- 特定化学物質作業主任者って、どんな資格?
- 「特定化学物質及び四アルキル鉛等」って長い名前は何?
- アーク溶接でも要る?屋外でも?
- 溶断やガウジングは?
- 溶接ヒュームっていつから特化物になった?
- 塗装は有機溶剤作業主任者でいいの?
- 溶接だけの1日の講習があるって本当?
- 技能講習は何時間?修了試験は何点で合格?
- 費用はいくら?誰でも受けられる?
- 2024年の化学物質の新ルールで作業主任者は要らなくなった?
上記の様な悩みを解決します。
特定化学物質作業主任者は、労働安全衛生法施行令第6条第18号の作業(別表第三の特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業。試験研究のための取扱いなどを除く)で、事業者が特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習の修了者から選任する人です(特定化学物質障害予防規則(以下、特化則)第27条第1項)。特別有機溶剤業務に係る作業は有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から、金属アーク溶接等作業は限定技能講習の修了者からも選任できます。
元請の安全書類で「特化物の作業主任者を出して」と言われて調べ始めると、出てくるのは製造業向けの求人や講習の申込ページばかりで、建設の溶接や塗装に当てはめた説明がなかなか見つからないんですよね。今回は職務・技能講習・費用といった基本を押さえた上で、資格紹介の記事では触れられにくい「建設で選任が出てくる作業(溶接ヒューム/屋内の塗装・洗浄)」と「作業ごとにどの講習の修了者を選ぶか」、溶接だけに絞った限定技能講習の守備範囲まで、特化則の条文を一つずつ確かめながら施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、特化物の作業主任者を誰にするか決めかねている職長や施工管理の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
特定化学物質作業主任者とは?
特定化学物質作業主任者とは、結論「特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業で、事業者が技能講習の修了者を選んで置く作業主任者」のことです。
選任を決めている2つの条文
根っこにあるのは安衛令の作業主任者の一覧で、その第18号が「別表第三に掲げる特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業」で、括弧書きで試験研究のため取り扱う作業と、エチルベンゼン(別表第三第二号3の3)など一部の物について厚生労働省令で定める作業を外しています(労働安全衛生法施行令 第6条第18号)。この「厚生労働省令で定めるもの」には「第二条の二各号に掲げる業務」などが入ります(特定化学物質障害予防規則 第27条第3項)。
そのうえで、誰を選ぶかを書いているのが特化則の第27条第1項です。
「事業者は、令第六条第十八号の作業については、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習(次項に規定する金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習を除く。第五十一条第一項及び第三項において同じ。)(特別有機溶剤業務に係る作業にあつては、有機溶剤作業主任者技能講習)を修了した者のうちから、特定化学物質作業主任者を選任しなければならない。」(特定化学物質障害予防規則 第27条第1項)
2つの括弧書きは、後半の「講習の選び分け」で読み解きます。
講習名の「四アルキル鉛等」は別の規則とつながっている
講習の正式名は「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」です。学科は「特定化学物質及び四アルキル鉛に係る」科目で行います(特定化学物質障害予防規則 第51条第2項)。
四アルキル鉛は別の規則の領分で、四アルキル鉛中毒予防規則第14条が、令第6条第20号の作業について同じ技能講習の修了者から四アルキル鉛等作業主任者を選任すると定めています。1つの講習が、2つの規則の作業主任者の選任につながっている関係です。
別表第三は第一類・第二類・第三類の3段
対象の物は、安衛令の別表第三に3つの区分で並んでいます。特化則も「第一類物質 労働安全衛生法施行令…別表第三第一号に掲げる物をいう。」のように、この別表の号をそのまま区分の名前にしています(特定化学物質障害予防規則 第2条第1項)。
- 第一類物質:ジクロルベンジジン及びその塩/塩素化ビフエニル(別名PCB)/ベリリウム及びその化合物など7つの物と、それらを含有する製剤その他の物(別表第三第一号)
- 第二類物質:アクリルアミドから硫酸ジメチルまで(枝番を含む)と、それらを含有する製剤その他の物で厚生労働省令で定めるもの(別表第三第二号)
- 第三類物質:アンモニア/一酸化炭素/塩化水素/硝酸/二酸化硫黄/フエノール/ホスゲン/硫酸と、それらを含有する製剤その他の物で厚生労働省令で定めるもの(別表第三第三号)
建設現場で出番になる溶接ヒューム|アーク溶接・溶断・ガウジング
「アーク溶接でも要る?」への答えは、要ります。
第27条第2項が書いている「金属アーク溶接等作業」
溶接の作業は、特化則第27条第2項で次のように名前が付けられています。
「事業者は、前項の規定にかかわらず、令第六条第十八号の作業のうち、金属をアーク溶接する作業、アークを用いて金属を溶断し、又はガウジングする作業その他の溶接ヒュームを製造し、又は取り扱う作業(以下「金属アーク溶接等作業」という。)については、講習科目を金属アーク溶接等作業に係るものに限定した特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習(第五十一条第四項において「金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習」という。)を修了した者のうちから、金属アーク溶接等作業主任者を選任することができる。」(特定化学物質障害予防規則 第27条第2項)
読み取れるのは、アーク溶接・アークによる溶断・ガウジングの3つが名指しされていて、さらに「その他の溶接ヒュームを製造し、又は取り扱う作業」まで含めて「金属アーク溶接等作業」とひとまとめにしている、という点です。溶接ヒュームは別表第三第二号34の2に入っている第二類物質なので、これを製造し、又は取り扱う作業は令第6条第18号の作業に当たります(労働安全衛生法施行令 別表第三)。
3つの日付を取り違えない
溶接ヒュームの話には日付が3つ出てきて、案内によって取り上げる日付が違います。何が起きた日なのかを分けて並べます。
| 日付 | 何が起きたか | 根拠 |
|---|---|---|
| 令和3年4月1日 | 溶接ヒュームに関する特化則の改正が施行された | 令和2年厚生労働省令第89号 附則第1条「この省令は、令和三年四月一日から施行する。」 |
| 令和4年4月1日 | 作業主任者を選任しなくてよい経過措置が終わり、選任が必要になった(経過措置は令和4年3月31日まで) | 令和2年政令第148号 附則第2項/茨城労働局リーフレット「施行期日:令和4年4月1日〜(経過措置)」 |
| 令和6年1月1日 | 金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習が新設された | 厚生労働省 資料4-2「施行日:令和6年1月1日」/愛知労働局「2024年1月より」 |
経過措置の条文は「令和四年三月三十一日までの間は、当該作業の作業主任者を選任することを要しない。」です(令和2年政令第148号 附則第2項)。特化則の附則ではなく政令の附則なので、書類に根拠を書くときは政令の附則と書きます。同じ附則第2項は、対象の作業から「改正前の労働安全衛生法施行令第六条第十八号に掲げる作業に該当するもの」を除いています。改正の前から第18号の作業に当たっていた作業には、この猶予はかかっていなかったことになります。限定技能講習ができたのは令和6年1月1日で、令和4年4月1日ではありません。
屋外の溶接とガス溶接の扱い
「屋外でも?」という疑問には、労働局のリーフレットがはっきり書いています。神奈川労働局のリーフレットは「屋内、屋外を問わず、金属アーク溶接等作業については、「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者のうちから、特定化学物質作業主任者を選任し、以下の職務を行わせることが必要となります。」としています(神奈川労働局 リーフレット「「溶接ヒューム」が特定化学物質になります!」)。茨城労働局のリーフレットも、溶接ヒューム及び塩基性酸化マンガンを製造し又は取り扱う作業について「(屋内、屋外は問いません)」と添えています(茨城労働局 リーフレット)。
どこまでが含まれるかについても、神奈川労働局のリーフレットは「屋内、屋外を問わずアークを熱源とした溶接、溶断、ガウジングの全てが含まれ、ガスやレーザーを熱源とするものは含まれません」と書いています(神奈川労働局 リーフレット)。つまりリーフレットの整理では、ガス溶接・ガス切断はこの作業主任者の話には入りません。ガス側の資格はガス溶接技能講習の記事で扱っています。アーク溶接そのものの種類や記号は溶接の基礎をまとめた記事で整理しています。
現場の作業に当てはめると
第27条第2項の文言と神奈川労働局リーフレットの記載を、現場でよく出てくる作業に重ねると次のようになります。
- 鉄骨や配管のアーク溶接:「金属をアーク溶接する作業」に当たる(第27条第2項)
- アークによる切断:「アークを用いて金属を溶断し」に当たる(同項)
- アークを使ったガウジング:「ガウジングする作業」に当たる(同項)
- ガス溶接・ガス切断・レーザー加工:リーフレットは「ガスやレーザーを熱源とするものは含まれません」と整理
- 屋外での上の3つ:リーフレットは「屋内、屋外を問わず」と整理
神奈川労働局のリーフレットは、熱源がアークかどうかで含まれる作業を整理しています(条文の定義には「その他の溶接ヒュームを製造し、又は取り扱う作業」も入ります)。現場目線で言えば、鉄骨の現場溶接、設備の配管・架台の溶接、改修でのアーク切断・ガウジングは、屋外であっても選任を求められる側に入る、と見ておくのが条文とリーフレットに沿った受け止め方です。ガスを熱源とする切断は、リーフレットの整理では金属アーク溶接等作業に含まれません。
溶接の作業には、作業主任者とは別に保護具の義務もあります。特化則第38条の21第5項は、金属アーク溶接等作業に労働者を従事させるときは「有効な呼吸用保護具を使用させなければならない。」としています(特定化学物質障害予防規則 第38条の21第5項)。マスクの区分は防塵マスクの記事で確かめられます。
屋内の塗装・洗浄は「特別有機溶剤業務」かどうかで決まる
「塗装でエチルベンゼンって何のこと?」という疑問は、特化則が一部の有機溶剤を特定化学物質の側に取り込んでいることから来ています。
特別有機溶剤と特別有機溶剤業務は別の言葉
まず物の名前です。特化則は「特別有機溶剤 第二類物質のうち、令別表第三第二号3の3、11の2、18の2から18の4まで、19の2、19の3、22の2から22の5まで及び33の2に掲げる物をいう。」と定めています(特定化学物質障害予防規則 第2条第1項第3号の2)。エチルベンゼン(3の3)と一・二―ジクロロプロパン(19の2)はここに入ります。
条文の多くは「特別有機溶剤等」という言い方をしていて、これは特別有機溶剤に、特化則の別表第一に掲げる一部の号の物を加えた呼び名です(特定化学物質障害予防規則 第2条第1項第3号の3)。業務の定義も、この「特別有機溶剤等」を使って書かれています。
次に業務の名前です。特化則第2条の2は見出しが「適用の除外」で、本文は「この省令は、事業者が次の各号のいずれかに該当する業務に労働者を従事させる場合は、当該業務については、適用しない。」です。その第1号が「次に掲げる業務(以下「特別有機溶剤業務」という。)以外の特別有機溶剤等を製造し、又は取り扱う業務」となっています(特定化学物質障害予防規則 第2条の2第1号。ただし書で第44条・第45条は別扱い)。
裏返すと、特別有機溶剤等を扱っていても、イ・ロ・ハに挙がった「特別有機溶剤業務」に当たらなければ、特化則はその業務にかかりません(第44条・第45条を除く)。物の名前だけで判断せず、業務の名前で判断するのがこの節のポイントです。
エチルベンゼン塗装業務と、一・二―ジクロロプロパン洗浄・払拭業務
業務の名前に「塗装」「洗浄・払拭」が入っているのは、ロとハの2つです。
ロは「エチルベンゼン塗装業務(特別有機溶剤等(令別表第三第二号3の3に掲げる物及びこれを含有する製剤その他の物に限る。)を製造し、又は取り扱う業務のうち、屋内作業場等において行う塗装の業務をいう。以下同じ。)」です(特定化学物質障害予防規則 第2条の2第1号ロ)。
ハは「一・二―ジクロロプロパン洗浄・払拭業務(特別有機溶剤等(令別表第三第二号19の2に掲げる物及びこれを含有する製剤その他の物に限る。)を製造し、又は取り扱う業務のうち、屋内作業場等において行う洗浄又は払拭の業務をいう。以下同じ。)」です(同 第2条の2第1号ハ)。
どちらも「屋内作業場等において行う」業務に絞られています。エチルベンゼンを含む塗料を使えば何でも対象、という書き方にはなっていません。イのクロロホルム等有機溶剤業務も特別有機溶剤業務の1つですが、この記事ではロとハに絞ります。鉄骨の塗装の工程や工場塗装との違いは鉄骨塗装の記事にまとめています。
「屋内作業場等」の中身は、イの括弧書きで「屋内作業場及び有機溶剤中毒予防規則…第一条第二項各号に掲げる場所をいう。」と定義されています(特定化学物質障害予防規則 第2条の2第1号イ)。有機則第1条第2項にどんな場所が並んでいるかは、有機溶剤作業主任者の選任と場所を確かめる記事で号ごとに並べています。
塗装や洗浄の段取りで確かめる順番に直すと、1つ目は使う製品に別表第三第二号3の3(エチルベンゼン)や19の2(一・二―ジクロロプロパン)の物が入っているか、2つ目は作業する場所が「屋内作業場等」に当たるか、3つ目は行うのが「塗装」なのか「洗浄又は払拭」なのか、の3段です。どれか1つでも外れれば、ロ・ハの業務には当たりません(特定化学物質障害予防規則 第2条の2第1号ロ・ハ)。
そして、この特別有機溶剤業務に係る作業で選ぶ講習は特化物の講習ではありません。第27条第1項の括弧書き「(特別有機溶剤業務に係る作業にあつては、有機溶剤作業主任者技能講習)」のとおり、有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から、特定化学物質作業主任者を選任します(特定化学物質障害予防規則 第27条第1項)。「塗装は有機溶剤作業主任者でいいの?」という疑問への答えは、講習としてはその通りで、選任される立場の名前は特定化学物質作業主任者になる、ということです。
誰を選ぶかは作業で変わる|講習3種類の選び分け
ここまでの条文を、作業ごとに「どの講習を修了した人から選ぶか」で並べ直します。講習は3種類ありますが、どれでも好きに選べるわけではなく、作業が決まると選べる講習が決まります。
| 作業 | 選任のもとになる講習 | 選任される立場 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 令第6条第18号の作業(下の2つ以外) | 特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習 | 特定化学物質作業主任者 | 特化則 第27条第1項 |
| 特別有機溶剤業務に係る作業 | 有機溶剤作業主任者技能講習 | 特定化学物質作業主任者 | 特化則 第27条第1項の括弧書き |
| 金属アーク溶接等作業 | 特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習/金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習 | 前者なら特定化学物質作業主任者/後者なら金属アーク溶接等作業主任者 | 特化則 第27条第1項・第2項 |
表の読み方のコツは、左の列を先に決めることです。同じ鉄骨の現場でも、アーク溶接の作業なら3行目、屋内の部分で錆止めを塗る作業がエチルベンゼン塗装業務に当たれば2行目になり、1人の主任者で全部をまかなえるとは限りません。2行目は講習そのものが有機溶剤の講習で、選ばれる立場だけが特定化学物質作業主任者になる、という点も表から読み取れます。
限定技能講習は「選任することができる」の規定
第27条第2項の結びは「選任することができる。」です。溶接の作業でも、限定技能講習の修了者でなければならないという意味ではなく、通常の特化物講習の修了者から選ぶこともできます。愛知労働局も「金属アーク溶接等作業に係る作業主任者は既存の特定化学物質作業主任者技能講習修了者に加え、…金属アーク溶接等限定技能講習…修了者から選任できることとされました。」と説明しています(愛知労働局「アーク溶接等作業主任者限定技能講習が新設されました」)。
逆向きには広がりません。第2項が限定技能講習の修了者から選べるとしているのは「金属アーク溶接等作業」についてだけで、選任される名前も「金属アーク溶接等作業主任者」です。しかも第1項の括弧書きは、第1項でいう特化物講習から「金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習を除く」としています(特定化学物質障害予防規則 第27条第1項・第2項)。限定技能講習の修了者を、塗装や洗浄など溶接以外の特化物の作業の主任者に充てることは、条文の上では想定されていません。
反対に、溶接の作業で通常の特化物講習の修了者を選んだときは、神奈川労働局のリーフレットの書き方どおり、選任される名前は特定化学物質作業主任者で、職務を定める条文は第28条のほうになります(特定化学物質障害予防規則 第27条第1項・第28条)。
あとから通常の講習を受け直す場合の扱いも決まっていて、厚生労働省の通達は「金属アーク溶接等限定技能講習を修了した者が特化物技能講習を受講する場合において、特化物技能講習に係る講習科目の省略や講習時間の短縮は認められないこと」としています(基発0908第1号 令和5年9月8日)。溶接以外の特化物の作業(特別有機溶剤業務を除く)が入る可能性がある会社なら、最初から通常の講習を受けてもらうほうが二度手間になりません。
限定技能講習の中身
限定技能講習も学科で行い、第51条の規定を準用したうえで「特定化学物質及び四アルキル鉛に係る」を「溶接ヒュームに係る」と読み替えます(特定化学物質障害予防規則 第51条第4項)。科目は通常の講習と同じ4つで、健康障害・作業環境・関係法令の時間が通常より短く設定されています。
- 健康障害及びその予防措置に関する知識:溶接ヒュームによる健康障害の病理、症状、予防方法及び応急措置、1時間(厚生労働省告示第168号)
- 作業環境の改善方法に関する知識:溶接ヒュームの性質、設備の管理、作業環境の評価及び改善の方法、2時間(同告示)
- 保護具に関する知識:金属アーク溶接等作業に係る保護具の種類、性能、使用方法及び管理。厚生労働省の省令案の概要では2時間(厚生労働省 資料4-2)
- 関係法令:労働安全衛生法・施行令・労働安全衛生規則中の関係条項と特化則、1時間(厚生労働省告示第168号)
日数は、静岡県労働基準協会連合会の案内が「金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習(1日間)が創設されました」と紹介しています(静岡県労働基準協会連合会 2026年10月25日確認)。受講料は、受ける機関の案内で確かめてください。
個人的には、選任の記録で「特定化学物質作業主任者」と「金属アーク溶接等作業主任者」のどちらで選任したのかを書き分けておくのが大事だと思います。限定技能講習の修了者を選んだ場合、職務の条文は第28条の2になり、受け持てるのは金属アーク溶接等作業に限られます。
作業主任者が現場でやること|第28条と第28条の2
「作業主任者は何をする?」の答えは、特定化学物質作業主任者なら第28条、金属アーク溶接等作業主任者なら第28条の2に書かれています。どちらも柱書は「事業者は、…次の事項を行わせなければならない。」です(特定化学物質障害予防規則 第28条・第28条の2)。2つを号ごとに並べると違いが見えます。
| 号 | 第28条(特定化学物質作業主任者) | 第28条の2(金属アーク溶接等作業主任者) |
|---|---|---|
| 一 | 労働者が特定化学物質で汚染されたり吸入したりしないよう、作業の方法を決め、労働者を指揮する | 労働者が溶接ヒュームで汚染されたり吸入したりしないよう、作業の方法を決め、労働者を指揮する |
| 二 | 局所排気装置/プッシュプル型換気装置/除じん装置/排ガス処理装置/排液処理装置その他の装置を「一月を超えない期間ごとに」点検する | 全体換気装置その他の装置を「一月を超えない期間ごとに」点検する |
| 三 | 保護具の使用状況を監視する | 保護具の使用状況を監視する |
| 四 | タンクの内部で特別有機溶剤業務に労働者が従事するとき、有機則第26条各号(第二号、第四号及び第七号を除く。)の措置が講じられていることを確認する(第38条の8で準用) | (号なし) |
違いは二号と四号に出ます。特定化学物質作業主任者の二号は局所排気装置や除じん装置・排ガス処理装置などの設備が相手ですが、溶接の第28条の2では全体換気装置が名指しされています。点検の間隔はどちらも「一月を超えない期間ごとに」で、条文は「毎月1回」とは書いていません。
四号は、タンクの内部で特別有機溶剤業務を行うときだけにかかる確認です。第28条の2には四号に当たる号がなく、溶接の職務は3つで終わります。タンクやピットの内部の作業では、酸素欠乏の側の作業主任者が要るかどうかも別に確かめておくと漏れを防げます。種類と職務は酸素欠乏危険作業主任者の記事で整理しています。
技能講習の時間・修了試験・受講料
ここからは通常の「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」の話です。
4科目と時間
講習は学科講習で行い、科目は「健康障害及びその予防措置に関する知識」「作業環境の改善方法に関する知識」「保護具に関する知識」「関係法令」の4つです(特定化学物質障害予防規則 第51条第1項・第2項)。
時間は講習機関の案内で確かめられます。愛媛労働基準協会の案内は、健康障害4時間・作業環境の改善4時間・保護具2時間・関係法令2時間・修了試験1時間の「合計13時間」(休憩時間を含まない)を2日間で行う構成です(公益社団法人愛媛労働基準協会 2026年10月25日確認)。静岡県労働基準協会連合会の案内も2日間で、関係法令を1日目と2日目に1時間ずつ分けている以外は科目ごとの時間が同じです(静岡県労働基準協会連合会 2026年10月25日確認)。
修了試験の配点と合格ライン
「修了試験はある?何点で合格?」は、通達で配点と基準が決まっています。通常の講習と限定技能講習とで配点が違うので、列を分けて並べます。
| 科目 | 通常の特化物講習(基発第0224005号 平成18年2月24日) | 金属アーク溶接等限定技能講習(基発0908第1号 令和5年9月8日) |
|---|---|---|
| 健康障害及びその予防措置に関する知識 | 30点 | 20点 |
| 作業環境の改善方法に関する知識 | 30点 | 30点 |
| 保護具に関する知識 | 10点 | 30点 |
| 関係法令 | 30点 | 20点 |
合格の基準は2つの通達で同じ形で、「各科目の得点が配点の40パーセント以上であって、かつ、全科目の合計得点が60点以上である場合を合格」です(基発0908第1号 令和5年9月8日。通常の講習も基発第0224005号で同旨)。合計が60点以上でも、配点の4割に届かない科目が1つあれば不合格です。
受講資格と受講料は機関の案内で見る
受講資格の書き方は機関で違います。静岡県労働基準協会連合会は「満18歳以上の者」、愛媛労働基準協会は「特にありません。」です(いずれも2026年10月25日確認)。法令や公表資料に統一された年齢の要件は、今回の確認では見つかっていません。
受講料も機関ごとです。静岡県労働基準協会連合会は「受講者1名につき13,600円(うち消費税1,236円)」でテキスト代・消費税を含みます(静岡県労働基準協会連合会 2026年10月25日確認)。愛媛労働基準協会は一般が「11,000円+テキスト代 2,200円=合計 13,200円」の税込表示で、会員は12,760円です(公益社団法人愛媛労働基準協会 令和8年2月テキスト代改定・2026年10月25日確認)。他の地域は確かめていないので、申し込む機関の最新の案内を見てください。
作業主任者のほかにかかる測定・健診と、2024年4月からの化学物質規制
「測定や健診も主任者の仕事?」への答えとしては、測定も健診も条文上は事業者の義務で、作業主任者の職務(第28条・第28条の2)には入っていません。
作業環境測定と、溶接ヒュームの個人ばく露測定
特化則第36条第1項は、令第21条第7号の作業場について「六月以内ごとに一回、定期に」第一類物質・第二類物質(いずれも一部を除く)の空気中の濃度を測定するよう求め、第2項で記録を「三年間保存しなければならない。」としています(特定化学物質障害予防規則 第36条)。
溶接ヒュームはこの形ではありません。茨城労働局のリーフレットは「「溶接ヒューム」については、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場の作業環境測定は適用除外となりますが、有効な呼吸用保護具を選定するための空気中の溶接ヒューム濃度…の測定を行う必要があります。」と説明しています(茨城労働局 リーフレット)。条文では、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場で「新たな金属アーク溶接等作業の方法を採用しようとするとき、又は当該作業の方法を変更しようとするとき」に、あらかじめ労働者の身体に装着する試料採取機器で溶接ヒュームの濃度を測る、とされています(特定化学物質障害予防規則 第38条の21第2項)。溶接ヒュームの測定は、6か月ごとの定期測定の形ではなく、作業の方法を採用・変更するときの個人ばく露測定が中心で、同条第4項には措置を講じたあとの効果を確かめる測定も定められています(特定化学物質障害予防規則 第38条の21第4項)。
特殊健康診断の期間
健康診断は、特化則第39条第1項が、常時従事する労働者について雇入れ・配置替えの際と、その後は別表第三の中欄の期間以内ごとに1回行うと定めています。別表第三の期間欄は、溶接ヒューム・マンガン又はその化合物・エチルベンゼン・クロム酸等・一・二―ジクロロプロパンのいずれも「六月」です(特定化学物質障害予防規則 第39条第1項・別表第三)。
ただし第39条第4項は、直近の連続した3回の健診で新たな異常所見が無いなどの要件を満たした労働者について「六月」を「一年」としています(令第16条第1項各号の物・特別管理物質に係る業務を除く)(特定化学物質障害予防規則 第39条第4項)。上に並べた物のすべてにこの扱いが使えるとは限りませんが、必ず半年ごととも限りません。
2024年4月からの規制で作業主任者はどうなったか
令和6年4月から全面施行された化学物質規制は、リスクアセスメント対象物を扱う事業者に化学物質管理者の選任を、保護具を使わせる事業場に保護具着用管理責任者の選任を義務付けました(厚生労働省 リーフレット「職場における新たな化学物質規制が導入されます」)。
そのうえで京都労働局のリーフレットは、特化則などの個別の規則について「特別規制(作業主任者設置、ばく露防止設備の設置、作業環境測定、特殊健康診断など)を遵守する必要があります。」と書いています(京都労働局 労働基準部 健康安全課 リーフレット)。今回確認したリーフレットに、新しい規制で特化則の作業主任者の選任が外れたという記載はありません。保護具着用管理責任者を選べる人の一つとして「作業に応じた、作業主任者の資格を有する者」が挙がっています(同リーフレット)。
アーク溶接の特別教育とは別の制度
アーク溶接の特別教育は溶接作業に就く作業者が受ける教育で、作業主任者の選任とは別の制度です。内容や時間はアーク溶接の特別教育の記事にまとめています。
特定化学物質作業主任者に関する情報まとめ
- 特定化学物質作業主任者とは:令第6条第18号の作業で、事業者が技能講習の修了者から選任する作業主任者(特化則第27条第1項)。講習名の四アルキル鉛は別の規則の話
- 溶接ヒューム:アーク溶接・溶断・ガウジングが対象(リーフレットでは屋内・屋外を問わない)。施行は令和3年4月1日、選任は令和4年4月1日から
- 塗装・洗浄:屋内作業場等でのエチルベンゼン塗装業務・一・二―ジクロロプロパン洗浄・払拭業務は特別有機溶剤業務で、有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から選ぶ
- 講習の選び分けと職務:限定技能講習は令和6年1月1日新設で、溶接の作業に限って選任「できる」講習。職務は第28条が4号、第28条の2が3号で、点検は「一月を超えない期間ごとに」
- 講習と試験:2機関の案内では計13時間・2日間。配点は通常と限定で違い、合格は各科目40パーセント以上かつ合計60点以上
- 測定・健診と新しい規制:溶接ヒュームは個人ばく露測定、健診は特化則の別表第三で六月。2024年4月以降も特別規制の遵守が必要
以上が特定化学物質作業主任者に関する情報のまとめです。
特定化学物質作業主任者は、名前は1つでも、作業の中身によって選ぶ講習が変わる作業主任者です。正直なところ、元請から選任を求められたときに迷うのは資格の難しさではなく、その現場の作業が溶接なのか、屋内の塗装・洗浄なのか、それ以外の特化物なのかの切り分けのほうです。作業の一覧を書き出し、溶接だけなら限定技能講習も選択肢に入れ、屋内の塗装・洗浄が特別有機溶剤業務に当たるなら、その作業には有機溶剤作業主任者技能講習の修了者を充てる。この順番で決めておけば、選任の書類も掲示も作業ごとにぶれずに済むと、僕は考えています。
