- ケレンってなに?読み方は?
- 1種ケレン・2種ケレンって何が違うの?
- どんな工具を使うの?
- 施工管理として何をチェックすればいい?
- 屋内と屋外でやり方は変わる?
上記の様な悩みを解決します。
ケレンは鉄骨や鋼製品の塗装下地処理のこと。塗装そのものより地味ですが、「塗装の寿命の8割はケレンで決まる」と言われるほど重要な工程です。種別が1〜4種に分かれており、判断を間違うとせっかくの塗装が早期剥離します。施工管理としては、種別判定の基準と、現場での仕上がり確認の目線をしっかり持っておきたいところ。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
ケレンとは?
ケレンとは、結論「鉄骨や鋼製品の塗装前に、表面のサビ・汚れ・古い塗膜を除去する下地処理作業」のことです。
語源は英語のclean(クリーン)が訛って「ケレン」になったというのが定説。一部では「クリーンの転訛ではなく日本独自の語」という説もありますが、いずれにせよ業界で完全に定着している呼び名です。読み方は「ケレン」(カタカナ表記が一般的)。
正式には「素地調整(そじちょうせい)」と呼びます。仕様書や設計図書には「ケレン」と書かれることもあれば「素地調整」と書かれることもあるので、両方が同じ意味だと理解しておくと混乱しません。
なぜケレンが必要なのか。塗装は「塗料が母材に密着して被膜を作る」のが大前提。母材の表面にサビ・汚れ・古い塗膜・油分などが残っていると、
- 塗料が母材に直接付かず、サビや古塗膜の上に乗るだけ
- サビが進行すると塗膜ごと浮いて剥離
- 油分があると塗膜が密着せずハジキが発生
という問題が起き、結果的に塗装の寿命が大幅に短くなる。これを防ぐために、塗装前に表面をきれいにしておくのがケレンの仕事ですね。
塗装そのものとの関係は別記事でもまとめているので、流れを把握したい方はこちらも参考に。

ケレンの種類(1〜4種の違い)
ケレンには「素地調整程度」として1〜4種の区分があり、JASS 18(建築工事標準仕様書 塗装工事)や鋼道路橋塗装・防食便覧で規定されています。「どこまできれいにするか」のグレードを表すと考えると分かりやすいです。
| 種別 | 素地調整程度 | 主な施工方法 | 仕上がり目安 |
|---|---|---|---|
| 1種ケレン | 完全な素地調整 | ブラスト処理(ショット・サンド・グリット) | 黒皮・サビ・古塗膜を完全除去、白色金属面(near white) |
| 2種ケレン | サビ・古塗膜の大部分を除去 | 動力工具中心(ディスクサンダー、ワイヤホイール等) | サビ・古塗膜の95%以上を除去 |
| 3種ケレン | 活膜は残す、不良部のみ除去 | 動力工具+手工具 | 浮いた塗膜・サビのみ除去、健全な塗膜は残す |
| 4種ケレン | 軽い清掃 | 手工具(ワイヤブラシ・サンドペーパー) | 表面の粉化・付着物の清掃のみ |
1種ケレン(ブラスト処理)
最も厳しいグレード。鋼板表面を投射材(鋼球・鋼グリット・サンド等)で叩いて、黒皮(圧延時の酸化皮膜)・サビ・古塗膜をすべて除去します。仕上がりは「白色金属面」と呼ばれ、SSPC(米国の規格)ではSSPC-SP10やSP5に相当。
橋梁の長期耐久塗装、海岸付近の鉄骨、工場のプラント機器など、塗装に高い耐久性が要求される場面で採用。建築の鉄骨でも、最近は工場でのショットブラスト処理(1種ケレン相当)が標準化される傾向にあります。
2種ケレン
ディスクサンダー、ワイヤホイール、電動ニードルガン、エアーチッパーなどの動力工具を使ってサビ・古塗膜の大部分を除去するグレード。1種ほどの完全除去はしませんが、活きていない塗膜は基本的に取り去ります。
中規模補修工事や、機械設備の大規模塗替えで採用されることが多いですね。
3種ケレン
「活膜(生きている塗膜)は残し、浮きやサビなど不良部だけを除去する」グレード。建築の塗替え工事で最も多く採用されるレベル。
判定はやや経験が要ります。塗膜にカッターナイフで切れ目を入れて、テープを貼って剥がしてみる「テープ法」で密着性を確認することも。塗膜が剥がれたら「不良部」、付いたままなら「活膜」という判定。
4種ケレン
最も軽いグレード。表面のホコリ・チョーキング(塗膜の粉化)・付着物を、ワイヤブラシ・サンドペーパー・布拭きで清掃する程度。劣化の進んでいない塗膜の塗り重ねや、軽微なメンテナンスでの採用。
設計図書での指示
設計図書には「2種ケレン」「3種ケレン」のように種別で書かれているのが普通。「ケレン」とだけ書いてある場合は、塗装仕様や用途から判断して種別を確認します。判断に迷ったら設計者協議が原則。
ケレンに使う工具
種別ごとに使う工具が違います。代表的な工具と用途を整理します。
動力工具
- ディスクサンダー(電動工具:研磨):2〜3種で広範囲のサビ・古塗膜除去
- ワイヤホイール(電動工具:ワイヤブラシ):細かいサビ取り
- 電動ニードルガン:溶接ビード周辺、入隅、複雑形状の素地調整
- エアーチッパー:大きな塗膜の浮きを叩いて落とす
- カップワイヤブラシ:広い面のサビ除去
- インパクトレンチ+スクレーパー:付着物の剥離
手工具
- ワイヤブラシ:細かい部分のサビ取り、清掃
- スクレーパー(皮スキ):浮いた塗膜の剥離
- サンドペーパー:仕上げの研磨
- カッターナイフ:塗膜の切れ目入れ(活膜判定や剥離界面の処理)
ブラスト機
- ショットブラスト機:1種ケレン用、工場据置型または可搬型
- サンドブラスト:1種ケレン用、屋外使用が多い
工具の選定は「対象部材の大きさ」「形状の複雑さ」「環境(屋内・屋外・粉塵対策の要否)」で決まります。狭い箇所や入隅は動力工具が入らないので、手工具で丁寧にやるのが基本ですね。

ケレンの施工手順
3種ケレンを例に、現場での施工手順を整理します。
①事前準備
養生:周辺の窓・床・既存設備に粉塵やサビが飛ばないよう、ビニールシートや不織布シートで養生。粉塵の飛散範囲は意外と広いので、養生範囲は広めに取るのが安全。
足場:高所作業の場合は枠組足場・くさび足場・吊り足場で作業足場を確保。手すり、巾木、メッシュシートで墜落・物の飛散を防止。
換気:屋内施工で発生する粉塵は呼吸器に有害。送風機・集塵機で換気を確保。電動工具の粉塵集塵装置も併用するのがベター。
②劣化状況の確認
対象面のサビの程度、塗膜の浮き、汚れの状況を目視確認。テープ法で活膜判定をするのもこの段階。
③粗ケレン
スクレーパーやエアーチッパーで、明らかに浮いている塗膜を剥がします。大きな塊状の浮きや、サビコブを先に除去するイメージ。
④精ケレン
ディスクサンダーやワイヤホイールで、サビ・古塗膜・浮き周辺を仕上げ研磨。塗膜の段差を滑らかに落として、塗装したときの仕上がりを揃えます。
⑤清掃
エアーブローや清浄な布で、研磨で出た粉塵をすべて除去。ここで粉塵が残っていると塗装の密着が落ちます。脱脂が必要な箇所はシンナー等で拭き取り。
⑥塗装の直前確認
ケレン仕上がりを目視確認。気温・湿度・露点も計測(露点プラス3℃以上の鋼面温度が原則)。問題なければ即塗装に移行。ケレンと塗装の間が空くと再度サビが発生するので、原則「ケレンしたその日に塗装」。

施工管理としてのケレン確認ポイント
施工管理の立場で、ケレン工程をチェックする際のポイントを5つに整理します。
①種別の確認
設計図書のケレン種別と、現場で実施しているケレン種別が一致しているか。「3種で発注したのに4種レベルしかやっていない」と塗装の寿命に影響します。
②仕上がり程度の確認
サビの除去度、塗膜の活膜判定が指定通りか。標準見本(鋼道路橋塗装・防食便覧の写真標準など)と現場の状態を見比べて判定。1〜2種ケレンの場合は標準写真との照合がほぼ必須。
③粉塵処理
ケレン後の粉塵が完全に除去されているか。指で触れて手に粉が付かない状態が目安。湿った布で拭いて変色するなら脱脂不足。
④結露・湿気管理
塗装直前の鋼面温度が露点+3℃以上か。露点計で計測し、塗装環境記録に残します。冬季や雨天直後は特に注意が必要。
⑤次工程までの時間管理
ケレンから塗装までの時間が空いていないか。新たなサビが発生していないか目視確認。空きすぎたら再ケレンを指示するのが原則。
⑥粉塵対策・安全対策
作業者の防塵マスク(防じんマスクの規格DS1〜DS3)、保護メガネ、耳栓、保護手袋の着用。粉塵が法定の許容濃度を超えないように換気・集塵を確保。鉛系古塗膜(昭和年代の塗装)の場合は鉛中毒予防規則に基づく対応が必須。
「ケレンは塗装より前の工程だから軽視されがち」ですが、ここを丁寧に確認しているかどうかで塗装後5〜10年の差が出るところ。施工管理としては、立会い検査で種別・仕上がり・粉塵処理の3点を最低限押さえたいですね。


ケレンに関する情報まとめ
- ケレンとは:鉄骨・鋼製品の塗装前に、表面のサビ・汚れ・古塗膜を除去する下地処理作業
- 語源:英語のclean(クリーン)が転訛したもの。正式には素地調整
- 種別:1種(ブラスト・完全除去)/2種(動力工具・大部分除去)/3種(活膜残し・不良部のみ)/4種(軽清掃)
- 工具:動力工具(ディスクサンダー、ワイヤホイール等)、手工具、ブラスト機
- 手順:養生→劣化確認→粗ケレン→精ケレン→清掃→塗装直前確認→塗装
- 施工管理ポイント:種別確認、仕上がり程度、粉塵処理、結露管理、時間管理、安全対策
以上がケレンに関する情報のまとめです。
ケレンは「塗装する前の地味な作業」ですが、塗装の寿命の大半を決める工程。種別1〜4種の判定と、仕上がり程度の確認、粉塵・露点管理が施工管理のキモになります。「塗装の不具合の多くはケレン不足が原因」というのが業界の共通認識。設計図書のケレン種別を必ず確認し、立会い検査で標準写真と照合するのが鉄則ですね。





