- 構造形式ってなに?
- ラーメン構造、壁式、ブレースの違いは?
- どの建物にどの構造形式が使われてる?
- マンションは壁式が多いって本当?
- 工場や倉庫はどんな構造?
- 現場でどう見分ければいい?
上記の様な悩みを解決します。
「構造形式」は「建物の骨組みが、地震や風や重力にどうやって耐えるか」の分類です。ラーメン/壁式/ブレース/トラス/チューブという代表的な5つの形式があり、それぞれが得意な建物の規模・用途・形が違います。新人施工管理として現場の構造図を読むときの入口の地図になる知識です。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
構造形式とは?
構造形式とは、結論「建物にかかる重力・地震・風などの荷重を、どんな骨組みで支えるかの分類」のことです。
英語ではStructural SystemまたはStructural Type。建築構造の世界では「構造方式」「構造システム」とも呼ばれます。
→ ざっくり、「建物が地震や重さに耐えるための骨組みの作戦」を分類したものが構造形式、というイメージです。
「構造種別」との違い
似た言葉に「構造種別」がありますが、構造種別が使う材料による分類(木造/RC造/S造/SRC造)、構造形式が骨組みの形による分類(ラーメン/壁式/ブレース等)、と分かれています。両者を組み合わせて、「RC造ラーメン構造」(マンション・オフィスビル)、「RC造壁式構造」(5階建て以下のマンション)、「S造ブレース構造」(工場・倉庫・体育館)、「S造ラーメン構造」(事務所・商業施設)、「鉄骨造トラス構造」(屋根・橋梁)、のように建物の構造を表現します。
構造形式が違うと変わるもの
構造形式が違うと、部材の太さ・量、設計の自由度(プラン)、工事費、工期、施工難易度、耐震性能の確保方法、が変わります。同じ用途の建物でも構造形式が違えば設計図も施工方法も全く違うものになります。
建物の規模・形・用途・敷地条件によって最適解が違うので複数の形式があり、3階建て住宅と60階建てタワーマンションが同じ構造形式で済むはずがなく、それぞれに合った力学的な解が必要、というのが背景です。
構造体の基本概念は別記事も参考にしてください。

主要な構造形式の種類
代表的な5つの構造形式を整理します。
5つの形式
ラーメン構造(Rigid Frame)は柱と梁を剛接合(柱と梁が一体化)でつなぐ構造で、ドイツ語の「Rahmen(額縁)」が語源。柱・梁が地震・風の水平力を負担し、大きな開口(広い窓・スパン)が取れる、オフィスビル・マンション・商業施設で多用されます。
壁式構造(Wall Structure)は柱・梁の代わりに耐力壁で水平力を支える構造で、壁自体が構造の主役、開口が制限される(壁を抜けない)、高さに制限あり(一般に5階建てまで)、低層公営住宅・UR団地・5階建て以下のRCマンションで採用されます。
ブレース構造(Braced Frame)は柱・梁の枠にブレース(筋交い)を入れる構造で、水平力をブレースが負担(柱梁は重力支持)、ラーメン構造より部材を細くできる、S造の工場・倉庫・体育館・店舗で標準的です。

トラス構造(Truss Structure)は部材を三角形の組み合わせで構成する構造で、各部材は引張力か圧縮力のみ(曲げが出ない)、軽量で大スパンに有利、体育館・橋梁・ドーム屋根・東京タワーが代表例。

チューブ構造(Tube Structure)は建物の外周全体を連続した壁・柱で囲む構造で、中空の筒として水平力を負担、超高層建物に有効、旧ワールドトレードセンター・東京都庁・超高層オフィスが代表例です。
比較表と派生形式
主要構造形式の比較を表で整理しておきます。
| 構造形式 | 水平力の負担 | 開口自由度 | 適する規模 | 代表例 |
|---|---|---|---|---|
| ラーメン | 柱・梁の剛接合 | 高い | 中低層〜高層 | オフィス・マンション |
| 壁式 | 耐力壁 | 低い | 低層 | 5階以下のマンション |
| ブレース | ブレース | 中 | 中低層 | 工場・倉庫 |
| トラス | 三角形の部材 | 高い | 大スパン | 体育館・橋梁 |
| チューブ | 外周のフレーム | 中 | 超高層 | 超高層ビル |
派生形式として、ラーメン+ブレース(ラーメンの中に部分的にブレースを入れる)、壁式ラーメン(壁式と一部ラーメンの混在)、耐震壁付きラーメン(高層RC造で多い)、チューブ・イン・チューブ(超高層で内外2重の筒)、メガストラクチャー(超高層で巨大な梁+柱で支える)、といったハイブリッド形式が実務では増えています。
ラーメン構造の特徴
最も多く使われる構造形式なので、もう少し深掘りします。
力学・メリット・デメリット
ラーメン構造の力学は、水平力で柱・梁が曲がる、接合部で曲げモーメントが伝達、柱・梁の太さで剛性を確保、というあたり。
メリットは、開口が自由(広い窓、大きなスパンの居室)、プラン変更が容易、改修・リフォームに強い、というところ。デメリットは、部材が太くなる(柱・梁が大きい)、梁下が低くなる(天井懐の制約)、工事費が高い、というあたりです。
適する建物とRC・S造の違い
ラーメン構造が適する建物は、オフィスビル(広い空間)、商業施設(フレキシブルなテナント計画)、中高層マンション(耐震壁付き)、病院・学校(プラン変更の可能性)、というシーン。
RC造ラーメンとS造ラーメンの違いは、RC造ラーメンが鉄筋コンクリートで剛接合・重い・遮音性高い・耐火性高い・工期長い、S造ラーメンが鉄骨でガセットプレート+ボルト・溶接・軽い・施工早い・耐火被覆が必要、と性質が分かれます。
詳細は別記事も参考にしてください。


壁式構造の特徴
低層マンションで多用される構造形式です。
力学・メリット・デメリット
壁式構造の力学は、柱・梁ではなく壁全体で水平力を支持、壁が薄くても(180mm前後)面で力を受けるため強い、上下階の壁が通るように配置するのが原則、というあたり。
メリットは、室内に柱・梁の出っ張りが出ない、フラットな天井・壁面でプラン整然、工事費が比較的安い、工期が短い、遮音性能が高い、というところ。デメリットは、耐力壁の位置を変えられない(リフォームが大変)、大きな開口が取れない、高さ制限あり(5階+階高2.8m+31m以下)、というあたりです。
適する建物と施工現場の特徴
壁式構造が適する建物は、低層マンション(5階以下)、公営住宅・UR団地、学校・幼稚園、介護施設、というシーン。
施工現場での特徴は、配筋密度が高い(壁=主役)、開口部の補強筋が多い、上下階の壁の通り(連続性)が要となる、というあたりです。
ブレース構造の特徴
S造の工場・倉庫で標準的な構造形式です。
力学・メリット・デメリット
ブレース構造の力学は、ブレース(筋交い)が引張または圧縮で水平力を負担、柱・梁は主に鉛直荷重を支持、ラーメン構造より部材は細い、というあたり。
メリットは、部材が細くて軽量、工事費が安い、大スパンに有利、というところ。デメリットは、ブレースが邪魔(プランの自由度が下がる)、改修時にブレースを移設できない、意匠的に見た目が出る、というあたりです。
適する建物とブレースの種類
適する建物は、工場・倉庫・物流施設、体育館・大空間建物、立体駐車場、屋根の補強、というシーン。
ブレースの形式は、交差ブレース(X型・両方向の引張圧縮に対応)、V型・Λ型ブレース(構造的にも意匠的にもバリエーション)、シングルブレース(1本のみ・引張専用が多い)、と複数あります。
建物用途別の構造形式の選び方
実務でどの建物にどの構造形式が選ばれているかを整理します。
住宅・マンション
戸建住宅は、木造軸組工法(柱・梁+筋交い/ブレース系)、木造2×4工法(壁式系)、軽量鉄骨造(プレハブ)、というラインアップ。アパート・低層マンションは、5階以下でRC壁式構造、6階以上でRCラーメン構造(耐震壁付き)。高層・超高層マンションはRCラーメン構造(耐震壁付き)、SRC造ラーメン、超高層は制振・免震を併用、という流れです。
オフィス・商業施設
オフィスビルは、中低層でRCラーメン or S造ラーメン、高層でS造ラーメン or SRC造ラーメン、超高層でS造チューブ構造、と階数で変わります。商業施設はラーメン構造(広いスパン)が多く、S造が多い(工期短縮)です。
工場・学校・病院・橋梁
工場・倉庫はS造ブレース構造(標準)、大スパンはS造トラス構造(屋根)、重量物の場合はS造ラーメン、というあたり。学校はRC造壁式またはラーメン、体育館はS造トラス構造、というのが定番。病院・庁舎はRCラーメン(耐震壁付き)、重要施設は免震・制震を併用、というのが標準。橋梁・タワーはトラス構造、ケーブル構造(吊橋・斜張橋)、というラインアップです。
SRC造の特徴は別記事も参考にしてください。

構造形式と施工管理
施工管理として、構造形式の違いが現場でどう影響するかを整理します。
形式別の管理ポイント
ラーメン構造の管理ポイントは、柱主筋・梁主筋・接合部のスターラップ、柱梁接合部(パネルゾーン)の配筋、柱型枠の建て込み精度、梁の配筋量が多く配筋検査に時間がかかる、というあたり。
壁式構造の管理ポイントは、耐力壁の配筋密度(壁筋・開口補強筋)、上下階の壁の通り、壁脚部の補強筋、配筋のかぶり厚さ、というところ。
ブレース構造の管理ポイントは、ブレースのガセットプレート溶接、高力ボルトの締付けトルク、ブレースの方向(向きを間違えない)、溶接の品質管理、というあたり。
トラス構造の管理ポイントは、部材の組立順序、仮止めボルトの本数、起こし方(揚重計画)、接合部の本締めボルトの管理。チューブ構造の管理ポイントは、外周の連続性、接合部の溶接量・精度、風荷重対策(仮設も含めて)、というのが見るところです。
工程と実例
構造形式が変わると工程も変わります。ラーメンは配筋→型枠→打設のサイクル、壁式は配筋密で配筋検査が長い、ブレースは鉄骨建方→ブレース取付け→デッキ→コンクリート、と工程の流れがそれぞれ違います。構造形式は工程計画の前提になります。
ある中規模リノベ案件で、5階建てRC壁式マンションの「リビングと隣の和室の壁を抜きたい」という要望に対し、構造設計者から「その壁は耐力壁で抜けない」という結論が出たケースを見たことがあります。壁式構造は構造的に「壁 = 主役」なので、撤去できる壁・できない壁が構造図で明確に決まっている。意匠と構造の両方を理解しないと、施主の要望に応えられないリフォーム提案は成立しない、ということを実感した案件でした。
プレキャスト工法(構造形式の派生)は別記事も参考にしてください。

構造形式に関する情報まとめ
- 構造形式とは:建物の骨組みが荷重をどう支えるかの分類。「構造種別(材料)」とは別軸
- 主要5形式:ラーメン、壁式、ブレース、トラス、チューブ。各々得意な規模・用途が違う
- ラーメン構造:柱・梁の剛接合。開口自由・部材が太い・中低層〜高層に多用
- 壁式構造:耐力壁が主役・開口制限・低層(5階以下)の集合住宅標準
- ブレース構造:筋交いで水平力負担・S造の工場/倉庫標準
- トラス構造:三角形の組合せ・大スパンに有利・体育館/橋梁
- チューブ構造:外周フレームで支持・超高層に対応
- 建物用途別の選定:低層マンション=壁式、高層マンション=ラーメン、工場=ブレース、体育館=トラス
- 施工管理視点:構造形式により管理ポイント・工程・配筋密度・接合部の処理が大きく変わる
以上が構造形式に関する情報のまとめです。
構造形式は「建物の骨格の作戦」であり、設計図の最初のページ(構造特記仕様書)を見れば必ず明記されています。新人施工管理として現場の構造図を渡されたら、まず「この建物は何造の何構造か」を確認する習慣をつけると、配筋検査・建方・接合部管理のすべてが一貫して見えるようになります。一通り構造形式の基礎知識は理解できたと思います。
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