非常用発電機とは?種類、法令、負荷運転試験、点検、設置基準など

  • 非常用と常用、自家発電ってどう違うの?
  • 種類は燃料別?用途別?
  • ディーゼルとガスタービン、どっち選ぶ?
  • 結局どの建物に設置義務があるの?1000㎡?
  • 消防法・建築基準法・電気事業法、何がどれを縛ってる?
  • 点検は何ヶ月ごと?機器点検と総合点検の違いは?
  • 負荷運転試験って毎年?6年に1回って聞いたけど
  • 実負荷と模擬負荷、どっち選べばいい?
  • 容量や設置場所はどう決める?
  • 点検をサボると罰則あるの?

上記の様な悩みを解決します。

非常用発電機は、設備・電気の施工管理が新築でも改修でも必ず関わる重要設備です。ただ、消防法・建築基準法・電気事業法がそれぞれ別の角度から縛っていて、点検周期も「機器点検」「総合点検」「負荷運転試験」と分かれているため、整理しきれずに施主や元請への説明で詰まりがちです。今回は種類・法令・設置基準・点検・負荷運転試験という基本を正確に押さえた上で、施工管理として容量選定や試験立ち会いで何を見るかまで、現場目線で整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、設備系の若手の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

非常用発電機とは?

非常用発電機とは、結論「停電が起きたときに自動でエンジンが起動し、建物に電力を供給する非常用の発電設備」のことです。

電力会社からの供給が止まると自動で起動し、復電すると自動で停止するのが基本動作です。常時稼働して電気を作る「常用発電機」とは役割が異なり、非常用はあくまで停電時のバックアップに徹します。自家発電設備という大きな括りの中に、常用・非常用の区分がある、と捉えると整理しやすいです。

非常用発電機が必要とされる理由は大きく2つあります。1つは消防法が求める防災対策で、停電時に消火栓・スプリンクラー・自動火災報知設備・非常照明などが確実に動くための電源を確保することです。もう1つはBCP(事業継続計画)で、災害時でも生産ラインや医療機器、通信を止めないための備えです。人命救助の観点から「72時間(3日間)稼働できる電源」が一つの目安とされ、設置義務のない建物でも導入が進んでいます。

消火設備や非常照明など、非常電源で動かす防災設備の全体像は次の記事が参考になります。

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非常用発電機の種類

非常用発電機の種類は、結論「燃料(駆動方式)別」と「電力の供給先(目的)別」の2軸で分類するのが分かりやすいです。

まず燃料・駆動方式別では、主に次の3タイプがあります。

方式 特徴 向いている規模
ディーゼルエンジン式 軽油・重油で稼働。安価で普及率が高いが振動・騒音・黒煙が出やすい 小〜中規模(500kVA以下が目安)
ガスタービン式 振動が少なく機器も小型だが給排気風量が多く高価 大規模(500kVA超が目安)
ガスエンジン式 都市ガス・LPGで稼働。静かで燃料備蓄が不要だがガス停止に弱い 都市ガス供給エリアの施設

施工管理の選定では、建物規模・設置スペース・吸排気・燃料の調達性で決まることが多く、中小規模ではコストと実績からディーゼル式が選ばれる場面が大半です。

次に供給先(目的)別では、次の3種類に分かれ、関連する法令も変わります。

  • 防災専用:消火設備・非常照明など防災設備のみに給電する
  • 保安用:エレベーター・冷凍設備など、事業者が独自に定めた保安設備に給電する
  • 防災用・保安用共用:防災設備と保安設備の両方に給電する(大容量になりやすい)

僕の整理では、種類を聞かれたら「燃料で3つ、供給先で3つ」と2軸で答えると、相手も混乱しないです。どちらか片方だけだと話が噛み合わなくなります。

非常用発電機の設置基準

非常用発電機の設置基準で中心になるのは、結論「消防法」です。

消防法では、不特定多数の人が出入りする延べ床面積1,000㎡以上の特定防火対象物(商業施設・病院・ホテル・福祉施設・オフィスビル等)に対し、消防用設備の非常電源として非常用発電機の設置を義務付けています。これらの建物には消火栓・スプリンクラー・自動火災報知設備などが設置されており、停電時にもそれらを動かすための電源が必要だからです。

建築基準法側にも基準があり、非常用照明については停電後40秒以内に電圧を確立し、30分以上連続点灯できることなどが求められます。新設時はこうした基準を満たした上で、消防用設備の設置届を所轄消防署に提出する流れになります。

容量の決め方も設置基準と並んで重要です。非常時に動かしたい機器(防災設備+必要な保安設備)をリスト化し、それぞれの定格消費電力に加えて起動時の突入電流を見込んで容量を決めます。モーターやポンプは起動時に定格の数倍の電流が流れるため、定格の合計だけで容量を決めると始動できないことがあります。現場目線で言えば、容量は「起動電流を見込んで、必要量より一回り大きめ」が安全側の判断です。

受変電設備やキュービクルとの取り合いも設計段階で押さえておきたいポイントです。

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非常用発電機に関わる法令

非常用発電機は、結論「複数の法令が別々の角度から縛っている」のが分かりにくさの原因です。ここを切り分けて整理しておきましょう。

法令 縛っている内容
消防法 防災設備の非常電源としての設置義務・点検(機器点検・総合点検・負荷運転試験)
建築基準法 非常用照明など防災設備の維持・定期点検と特定行政庁への報告
電気事業法 10kW以上の発電機を「自家用電気工作物」とし、保安規程・電気主任技術者・月次/年次点検を義務化
大気汚染防止法 一定規模以上のディーゼル機関等を「ばい煙発生施設」とし届出対象に
火災予防条例 自治体ごとに消防署への各種届出を義務化

ポイントは、同じ1台の発電機でも「消防法では防災電源」「電気事業法では電気工作物」「大気汚染防止法ではばい煙発生施設」と、立場によって扱いが変わることです。電気事業法の関係では、10kW以上の自家用電気工作物には保安規程の届出と電気主任技術者の選任が必要になります。電気主任技術者の選任については次の記事が詳しいです。

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実務だと、施主から「結局どの届出が要るの」と聞かれることが多いので、消防(設置届)・電気事業法(保安規程・主任技術者)・大気汚染防止法(ばい煙発生施設)・火災予防条例(自治体届出)の4方向で確認する、と整理しておくと漏れがありません。

非常用発電機の点検

非常用発電機の点検は、結論「消防法に基づく機器点検(6ヶ月に1回)と総合点検(1年に1回)」が基本です。

  • 機器点検(6ヶ月に1回):外観・機器の損傷の有無、正常に起動・運転するかの確認
  • 総合点検(1年に1回):総合的な機能確認。この中に負荷運転(または内部観察等)が含まれる

点検結果は点検票・点検結果報告書にまとめ、消防機関へ報告する義務があります。電気事業法の側でも、電気工作物として月次点検(外観・運転状態の確認)と年次点検(自動起動停止装置や接続部の確認)が求められるため、消防法と電気事業法の両輪で点検が回っていると理解しておくとよいです。

点検をサボると罰則がある点も押さえておきましょう。消防法では、点検未実施や虚偽報告に対して建物の所有者・管理者へ罰金などの罰則が定められています。非常用発電機は「いざというときに必ず動く」ことが社会的責務とされる設備なので、点検は形式ではなく機能維持のために行う、という位置づけです。

非常用発電機の負荷運転試験

負荷運転試験とは、結論「非常用発電機に実際に負荷をかけて、定格に近い状態で正常運転できるかを確認する点検」です。総合点検の一環として行われ、方法は大きく2種類あります。

  • 実負荷試験:実際の防災・保安設備を稼働させて負荷をかける。設備の動作も同時に確認できるが、電源切替時に瞬間停電のリスクがあり、必要な負荷を集めにくい場合もある
  • 模擬負荷試験:試験用の負荷装置を発電機に接続して負荷をかける。瞬間停電がなく、負荷量を調整できるため近年はこちらが主流

負荷の大きさは定格出力の30%以上をかけるのが基準とされています。そして周期については、平成30年6月の消防法改正が重要です。従来は負荷運転を1年に1回でしたが、改正により「予防的な保全策」が講じられている設備では、負荷運転に代えて内部観察等を選べるようになり、負荷運転・内部観察等の周期が6年に1回へ延長されました。

ここは現場でよく混乱するので整理すると、原則の総合点検は1年に1回だが、その中の負荷運転(または内部観察等)については、予防的保全策があれば6年に1回でよい、という二段構えです。「点検が全部6年に1回になった」わけではない点に注意してください。僕の考えでは、施主に説明するときは「年次点検は毎年、負荷運転だけ条件付きで6年に1回」と分けて伝えると誤解が防げます。

施工管理が押さえる設置・選定・試験立ち会いのポイント

ここまでの法令・点検を踏まえて、設備施工管理として実務で押さえるべきポイントを整理します。負荷試験業者に任せきりにせず、自分で判断・確認する視点が現場では効いてきます。

設置・選定で見るのは次の点です。

  • 容量:防災+必要保安設備の定格に起動電流を見込み、一回り大きめを選定する
  • 吸排気:ディーゼル・ガスタービンは給排気風量が大きく、給気ガラリ・排気ダクトの設置スペースが要る
  • 騒音・振動:機械室の遮音と防振基礎を計画する。共鳴・共振で想定より大きくなることがある
  • 燃料:燃料種別ごとの保管容量・期間と、オイルタンクの離隔・防油堤を確認する
  • 排気・環境:大気汚染防止法のばい煙規制と、排気口の位置(近隣・給気口への回り込み)を確認する

非常電源の信頼性を上げるには、UPS(無停電電源装置)との組み合わせも検討します。発電機は起動に40秒程度かかるため、その間の瞬断に弱いサーバーや医療機器はUPSでつなぎ、発電機が立ち上がったら切り替える構成が定番です。UPSの選定は次の記事にまとめています。

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負荷運転試験の立ち会いでは、施工管理として「起動時間(規定内に電圧確立するか)」「運転中の異音・異常振動・排気色」「冷却水温・油圧などの計器値」「自動起動・自動停止が正しく働くか」を見ます。試験そのものは専門業者が行いますが、結果を施主に説明し、是正が必要なら手配するのは施工管理の役割です。自分としては、試験は「業者に任せる作業」ではなく「設備の健全性を施主に保証するための確認の場」と捉えています。

非常照明や誘導灯など、非常電源とセットで動く設備も合わせて確認しておくと、停電時の全体像が見えます。

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非常用発電機に関するよくある質問

Q1:非常用発電機と常用発電機・自家発電設備はどう違いますか?

自家発電設備という大きな括りの中に、常時電気を作る「常用」と、停電時だけ起動する「非常用」の区分があります。非常用発電機は普段は停止していて、停電で自動起動し、復電で自動停止するのが基本動作です。常用は電力購入の代替やコジェネとして常時運転する点が異なります。

Q2:UPSがあれば非常用発電機は不要ですか?

役割が違うため、多くの施設では併用が推奨されます。UPSは停電の瞬間から無瞬断で給電できますが、バッテリーのため供給時間は数分〜十数分程度と短いです。非常用発電機は起動に40秒ほどかかる代わりに、燃料がある限り長時間給電できます。UPSで瞬断をつなぎ、発電機が立ち上がったら切り替える構成が信頼性の高い停電対策になります。

Q3:負荷運転試験は本当に6年に1回でいいのですか?

条件付きです。平成30年の消防法改正で、「予防的な保全策」が講じられている設備に限り、負荷運転(または内部観察等)の周期が6年に1回へ延長されました。予防的保全策がない場合は従来通り1年に1回です。また、これは総合点検全体の周期ではなく、その中の負荷運転部分の話なので、機器点検6ヶ月・総合点検1年という基本周期は変わりません。

Q4:非常用発電機の耐用年数はどのくらいですか?

法定耐用年数(減価償却上)は15年とされることが多い一方、適切に整備すれば30年程度使えるという見方もあり、文脈によって語られる年数が異なります。実務では、メーカー推奨の更新時期や部品供給の終了、オーバーホール履歴を踏まえて更新を判断します。改修案件では「使えるか」だけでなく「部品が手に入るか」も確認しておくと安全です。

Q5:施主に「うちは設置義務がある?」と聞かれたら何を確認しますか?

まず建物の用途・延べ床面積・消防用設備の有無を確認します。延べ床1,000㎡以上の特定防火対象物で、非常電源を要する消防用設備があれば消防法の対象になります。最終的な義務の有無は用途・規模・構造で変わるため、所轄消防署への確認が確実です。あわせて電気事業法(10kW以上)や大気汚染防止法の対象になるかも併せて見ておくと、届出の説明まで一度に済みます。

非常用発電機に関する情報まとめ

  • 非常用発電機とは:停電時に自動起動して給電するバックアップ電源。常用・自家発電設備の一区分
  • 種類:燃料別(ディーゼル・ガスタービン・ガスエンジン)と目的別(防災専用・保安用・共用)の2軸
  • 設置基準:消防法で延床1,000㎡以上の特定防火対象物が義務。容量は起動電流を見込み大きめに
  • 関わる法令:消防法・建築基準法・電気事業法・大気汚染防止法・火災予防条例が別角度で縛る
  • 点検:機器点検6ヶ月に1回、総合点検1年に1回。未実施は罰則あり
  • 負荷運転試験:実負荷/模擬負荷、30%以上の負荷。予防的保全策があれば6年に1回+内部観察等(H30改正)
  • 施工管理の要点:容量・吸排気・騒音・燃料・UPS併用を計画し、試験立ち会いで起動時間・計器値・自動起動停止を確認

以上が非常用発電機に関する情報のまとめです。

非常用発電機は、法令と点検周期さえ正確に切り分けられれば、施主や元請への説明で迷わなくなります。消防法(設置・点検)・電気事業法(電気工作物)・建築基準法(防災設備維持)がそれぞれ何を縛っているかを押さえ、負荷運転試験は「年次点検は毎年、負荷運転は条件付きで6年に1回」と分けて理解するのがコツです。受変電設備やUPS、非常照明といった周辺設備と合わせて押さえておくと、停電時の電源系統を一枚の絵で説明できるようになります。

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