インバーターエアコンとは?仕組み、見分け方、電気代、電源など

  • インバーターエアコンってどういう仕組み?
  • 今売ってるエアコンは全部インバーター?
  • ノンインバーター機と何が違うの?
  • 手元の機械がどっちなのか見分けたい
  • 電気代はどれくらい変わる?
  • APFって何を見る数字?
  • 専用回路はどう選定すればいい?
  • 高調波の対策は必要になるの?
  • 発電機や非常電源でも動く?
  • 故障したときの直し方が違うって聞いた
  • 更新工事で電源はそのまま使える?

上記の様な悩みを解決します。

インバーターエアコンは、いまの空調機ではもはや前提条件になっている技術です。ただ「省エネで快適」という説明で止まっている記事が多く、施工管理として本当に効いてくる話、つまり電源計画と高調波、故障モードの違い、更新工事で既設電源をどう扱うか、といった部分はほとんど書かれていません。今回は圧縮機の周波数制御という仕組みから入って、見分け方、APFの読み方、専用回路と高調波抑制対策の考え方、そして更新工事での判断まで、現場で使える形で整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

インバーターエアコンとは?

インバーターエアコンとは、結論「圧縮機モーターに流す交流の周波数を連続的に変えて、回転数を可変制御するエアコン」のことです。

インバーターという言葉自体は「逆変換」の意味で、直流を交流に変換する装置を指します。エアコンの中では、まずコンバータで商用電源の交流を直流に整流し、それをインバーターで任意の周波数の交流に作り直して圧縮機モーターに送ります。周波数を上げれば回転数が上がって能力が出る、下げれば絞れる、という単純な原理です。パワー素子でスイッチングして周波数と電圧の両方を作るので、パルス幅を変えることで電圧も同時にコントロールしています。

スイッチング素子の基礎はこちらで整理しています。

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インバーター搭載前のエアコンは、温度センサとスイッチの組み合わせで「設定温度まで冷やす/達したら止める/上がったらまた回す」を繰り返す発停制御でした。圧縮機は全力運転か停止しかないので、室温が上下に振れるうえ、起動のたびに大きな電流が流れて効率が悪い。インバーターはこれを「必要な分だけ回す」に変えた技術です。

効き方の大きさは、メーカー公表値でざっくり掴めます。ダイキンがJIS B8616:2015の条件(東京・店舗)で示している比較では、インバーターなしのエアコンを仮定した年間消費電力量が5,702kWh、同等能力のインバーター搭載機(SSRC140BA)が2,375kWhとされています。同じ能力で年間消費電力が半分以下になる、というのがインバーターの効果の規模感です。

そして重要な前提ですが、日本国内で現在販売されているルームエアコンおよび業務用エアコンは、実質すべてインバーター機です。ダイキンの資料にも「現在日本国内ではインバータなしのエアコンを販売していない」という注記があります。つまり新設案件で「インバーター機を選ぶ」という判断は発生せず、意識するべきなのは既設のノンインバーター機を扱うとき、そして電源側の計画のときだけになります。

僕の感覚だと、インバーターエアコンは「省エネ機能」ではなく「電気設備としての性格が変わった機械」と捉えるべきだと思っています。始動電流が小さくなる代わりに高調波を出す、機械的な故障が減る代わりに基板故障が増える。この性格の変化を押さえておくと、電源計画も更新計画も自分で組めるようになります。

ノンインバーター機との違いと見分け方

インバーター機とノンインバーター機(定速機)の違いは、圧縮機の回し方の違いから全部派生します。施工管理として意識すべき項目で並べるとこうなります。

比較項目 インバーター機 ノンインバーター機(定速機)
圧縮機の運転 周波数可変で連続運転 全力運転と停止の繰り返し
室温の安定性 設定値付近で安定 上下に振れる
始動電流 小さい(緩やかに立ち上げる) 大きい(定格の数倍)
部分負荷効率 高い 低い
高調波の発生 発生する(整流回路があるため) ほぼ発生しない
主な故障部位 インバーター基板、パワー素子 圧縮機、電磁接触器、コンデンサ
修理の性格 基板交換(部品供給期間に依存) 機械部品の交換で延命しやすい
電源の周波数依存 内部で作り直すので影響が小さい 商用周波数で回転数が決まる

ノンインバーター機は商用電源の周波数で回転数が決まるので、東日本の50Hzと西日本の60Hzで能力が変わります。日本は富山県・長野県・富士川以西の静岡県から西が60Hz、新潟県・群馬県・富士川以東の静岡県から東が50Hzという系統になっているため、機器の転用や中古品の移設では周波数の確認が必須でした。インバーター機は内部で周波数を作り直すのでこの制約から自由になっています。

現場での見分け方

古い建物の更新工事で「これはインバーターか」を判断する場面は、いまでも普通にあります。確認の順番としてはこうなります。

  • 室外機の銘板を見る:型番とあわせて「INVERTER」表記、あるいは定格入力の記載形式で判別できる
  • 銘板の電源仕様を見る:始動電流(LRA)の記載が定格の数倍で目立つ場合は定速機の可能性が高い
  • 製造年を見る:業務用は1980年代、ルームエアコンは1980年代前半以降に順次インバーター化が進んだ
  • 運転音の変化を聞く:室外機の音が段階的でなく連続的に上下するならインバーター機
  • カタログや仕様書のAPF記載を探す:APF表記がある機種はインバーター機

いちばん確実なのは銘板の型番でメーカーの機種一覧を引くことです。銘板が読めないほど劣化している室外機に当たることもあるので、その場合は運転音と電流の立ち上がり方で当たりをつけて、メーカーのサービスに型番照会をかけるのが実務の流れになります。

パッケージエアコンやマルチエアコンの分類も合わせて確認しておくと整理が早いです。

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電気代と省エネ性能の見方

インバーターエアコンの省エネ性能を比べるときの指標がAPF(通年エネルギー消費効率/Annual Performance Factor)です。定格能力ではなく、1年間を通した実際の使い方に近い条件で効率を評価する数字です。

APFは省エネ法のトップランナー制度でエアコンの目標基準値として使われていて、資源エネルギー庁の区分・目標基準値では、業務用についてJIS B 8616に規定する方法で算出した数値とされています。JISの版が上がるとAPFの算出条件も変わるため、APF2006とAPF2015のように世代が付く場合があります。数値を比較するときは同じ世代のAPF同士で見るのが原則で、ここを混ぜると新旧の機種比較が成立しません。

指標の意味の違いは整理しておくと便利です。

指標 見ているもの 使いどころ
定格能力(kW) ある1点の条件での冷暖房能力 機器選定の入口。負荷計算との突き合わせ
COP ある1点の条件での効率(能力÷消費電力) 定格点での性能比較
APF 1年を通した想定使用条件での総合効率 ランニングコストと省エネ評価
期間消費電力量(kWh) 想定条件での年間電力量 電気代の概算、更新効果の試算

COPの読み方はこちらで詳しく扱っています。

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能力計算との突き合わせはこちらです。

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実務で電気代の削減効果を試算するときは、期間消費電力量の差に電力単価を掛けるのがいちばん素直です。ただし、APFと期間消費電力量はいずれもJISの標準条件(地区・建築用途・運転時間)での値なので、実際の建物の運転時間が標準条件より長ければ削減額は大きくなり、短ければ小さくなります。オーナーに説明するときは「標準条件での値です」と一言添えておかないと、後で実測と合わずに揉めます。

正直なところ、更新提案で削減額をきれいに出したくなる場面は多いんですが、条件を明示しない試算は後で自分の首を絞めます。試算表に地区・用途・運転時間・単価の4つを併記しておくだけで、話がずっと安全になります。

電源計画で押さえること

ここが、一般向けの記事にはまず出てこない部分です。インバーターエアコンは電気設備として2つの特徴を持ちます。始動電流が小さいこと、そして高調波電流を発生させることです。この2つが電源計画に効きます。

まず始動電流について。定速機は起動時に定格の数倍の電流が流れるので、幹線容量や遮断器の選定でその突入分を見る必要がありました。インバーター機は周波数をゼロから立ち上げるので突入電流が小さく、この点では余裕が生まれます。ただし「余裕が生まれた」だけで、専用回路が不要になるわけではありません。単相200Vの機種でも三相200Vの機種でも、専用回路で分電盤から取るのが原則です。

幹線と分電盤の考え方はこちらが参考になります。

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次に高調波です。インバーターは整流回路を持つので、電源側から見ると歪んだ電流を引きます。これが系統に流れ出すと、進相コンデンサの過熱や、変圧器の過熱、他機器の誤動作といった問題につながります。

制度の扱いは、受電電圧によって二本立てになっているのがポイントです。

低圧で使う小容量機器については、かつての「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」が2004年9月6日に廃止され、JIS C 61000-3-2(1相当たりの入力電流が20A以下の機器の高調波電流発生限度値)に移行しています。一方、高圧・特別高圧受電の建物については「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」(平成6年制定、2004年1月改正)が現在も有効です。

つまり、家庭のルームエアコン1台はJIS側で機器メーカーが担保する世界ですが、高圧受電のビルに業務用エアコンやビル用マルチを大量に入れる案件は、需要家側のガイドラインで判定する世界になります。ここを混同すると「エアコンは対策済みだから大丈夫」という誤った説明をしてしまいます。

高圧受電側の判定は2段階です。第1ステップとして、高調波発生機器を洗い出し、機器ごとの換算係数Kiと定格容量Piから6パルス変換装置換算の等価容量を求め、受電電圧ごとの限度値と比較します。限度値は6.6kV受電で50kVA、22kVおよび33kV受電で300kVA、66kV以上の受電で2,000kVAで、これを超える場合に第2ステップの流出電流計算へ進みます。逆に言えば、6.6kV受電の建物で等価容量が50kVA以下なら詳細検討は不要です。

なお、JIS C 61000-3-2の適用対象になる小容量機器は等価容量の計算から除外される扱いなので、対象機器の切り分けを最初にやります。メーカーのカタログでも「電流値が20Aを超える空調機は高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドラインの対象機器」という書き方で線引きが示されています。

高圧受電設備側の全体像はこちらで確認できます。

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現場での実務的な進め方としては、次の順番で情報を集めるとスムーズです。

  • 機器メーカーのカタログ・仕様書で高調波の換算係数と定格容量を拾う
  • 建物の受電電圧(低圧/高圧/特別高圧)と契約形態を確認する
  • 高調波発生機器を建物全体で洗い出す(エアコン以外に照明、UPS、EV充電器、エレベーターなど)
  • 等価容量を計算して受電電圧ごとの限度値と比較する(電力会社の受電ガイドブックや日本電気協会の様式を使う)
  • 超える場合はリアクトル内蔵機種やアクティブフィルタなどの対策方針を設計と協議する

なお、進相コンデンサを設置している建物では、直列リアクトル付きのものかどうかを必ず確認します。リアクトルなしのコンデンサは高調波電流を吸い込みやすく、過熱や焼損の原因になります。既設の受変電設備にインバーター負荷を後から大量に足す改修工事では、ここが盲点になりやすい部分です。

発電機や非常電源からの給電については、原則としてメーカーの確認が必要と考えたほうが安全です。インバーターは電源電圧と周波数の変動、そして電圧波形の歪みに対して定速機ほど寛容ではないので、可搬型発電機での仮設運転や、非常用発電機系統への接続は事前確認が前提になります。無停電電源装置との組み合わせも同様です。

デメリットと故障時の考え方

インバーターエアコンのデメリットは、省エネ性の裏返しとして出てきます。

いちばん実務に響くのが、故障モードが電子部品側に移ったことです。定速機は圧縮機や電磁接触器といった機械部品の故障が主で、部品交換で延命しやすい構造でした。インバーター機はパワー素子や制御基板の故障が主になるので、基板の部品供給が終わっている機種は「部品がなくて直せない」という結論になります。修理の可否が部品供給期間に強く依存するのが、定速機との決定的な違いです。

デメリットとして押さえておくべき点は次の4つです。

  • 基板故障は部品供給期間に依存し、供給終了後は本体更新しか選択肢がなくなる
  • 高調波を発生するため、受電設備側の検討が必要になる場合がある
  • 初期費用は定速機より高い(ただし現在は選択肢がないため比較の意味は薄い)
  • インバーターのスイッチングノイズが弱電系に影響する場合がある

4つ目は現場で見落とされがちな点です。放送設備やインターホン、計測系の弱電ケーブルをインバーター機の電源線と同一のラックや近接ルートで長距離並走させると、ノイズを拾う可能性があります。弱電と強電の離隔、シールドの接地処理、ラックの区画といった基本を守るだけで大半は避けられるので、施工図の段階でルートを分けておくのが予防策です。

冷媒回路側の注意点は、インバーター機かどうかとは別に効いてきます。

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個人的には、インバーター機の時代になって施工管理が持つべき視点は「機械が壊れないように施工する」から「電子部品が壊れる環境を作らないように施工する」に移ったと感じます。電源の質、接地、ノイズ、そして室外機周りの温度環境。この4つを丁寧にやった現場は、引渡し後の初期故障がはっきり少なくなります。

更新工事で施工管理が判断すること

古い建物の空調更新で、既設がノンインバーター機というケースはまだあります。そのときに施工管理が判断すべきことは、機器の選定より電源側の確認です。

確認の順番はこうなります。

  • 既設の電源仕様を確認する(相数、電圧、既設ブレーカ容量、ケーブルサイズと経路)
  • 新機種の必要容量と比較する(インバーター機は突入が小さいので既設回路で足りることが多いが、能力アップを伴う更新では逆に不足する)
  • 既設ケーブルの絶縁と劣化を測定する(流用するなら絶縁抵抗測定の記録を残す)
  • 建物全体の高調波の状況を確認する(今回の更新で等価容量が基準値を超えないか)
  • 進相コンデンサに直列リアクトルが付いているか確認する
  • 制御・監視の連携を確認する(中央監視や遠隔監視との信号の取り合い)

2番目は判断が分かれるところです。定速機からインバーター機への同能力更新なら、突入電流が小さくなるぶん既設回路をそのまま使える場合が多いです。ただし、能力アップを伴う更新や、室内機を増やす更新では定格電流そのものが増えるので、既設ブレーカとケーブルサイズの検証が必要になります。「インバーターだから電源は楽になる」という思い込みで検証を飛ばすと、竣工後にブレーカが落ちる案件になります。

受変電設備側の余力も見ておく必要があります。

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現場目線で言えば、この6項目のうち3番目の絶縁抵抗測定だけは、流用するなら絶対に記録を残しておくべきです。既設ケーブルを流用して数か月後に地絡が出た場合、測定記録がなければ工事の責任範囲を切り分けられません。測定自体は数十分で終わる作業なので、やらない理由がないところです。

インバーターエアコンに関する情報まとめ

  • インバーターエアコンとは:圧縮機モーターに流す交流の周波数を連続的に変えて回転数を可変制御するエアコン
  • 仕組み:コンバータで交流を直流に整流し、インバーターで任意周波数の交流に作り直して圧縮機に送る
  • 効果の規模:JIS B8616:2015条件(東京・店舗)のメーカー比較で、年間消費電力量が5,702kWhから2,375kWhに低減した例がある
  • 現状:日本国内で販売されているルームエアコン・業務用エアコンは実質すべてインバーター機
  • 定速機との違い:始動電流が小さい、部分負荷効率が高い、高調波を発生する、故障部位が基板側に移る
  • 周波数依存:定速機は50Hz/60Hzで能力が変わるが、インバーター機は内部で作り直すため影響が小さい
  • 見分け方:室外機の銘板と型番、始動電流の記載、製造年、運転音の連続性、APF表記の有無
  • 省エネ指標:APF(通年エネルギー消費効率)。省エネ法トップランナー制度の目標基準値で、業務用はJIS B 8616に基づく
  • APF比較の注意:APF2006とAPF2015のように算出条件の世代が違うため、同世代同士で比較する
  • 高調波の制度:低圧小容量機器は2004年9月6日にガイドラインが廃止されJIS C 61000-3-2へ移行、高圧・特別高圧受電の需要家向けガイドライン(平成6年制定、2004年1月改正)は現行
  • 高圧受電の判定:換算係数Kiと定格容量Piから6パルス換算の等価容量を求め、限度値(6.6kV受電50kVA/22・33kV受電300kVA/66kV以上2,000kVA)を超えるかで判定(第1ステップ)
  • 受電設備の注意:進相コンデンサは直列リアクトル付きかを必ず確認する
  • 発電機・非常電源:電圧・周波数の変動と波形歪みに定速機ほど寛容でないため、事前にメーカー確認
  • デメリット:基板故障が部品供給期間に依存、高調波検討、スイッチングノイズの弱電への影響
  • 更新工事の確認:既設電源仕様、新機種の必要容量、既設ケーブルの絶縁測定記録、建物全体の高調波、進相コンデンサ、監視連携

以上がインバーターエアコンに関する情報のまとめです。

インバーターエアコンは、いま新設で選ぶかどうかを迷う技術ではなく、すでに前提になっている技術です。だからこそ施工管理が価値を出せるのは、機器の説明ではなく電源側の判断のほうになります。始動電流が小さくなった代わりに高調波を出す機械が建物中に並ぶ、という構造を理解していれば、受電設備の余力の確認も、進相コンデンサの仕様確認も、既設回路を流用するときの絶縁測定も、自分の判断で先に手を打てるようになります。実務だと、この先手が打てているかどうかで竣工前の1か月がまったく違ってきます。

インバーターエアコンに関するよくある質問

Q1:今売られているエアコンは全部インバーターですか?

実質的にすべてインバーター機です。ダイキンの技術資料にも「現在日本国内ではインバータなしのエアコンを販売していない」という注記があり、ルームエアコンも業務用エアコンもインバーター搭載が前提になっています。したがって新設案件では「インバーター機を選ぶ」という判断は発生せず、インバーターかどうかを気にする必要があるのは既設のノンインバーター機を扱う更新工事のときと、電源側の高調波検討をするときです。

Q2:ノンインバーター機との電気代の差はどれくらいですか?

条件次第ですが、桁が変わるほどではないものの半分近くになるケースがあります。ダイキンがJIS B8616:2015の条件(東京・店舗)で示している比較では、インバーターなしを仮定した年間消費電力量5,702kWhに対し、同等能力のインバーター搭載機が2,375kWhです。ただしこれはJISの標準条件での値なので、実際の建物の運転時間や外気条件で差は変わります。オーナーに試算を出すときは、地区・用途・運転時間・電力単価の4条件を必ず併記してください。

Q3:手元の室外機がインバーター機か定速機か、どう見分けますか?

まず室外機の銘板の型番を読んで、メーカーの機種一覧で照会するのが最も確実です。銘板上の「INVERTER」表記、始動電流(LRA)の記載が定格の数倍で目立つかどうか、製造年も判断材料になります。銘板が読めない場合は運転音で当たりをつけられます。室外機の音が段階的でなく連続的に上下するならインバーター機、全力と停止しかないなら定速機の可能性が高いです。カタログにAPF記載がある機種はインバーター機です。

Q4:APFとCOPはどう使い分ければいいですか?

COPはある1点の条件での効率(能力÷消費電力)で、定格点の性能比較に使います。APFは1年を通した想定使用条件での総合効率で、ランニングコストと省エネ評価に使います。インバーター機は部分負荷での効率が高いので、定格点だけを見るCOPでは実力が表れません。だから省エネ法のトップランナー制度でもAPFが目標基準値として採用されています。ただしAPF2006とAPF2015のように算出条件の世代が違うので、比較は同世代同士で行ってください。

Q5:インバーターエアコンを入れると高調波対策が必要になりますか?

建物の受電電圧で判断が変わります。低圧で使う小容量機器は、2004年9月6日に「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」が廃止され、JIS C 61000-3-2(1相当たりの入力電流20A以下の機器の高調波電流発生限度値)に移行しているので、機器メーカー側で担保される世界です。一方、高圧・特別高圧受電の建物は「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」が現行で、換算係数と定格容量から等価容量を計算し、受電電圧ごとの限度値(6.6kV受電で50kVA、22kVおよび33kV受電で300kVA、66kV以上で2,000kVA)を超えるかどうかを判定します。超える場合は第2ステップとして流出電流を計算します。

Q6:進相コンデンサがある建物で気をつけることはありますか?

直列リアクトルが付いているかを必ず確認してください。リアクトルなしの進相コンデンサは高調波電流を吸い込みやすく、過熱や焼損の原因になります。既設の受変電設備に対して、改修工事でインバーター負荷を後から大量に追加する場合は特に注意が必要な部分です。既設のコンデンサ仕様が不明な場合は、盤内の銘板確認と単線結線図の照合をセットで行い、必要なら電気設計側にリアクトル付きへの更新を提案します。

Q7:発電機や非常電源でインバーターエアコンは動きますか?

原則としてメーカー確認が必要です。インバーターは電源電圧と周波数の変動、そして電圧波形の歪みに対して定速機ほど寛容ではないため、可搬型発電機での仮設運転や、非常用発電機系統への接続は事前確認を前提に計画します。発電機容量も、定格容量だけでなく波形品質と電圧変動率まで見る必要があります。無停電電源装置との組み合わせも同様で、機種ごとの適合可否をメーカーの技術サービスに照会するのが確実です。

Q8:定速機からインバーター機に更新するとき、既設の電源は使えますか?

同能力の更新なら使える場合が多いですが、必ず検証してください。インバーター機は突入電流が小さいので、その点では既設回路に余裕が生まれます。ただし能力アップを伴う更新や室内機を増やす更新では定格電流そのものが増えるため、既設ブレーカ容量とケーブルサイズの検証が必要です。流用する場合は絶縁抵抗測定を行って記録を残してください。数十分の作業ですが、後で地絡が出たときに工事の責任範囲を切り分ける唯一の証拠になります。

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