- 偏心率ってなに?
- 重心と剛心って何が違うの?
- 基準値の0.15ってどこから来た数字?
- 剛性率との違いは?
- L型・コの字型の建物がなぜねじれやすいの?
- 施工管理として気にすべきポイントは?
上記の様な悩みを解決します。
偏心率は、建築物の耐震設計で使う重要指標のひとつで、「建物を平面で見たときの左右バランスが取れているか」を評価する数値です。L型やコの字型など平面形状が複雑な建物は、地震時にねじれ振動を起こして被害が大きくなりやすく、その危険性を数値化したものと言えます。施工管理として構造図を読む上でも避けて通れない概念ですので、基礎知識を抑えておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
偏心率とは?
偏心率とは、結論「建物の重心と剛心のズレを、弾力半径で割った値のこと」です。
もう少し砕くと、「地震で揺れた時にねじれ(回転)がどれくらい発生しそうか」を数値化した指標で、各階で個別に計算されます。値が小さいほどバランスが取れた建物、大きいほどねじれやすい建物、と考えて下さい。
計算式
偏心率 Re = 偏心距離 e ÷ 弾力半径 re
- e(偏心距離): 重心と剛心の水平方向の距離(単位 m)
- re(弾力半径): その階のねじれ剛性を水平剛性で割って平方根を取った長さ(単位 m)
分子と分母の単位がそろっているので、偏心率は無次元の数値として出力されます。
ざっくり『建物のねじれやすさ指数』だと思ってもらえればOKです。
重心と剛心の違い
偏心率を理解するには、まず「重心」と「剛心」の違いを押さえる必要があります。漢字が似ているので、つい混同しがちですが、完全に別物です。
| 名称 | 何の中心か | どう決まるか |
| 重心 | 建物の質量の中心 | 各階の床・壁・柱・仕上げ等の質量を合成して求める |
| 剛心 | 建物の剛性の中心 | 柱・耐震壁の水平剛性を加重平均して求める(回転中心になる) |
重心と剛心が一致していれば、地震で建物は水平方向にそのままスライドするだけで済みます。2つがズレていると、建物は剛心を軸にねじれながら揺れます。このズレが「偏心距離 e」で、偏心率の分子に使われる値です。
重心はどうやって決まるか
重心は質量ベース。各階の床・壁・柱・仕上げ・設備・積載荷重などの質量を、平面上で合成して重心座標(Xg, Yg)を求めます。
剛心はどうやって決まるか
剛心は剛性ベース。柱や耐震壁の水平剛性をX方向とY方向で合成し、剛性の加重平均で決まる点が剛心(Xr, Yr)です。
重心は『質量』、剛心は『剛性』の中心。この一言だけは混同しないで下さいね。
偏心率の計算方法
偏心率を出すまでの流れはこんな感じです。
- 各階の重心座標(Xg, Yg)を質量ベースで算出
- 各階の剛心座標(Xr, Yr)を剛性ベースで算出
- 偏心距離 e = √((Xg-Xr)² + (Yg-Yr)²) を計算
- ねじれ剛性 KR と水平剛性 K から弾力半径 re = √(KR/K) を算出
- 偏心率 Re = e ÷ re で求める
計算そのものは、一貫構造計算プログラム(SS7、Super Build/SS3、BUS、HOUSE-ST1など)が自動で出力してくれます。ただX方向とY方向のそれぞれで値が出るので、構造計算書を見る時は「X方向の偏心率」「Y方向の偏心率」の両方を確認しましょう。
式の意味と出力の見方が分かっていれば、施工管理として構造計算書をチェックする時も慌てずに済みますね。
偏心率の基準値(0.15以下)
偏心率の基準値は、建築基準法施行令第82条の6第2号ロで以下のように規定されています。
Re ≤ 0.15 (すべての階、X方向・Y方向ともに)
1つの階でも0.15を超えてしまうと、ルート2の計算では成立せず、ルート3(保有水平耐力計算)に移行する必要があります。
実務では0.10以下に抑えて設計されるのが一般的です。仕上げや非構造壁の重量が加わると剛心が動くことがあるので、基準値ギリギリではなく余裕を持たせるのが定石ですね。
偏心率と剛性率の違い
偏心率は「剛性率」とセットで語られることが多い指標です。両方ともバランス指標ですが、見ている方向が違います。
| 指標 | 方向 | 基準値 | チェック内容 |
| 偏心率 | 水平(横) | 0.15 以下 | 各階の重心と剛心のズレ |
| 剛性率 | 上下(縦) | 0.6 以上 | 階ごとの剛さのバランス |
- 偏心率 = 平面(水平方向)のバランス → 左右に偏っていないか
- 剛性率 = 立面(上下方向)のバランス → 階ごとに差がないか
ざっくり、偏心率は「建物を上から見たときのバランス」、剛性率は「建物を横から見たときのバランス」を評価しています。両方の基準値をクリアできれば、ルート2計算が成立する、というのが建築基準法のざっくりとした流れです。
偏心率が大きいとどうなる?(ねじれ振動の怖さ)
偏心率が大きい建物は、地震時に「ねじれ振動」を起こします。建物全体がコマのように剛心を軸に回転しながら揺れるので、以下のような被害が出やすくなります。
- 剛心から遠い柱や耐震壁に変形が集中し、破壊が進む
- コーナー部(建物の角)の柱が壊れやすい
- 外壁・ガラス・間仕切りなどの非構造部材の損傷が増える
- 設備配管や電気配線、ダクトなども変形の影響を受けやすい
偏心率が大きくなりやすい平面パターン
- L型平面: 凹んだ側に耐震壁が少ないと、反対側に剛心が偏る
- コの字型平面: L型と同じ理由でねじれが発生しやすい
- 片側だけに階段室・EVシャフトが寄っている建物(コア偏在型)
- 1階が店舗で片側にだけ耐震壁が集中している建物
- 妻側だけに耐震壁がある細長い建物
平面が単純な長方形で壁が対称に配置されていれば基本的に大丈夫ですが、L型やコの字型だと要注意です。
偏心率を小さくする方法
設計段階でバランスを整えるために、構造設計者は以下のような工夫をします。
設計上の対応
- 耐震壁をX方向・Y方向ともに対称的に配置する
- 建物の4隅に近い位置へ耐震壁を配置してねじれ剛性を高める
- 偏った位置の壁が必要な場合はブレースや制振装置で補う
- 平面の凹凸が大きい場合は、構造スリットを入れて分棟化する
- コア(階段・EV)は中央寄りに配置するのが理想
施工管理として意識すべきポイント
- 耐震壁の配置は図面通りに厳守。勝手に開口を追加しない
- 改修工事で壁を一枚抜くと、偏心率が変わる可能性があるので構造計算の再チェックが必須
- 間仕切り壁(雑壁)が剛性に寄与している場合もあるので、内装変更でも注意
- 設計変更が入ったら、構造設計者に偏心率への影響を必ず確認する
ブレースを使った偏心補強は現場でもよく見る対応のひとつです。

偏心率に関する情報まとめ
- 偏心率とは: 建物の重心と剛心のズレを弾力半径で割った無次元指標
- 計算式: Re = 偏心距離 e ÷ 弾力半径 re
- 基準値: 全階でX・Yとも0.15以下(建築基準法施行令第82条の6)
- 重心は質量の中心、剛心は剛性の中心(完全に別物)
- 剛性率との違い: 偏心率=水平方向のバランス、剛性率=上下方向のバランス
- 大きいと発生する問題: ねじれ振動、コーナー柱の破壊、非構造部材の損傷
- 小さくする方法: 耐震壁の対称配置、4隅近くへの配置、構造スリットによる分棟化
以上が偏心率に関する情報のまとめです。
耐震設計の用語ですが、施工管理として平面図を見た時に「この建物、片側にばかり壁が集中してるな→偏心率大丈夫かな」と気付けるようになると、構造設計者との会話もスムーズになります。特に改修工事で既存壁の撤去を検討する時は、この概念を知っているだけで事故を防げる場面が少なくありません。
下に分かりやすい関連記事のリンクを貼っておくので、よかったら読んでみて下さい。それでは!




