- 剛性率ってなに?
- どうやって計算するの?
- 基準値の0.6って何の数字?
- 偏心率との違いは?
- ピロティ構造が危険って聞くけどなぜ?
- 施工管理として気にするポイントは?
上記の様な悩みを解決します。
剛性率は、建築物の耐震設計で使われる重要指標のひとつで、「建物の階ごとの剛さのバランスが取れているか」を見るための数値です。阪神淡路大震災で1階のみ崩壊した建物が多発した際にも、この剛性率不足が原因のひとつとして注目されました。施工管理として構造図を読むうえで、基礎知識を抑えておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
剛性率とは?
剛性率とは、結論「各階の剛さが、建物全体の平均と比べてどれくらいバランスが取れているかを示す指標のこと」です。
建物全体では大丈夫でも、特定の階だけ極端にやわらかい(剛性が低い)と、地震時にその階だけに変形が集中して壊れてしまいます。それを防ぐために、全階の剛性を比較して「各階が平均に対してどれくらいの比率か」を数値化したのが剛性率です。
剛性率の基本式
- 各階の剛性 rs = 1 ÷ 層間変形角
- 全階の剛性の平均 rs̄ = Σrs ÷ n (階数)
- 剛性率 Rs = rs ÷ rs̄
つまり「層間変形角の逆数を出して、全階の平均と比較するだけ」の計算です。層間変形角さえ出ていれば、電卓でも出せるレベルですね。
要するに、階ごとの『硬さのばらつき』を測る物差しってことです。
剛性率の計算方法
具体的な計算手順はこんな流れです。
- 一貫構造計算プログラムで各階の層間変形角を算出する
- 層間変形角の逆数を取って「各階の剛性」を出す
- 全階の剛性を算術平均して rs̄ を求める
- 各階の剛性を rs̄ で割って剛性率を出す
数値例(5階建ての場合)
| 階 | 層間変形角 | 各階の剛性(逆数) | 剛性率(= 各階剛性 ÷ 平均 230) |
| 5F | 1/300 | 300 | 1.30 |
| 4F | 1/250 | 250 | 1.09 |
| 3F | 1/220 | 220 | 0.96 |
| 2F | 1/200 | 200 | 0.87 |
| 1F | 1/180 | 180 | 0.78(注意) |
この例では平均剛性が 230 なので、1階の剛性率は 180 ÷ 230 = 0.78 となり、他階より明らかにやわらかい階になっています。基準値0.6は超えていますが、ここまで差が大きい場合は構造設計者から「耐震壁を追加しませんか」などの提案が入ることが多いです。
各階の層間変形角が分かれば、後は割り算だけです。施工管理も構造計算書を見るときにサラッと確認できるようになりましょう。
剛性率の基準値(0.6以上)
剛性率の基準値は、建築基準法施行令第82条の6第2号イで「各階で 0.6 以上」と規定されています。
これは「各階の剛性が、全階平均の6割以上を確保されていること」という意味です。1つの階でも0.6を下回ると、ルート2の構造計算では成立せず、ルート3(保有水平耐力計算)に進む必要があります。
実務上は、基準値ギリギリで設計するのではなく、0.7〜0.8程度の余裕を持って計画されるのが一般的です。ギリギリで攻めると、後の設計変更や仕上げ重量の追加ですぐ基準を割ってしまうからですね。
『0.6を超えていればOK』じゃなくて『バランスよく1.0近くにまとまっている方が理想』というのが実務感覚です。
剛性率と偏心率の違い
耐震設計では「剛性率」と「偏心率」がセットで語られます。どちらも建物のバランスを見る指標ですが、向きが違います。
| 指標 | 方向 | 基準値 | チェック内容 |
| 剛性率 | 上下(縦) | 0.6 以上 | 階ごとの剛さのバランス |
| 偏心率 | 水平(横) | 0.15 以下 | 各階の重心と剛心のズレ |
- 剛性率 = 建物を縦(上下階)に見たときのバランス
- 偏心率 = 建物を横(平面)に見たときのバランス
ざっくり言えば、階ごとに柔らかさが違わないかをチェックするのが剛性率、水平的に重心と剛心がズレていないかをチェックするのが偏心率です。両方とも基準値をクリアしないと、ルート2の計算では通らないので、セットで理解しておきましょう。
剛性率が不足するとどうなる?(ピロティ・ソフトストーリー問題)
剛性率が不足する代表例が「ピロティ構造」と呼ばれる形式です。1階だけ壁がなく、駐車場やエントランスとして開放されている建物をイメージしてください。
- 1階: 壁なし → 剛性が低い
- 2階以上: 住戸で壁だらけ → 剛性が高い
このような建物では、1階だけ剛性率が極端に低くなり、地震時の変形が1階に集中します。その結果、1階のみ層崩壊する、いわゆる「ソフトストーリー被害」が発生します。1995年の阪神淡路大震災では、このタイプの建物倒壊が多く報告され、ピロティ構造の耐震設計が一気に厳しくなりました。
なお、「ソフトストーリー」は建築基準法の条文用語ではありませんが、構造設計の現場では剛性率不足の代名詞的によく使われる言葉です。
駐車場ピロティや、大型ロビーで下階に壁が極端に少ない建物は要注意です。
剛性率を確保するには
設計段階で剛性率を0.6以上に収めるために、構造設計者は以下のような工夫をします。
設計上の対応
- 耐震壁を上下階でバランス良く配置する
- ピロティ部の柱を太くする、または柱頭・柱脚の曲げ補強をする
- 鉄骨ブレース(筋交い)を低剛性の階に追加する
- 制振装置を設置して応答を下げる
- 免震構造を採用して地震入力そのものを低減する
施工管理として意識すべきポイント
- 耐震壁のコンクリート打設は気を抜かず、型枠や配筋の精度もしっかり管理する
- ブレースの取付角度・ボルト締付けトルクは必ず図面通りに
- 設計段階で決まった壁の位置は勝手に開口を開けない(リフォーム時も要注意)
- 下階にある大空間(駐車場・店舗)の仕様変更は構造計算への影響が大きい
『壁をひとつ抜いただけでバランスが崩れる』というのは珍しくないので、既存建物の改修工事では特に注意ですね。
ブレースを使った補強については別記事で解説しているので、合わせてどうぞ。

剛性率に関する情報まとめ
- 剛性率とは: 各階の剛さが全階平均に対してどれくらいバランスが取れているかを示す指標
- 計算式: 各階の剛性(= 1/層間変形角) ÷ 全階の剛性の平均
- 基準値: 各階で0.6以上(建築基準法施行令第82条の6)
- 偏心率との違い: 剛性率は上下方向のバランス、偏心率は水平方向のバランス
- 不足するとソフトストーリー被害のリスク(例: ピロティ構造の1階崩壊)
- 確保方法: 耐震壁の均等配置、ブレース補強、制振・免震装置の採用
以上が剛性率に関する情報のまとめです。
耐震設計の用語ですが、施工管理としても「なぜこの階に耐震壁が集中しているのか」「なぜこの柱がこんなに太いのか」を理解する手がかりになります。改修工事で『壁を一枚抜きたい』と言われた時に、構造計算上の意味を説明できると現場の信頼度もぐっと上がりますよ。
下に分かりやすい関連記事のリンクを貼っておくので、よかったら読んでみて下さい。それでは!




