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許容引張応力度とは?SS400・SD345、長期短期、計算式など

  • 許容引張応力度ってなに?
  • 降伏点や引張強さとどう違うの?
  • 長期と短期で値が変わるって本当?
  • SS400やSD345だと具体的にいくつなの?
  • 計算式って覚えた方がいい?
  • 告示2466号で決まってるって聞いたけど詳細は?

上記の様な悩みを解決します。

許容引張応力度は、結論「部材が安全に受けられる引張応力度の上限値」のことで、構造設計の許容応力度法における 「これ以下なら安全」と判定する基準値 です。ミルシートに書いてあるのは降伏点・引張強さといった実材料の数値ですが、設計で使うのはそれを安全側に割り引いた F値=基準強度。本記事ではこの「ミルシート値 → F値 → 許容引張応力度(長期・短期)」の3段階を、SS400・SD345・F10Tボルトの具体値を並べながら整理しておきましょう。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

許容引張応力度とは?

許容引張応力度とは、結論「設計上、部材が引張に対して安全に発揮してよい応力度の上限」のことです。

英語では allowable tensile stress。記号は ft(tensile の t)または ftt。単位は N/mm²(=MPa)。許容応力度法による構造設計では、この値を超えないことを断面計算で確認します。

「許容」という言葉のニュアンス

材料は実際には降伏点・引張強さまで耐えられますが、

  • 製造のばらつき
  • 施工上の組立精度・加工誤差
  • 設計時に想定しきれない荷重変動

といった不確かさを織り込んで、降伏点を1.5で割って安全余裕を取った値を「許容応力度」として使います。実力 ÷ 1.5 = 許容、というのが第一近似のイメージ。

許容引張応力度の役割

構造計算書では、各部材の引張応力度 σ を計算して、

σ = 引張荷重 ÷ 有効断面積 ≤ 許容引張応力度 ft

という不等式が成立しているか確認します。1ヶ所でも不等式が破れたら断面アップ・本数追加が必要、というシビアな判定基準ですね。

引張荷重と引張応力度の関係については、こちらに整理してあります。

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長期と短期で値が変わる理由

許容引張応力度には 長期短期 の2種類があります。

区分 想定する荷重 値の目安
長期 自重・積載荷重・常時雪荷重などの常時かかる荷重 F ÷ 1.5
短期 地震荷重・風荷重・暴風時雪荷重などのまれに加わる荷重 F(長期の1.5倍)

なぜ短期は1.5倍してよいか

地震や台風のように発生頻度が低くて短時間しか作用しない荷重では、塑性域の余力(降伏点を超えても粘れる範囲)を一部食い込ませることが許容されます。日常的にかけ続ける荷重では、その余力を温存しておきたいので長期に絞り込み、レアな荷重では短期で2/3まで使い切る、というイメージ。

実務での使い分け

  • 長期計算:自重+積載+雪(多雪地は積雪70%)
  • 短期計算:上記+地震または上記+風(同時には組み合わせない)

設計図書では「許容応力度(長期)」「許容応力度(短期)」のように区分が明示されていて、それぞれに対応する応力度をチェックします。「長期OK・短期NG」「長期NG・短期OK」は理屈上ありえる結果で、両方クリアしないと完成しません。

計算式:F値と許容引張応力度の関係

許容引張応力度は、基本的に下の関係で計算されます。

区分 計算式
長期許容引張応力度 ft F ÷ 1.5
短期許容引張応力度 ft F(=長期の1.5倍)

F値とは何か

F値(基準強度) は、建築基準法施行令と建設省告示第2464号・2466号で定められている材料ごとの基準値で、

  • 鋼材:降伏点と「引張強さ ÷ 1.5」のどちらか小さいほう
  • 鉄筋:降伏点(規格値)
  • ボルト:降伏点をベースに告示で個別に規定

という整理になっています。簡単に言えば、「材料の素の強度から、引張強さの2/3で頭打ち」をかけたもの。引張強さで先に破れる材料の場合、降伏点だけで設計すると危険なので、引張強さ側からも歯止めをかけるイメージです。

F値の代表例

  • SS400(厚さ40mm以下):F = 235 N/mm²
  • SN400B:F = 235 N/mm²
  • SM490:F = 325 N/mm²
  • SS400(厚さ40mm超〜100mm以下):F = 215 N/mm²

厚いほど降伏点が下がるためF値も下がる」という関係があり、設計時には板厚区分まで含めて値を引き当てます。

主要鋼材の許容引張応力度

実務でよく出てくる鋼材の許容引張応力度を整理しておきます。

鋼材(建築構造用 主要グレード)

材質 板厚区分 F値 長期 ft 短期 ft
SS400 40mm以下 235 156 235
SS400 40mm超 100mm以下 215 143 215
SN400A/B/C 40mm以下 235 156 235
SN490B/C 40mm以下 325 216 325
SM490 40mm以下 325 216 325
STKR400 235 156 235
STKR490 325 216 325

長期は F ÷ 1.5 で四捨五入、短期は F そのもの という関係。「SS400の鉄骨柱の長期許容引張応力度は156 N/mm²」と覚えておくと、構造計算書を読む時に迷いません。

ミルシートの実測値(例:降伏点 280 N/mm²、引張強さ 450 N/mm²)はあくまで実力で、F値(235)とは別物。設計はF値ベース、品質確認はミルシート実測値ベース、と切り分けて見ます。

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鉄筋・ボルトの許容引張応力度

鉄筋とハイテンションボルトについても、それぞれ告示で値が定められています。

鉄筋(異形棒鋼)

材質 規格降伏点 長期 ft 短期 ft
SD295A 295 196(D29以下) / 176(D32以上) 295
SD345 345 215(同上で割増ルールあり) 345
SD390 390 215(上限あり) 390
SD490 490 215(上限あり) 490

鉄筋は告示で「長期は降伏点 ÷ 1.5、ただしD29以上は215 N/mm²を超えてはならない」のような上限規定が入るため、太い鉄筋ほど長期側が頭打ちになります。設計時は構造計算ソフトが自動で引き当ててくれますが、結果値の意味を理解していないとレビューできない、という訳ですね。

ハイテンションボルト(締付軸力ベース)

ボルト F値(告示) 長期 ft 短期 ft
F8T 640 約 254 約 380
F10T 900 約 310 約 465

ハイテンションボルトは F値とは別に「軸力ベースの規定」が併用されるため、上の値はあくまで参考。実務では告示値・JIS B 1186・F10T規格をセットで参照します。

鉄筋の引張側全体像は、こちらにまとめてあります。

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現場での使われ方と注意点

施工管理として「許容引張応力度」が出てくるシーンを整理しておきます。

①構造計算書のレビュー

構造計算書には「応力度の検定比 σ / ft」が部材ごとに記載されています。1.0 を超えると NG、0.95 のように1.0近くだと 「ギリギリの設計=施工上余裕がない」 という見方もできるので、定着長確保や端部ディテールに余計に注意します。

②鋼材の発注・転用判断

材質指定が SS400 の図面に SN400B を入れる方向への転用は、F値が同じ235で 基本OK。逆に SN材 → SS材 への転用は耐震性能の観点で原則NG。「降伏点が同じでも材質を勝手に変えない」のが現場の鉄則です。

③鉄筋の太さ替えチェック

D19(SD295)→ D22(SD345)への変更は、断面積も降伏点も上がるので、引張側の余裕は大きくなります。ただし鉄筋径が変わると 定着長・かぶり厚・節部の納まりが連動して変わるので、引張応力度だけ見て即決はNG。

④ハイテンションボルトの本数決定

例えば 柱脚アンカー1本あたり短期引張耐力が約120kN(F10T M20)として、地震時引抜力が900kNなら必要本数は 8本。許容引張応力度ベースでアンカーを割り付けるのが鉄骨建方前の重要な照査項目になります。

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僕も新人時代に、「SS400で図面通り発注したつもりがSN400Bが届いた」という経験があります。慌てて構造担当に確認したら、F値が同じ235なので問題なし。むしろSN材は降伏点の上限規定があり耐震性が高いので歓迎レベル、と教えてもらった一件。「F値ベースで考える」は施工管理として絶対押さえておきたい感覚ですね。

許容引張応力度に関する情報まとめ

  • 許容引張応力度とは:部材が引張に対して安全に発揮してよい応力度の上限値
  • 長期:F ÷ 1.5(自重・積載など常時荷重用)
  • 短期:F そのもの(地震・風などレア荷重用)
  • F値の代表:SS400 = 235、SM490 = 325(板厚40mm以下)
  • 鉄筋の代表:SD295A 長期196、SD345 長期215(上限あり)
  • ボルトの代表:F10T M20 短期約122 kN/本の引張耐力
  • 告示根拠:建築基準法施行令、建設省告示2464号・2466号

以上が許容引張応力度に関する情報のまとめです。

許容引張応力度は、「ミルシートの実力 → F値 → 長期・短期」の3段階を切り分けて考えるのがコツ。実力値で語ると過剰評価、F値だけだと長期・短期の使い分けで詰まる、という訳ですね。「長期は3分の2、短期は素のF値」だけ頭に入れておけば、構造計算書を見たときの理解がぐっと深まります。一通り基礎知識は理解できたと思います。

合わせて、応力度の周辺概念や鋼材規格も押さえておくと、構造の読み解き力が一段アップしますよ。

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