- 耐震改修ってなに?
- 旧耐震・新耐震・2000年基準ってどう違うの?
- IS値ってよく聞くけど何の数字?
- どんな工法があって、いくらかかる?
- 補助金は実際どれくらい出る?
- 居ながら工事って大変なの?
上記の様な悩みを解決します。
「耐震改修」は2026年現在も全国の旧耐震建物の半数以上が手付かずで、特に1981年5月以前の建物オーナーには切実な話です。施工管理として関わる機会も多いので、診断から工法・補助金まで一気に押さえておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
耐震改修とは?
耐震改修とは、結論「旧耐震基準で建てられた既存建物を、現行の耐震基準相当まで補強する工事」のことです。
ざっくり時系列で言うと、「1981年5月以前の建物を、震度6強〜7でも倒壊しないレベルまで強くする工事」が耐震改修。建て替えや解体は含めません。
法的根拠は「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」で、1995年の阪神・淡路大震災を受けて成立、2013年改正で特定既存耐震不適格建築物(学校・病院・百貨店等)に診断義務が課されています。
改修工事一般の流れはこちら。

旧耐震・新耐震・2000年基準の違い
耐震改修を理解するには、まず3つの耐震基準の境目を押さえる必要があります。
| 基準 | 適用時期 | 主な要求 | 想定地震 |
|---|---|---|---|
| 旧耐震基準 | 1981年5月31日以前 | 震度5強で倒壊しない | 中地震対応 |
| 新耐震基準 | 1981年6月1日以降 | 震度6強〜7で倒壊しない | 大地震対応 |
| 2000年基準 | 2000年6月1日以降 | 木造で地盤調査・接合金物・耐力壁配置を強化 | 大地震+詳細規定 |
「新耐震=1981年6月以降」が世間的に有名な境目で、耐震改修の対象は基本的にこの日以前の建物。1981年6月以降の建物は耐震改修不要、というのが原則の判断軸です。
ただし1981年6月以降の建物でも、木造に関しては2000年改正前のものは「準新耐震」扱いで、簡易診断くらいはやっておくと安心、という整理になっています。
耐震診断(IS値・Iw・耐震指標)
耐震改修の前段階で必須なのが耐震診断。建物の現状の耐震性能を数値化する作業です。
RC造・S造の耐震診断
RC造・S造で使われる指標はIS値(構造耐震指標)。IS値≧0.6で「倒壊・崩壊の危険性が低い」、IS値0.3〜0.6で「危険性あり」、IS値<0.3で「危険性が高い(要補強)」、という3段階のレーティングで建物の現状を評価します。
木造の耐震診断
木造で使われる指標はIw値(評点)。Iw≧1.5で「倒壊しない」、Iw 1.0〜1.5で「一応倒壊しない」、Iw 0.7〜1.0で「倒壊する可能性あり」、Iw<0.7で「倒壊する可能性が高い」、という4段階のレーティングで評価します。
つまりRC造・S造は「IS値0.6以上」、木造は「Iw値1.0以上」を目標値にして補強設計するのが基本スタンス。
ちなみにIS値は剛性・強度・形状・経年劣化を全部織り込んだ総合指標なので、補強設計では「壁を増やしてIS値を0.4→0.7に上げる」みたいな逆算で工法を決めていきます。
剛性・偏心の話はこちらで深掘りしてます。


主な耐震補強工法
工法は大きく4タイプ。建物の構造種別と目標IS値で選びます。
耐震壁・補強壁の増設
最もシンプルで安いのが壁を新しく作る・増やす方法。
耐震壁増設の特徴
耐震壁増設は、RC造・S造の中規模建物で多用される定番工法。既存柱・梁にあと施工アンカーで連結する形で、IS値の上がり幅が大きいのが強みです。ただし開口部が潰れるので採光・動線に影響する点が悩ましく、㎡単価は3〜5万円程度というところ。意匠との兼ね合いが最大の論点で、「ここに壁ができたら窓が消えるので嫌だ」とオーナーから言われがち。設計初期から意匠設計者と耐震設計者の擦り合わせが必須です。
鉄骨ブレース増設
開口部を残しつつ強度を上げたいときの定番が鉄骨ブレース。
鉄骨ブレースの特徴
鉄骨ブレースは、既存ラーメンフレームの中に対角ブレース(X型・K型・V型)を後付けする工法。開口部の機能を保てるのが最大のメリットで、学校・庁舎の改修で多用されます。外観に鉄骨が見えるのが好き嫌い分かれるところで、㎡単価は4〜6万円程度というレンジ。
ブレース全般の話はこちら。

制震ダンパーの設置
既存フレームを生かしつつ地震エネルギーを吸収するのが制震ダンパー。
制震ダンパーの特徴
制震ダンパーは、鋼材ダンパー・オイルダンパー・粘弾性ダンパーといった種類があり、既存壁・柱の負担を減らせるのが特徴。設計が難しいですが効果は安定しており、高層ビル・重要施設で採用が増えています。㎡単価は5〜10万円程度というレンジ。
免震レトロフィット
最後の選択肢が建物の基礎下に免震装置を入れて、地震動を建物に伝えにくくする工法。
免震レトロフィットの特徴
免震レトロフィットは、既存基礎の下を掘って積層ゴムを挿入する大掛かりな工法。地震時の建物応答を1/3〜1/5に低減でき、居住者の生活を止めずに施工可能なのが大きな利点です。工費は㎡15〜30万円と高額で、重要文化財・高層ビル・病院などで採用されます。
つまり、「壁→ブレース→制震→免震」の順にコストと効果が上がると覚えておけばOK。一般的な建物はまず壁+ブレースで十分目標値に届きます。
耐震改修の費用と補助金
費用感のリアルな目安は以下。
| 建物 | 目安費用 | 補助金(条件付き) |
|---|---|---|
| 木造戸建(30坪程度) | 100〜200万円 | 自治体により50〜120万円 |
| マンション(1棟) | 1,500〜5,000万円 | 国+自治体で総額の1/2〜2/3 |
| オフィスビル(中規模) | 5,000万〜2億円 | 自治体次第(最大1/3程度) |
補助金は「国の支援+都道府県+市区町村」の三層構造で、自治体ごとに条件も金額もバラバラ。例えば東京都は「特定緊急輸送道路沿道建築物」に手厚いとか、兵庫県は阪神大震災の経験から木造に厚いとか、地域差が大きいです。
補助金申請の現実的なハードル
補助金申請のハードルとしては、申請から交付決定まで2〜6ヶ月かかる、着工前の交付決定が必須(フライング厳禁)、設計事務所の登録要件あり、完了報告・領収書整理など事務作業が膨大、というあたりが要注意ポイント。
施工管理者としては、「施主さんが補助金申請を通すまで現場を動かさない」スケジュール管理が肝になります。フライングで着工して補助金が出ない、というのが一番のあるある事故。
耐震改修の流れと「居ながら工事」
耐震改修の標準的な流れ。
耐震改修の進め方
標準的な進め方は5ステップ。①現地調査・耐震診断(1〜2ヶ月)として図面復元・コア抜き・躯体寸法実測、②補強設計(2〜3ヶ月)としてIS値の逆算・工法選定・工事費見積、③補助金申請(2〜6ヶ月)として申請書類作成・自治体審査・交付決定、④工事発注・施工(3〜12ヶ月)として仮設・補強躯体・復旧、⑤完了検査・補助金請求(1〜2ヶ月)として完了報告・領収書整理・入金、という流れです。
ここで施工管理として最も気を遣うのが「居ながら工事」。住人や利用者がいる建物を空にせず工事するパターンで、マンション改修では避けて通れません。
居ながら工事の難所
居ながら工事の難所は、騒音・振動の時間帯制限(平日9〜17時に圧縮)、共用廊下の通路確保、既存住戸内へのアクセス調整、ホコリ・粉塵対策、工程が通常の1.5〜2倍に伸びる、というあたり。
「夜間に作業できない」「土日も使えない」という制約のなかで、足場設置や鉄骨建方の段取りを組むのは耐震改修ならではの難所。発注前から仮設計画と作業時間帯の合意を施主・住民と取っておくと、後でモメません。
耐震改修に関する情報まとめ
- 耐震改修とは:旧耐震基準の建物を現行基準相当まで強化する工事
- 境目:1981年6月1日(新耐震)、木造は2000年6月1日(2000年基準)
- 診断指標:RC・S造はIS値≧0.6、木造はIw値≧1.0が目標
- 主な工法:壁増設(安・基本)/鉄骨ブレース/制震ダンパー/免震レトロフィット(高・効果大)
- 費用感:木造戸建100〜200万円、マンション1,500〜5,000万円
- 補助金:国+都道府県+市区町村の三層、着工前の交付決定が絶対条件
- 居ながら工事:時間帯制限・通路確保・粉塵対策で工程が1.5〜2倍に膨らむ
以上が耐震改修に関する情報のまとめです。
一通り耐震改修の基礎知識は理解できたと思います。「IS値0.6以上を目標」「補助金は着工前交付決定」「居ながら工事は工程1.5〜2倍」の3点を押さえておけば、案件が来たときの初動を間違えずに済みます。
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