめて書かれているので、表を写すときは行を割らないほうが原文とずれません。
ジブクレーンの意味は定格荷重の定義の中にある
「ジブクレーン」という言葉は、クレーン則第1条第6号の定格荷重の定義の中で「クレーンでジブを有するもの(以下「ジブクレーン」という。)」と定められています。ジブ(腕)があるかどうかで、後で説明する定格荷重の決まり方が変わります。
スタッカー式クレーンは政令に名前が出る
別表には無い名前として、施行令第12条第1項第3号に「スタツカー式クレーン」が出てきます(原文の表記のまま。第13条では「スタッカー式」)。通常のクレーンが3トン以上で特定機械等になるのに対し、スタッカー式は1トン以上で特定機械等になる、という重さの線の違いがあります(労働安全衛生法施行令 第12条第1項第3号)。
タワークレーンは別表のどの名前か
建設現場でよく聞く「タワークレーン」という言葉は、法・施行令・クレーン則・構造規格のどれにも出てきません(全文検索で0件)。別表に「塔形ジブクレーン」という名前はありますが、現場のタワークレーンがすべてこの名前に当たると言い切れる資料は今回確認できなかったので、この記事では対応を断定しません。実際の機種がどの区分で届け出られているかは、設置届やクレーン明細書の種類欄で確認するのが確実です。
種類によって条文が変わる例
種類名を覚える意味は、条文が種類を名指しして書き分けているからです。たとえば天井クレーンや橋形クレーンのように転倒するおそれのないクレーンは、ほかのクレーンと落成検査の中身が違います。クレーン則第6条第2項は、落成検査で「荷重試験及び安定度試験を行なうものとする」としたうえで、ただし書で「天井クレーン、橋形クレーン等転倒するおそれのないクレーンの落成検査においては、荷重試験に限るものとする」と定めています(クレーン等安全規則 第6条第2項)。
点検作業の決まりも種類で変わります。クレーン則第30条の2は、天井クレーンのクレーンガーダの上や、橋形クレーンのクレーンガーダ・カンチレバ・脚の上で点検、補修、塗装等の作業をするとき、不意の起動による墜落や挟まれを防ぐため、事業者にそのクレーンの運転禁止と操作部分への表示を求めています。例外になるのは、作業の指揮者を決めて指揮させ、ガーダ上の作業者と運転者の連絡・合図の方法を決めてそのとおり行わせる場合です(クレーン等安全規則 第30条の2)。天井クレーンの主桁そのものの役割はクレーンガーダの解説で整理しています。
ケーブルクレーンにも専用の条文があり、クレーン則第28条は、巻上げ用・横行用のワイヤロープが通るシーブや取付け部の破損で、ロープが跳ねたりシーブが飛来したりする危険を防ぐため、ワイヤロープの内角側の危険な箇所への立入りを禁止するよう求めています(クレーン等安全規則 第28条)。現場目線で言えば、作業計画で引く条文を探すときは、まず別表の種類名で自分の機械を特定し、その名前で条文を検索するのが近道です。
移動式クレーンの種類|トラック・ホイール・クローラ・鉄道・浮き
揚重の打合せで名前が出るラフター・クローラ・ユニックは、後で見る補助テキストの説明では、いずれもこちらの移動式クレーンの側に入ります。クレーン則の別表は、移動式クレーンの種類を「トラツククレーン、ホイールクレーン、クローラクレーン又は鉄道クレーン」(構造部分=ジブ又は塔)、「浮きクレーン」(ジブ、架構、脚又はガーダ)、それ以外の移動式クレーン(ガーダ、脚又はジブ)の3行で書いています(クレーン等安全規則 別表)。法令の名前としては、トラック・ホイール・クローラ・鉄道・浮きの5つが基本です。
ここで気を付けたいのは、現場でよく使う「ラフテレーンクレーン」「オールテレーンクレーン」「積載形トラッククレーン」という言葉が、施行令・クレーン則・移動式クレーン構造規格の本文には1回も出てこないことです(全文検索で0件)。これらの呼び名と法令の名前をつなぐのは、厚生労働省の小型移動式クレーン運転技能講習の補助テキスト(日本クレーン協会『小型移動式クレーンの運転』令和元年8月1日改訂第2版を基に作成)と、業界団体の資料です。以下、補助テキストの説明を種類ごとに見ていきます。
トラッククレーン|トラックの車体にクレーン装置を載せる
補助テキストは、つり上げ荷重5トン未満のトラッククレーンについて「通常のトラックシャーシを補強して上部旋回体(クレーン装置)を架装したものが多く」、クレーン作業時の安定性を増すためアウトリガーを備えている、と説明しています。同じ段落の続きで、運転室はクレーン操作用と走行用が別々に設けられていること、クレーン装置の動力伝達方式には油圧式と機械式があり、つり上げ荷重5トン未満の移動式クレーンはほとんどが油圧式であることにも触れています(小型移動式クレーン運転技能講習 補助テキスト 1.2.1(1))。この説明は5トン未満の機種を前提にした段落の中の文なので、大型のトラッククレーンにまで広げて読まないほうが正確です。
積載形トラッククレーン|荷台と運転室の間に小型のクレーン装置
現場でユニックと呼ばれることがあるのが、積載形トラッククレーンです。補助テキストは、トラックの荷台と運転室の間などに小型のクレーン装置を搭載し、走行用の原動機(エンジン)から動力を取り出してクレーン装置を動かすもので、「つり上げ荷重が3トン未満の機種が多い」と説明しています。ジブの形はストレートジブと屈曲ジブの2種類です(同 1.2.1(2))。補助テキストはこれをトラッククレーンの項目の中で扱っていて、床上操作式の補助テキストも、移動式クレーンの例として積載形トラッククレーンを挙げています(床上操作式クレーン運転技能講習 補助テキスト 第1章2.1)。3トン未満が「多い」という書き方なので、3トン以上の機種が無いという意味ではありません。
ホイールクレーン|一つの運転室・一つの原動機で走ってつる
ホイールクレーンは、専用の台車に上部旋回体(クレーン装置)を架装し、一つの運転室、一つの原動機で走行とクレーン操作が行えるクレーンです。走行車輪には四輪式と三輪式(前二輪、後一輪)があり、安定性を増すためにアウトリガーを装備したものが多いが、少数ながら前輪タイヤの外側に鉄輪を装備し、荷をつり上げたとき鉄輪が接地して安定を増す構造のものもある、とされています(小型移動式クレーン運転技能講習 補助テキスト 1.2.2(1))。補助テキストの説明どうしを並べると、ホイールクレーンは一つの運転室・一つの原動機で走行とクレーン操作を行い、5トン未満のトラッククレーンは運転室がクレーン操作用と走行用で別々、という違いがあります。
ラフテレーンクレーン|分類ではホイールクレーンに含まれる
現場で「ラフター」とも呼ばれるラフテレーンクレーンについて、補助テキストは「一つの運転室で走行とクレーン操作が行える自走式クレーンで、分類ではホイールクレーンに含まれる」と書いています。大型タイヤを装備し、全輪駆動によって不整地や比較的軟弱な地盤でも走行できるほか、四種類の操向方式(前2輪操向、後2輪操向、4輪操向、かに操向)を備えているので、狭あい地での機動性にも優れる、という説明です(同 1.2.2(2))。
つまり、技能講習の補助テキストの分類に沿えば、ラフテレーンクレーンは「ホイールクレーン」に含まれることになります。通称と法令の名前の対応がいちばんずれやすいのがこの機種なので、ここだけは押さえておくと打合せで迷いません。定格総荷重表の読み方や据付位置の決め方はラフタークレーンの能力表の読み方で詳しく扱っています。
クローラクレーン|接地面積が広く、軟弱な場所でも走れる
クローラクレーンは、走行用にクローラ(履帯)を装備した走行フレームに上部旋回体を架装したもので、接地面積がタイヤより広く、不整地や軟弱な場所でも走行できる、と補助テキストは説明しています。小型のクローラクレーンには安定性を増すためアウトリガーを装備している機種もあり、通称ミニクローラクレーンと呼ばれています(同 1.2.2(3))。
構造規格でも、クローラクレーンは別扱いです。移動式クレーン構造規格第13条は、後方安定度の基準を「移動式クレーン(クローラクレーン及び浮きクレーンを除く。)」について定め、クローラクレーンには第2項で別の基準を置いています(移動式クレーン構造規格(平成7年労働省告示第135号)第13条)。足回りが違えば、倒れにくさの考え方も変わるということです。
鉄道クレーンと浮きクレーン|レールの上と水の上
鉄道クレーンは、鉄道線路(レール)上を走行する車輪をもった台車の上にクレーン装置を架装したもので、鉄道工事等に用いられます。浮きクレーンは、台船の上にクレーン装置を架装したもので、ジブが起伏しないものや旋回しないものもあり、水上の移動方法には自航式と非自航式があって、大能力のものが多いとされています(小型移動式クレーン運転技能講習 補助テキスト 1.2.3・1.2.4)。浮きクレーンには、静穏な水面で定格荷重に相当する荷重をつった状態で、転倒端における乾舷(上甲板から水面までの垂直距離)が0.3メートル以上となるものという、専用の安定度の基準があります(移動式クレーン構造規格 第15条)。
オールテレーンクレーンは業界団体の資料で「トラッククレーンの一種」
オールテレーンクレーンは、法令にも厚労省の補助テキスト2本にも出てこない名前です。一般社団法人日本建設機械工業会の「油圧クレーン」のページは、油圧クレーンをトラッククレーン・ラフテレーンクレーン・オールテレーンクレーンの3つとし、いずれも一般道の走行が可能な移動式クレーンだと説明しています。そのうえでオールテレーンクレーンを、全輪ステアリング・全輪駆動を備え、高速移動と狭い場所での走行が可能な「トラッククレーンの一種」と位置づけています。同じページは、ラフテレーンクレーンについて「現在では移動式クレーン全体のシェアのほとんどを占めるまでに発展」と書いています(日本建設機械工業会「油圧クレーン」、掲載日の表記なし)。
この分け方は業界団体の資料の立て方で、補助テキストの「トラック/ホイール(ラフテレーンを含む)/クローラ/鉄道/浮き」という分類とは軸が違います。2つを1本の系統図に混ぜてしまうと、どこまでが法令に近い分類でどこからが業界の呼び方なのかが分からなくなるので、別々のものとして覚えておくのがおすすめです。整理すると、移動式クレーンの名前は次の3層で見ると混乱しません。
- クレーン則の別表の名前:トラック・ホイール・クローラ・鉄道・浮き(とそれ以外)
- 厚労省の補助テキストの説明:ラフテレーンはホイールクレーンに含まれ、積載形はトラッククレーンの項目で扱う
- 業界団体(日本建設機械工業会)の立て方:油圧クレーン=トラック・ラフテレーン・オールテレーン、オールテレーンはトラッククレーンの一種
小型の機種の扱い(1トン以上5トン未満)や、積載形の現場での使いどころは小型移動式クレーンのまとめが詳しいです。
デリックとは?マストかブームを持ち、原動機を別に置く装置
3区分の最後がデリックです。床上操作式クレーン運転技能講習の補助テキストは、デリックを「動力を用いて荷をつり上げることを目的とする機械装置であって,マスト又はブームを有し,原動機を別置し,ワイヤロープにより操作されるもの」と説明し、例としてガイデリックとスチフレッグデリックを挙げています(床上操作式クレーン運転技能講習 補助テキスト 第1章2.2)。同じテキストのクレーンの説明と比べると、デリックの説明には「水平に運搬」という言葉が入っておらず、原動機を別に置くことが特徴として書かれています。
クレーン則の別表では、デリックは「ガイデリツク」(マスト、ブーム及びガイロープ)、「スチフレツグデリツク」(マスト、ブーム及び脚)、それ以外のデリック(マスト、ブーム及び控え)の3行です(クレーン等安全規則 別表)。マストを支えるのがガイロープか脚か、という違いが名前になっています。
重さの線も、クレーンや移動式クレーンとは違います。施行令第12条第1項第5号は、つり上げ荷重が2トン以上のデリックを特定機械等とし、第13条第3項第16号は0.5トン以上2トン未満のデリックを、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備すべき機械等にしています。運転については、施行令第20条第8号がつり上げ荷重5トン以上のデリックの運転の業務を就業制限業務にしています(労働安全衛生法施行令 第12条・第13条・第20条)。クレーンと移動式クレーンが3トン(スタッカー式クレーンは1トン)で特定機械等になるのに、デリックは2トンという点は、表で覚えるときに抜けやすいところです。
何トンかで手続きと運転資格が変わる|つり上げ荷重の線
種類が決まったら、次に効いてくるのがつり上げ荷重の大きさです。まず言葉をそろえておきます。つり上げ荷重は、施行令第10条第1号の括弧書きで「クレーン(移動式クレーンを除く。以下同じ。)、移動式クレーン又はデリックの構造及び材料に応じて負荷させることができる最大の荷重」と定められています(労働安全衛生法施行令 第10条第1号)。技能講習の補助テキストは、移動式クレーンでは、アウトリガーを最大に張り出し、ジブ長さを最も短く縮小して、ジブの傾斜角を最大にしたとき(作業半径を最小にしたとき)に負荷させることができる最大の荷重で、つり具の質量を含む、と説明しています(小型移動式クレーン運転技能講習 補助テキスト 1.1.3(4))。
定格荷重は、クレーン則第1条第6号で決まります。ジブの無いクレーンやブームの無いデリックではつり上げ荷重から、ジブクレーン・移動式クレーン・ブームのあるデリックでは、ジブやブームの傾斜角と長さ(またはジブ上のトロリの位置)ごとの最大の荷重から、それぞれフックやグラブバケットなどのつり具の重さぶんを差し引いた荷重です(クレーン等安全規則 第1条第6号)。補助テキストはさらに、定格荷重にフック等のつり具の質量を加えた荷重を定格総荷重と呼び、定格総荷重の最大値がつり上げ荷重になる、と説明しています(同 補助テキスト 1.1.3(6))。届出と資格の線を引くのは、つり上げ荷重です。
| 種類 | つり上げ荷重 | 主な手続き(条文) |
|---|---|---|
| クレーン・移動式クレーン・デリック | 0.5トン未満 | クレーン則を適用しない(クレーン則 第2条第1号) |
| クレーン | 0.5トン以上3トン未満(スタッカー式は0.5トン以上1トン未満) | 設置しようとするとき、あらかじめクレーン設置報告書を提出。認定を受けた事業者を除く(第11条) |
| クレーン | 3トン以上(スタッカー式は1トン以上) | 特定機械等(令第12条第1項第3号)。製造許可(第3条)、設置届(第5条)、落成検査(第6条) |
| 移動式クレーン | 0.5トン以上3トン未満 | 設置したとき、荷重試験と安定度試験を行う(第62条) |
| 移動式クレーン | 3トン以上 | 特定機械等(令第12条第1項第4号)。製造許可(第53条)、製造検査(第55条第7項)または使用検査(第57条第7項)に合格すると移動式クレーン検査証が交付される、設置報告書(第61条。認定を受けた事業者を除く)、作業時の検査証の備付け(第63条) |
| デリック | 2トン以上 | 特定機械等(令第12条第1項第5号) |
製造許可はクレーンを製造しようとする者が受ける許可で(第3条・第53条)、設置する事業者の手続きは、クレーンなら第5条の設置届(所轄労働基準監督署長へ提出)か第11条の設置報告書、移動式クレーンなら第61条の設置報告書と第63条の検査証の備付けです。移動式クレーンの章に「設置届」の条は無い、という違いも押さえておくと混同しません。
移動式クレーン検査証の有効期間について、第60条第1項は「移動式クレーン検査証の有効期間は、二年とする。ただし、製造検査又は使用検査の結果により当該期間を二年未満とすることができる。」と定めています(クレーン等安全規則 第60条第1項)。第53条第1項の括弧書きで、第53条から第61条まで・第63条・第64条の「移動式クレーン」は3トン以上のものに限られているので、検査証の備付けも3トン以上が対象です。
運転資格の境目
運転資格も、種類とつり上げ荷重の組み合わせで決まります。条文の条件(跨線テルハの扱い、道路上の走行の除外)まで含めて並べると次のとおりです(労働安全衛生法施行令 第20条第6号〜第8号、クレーン等安全規則 第21条・第22条・第67条・第68条)。
- クレーン5トン以上(跨線テルハを除く):クレーン・デリック運転士免許。床上操作式クレーンは床上操作式クレーン運転技能講習の修了者も可
- クレーン0.5トン以上5トン未満、または5トン以上の跨線テルハ:特別の教育
- 移動式クレーン1トン以上(道路上を走行させる運転を除く):移動式クレーン運転士免許。小型移動式クレーン(1トン以上5トン未満)は技能講習の修了者も可
- 移動式クレーン0.5トン以上1トン未満(道路上を走行させる運転を除く):特別の教育
- デリック5トン以上:運転の業務は就業制限業務(5トン未満のデリックの扱いは、この記事では扱いません)
0.5トン未満はクレーン則が適用されないので、特別の教育は上のように下限をつけて読みます。免許や講習の種類ごとの中身、取り方の順番はクレーンの資格の解説にまとめています。
移動式クレーンの作業計画で見ること|作業半径・定格荷重・地盤・アウトリガー
移動式クレーンを使う作業の計画を立てるときの骨組みになるのは、クレーン則第66条の2です。条文は、事業者が移動式クレーンを使う作業の前に「当該作業に係る場所の広さ、地形及び地質の状態、運搬しようとする荷の重量、使用する移動式クレーンの種類及び能力等を考慮して」、作業の方法・転倒を防ぐ方法・労働者の配置と指揮の系統の3つを決め、作業の開始前に関係労働者へ周知するよう求めています(クレーン等安全規則 第66条の2)。考慮する事項の中に「種類」が名指しで入っているので、種類の整理はそのまま作業計画の材料になります。機種名を当てはめる前に、次の4つを手元にそろえておきます(括弧の中は条文の語ではなく、現場で集める材料の例です)。
- 作業に係る場所の広さ(据付位置、アウトリガーを張り出せる幅)
- 地形及び地質の状態(軟弱な地盤や埋設物の有無)
- 運搬しようとする荷の重量(つり具を含めて考える)
- 使用する移動式クレーンの種類及び能力(定格総荷重表)
作業半径はどこからどこまでか
能力を読むときの基準になる作業半径について、小型移動式クレーンの補助テキストは「旋回中心からフックの中心を通る鉛直線までの水平距離をいう。フートピンからフックの中心までの距離ではないので注意すること。」と説明しています(小型移動式クレーン運転技能講習 補助テキスト 1.1.3(3))。同じテキストは、作業半径が大きくなるにしたがって安定度が低下するとも書いています(同 1.6.4(2))。
条文の側では、クレーン則第69条が「事業者は、移動式クレーンにその定格荷重をこえる荷重をかけて使用してはならない。」と定め、第70条の2は、運転者と玉掛けをする者の両方が定格荷重をいつでも分かるようにする措置を事業者に求めています。機械にも、移動式クレーン構造規格第43条で、定格荷重の明確な表示と、製造者名・製造年月・つり上げ荷重を記載した銘板が求められています。玉掛けをする側が定格荷重を知っておく理由は、玉掛けの基本とあわせて読むと合図の段取りまでつながります。
地盤とアウトリガーの条文
地盤について、クレーン則第70条の3は、軟弱な地盤や、埋設物などの地下の工作物が壊れるおそれがあるせいで転倒しかねない場所での作業を禁じています。例外はただし書の「移動式クレーンの転倒を防止するため必要な広さ及び強度を有する鉄板等が敷設され、その上に移動式クレーンを設置しているとき」だけです(クレーン等安全規則 第70条の3)。この例外を使うときは、アウトリガーを鉄板等の上の倒れない位置に置くことも求められます(同 第70条の4)。敷鉄板の枚数や地盤の許容支持力の数値は、これらの条文・移動式クレーン構造規格・補助テキストの該当節には無く、「必要な広さ及び強度」とあるだけです。
アウトリガーを張れない現場はどうするか。第70条の5の本文は、アウトリガーや拡幅式のクローラは最大限に張り出すことを原則にしています。張り出さなくてよいのは、ただし書の「アウトリガー又はクローラを最大限に張り出すことができない場合であつて、当該移動式クレーンに掛ける荷重が当該移動式クレーンのアウトリガー又はクローラの張り出し幅に応じた定格荷重を下回ることが確実に見込まれるとき」に限られます(クレーン等安全規則 第70条の5)。張り出し幅ごとの能力の見方は、ラフターを例にした記事に譲ります。
正直なところ、機種選びは「何トン級を呼ぶか」から入ると手戻りが出ます。場所・地盤・荷・能力の4つを並べてから機種名を入れるほうが確実です。揚重を含む仮設の段取り全体は仮設計画の立て方で、鉄骨の揚重が中心になる工程は建方の流れで整理しています。
クレーンの種類に関する情報まとめ
- 法令の3区分:クレーン則の章立てと安衛法の別表第一で、クレーン・移動式クレーン・デリックの3つ。「固定式」は法令の言葉ではない
- クレーンの種類:別表の大きな種類は天井・ジブ・橋形・アンローダ・ケーブル・テルハ。タワークレーンの対応は断定できない
- 移動式クレーンの種類:別表はトラック・ホイール・クローラ・鉄道・浮き。補助テキストではラフテレーンはホイールクレーンに含まれる
- デリック:マストかブームを持ち原動機を別に置く装置。2トン以上で特定機械等、5トン以上の運転は就業制限
- 荷重で変わる手続き:0.5トン未満は適用除外、3トン以上(スタッカー式クレーンは1トン以上、デリックは2トン以上)は特定機械等。クレーンは設置届、移動式は検査証と設置報告書
- 機種の選び方:第66条の2の4つの考慮事項をそろえ、作業半径・定格荷重・地盤・アウトリガーの条文を当てる
以上がクレーンの種類に関する情報のまとめです。
クレーンの種類は、通称で覚えようとすると際限なく増えますが、「3区分のどれか」「別表のどの名前か」「つり上げ荷重は何トンか」の3つを順に確かめれば、作業計画書の機種欄や届出の要否を整理する足がかりになります。次の打合せでは、呼ぶ予定の機種を一度この3つに当てはめてから臨む。それだけで話の通り方がかなり変わると、僕は考えています。
ラフタークレーンは法令上なにクレーン?
施行令やクレーン則に「ラフテレーン」という言葉はありません。厚生労働省の小型移動式クレーン運転技能講習の補助テキストは、ラフテレーンクレーンを「分類ではホイールクレーンに含まれる」と説明しているので、別表の名前に当てはめるならホイールクレーン、3区分では移動式クレーンの仲間です。
ユニックもクレーンに入る?
ユニックと呼ばれることがある積載形トラッククレーンは、補助テキストではトラッククレーンの項目で扱われ、床上操作式の補助テキストも移動式クレーンの例に挙げています。手続きと資格はつり上げ荷重で決まるので、銘板(移動式クレーン構造規格第43条で記載が求められている項目)のつり上げ荷重を見て、上の表に当てはめてください。
タワークレーンに届出は要る?
法令に「タワークレーン」という区分はありません。その機械が移動式クレーンではないクレーンに当たる場合、つり上げ荷重3トン以上ならクレーン則第5条の設置届、0.5トン以上3トン未満なら第11条の設置報告書(認定を受けた事業者を除く)が要ります。どの区分に当たるかは、クレーン明細書の種類欄で確かめるのが確実です。
