ハイテンションボルトとは?F10T・S10T、締付け、検査など

  • ハイテンションボルトって結局なに?普通のボルトと何が違う?
  • F10TとS10T、どっちを使えばいい?
  • FがFriction、SがStructuralってどういう意味?
  • 摩擦接合の原理がいまいち分からない
  • 一次締め→マーキング→本締めの順序は守ってるけど、なぜこの順番?
  • 締付け順序は中央から外、上から下って本当?
  • ピンテールが破断しないボルトが1本あった、どうする?
  • マーキングずれが30°超えたら不合格って、なぜ?
  • 共回りって何?発覚したらどう対応?
  • 本締め後の検査、何を見ればいい?
  • 軸力とトルク、どっちで管理するのが正解?
  • 溶融亜鉛メッキボルト(F8T)はどんな現場で使う?
  • メーカー(JFE・NSボルテン・神鋼)の違いは?
  • 締付け部のタッチアップ、いつやる?
  • 共回り発生で1本不合格、ボルト群全体を再施工?

上記の様な悩みを解決します。

ハイテンションボルト(高力ボルト)は鉄骨造の梁・柱・ブレース接合で標準的に使われる、鉄骨建築の心臓部とも言える接合金物です。ゼネコン・中堅建設会社の主任技術者として「建方を任されたが、本締め検査の段取りが頭で整理できてない」「マーキングのずれが30°ギリギリで判定に迷った」「共回り1本発生でボルト群全体を再施工した方が良いのか判断つかない」というケースが多い領域。今回は定義・種類・規格といった基礎を押さえた上で、現役の施工管理経験者目線で「F10TとS10Tの使い分け」「摩擦接合の原理」「締付け3段階のチェックポイント」「不良パターン6つの対応フロー」「メーカー横断比較」など、明日の建方検査で使えるレベルまで落とし込みました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

ハイテンションボルトとは?

ハイテンションボルトとは、結論「鉄骨造の部材接合に使う、引張強さ1,000N/mm²級の高強度ボルト」のことです。読みは「ハイテンションボルト」、別名「高力ボルト(こうりきボルト)」、英語では High Tension Bolt または High Strength Bolt と呼びます。

鉄骨建築の柱・梁・ブレース・継手などの接合部で、部材同士を強い力で締付けて摩擦力で接合する目的で使われます。普通のボルト(中ボルト、引張強さ400〜600N/mm²級)と比べると引張強さが2倍以上あり、構造設計上の主要接合部にはまず使われない選択肢が無いと言ってもいい金物。

JIS B 1186(高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット)とJSS Ⅱ-09(トルシア形高力ボルト)に規格が定められており、これに適合した品が建築・土木の鋼構造物で使用されます。

ボルト全般・通常のボルトとの位置づけはこちら。

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僕としては、ハイテンションボルトを「鉄骨を強引に締めるボルト」と捉えるのは半分正しくて半分間違い。正確には「部材同士の摩擦面に高い圧縮力をかけて、その摩擦で力を伝達する仕組み」を作るためのボルト。だから締付け強度(軸力)の管理が施工品質の大半を決めます。

摩擦接合の原理はこちらで詳しく解説しています。

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ハイテンションボルトの種類

ハイテンションボルトは形状・規格・表面処理で大きく3〜4種類に分かれます。

種類①:F10T(高力六角ボルト)

項目 内容
規格 JIS B 1186
形状 六角頭+六角ナット+平座金のセット
締付方法 トルクレンチ(トルク管理)
引張強さ 1,000N/mm²以上
主用途 土木(橋梁・鋼構造物)、特殊現場

F10Tの「F」はFriction(摩擦)の頭文字、「10」は引張強さ1,000N/mm²、「T」はTensile Strength(引張強さ)の頭文字。最も古くからある形状で、トルクレンチで規定トルクまで締付けます。

建築では締付けが手間(トルク管理が職人の経験に依存)なので、近年は後述するS10Tにシェアを奪われていますが、土木分野(橋梁の架設現場)では依然主流。

種類②:S10T(トルシア形高力ボルト)

項目 内容
規格 JSS Ⅱ-09
形状 丸頭+六角ナット+平座金、先端にピンテール
締付方法 専用シャーレンチ(自動破断)
引張強さ 1,000N/mm²以上
主用途 建築鉄骨の主接合部

S10Tの「S」はStructural(構造)の頭文字、「10」と「T」はF10Tと同じ意味。最大の特徴は「先端のピンテール(細い首)が規定軸力に達した時点で自動的に破断する」仕組みで、トルク管理が不要になります。

建築鉄骨では現在ほぼS10Tが標準。理由は「施工品質が職人技に依存しない」「専用シャーレンチで作業速度が安定する」「ピンテール破断で本締め完了の目視判定が可能」の3点。

種類③:F8T(溶融亜鉛メッキ高力ボルト)

項目 内容
規格 JSS Ⅱ-13
形状 F10Tと同じ六角形状+亜鉛メッキ
締付方法 トルクレンチ
引張強さ 800N/mm²以上
主用途 外部露出部・耐食性要求現場

F10Tに溶融亜鉛メッキを施したタイプ。メッキにより耐食性が大きく向上するため、屋外・海岸沿い・大気腐食環境の鉄骨に使われます。引張強さがF10Tよりやや低い(800N/mm²級)のは、メッキ工程の加熱で材料強度がわずかに下がるため。

種類④:その他(特殊用途)

種類 特徴 主用途
F11T 引張強さ1,100N/mm²級(耐力高い) 高荷重特殊現場(建築では原則禁止)
超高力ボルト 引張強さ1,200N/mm²以上 橋梁・特殊鋼構造
SED ボルト 拡管形・施工性向上型 改修・後付け現場

F11Tは過去に建築でも使われたが、遅れ破壊(時間が経過してから破断する現象)の問題で建築基準法上は原則使用禁止。現在の建築用は事実上F10T/S10T/F8Tの3種類に絞られます。

種類 建築での使用頻度 特徴
F10T 締付トルク管理が必要、技術依存
S10T ◎(主流) ピンテール破断で品質安定
F8T 外部露出部、耐食性要求
F11T × 遅れ破壊で建築禁止

僕の感覚だと、現在の鉄骨建築現場で施工管理が出会うハイテンションボルトはほぼS10T一択。年に1〜2回、改修現場でF10Tが出てくる程度、海岸沿いの現場でF8Tが出てくる程度、というのが現場感覚です。

F10TとS10Tの違い(規格・施工性で徹底比較)

施工管理として最もよく聞かれる「F10TとS10Tの違い」を表で整理します。

項目 F10T(高力六角ボルト) S10T(トルシア形高力ボルト)
規格 JIS B 1186 JSS Ⅱ-09
名称由来 F=Friction(摩擦) S=Structural(構造)
引張強さ 1,000N/mm²以上 1,000N/mm²以上
頭部形状 六角 丸頭+ピンテール
締付工具 トルクレンチ 専用シャーレンチ
締付管理 トルク値で管理 ピンテール破断で自動管理
本締め判定 トルク到達確認 ピンテール破断目視
職人技依存度 高(トルク値の体感) 低(機械化)
現場での発見 稀(土木中心) 多(建築主流)

F10TとS10Tは引張強さの規格は同じですが、「締付方法」が決定的に違います。F10Tはトルクレンチで規定トルク値まで人間が締付ける(技術依存)、S10Tは専用シャーレンチでピンテールが自動破断(機械任せ)という違い。

近年の建築鉄骨でS10Tが主流になった理由は以下。

要因 内容
品質安定 機械的にピンテール破断するので技術差が出にくい
作業速度 シャーレンチで1本5〜10秒の本締めが可能
検査の容易さ ピンテール破断+マーキングで目視判定
職人不足 トルクレンチの熟練工が減少
施工コスト 総合的にF10Tより安くなる

僕としては、F10TとS10Tの違いを「鉄骨施工管理が答えられないのは恥ずかしいレベル」と捉えてます。建方検査の現場で職人や検査官と話すときに、「F10Tはトルク管理/S10Tはピンテール破断で軸力管理」と一文で言えると、それだけで現場での信頼性が一段上がる。

S10Tの詳細はこちらで深掘りしています。

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摩擦接合の原理

ハイテンションボルトの最大の特徴は「摩擦接合」という接合の仕組み。ここを理解しておかないと、施工管理として「なぜ軸力管理が大事か」が腹落ちしません。

摩擦接合とは

摩擦接合とは、ボルトの軸力で部材同士を強く挟み込み、部材接合面に発生する摩擦力で外力を伝達する接合方式のこと。

ボルト自体にせん断力(横方向の力)はかからない設計で、外力は全て「部材接合面の摩擦力」で受け持ちます。これが普通のボルト接合(せん断接合)との根本的な違い。

接合方式 外力の伝達経路 代表ボルト
摩擦接合 部材接合面の摩擦力 F10T・S10T・F8T
せん断接合 ボルト軸のせん断力 中ボルト・リーマボルト
引張接合 ボルト軸の引張力 特殊用途

軸力(クランプ力)が品質を決める

摩擦接合の性能は「ボルト軸力(部材を挟み込む力)」で決まります。軸力が不足すると摩擦力が不足し、設計時の接合性能が出ません。

S10TやF10Tの「規定軸力」は規格で定められていて、例えばM22 S10Tの場合は標準軸力205kN、許容範囲は193〜217kN程度。施工管理として、この軸力管理が施工品質の本丸になります。

ボルト径 S10T標準軸力 F10T標準軸力
M16 118kN 117kN
M20 172kN 172kN
M22 205kN 205kN
M24 246kN 247kN

摩擦面の状態が重要

摩擦接合のもう1つの肝が「摩擦面の状態」。塗装・油分・錆・段差があると摩擦係数が下がり、設計性能が出ません。

摩擦面の状態 摩擦係数(μ) 判定
赤錆発生面 0.45以上 ◎(標準)
無塗装 0.40〜0.45
ショットブラスト面 0.45以上
塗装面(無機ジンクリッチ) 0.40程度 ◯(指定品のみ)
塗装面(一般塗装) 0.30以下 ×(NG)
油分付着 測定不能 ×

工場で塗装される鉄骨の場合、摩擦接合部は「黒皮の上に赤錆発生面」または「ショットブラスト+無機ジンクリッチ塗装」で仕上げられます。塗装の指定が間違っていると現場で気づいても手戻りになるので、設計仕様書と工場製品の照合が施工管理の最初の仕事。

僕の感覚だと、摩擦接合の原理は「自転車のクイックレリーズ」と同じ仕組み。レバーで強く締めて摩擦で固定するのと同じで、ボルトの軸力が摩擦力を生み、その摩擦で力を伝達する。これを職人や検査官に説明できると、現場の理解が一気に揃います。

ハイテンションボルトの施工手順(3段階)

ハイテンションボルトの施工は「①一次締め → ②マーキング → ③本締め」の3段階で進めます。これは建築工事監理指針・JASS 6に明記された標準手順で、省略・順序入替は絶対NG。

Step 1:一次締め

部材の仮固定と次工程の準備のため、規定トルクの50〜80%程度で軽く締付けます。

項目 内容
目的 部材仮固定、ボルト座金の安定
使用工具 プレセット型トルクレンチ or 一次締め専用レンチ
締付トルク 本締めトルクの50〜80%
締付順序 ボルト群の中央→外側

一次締めの順序は「ボルト群の中央から外側に向かってジグザグに」が原則。中央から締めることで、板の変形やそりが外側に逃げて、最終的に部材内部の残留応力が小さくなります。

Step 2:マーキング

一次締め完了後、全てのボルトに「ボルト・ナット・座金・部材」をまたぐ直線をマーキングします。

項目 内容
目的 本締め後の回転量確認・共回り検出
マーキング材 油性マーカー or 専用ペン
マーキング範囲 ボルト頭部・ナット・座金・接合部材の4箇所

このマーキングが、後の検査での「ナット回転量の判定」と「共回りの検出」に直結します。マーキング不備があると本締め検査が成立しないので、施工管理として「全ボルトのマーキング完了」を一次締め後に必ず確認します。

Step 3:本締め

S10Tは専用シャーレンチでピンテールが破断するまで締付け、F10Tはトルクレンチで規定トルクまで締付けます。

項目 S10T F10T
工具 シャーレンチ トルクレンチ
判定 ピンテール破断 規定トルク到達
締付順序 中央→外側 中央→外側
締付速度 1本5〜10秒 1本15〜30秒

本締めも一次締めと同じく「中央から外側」の順序を守ります。これは部材の変形を最小化するための鉄則。

Step 4:検査(本締め後)

本締め完了後、全てのボルトについて以下を確認します。

チェック項目 S10T F10T
ピンテール破断 全数破断
マーキングずれ ナット回転量を確認 ナット回転量を確認
共回り(ナットと座金が一緒に回る) ずれが他より大きいボルトを特定 同左
座金浮き 目視で隙間なし 目視で隙間なし
ボルト位置 傾き・ずれなし 傾き・ずれなし

これらを全数チェックして、施工記録に残します。

僕としては、施工管理として現場で立ち会うべきタイミングは「一次締め開始時」「マーキング完了時」「本締め開始時」「本締め検査時」の4タイミング。特に検査時は施工記録写真を全数撮影しておくと、後の竣工書類・保険対応・改修時の参照資料として効きます。

ボルト・ナットの基本知識はこちらが詳しいです。

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締付け検査と判定基準

本締め完了後の検査は施工品質の最後の砦。判定基準を整理します。

検査①:ピンテール破断(S10Tのみ)

状態 判定 対応
全数破断 合格
破断していないボルトあり 不合格 該当ボルトを再締付け or 交換
過剰締付け(座金変形) 不合格 該当ボルトを交換

ピンテールが破断していないボルトが見つかったら、シャーレンチで追加締付け。それでも破断しない場合は、ボルト全体を交換します。

検査②:マーキングずれ(ナット回転量)

本締め後、マーキングのずれを目視で確認。これがナット回転量の指標になります。

状態 S10Tの判定 F10Tの判定
±30°以内 合格 合格
±30〜60° 要検討(追加締付け or 交換) 要検討
±60°以上 不合格(交換) 不合格

ボルト群全体の平均回転量から±30°を超えるボルトが見つかったら不合格となり、新品と交換します。

検査③:共回り

共回りとは「ナットと座金が一緒に回転する現象」のこと。トルク係数値が不安定になり、適正な軸力が得られない可能性があるため不合格扱い。

検出方法は以下。

検出方法 内容
マーキングのずれ ナットと座金のマーキングが同方向に大きくずれる
目視確認 締付け中に座金が回転している
触診 締付け後の座金を指で押す

共回りが発覚したら、該当ボルトは全数交換が原則。同じボルト群の他のボルトも追加検査で確認します。

検査④:座金浮き

座金(ワッシャー)が部材から浮いていないかを目視確認。浮きがある場合は締付け不足の可能性が高いので、再締付けまたは交換が必要。

検査⑤:抜取り検査(トルク検査・F10Tのみ)

F10Tの場合、本締め後にトルクレンチで「キャリブレーション値の±10%以内」かどうかをサンプル検査。標準的にボルト群の10%を抜取り検査します。S10Tは原則不要。

僕としては、検査は「ピンテール破断+マーキングずれ」を全数確認するのが最低ライン。共回りはマーキングずれの段階で発見できるので、マーキング検査を確実にやれば共回りも同時に拾える。施工管理として、検査時間は1本あたり3〜5秒、ボルト群(10〜30本)で1〜3分で回せるテンポを身につけておくと建方工程に支障が出ません。

ハイテンションボルトの不良パターン6つと対応策

実際の現場で発生する不良パターンとその対応を整理します。

不良①:ピンテール未破断(S10T)

発覚タイミング 対応策
本締め直後 シャーレンチで追加締付け
追加締付けでも破断しない ボルト全体を交換

シャーレンチの故障・電池切れ・締付不足が原因のことが多い。工具側を確認してから、ボルトの再施工に進みます。

不良②:マーキングずれが大きい

発覚タイミング 対応策
本締め後検査 平均回転量と比較し、±30°超なら交換
軽微なずれ 施工記録に残し、後日再確認

ずれが大きいということは軸力が異常(過大 or 過小)になっている可能性があるので、原則交換扱い。

不良③:共回り

発覚タイミング 対応策
締付け中 該当ボルトを抜き取り、ナット・座金交換
本締め後検査 該当ボルト一式(ボルト・ナット・座金)を交換

共回りが頻発する場合は、ボルト群全体の座金品質(メッキ厚・形状)を確認します。

不良④:締付け部のタッチアップ忘れ

本締め後、専用シャーレンチでピンテールを破断すると、破断面が新規鋼面として露出します。これを放置すると錆びるので、防錆塗料でタッチアップが必要。

タイミング 内容
本締め直後 破断面の油分除去
当日中 タッチアップ塗装
翌日 タッチアップ完了確認

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不良⑤:摩擦面の塗装間違い

工場製品で摩擦接合部に一般塗装が施されていた場合、摩擦係数が大幅に下がります。

発覚タイミング 対応策
工場搬入時 工場に差戻し(理想)
現場発覚 塗装をディスクサンダーで剥離→赤錆発生面に処理
建方後発覚 構造設計者に相談、追加補強検討

工場搬入時の検収段階で摩擦面の塗装仕様を確認するのが、施工管理として最初の防衛線。

不良⑥:ボルト孔の位置ズレ・孔径違い

発覚タイミング 対応策
建方前 工場に差戻し
建方中 現場でリーマ修正(ズレが軽微な場合)
大きなズレ 構造設計者と協議、補強・追加プレート検討

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僕の感覚だと、不良対応で施工管理が悩むのは「共回り1本発覚でボルト群全体を再施工すべきか」のような判断局面。基本ルールは「該当ボルト1本だけ交換、ただし周辺ボルトに追加検査をかける」で、ボルト群全体の再施工は構造設計者の指示が出た場合に限る、というのが現場の感覚です。

主要メーカーと選定基準

国内で流通している高力ボルトの主要メーカーを比較します。

メーカー 代表製品 特徴
JFEファスナー(NSボルテン系列) JFEトルクボルト 国内最大手・流通量豊富
日本ファスナー工業 NFW系 建築・土木両対応
神鋼ボルト TBボルト 大手ゼネコン取引実績
大久保鉄工 S10Tトルシア 建築主流品
富田螺子 F10T六角ボルト 土木・特殊用途
イシザキ S10Tセット品 流通網広い

選定の目安

現場条件 推奨メーカー 理由
建築鉄骨 中大規模 JFE・神鋼・NSボルテン 流通量・品質・大手ゼネコン取引
建築鉄骨 中小規模 大久保鉄工・イシザキ コスト・納期バランス
土木 橋梁 富田螺子・日本ファスナー F10T主流品の供給力
海岸沿い・耐食性 JFE(F8T溶融亜鉛メッキ) 大手品が安心

業者見積で「高力ボルト 本数 ◯◯円」だけ書かれている見積は要注意。施工管理として、見積要件に「メーカー名・規格適合品証明(JIS B 1186 or JSS Ⅱ-09)・サイズ・本数」を必ず指定します。

僕としては、新築鉄骨建築でほぼ毎回出会うのはJFE・神鋼・NSボルテンの3社。土木現場では富田螺子・日本ファスナーのF10Tに切り替わるケースが多い、というのが現場感覚です。

ハイテンションボルトと普通ボルトの違い

施工管理として混同しやすい「ハイテンションボルト」と「普通ボルト(中ボルト)」の違いを整理します。

項目 ハイテンションボルト 中ボルト リーマボルト
引張強さ 1,000N/mm² 400〜600N/mm² 400〜600N/mm²
接合方式 摩擦接合 せん断接合 せん断接合
主用途 主要構造接合 二次部材・仮設 主要構造接合(特殊)
施工管理 軸力管理(規定値) 締付確認のみ 嵌合精度
建築での使用 ◎(主流) △(二次部材) ×(稀)

中ボルトは仮設・二次部材(手摺・小梁の取付)でのみ使用され、構造主要部には使えません。リーマボルトは橋梁の伸縮装置など特殊用途で、建築鉄骨ではほぼ出会わない金物。

僕の感覚だと、現場で「ボルト=高力ボルト」と話す人と「ボルト=中ボルト」と話す人が混在していて、これが認識ズレの原因になりやすい。施工管理として打合せの最初に「高力ボルト(S10T)の話か、中ボルトの話か」を明示すると、業者・設計事務所・職人とのコミュニケーション事故が減ります。

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ハイテンションボルトに関するよくある質問

Q1. F10TとS10T、どっち選ぶ?

A. 建築鉄骨はほぼS10T一択。締付管理が機械化されていて職人技に依存しないため、品質が安定します。F10Tは土木分野(橋梁)と特殊用途で残るのみ。設計仕様書で指定されたものを使うのが原則で、施工管理が勝手に変更してはいけません。

Q2. F10Tの「F」「T」、S10Tの「S」「T」は何の略?

A. F10TはFriction(摩擦)・10は引張強さ1,000N/mm²・TはTensile Strength(引張強さ)の略。S10TはStructural(構造)・10は同じく1,000N/mm²・TはTensile Strength。基本知識として施工管理は即答できるレベルで覚えておきます。

Q3. 一次締めのトルクは何N·m?

A. ボルト径とサイズで変動します。M20で約100〜120N·m、M22で約130〜150N·m、M24で約170〜200N·mが目安。本締めトルクの50〜80%程度の数値で、メーカーの規定値を確認します。

Q4. 締付け順序「中央→外側」を守らないとどうなる?

A. 板の変形・そりが外側に逃げず、最終的に部材内部に残留応力が残ります。これが将来的なボルト緩み・変形の原因になるため、建築工事監理指針・JASS 6で明記された規定として厳守します。順序を守らないと検査で不合格になるケースもあります。

Q5. 共回り1本発覚、ボルト群全体を再施工?

A. 原則は「該当ボルト1本のみ交換、周辺ボルトに追加検査」。ボルト群全体の再施工は構造設計者の指示が出た場合に限ります。同じボルト群で共回りが3本以上発生した場合は、座金の品質に問題がある可能性が高いので、ロット交換も検討します。

Q6. マーキングずれが35°、合格?不合格?

A. ±30°が境界値なので、35°は不合格扱いが原則。ただし「平均回転量に対して+5°(ずれが大きい方向)」か「-5°(ずれが小さい方向)」かで判断が変わります。ずれが小さい方向(-5°)の場合は軸力不足、大きい方向(+5°)の場合は軸力過大の可能性。施工記録を残して、構造設計者と判定を協議します。

Q7. ピンテール破断後のタッチアップ、いつやる?

A. 本締め完了の当日中、できれば1〜2時間以内が理想。破断面は新規露出した鋼面なので、放置すると錆が発生します。タッチアップ塗料はメーカー指定品(または現場塗装と同色品)を使用し、刷毛またはスプレーで破断面と周辺の傷を補修します。

Q8. 雨天で本締めしても大丈夫?

A. 軽い小雨なら養生して施工可能、本降りは中止が原則。理由は「摩擦面に水分が付着すると摩擦係数が変動する」「シャーレンチが濡れて作業安全性が下がる」「マーキングのマーカーが滲む」の3点。雨天時の判断基準は事前に業者と共有しておきます。

Q9. F8T(溶融亜鉛メッキ)はどんな現場で使う?

A. 屋外露出鉄骨(鉄骨階段・キャノピー・看板支柱・電柱・歩道橋)や、海岸沿いの建築物、塩害地域などの耐食性要求現場で使用。F10Tと比べてメッキ被膜があるため、塗装メンテ周期が大幅に伸びる(10〜20年)。締付方法はF10Tと同じトルク管理ですが、メッキの摩擦係数の関係で締付トルクがやや異なります。

Q10. 高力ボルトとリベットの違いは?

A. リベットは「打込み式の鋲」で、加熱して打込み、冷却収縮で締付ける接合方式。高力ボルトとリベットは構造的には同等以上の接合性能を持ちますが、リベットは①施工に熟練工が必要、②騒音が大きい、③現場での品質確認が困難、の3点で衰退し、現在は高力ボルトが標準。鉄道橋・古い建築物の改修時にリベットが残っている程度です。

ハイテンションボルトに関する情報のまとめ

最後にハイテンションボルトの重要ポイントを整理します。

  • ハイテンションボルトとは「鉄骨造の部材接合に使う、引張強さ1,000N/mm²級の高強度ボルト」
  • 別名「高力ボルト」、規格はJIS B 1186とJSS Ⅱ-09の2系統
  • 種類はF10T(土木中心)・S10T(建築主流)・F8T(耐食性要求)の3つが現役、F11Tは建築禁止
  • 名称由来はF=Friction(摩擦)、S=Structural(構造)、10=引張強さ1,000N/mm²、T=Tensile Strength
  • 接合方式は摩擦接合、ボルト軸力で部材を挟み込み摩擦力で外力を伝達
  • 軸力管理が品質の本丸、M22 S10Tで標準軸力205kN
  • 摩擦面は赤錆発生面・ショットブラスト面が標準、一般塗装はNG
  • 施工は一次締め→マーキング→本締めの3段階、締付順序は中央から外側
  • 検査は「ピンテール破断」「マーキングずれ±30°以内」「共回り無し」「座金浮き無し」の4項目
  • 不良パターンは6つ(ピンテール未破断・マーキングずれ・共回り・タッチアップ忘れ・摩擦面塗装間違い・ボルト孔位置ズレ)
  • 主要メーカーはJFEファスナー・神鋼ボルト・NSボルテン・大久保鉄工・日本ファスナー・富田螺子
  • 建築鉄骨で出会うのはほぼS10T、F10Tは土木中心、F8Tは耐食性要求現場のみ

以上がハイテンションボルトに関する情報のまとめです。一通り基礎知識は網羅できたかなと思います。

ゼネコン・中堅建設会社の鉄骨施工管理として、ハイテンションボルトは「鉄骨建築の心臓部」とも言える接合金物。今回まとめた3種類の使い分け・施工3段階・検査4項目・不良6パターンを手元に置いて、明日からの建方検査で動けるレベルまで落とし込んでみてください。

高力ボルト・摩擦接合・S10T・関連用語は下記から関連知識を辿れます。

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