鋼管ソイルセメント杭とは?特徴、施工方法、支持力、選び方など

  • 鋼管ソイルセメント杭ってなに?
  • 普通の鋼管杭と何が違うの?
  • どうやって施工するの?
  • どんな現場で使われているの?
  • PHC杭や場所打ち杭との違いは?
  • 施工管理として気を付けるポイントは?

上記の様な悩みを解決します。

「鋼管ソイルセメント杭」は鋼管とソイルセメント柱を一体化した複合杭で、支持力・施工性・コストのバランスが良いことから中高層建物・物流施設で採用が増えている工法です。普通の鋼管杭ともPHC杭とも違う独特の構造なので、特徴と使いどころを整理しておきましょう。「無排土+大きな支持力」というのが他工法との一番の違いで、都市部や大規模物流倉庫で重宝される、というのが現代の杭工法の選び方になります。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

鋼管ソイルセメント杭とは?

鋼管ソイルセメント杭とは、結論「地中に造成したソイルセメント柱(土とセメントの混合体)の中心に鋼管を建て込んで一体化させた複合杭」のことです。

外側はソイルセメント、内側は鋼管という二重構造で、鋼管が軸力を、ソイルセメント部が周面摩擦と荷重伝達を分担します。「鋼管の強度+ソイルセメントの大径化効果」を組み合わせて、少ない本数で大きな支持力を発揮するのが最大の特徴です。

→ ざっくり、「土で作った太い柱の中に鋼管を芯として入れる」のが鋼管ソイルセメント杭、というイメージです。

基本構造と各部の役割

鋼管ソイルセメント杭の基本構造は、外径φ500〜φ1,200mm程度のソイルセメント柱を造成、中心に外径φ300〜φ800mm程度の鋼管を建て込み、ソイルセメントが硬化することで鋼管とソイルセメントが一体化、杭頭は鉄筋コンクリート基礎に定着、というもの。

各部の役割は、鋼管部分が建物荷重を支持する主要な軸力部材、ソイルセメント部分が杭の外径を大きくして周面摩擦力を稼ぐ、杭周面がソイルセメントと地盤の摩擦、杭先端が支持層への先端支持力、という分担です。

主な工法と杭基礎全体での位置づけ

主な商品名・工法名としては、HYSC杭工法、NSエコパイル工法、TBS工法、ガンテツパイル、BSP工法、といったメーカー特許工法が展開されています。基本構造は共通ですが、機械・配合・施工管理装置、設計支持力・適用範囲・コストは工法ごとに差があるのが実態です。

杭基礎には既製杭(PHC杭・SC杭・鋼管杭)と場所打ち杭があり、鋼管ソイルセメント杭は「既製鋼管 + 場所打ちソイルセメント」のハイブリッドとして独自のポジションを持っています。杭基礎全般の知識は別記事で網羅的に整理していますので、合わせて参考にどうぞ。

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鋼管ソイルセメント杭の特徴

鋼管ソイルセメント杭の特徴を「他の杭工法との比較」で整理すると、なぜこの工法が選ばれるのかが見えてきます。

メリット

鋼管ソイルセメント杭のメリットは、大きな支持力(ソイルセメント大径化で周面摩擦が大幅増加)、杭本数の削減(同じ建物荷重を少ない本数で支持)、無排土施工(地中の土を外に出さずにそのまま改良するため残土処分費が抑えられる)、低騒音・低振動(打撃を伴わない施工で周辺環境への影響が小さい)、施工速度が早い(1日に数本の打設が可能)、支持層が深い場合に有利(支持層深さ30〜50mでも対応可能)、狭隘地施工(機械を選べば比較的狭い敷地でも対応)、というあたり。

デメリット

一方でデメリットは、施工費が高め(場所打ち杭よりは安いがPHC杭よりは高い)、専用工法(メーカーごとの特許工法のため競争原理が働きにくい)、品質管理が難しい(地中の混合状態を直接確認できない)、大型機械が必要(低空頭・狭小地では機械選定に制約)、設計者の経験が必要(工法選定にメーカー技術評価書の理解が必須)、撤去性が悪い(建替え時にソイルセメント部の除去が大変)、というあたり。

他工法との大まかな比較

主要な杭工法との比較を表で整理しておきます。

項目 鋼管ソイルセメント杭 PHC杭 SC杭 場所打ち杭 鋼管杭
支持力 中〜大 中〜大
騒音・振動 中〜大
残土量 多(先掘り工法)
工費 中〜高
適用建物 中高層・大スパン 戸建〜中層 中層 大規模 戸建〜中層

→ 「無排土+大きな支持力」が鋼管ソイルセメント杭の核となる強みで、都市部の中高層建築・物流倉庫・大型商業施設などで採用が広がっています。

PHC杭については鉄筋コンクリート系の代表的な既製杭で、合わせて理解しておくと比較がクリアになります。

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鋼管ソイルセメント杭の施工方法

鋼管ソイルセメント杭の施工は「ソイルセメント柱の造成」と「鋼管の建て込み」を連続的に行うことが特徴で、大型施工機械と専用ロッドで施工管理します。

基本フローと使用機械

施工の基本フローは、準備工事(杭芯出し、施工機械の据付け、機材の段取り)→ 掘削・ソイルセメント造成(専用攪拌翼で掘削しながらセメントスラリーを注入・攪拌)→ 鋼管建て込み(ソイルセメント造成直後・硬化前に鋼管を中心に挿入)→ 鋼管の継ぎ手溶接(杭長が長い場合は鋼管同士を現場溶接)→ 杭頭処理(所定の杭頭レベルまで鋼管を切断、頭部処理)→ 養生(ソイルセメントの硬化を待つ)→ 基礎工事への引継ぎ(杭頭にフーチング基礎を構築)、という流れ。

使う機械は、三点式杭打機(杭の鉛直精度を確保)、専用攪拌ロッド(ソイルセメント造成用の攪拌翼付きロッド)、セメントスラリープラント(水・セメント・添加剤を計量混合)、鋼管挿入用クレーン、施工管理装置(深度・吐出量・攪拌速度をリアルタイム記録)、というラインアップです。

施工管理項目とソイルセメント造成・鋼管建て込み詳細

施工で守るべき主な管理項目は、杭芯位置(通り芯から±50mm以内が一般的な許容値)、杭の鉛直度(1/100以内)、施工深度(計画深度まで確実に到達)、セメントスラリー注入量(単位体積あたりの所定量)、攪拌速度・回数(規定の攪拌が確保されているか)、鋼管の建て込みタイミング(ソイルセメント硬化前に挿入)、鋼管の溶接品質(継ぎ手の現場溶接は全周溶接が原則)、というあたり。

ソイルセメント造成の工程は、掘進工程(ロッドを回転させながら所定深度まで降下、同時にスラリー注入)→ 引上げ工程(再度スラリーを注入しながらロッドを引き上げて再攪拌)→ 多段攪拌(上下を複数回往復して土とスラリーを十分混合)、という流れ。

鋼管建て込みは、ソイルセメント造成完了後に速やかに鋼管をクレーンで吊り込む、ガイド治具を使って中心位置と鉛直度を保ちながら降下、鋼管自重と圧入力で所定の深度まで沈設、杭頭部のレベルを設計レベルに合わせる、という手順です。

現場溶接の管理

現場溶接が必要なのは、杭が長尺(30m超)で1本物の鋼管が運搬困難なケース。継ぎ足し溶接はJIS溶接資格保有者が施工、超音波探傷試験(UT)で内部欠陥確認、完了検査を発注者・第三者立会いで実施、というのが標準的な管理です。

杭頭部の処理ではグラウト充填や補強筋が出てきますので、関連知識として杭頭補強筋の解説も参考にどうぞ。

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鋼管ソイルセメント杭の支持力

鋼管ソイルセメント杭の支持力の考え方を理解しておくと、設計図書を読むときの理解が一段上がります。

支持力の構成と算定式

支持力の構成要素は、先端支持力(鋼管先端の支持層への支持)、周面摩擦力(杭周面と地盤の摩擦)、ソイルセメント部の周面摩擦増加分、の3つ。鋼管ソイルセメント杭は外径が大きいため、周面摩擦力が普通の鋼管杭より大幅に大きくなるのが最大の支持力増加要因です。

支持力算定の基本式は「支持力 = 先端支持力(α × N × Ap)+ 周面摩擦力(Σ(β × Ns × As))」。αは先端支持力係数(工法ごとに異なる)、Nは先端の地盤N値、Apは杭先端の有効断面積、βは周面摩擦力係数、Nsは周辺地盤の平均N値、Asは杭周面の表面積、を示します。

→ 太い外径を活かして周面摩擦を稼ぐ、というのが鋼管ソイルセメント杭の力学的なキモです。

支持力確認と支持層

設計支持力の確認方法は、設計地盤調査報告書(N値・土質・地下水位)、メーカー技術評価書(適用範囲・支持力計算式・α・βの値)、構造計算書(1本あたりの設計支持力と本数の整合)、杭リスト(杭種・杭径・杭長・本数・配置)、を順番に確認します。

支持層の選定は、通常N値50以上の砂礫層・硬質粘土層を支持層とし、支持層への根入れ深さ1〜2D(D:杭径)以上を確保、支持層の連続性を地盤調査で確認、というのが基本ルール。

支持力の確認試験

支持力の確認試験には、載荷試験(実際の杭で支持力を実測)、動的載荷試験(杭頭に重錘を落下させて支持力を推定)、健全性試験(衝撃応答試験で杭の損傷有無を確認)、があります。N値と支持層の関係については別記事で詳しく解説しています。

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鋼管ソイルセメント杭の選び方と他工法との比較

「他の杭工法と何が違うのか」を理解しておくと、設計者・施主との打合せでもスムーズに会話できます。

判断軸と建物規模別の選定

杭工法を選ぶ基本判断軸は、建物規模・荷重、支持層の深さ・地盤条件、敷地の広さ・空頭、周辺環境(騒音・振動制約)、コスト・工期、の5点。

建物規模別の工法選定の目安は、戸建住宅で柱状改良 / 鋼管杭工法 / PHC杭、3〜5階建て中層建築でPHC杭 / SC杭 / 鋼管ソイルセメント杭、6階建て以上の中高層建築で鋼管ソイルセメント杭 / 場所打ち杭、大規模物流倉庫・データセンターで鋼管ソイルセメント杭 / 場所打ち杭、超高層ビルで場所打ち杭、というあたりです。

選ばれる典型場面と他工法比較

鋼管ソイルセメント杭が選ばれる典型場面は、中高層オフィスビル・マンション、大規模物流倉庫・配送センター、大型商業施設、病院・学校・公共施設、支持層が深い場所(30〜50m)、都市部で騒音・振動制約が厳しい敷地、残土処分費を抑えたい場合、というあたり。

他工法との選定ポイントは、PHC杭との比較で支持力が大きい場合は鋼管ソイルセメント杭が有利、場所打ち杭との比較で規模が小〜中なら鋼管ソイルセメント杭・超大規模なら場所打ち杭、鋼管杭との比較で周面摩擦を稼ぎたいなら鋼管ソイルセメント杭・打撃施工OKなら鋼管杭、柱状改良との比較で建物が中層以上なら鋼管ソイルセメント杭、という整理です。

メーカー選定と設計段階の確認

メーカー選定のチェックポイントは、適用範囲(杭径・杭長・支持層条件が現場と合うか)、技術評価書(建築技術性能証明・建設技術審査証明の有無)、施工実績(類似現場の施工実績数)、施工管理体制(監理体制・データ記録の精度)、コスト(見積比較とアフターサービス)、というあたり。

設計段階で押さえるべき項目は、杭リストの整合性、配置計画、杭頭レベル、施工図の整理(杭芯・通り芯・基礎との関係)、特記仕様書(施工管理基準・試験計画)、を確認します。

施工図と設計図の関係も合わせて理解しておくと、現場での図面読み込みがスムーズです。

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鋼管ソイルセメント杭の施工管理での注意点

最後に、鋼管ソイルセメント杭の現場で施工管理として押さえるべきポイントを整理します。

事前確認と施工中の管理

事前確認のポイントは、メーカー技術評価書の精読、施工計画書の承認、杭リストの精度確認、地盤調査結果の精読(支持層深さ・土質変化)、地中障害物の事前調査、というあたり。

施工中の管理ポイントは、杭芯位置のマーキング、杭の鉛直度管理、施工深度の電子記録、セメントスラリー配合(プラントでの配合管理・水セメント比)、吐出量の管理、攪拌時間・回数の管理、鋼管挿入のタイミング(ソイルセメント硬化前の挿入)、鋼管の溶接品質(UT検査の実施と記録)、というのが基本です。

品質確認と安全管理

品質確認は、テストピースの採取(ソイルセメントの強度確認用)、杭頭の出来形確認(杭芯・レベル・直径)、必要に応じた載荷試験、施工記録の整理(1本ごとの施工データ・写真)、というあたり。安全管理は、大型機械の安全(転倒・接触・吊り荷)、クレーン作業のKY(玉掛け・合図・進入路)、高所作業の管理(杭頭処理時の墜落防止)、酸欠・有毒ガス(地中作業の事前確認)、新規入場者教育、というのを押さえます。

書類・トラブル・本質

書類・検査の流れは、施工計画書(着工前に提出・承認)、施工日報(1日ごとの施工データ)、品質試験成績書(強度試験・UT検査結果)、施工記録写真、完成図書(杭の最終配置図・施工記録)、というラインアップ。

よくある現場のトラブル例は、支持層深さの予想と現場で違う(地盤の不均一性で杭長が変わる)、施工中の機械トラブル(ロッドの折損、スラリー詰まり)、隣接杭への影響(先行杭の周辺地盤の乱れ)、鋼管溶接部の不良(UT検査で欠陥が出ると再溶接)、というあたり。

→ 鋼管ソイルセメント杭は「地中で起きていることを直接見られない工法」なので、施工管理装置の数値こそが品質の証拠。「機械任せ」ではなく「数値を見ながら判断する」意識を持つこと、毎日の施工データを必ずバックアップすることが、後で「言った言わない」になる時の最大の防御策になります。

杭工事と関連する施工管理書類の整理は施工要領書の知識も必要です。

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鋼管ソイルセメント杭に関する情報まとめ

  • 鋼管ソイルセメント杭とは:鋼管とソイルセメント柱を一体化した複合杭
  • 基本構造:外径φ500〜φ1,200mmのソイルセメント+中心に鋼管
  • メリット:大きな支持力、無排土施工、低騒音・低振動、本数削減
  • デメリット:工費がやや高め、専用工法、品質管理の難しさ
  • 施工方法:ソイルセメント造成→鋼管建て込み→養生→杭頭処理
  • 支持力:先端支持力+周面摩擦力(外径大で摩擦力が大)
  • 選び方:中高層建築・大規模物流・支持層が深い敷地で有利
  • 施工管理の肝:施工管理装置の数値、配合管理、鋼管溶接品質、データ記録

以上が鋼管ソイルセメント杭に関する情報のまとめです。

鋼管ソイルセメント杭は「都市部の中高層建築」「大規模物流施設」で採用が増えている杭工法で、支持力・施工性・周辺環境への配慮のバランスが良いのが選ばれる理由です。施工管理としては「地中で起きていることは数値でしか確認できない」ことを念頭に、施工管理装置のデータ記録と品質試験を徹底するのが王道。鋼管溶接の品質管理まできっちりやれば、杭工事の現場で外すことはほぼなくなります。

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