- 構造強度ってそもそも何のこと?
- 材料の強度と建物の強度って同じこと?
- 耐震強度との違いって?
- RC造・S造・木造で考え方は違うの?
- 強度を確認するチェック項目は?
- 既存建物の強度はどうやって測るの?
上記の様な悩みを解決します。
構造強度は、結論「建物が地震・風・自重・積載などの荷重に耐えられる総合的な能力」のこと。一見シンプルな言葉ですが、実態は「材料強度→部材強度→構造体強度」の3階層で構成されています。鋼材1枚の強度と、鉄骨梁1本の強度と、建物全体の地震強度は別レイヤーなのに、「構造強度」と一括で呼ばれてしまうから初学者が混乱しがち。本記事ではこの3階層を切り分けて、新耐震基準・耐震性能等級・Is値といった全体としての強度評価軸まで一気に整理しておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
構造強度とは?
構造強度とは、結論「建物(または構造物)が、想定される荷重に対して耐えられる総合的な能力」のことです。
英語ではstructural strengthまたはstructural capacity。
→ ざっくり、「想定されるあらゆる荷重に建物が耐える力」が構造強度、というイメージです。
想定される荷重と用語の幅広さ
想定される荷重としては、自重(自分自身の重さ)、積載荷重(人・家具・設備など)、雪荷重、風荷重(台風・突風)、地震荷重(地震時の水平力)、衝撃荷重(自動車衝突など)、火災時の温度上昇による応力、というあたり。これらに対して「壊れない」「倒れない」「使い続けられる」ことを保証するのが構造強度。
「構造強度」は文脈によって指す対象が違います。材料屋さんが言う構造強度は「この鋼材の引張強さは○MPa」、設計屋さんが言う構造強度は「この梁の曲げ耐力は○kNm」、建築主が言う構造強度は「この家は震度7に耐えられる」、既存建物の診断屋さんが言う構造強度は「Is値が0.6だから耐震性あり」、というように対象階層が違います。すべて正解なのですが、話が噛み合わないことがよくあります。施工管理として、どの階層の話をしているか見極められると、設計担当・構造担当・施主とのコミュニケーションがスムーズになります。
構造強度の3階層
構造強度を整理する一番の近道が、「材料強度→部材強度→構造体強度」の3階層モデルで見ること。
| 階層 | 対象 | 評価軸 | 単位 |
|---|---|---|---|
| ①材料強度 | 鋼材・鉄筋・コンクリート・木材 | 降伏点・引張強さ・圧縮強度 | N/mm²(応力度) |
| ②部材強度 | 梁・柱・スラブ・ブレース1本ずつ | 曲げ耐力・せん断耐力・引張/圧縮耐力 | kNm、kN |
| ③構造体強度 | 建物全体・1棟まるごと | 保有水平耐力・必要水平耐力・Is値 | kN、無次元 |
材料強度・部材強度
材料強度は、材料1つひとつの素の強さ。SS400の規格降伏点235 N/mm²、Fc24コンクリートの圧縮基準強度24 N/mm²、SD345鉄筋の規格降伏点345 N/mm²など、JIS規格で規定された「材料が破れる/降伏する応力度の最低値」。材料強度の周辺概念はこちらに整理してあります。



部材強度は、材料を組み合わせて作る「梁1本」「柱1本」の強度。例えばH-400×200のSS400鉄骨梁の曲げ耐力は、断面係数×降伏点で計算できるkNm単位の値。RC梁なら、コンクリートと鉄筋の合成断面で曲げ耐力・せん断耐力を計算します。材料強度から部材強度への展開には、断面形状(断面係数Z、断面二次モーメントI)、スパン長さ(座屈・たわみ)、接合部の効き方、が絡んできます。
構造体強度(建物全体)
部材を組み立てた「建物1棟まるごと」の強度。具体的には地震時の水平力に対する保有水平耐力、これを必要水平耐力(地震荷重)で割った余裕度、耐震診断のIs値(構造耐震指標)などで評価。
部材は強くても、配置バランスが悪い(偏心率・剛性率が悪い)、弱い部分が集中している(軟弱階)、接合部が部材より先にやられる、という形で「部材強度≠構造体強度」になることがあります。「部材は健全でも、建物全体としては危険」というケースを防ぐのが、構造設計の核心ですね。


主要構造種別の強度の特徴
RC造・S造・木造それぞれで、構造強度の作り方が違います。
RC造・S造
RC造(鉄筋コンクリート造)は、コンクリートの圧縮強度+鉄筋の引張強度の合成で持たせる、コンクリートは引張に弱いが圧縮に強い→引張側に鉄筋を配置、火災・腐食に強い・自重が重い・振動に強い、部材が太くなりがち・加工性が低い、耐用年数60〜100年、主要強度は基準強度Fc18〜60 N/mm²、というあたり。
S造(鉄骨造)は、鋼材の高い引張・圧縮強度で持たせる、引張も圧縮も同等に強い・加工性が高い、自重が軽い・大スパン化が容易、火災・腐食に弱い→耐火被覆・防錆処理が必須、細長い柱は座屈に注意、主要強度はF値235〜325 N/mm²、というところ。
木造と「強い構造」とは
木造は、木材の繊維方向の強度で持たせる、自重が軽い・加工性が高い・調湿性、火災に弱い・含水率で強度が変わる、部材が比較的太くスパンが短い、主要強度は基準強度17〜30 N/mm²(樹種・等級による)、というあたり。
「強い」と一口に言っても、単位面積あたりの強度(材料強度)、単位体積あたりの強度/重量比(部材強度)、全体としての地震・風への抵抗力(構造体強度)、の見方によって判定が異なります。S造は単位重量あたりの強度が高い(高層ビル向き)、RC造は耐火・遮音性が高い(住居系向き)、木造は加工性とコストの絶妙なバランス(住宅向き)。「どの構造種別がベスト」ではなく、「用途に合った強度の作り方を選ぶ」のが構造設計の発想です。それぞれの構造種別の詳細は、こちらに整理してあります。



構造強度の評価指標
実務で「強度」を判定するための代表的な指標を整理します。
応力度検定・保有水平耐力・耐震等級
応力度の検定比 σ / faは、部材ごとに発生応力度σを許容応力度faで割った値。1.0以下ならOK、超えたらNG。構造計算書ではこの数値が部材ごとに並べられています。
保有水平耐力 / 必要水平耐力は、建物全体が地震の水平力に耐えられるかの判定。保有水平耐力≥必要水平耐力が成立していれば構造的に保有水平耐力が確保されている。
耐震性能等級(住宅性能表示制度)は次の通り。
| 等級 | 概要 |
|---|---|
| 等級1 | 建築基準法の最低基準(震度6強〜7で倒壊しない) |
| 等級2 | 等級1の 1.25倍 の地震に耐える(学校・避難所レベル) |
| 等級3 | 等級1の 1.5倍 の地震に耐える(消防署・警察署レベル) |
戸建住宅では等級3を取得すると地震保険割引が大きい、というメリットも。
Is値と新耐震基準
Is値(構造耐震指標)は、既存建築物の耐震診断で使う指標で、Is = E0 × SD × T(E0:保有性能基本指標、SD:形状指標=壁配置のバランス、T:経年指標=老朽化)。Is≥0.6で「地震時の倒壊・崩壊の危険性は低い」と判定。学校・公共施設の耐震診断ではこのIs値が主要な判定軸になっています。
新耐震基準・旧耐震基準は、1981年(昭和56年)6月1日以降の建築確認を受けた建物は「新耐震基準」で設計されており、震度6強〜7程度でも倒壊しない設計水準。1981年以前の「旧耐震基準」建物は、震度5強までしか想定していないので、耐震診断・改修の対象になります。
既存建物の構造強度を上げる方法
新築だけでなく、既存建物の強度を後から上げる改修も施工管理の重要な仕事です。
耐震補強と劣化対策
耐震補強は、耐震ブレース増設(既存柱・梁の間に鉄骨ブレースを追加)、耐震壁増設(RC耐震壁・鉄骨耐震壁を増設)、柱の鋼板巻き立て・炭素繊維補強(既存RC柱を巻いて靭性アップ)、基礎補強(杭増し打ち・地盤改良で支持力アップ)、制振装置設置(ダンパーで揺れエネルギーを吸収)、免震レトロフィット(基礎免震化で大幅な性能向上)、というあたり。
劣化対策は、中性化が進んだコンクリートの再アルカリ化、鉄筋腐食部の補修・防錆処理、ひび割れ注入・はつり補修、ALC外壁の打ち替え、というところ。
用途変更・再評価・体験談
用途変更による荷重低減としては、重い倉庫から軽いオフィスへの用途変更で積載荷重を下げる、大型機械の撤去で集中荷重を減らす、というあたり。
構造計算による「実は強い」の証明としては、旧耐震基準の建物でも現代の精緻な構造計算で再評価するとIs値が想定以上に高いケースもあります。耐震診断の結果次第で「現状維持でOK」という判定になる場合も。
僕も電気工事の現場で、昭和50年代築のテナントビルで耐震改修工事に立ち会ったことがあります。耐震ブレースを増設するために、既存配電盤・幹線ケーブルを撤去して仮設電源で運用しながらの工事。「構造強度を上げる工事は、設備系の搬出・盛り替え工事とセット」という現場感覚は、電気屋から見ると盲点でしたね。耐震補強は構造担当だけの仕事ではなく、全工種を横断する大プロジェクトなんだ、と肌で実感した一件です。

構造強度に関する情報まとめ
- 構造強度とは:建物が荷重に耐えられる総合的な能力
- 3階層モデル:①材料強度(N/mm²)→②部材強度(kNm、kN)→③構造体強度(建物全体)
- 構造種別:RC造(圧縮+引張の合成)/S造(鋼材の高強度)/木造(繊維方向の強度)
- 評価指標:応力度検定比、保有水平耐力、耐震性能等級1〜3、Is値(≥0.6でOK)
- 1981年以降は「新耐震基準」、それ以前は「旧耐震基準」
- 既存建物の補強:耐震ブレース・耐震壁・柱巻き立て・基礎補強・制振・免震レトロフィット
以上が構造強度に関する情報のまとめです。
構造強度は「材料・部材・構造体の3階層」で見るのが核心。1つの「強度」という言葉を、応力度・部材耐力・建物全体の保有水平耐力の3レイヤーに分解して考えられるようになると、構造担当との会話・構造計算書のレビュー・既存建物の改修判断、すべてが立体的に見えてきます。一通り基礎知識は網羅できたかなと思います。
合わせて、構造種別ごとの特徴や材料強度の詳細も押さえておくと、施工管理者としての構造の読み解き力が一段アップしますよ。


