- 鉄骨塗装ってなに?
- 錆止め塗料ってどんな種類があるの?
- 工程はどんな順番?
- 工場塗装と現場塗装の違いは?
- どんな塗料を選べばいい?
- 施工管理として何を見ればいい?
上記の様な悩みを解決します。
「鉄骨塗装」は、鉄骨工事の最後に必ず登場する仕上げ工程で、鉄骨を腐食から守る錆止め塗装と美観・耐候性を確保する上塗り塗装の2つの目的を持ちます。工場塗装と現場塗装の使い分け、塗料の種類・規格、塗膜厚の管理といった、知っているようで意外と整理されていない要素が多い分野でもあります。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
鉄骨塗装とは?
鉄骨塗装とは、結論「鉄骨表面に錆止めおよび上塗りの塗料を塗ることで、腐食を防ぎ美観・耐候性を確保する仕上げ工事」のことです。
鉄は酸素と水に触れると錆びる性質があります。鉄骨は構造的には強くても、錆が進むと断面欠損して耐力低下が発生するため、塗装による被覆が標準の腐食防止手段として採用されています。
→ ざっくり、「鉄骨を錆と劣化から守るために、3層構造で塗装する」のが鉄骨塗装、というイメージです。
基本イメージと目的
鉄骨塗装の基本は、対象が鉄骨柱・梁・ブレース・支保部材・小梁・胴縁など、目的は腐食防止+美観確保+耐火被覆下の準備、工程は素地調整→錆止め塗装→中塗り→上塗り、塗膜厚は合計100〜200μm程度、施工場所は工場での製作時+現場での仕上げ、というあたり。
3つの目的は、腐食防止(錆止めで鉄を錆から守る)、美観確保(露出鉄骨の意匠的な仕上げ)、耐久性確保(耐火被覆前の下地保護、被覆の付着確保)、です。

登場シーンと類似工程
鉄骨塗装が登場するのは、新築鉄骨工事(工場塗装+現場塗装の組み合わせ)、改修工事(既存鉄骨の塗替え)、露出柱・梁(意匠として鉄骨を見せる場合)、屋外鉄骨(渡り廊下・庇・キャノピー)、重機・機械架台(耐用年数確保)、というシーン。
「鉄骨塗装」と「鉄骨防錆」は重なる部分が多いですが、鉄骨塗装が塗装による表面仕上げ全般(防錆+美観)、鉄骨防錆が腐食防止が主目的(錆止め塗装中心)、と美観要求の有無で区別されます。「塗装」と「めっき」の違いは、塗装が液体塗料を塗って塗膜厚100〜200μm、亜鉛めっきが溶融亜鉛に浸して膜厚50〜100μm(犠牲防食)、屋外鉄骨では亜鉛めっき+塗装の併用も普及、というところ。
要するに鉄骨塗装は「鉄を錆から守りながら美観も確保する仕上げ工事」で、錆止め+中塗り+上塗りの3層構造で防食体系を組むのが基本です。
鉄骨塗装の種類(錆止め・上塗り)
鉄骨塗装で使われる塗料の種類を機能別に整理します。
錆止め塗料
錆止め塗料は鉄骨表面に最初に塗る防錆層で、塗料体系の基礎です。鉛系錆止め塗料(JIS K 5621・従来の主流、現在は鉛規制で使用減)、油性錆止め塗料(安価、屋内用が中心)、エポキシ系錆止め塗料(防錆性高、屋外・厳しい環境用)、変性エポキシ系錆止め塗料(高耐久、高層・橋梁用)、無機ジンクリッチペイント(最高級防錆、橋梁・鉄塔用)、というラインアップ。
錆止め塗料の選定基準は、使用環境(屋内 or 屋外、湿度・塩分濃度)、耐用年数要求(5年・10年・20年以上)、後工程との適合(中塗り・上塗りとの相性)、コスト(使用面積×塗料価格)、というあたりです。
中塗り・上塗り塗料
中塗り塗料は錆止めの上に塗る中間層で、錆止めと上塗りの密着性向上+膜厚確保が役割。エポキシ系中塗り(耐久性高い)、変性エポキシ系中塗り(高耐候性)、ウレタン系中塗り(屋外用)、というあたり。
上塗り塗料は最終仕上げ層で、美観・耐候性の中心。アルキド樹脂塗料(合成樹脂調合ペイント、JIS K 5516・従来の標準、屋内・軽屋外)、塩化ゴム系塗料(耐水性・耐酸性に優れる)、エポキシ樹脂塗料(強靭・耐薬品性高い)、ウレタン樹脂塗料(耐候性・光沢に優れる)、シリコン樹脂塗料(高耐候性、屋外長期用)、フッ素樹脂塗料(最高耐候性、橋梁・高層ビル)、というラインアップ。アクリル系・シリコン系・フッ素系・エポキシ系の上塗り塗料は耐候性・耐薬品性・コストのバランスが異なるため、設計図書で指定される銘柄を素直に踏襲するのが原則です。
代表的な塗装仕様
公共建築工事標準仕様書などで規定される代表仕様の例は、B塗装系(油性錆止め+アルキド樹脂塗料・屋内軽量用)、C塗装系(油性錆止め2回+アルキド樹脂塗料2回・屋内一般)、D塗装系(変性エポキシ錆止め+ウレタン樹脂塗料・屋外一般)、F塗装系(無機ジンク+エポキシ+フッ素樹脂塗料・橋梁・高耐久)、というあたり。
塗膜の構成と規格
鉄骨塗装は通常3層構造で組まれ、錆止め塗料(30〜70μm)→ 中塗り(30〜60μm)→ 上塗り(30〜50μm)の合計100〜200μm。各層の膜厚は塗装仕上げ後に膜厚計で測定し、規定値を満たしているか確認します。
塗料の規格は、JIS K 5621(一般用さび止めペイント・鉛系/無鉛系)、JIS K 5516(合成樹脂調合ペイント)、JIS K 5659(鋼構造物用エポキシ樹脂塗料)、JIS K 5658(鋼構造物用ウレタン樹脂塗料)、JIS K 5660(鋼構造物用フッ素樹脂塗料)、というラインアップ。施工管理は、設計図書で指定された塗料の規格名・等級を必ず確認します。
鉄骨塗装の工程
鉄骨塗装の標準的な工程を整理します。
素地調整(ケレン)
塗装前の鉄骨表面の清浄化作業で、塗膜の付着性を決める最重要工程です。黒皮(ミルスケール)の除去(圧延時に発生する酸化被膜)、錆の除去(浮き錆・点錆)、油分の除去(脱脂剤・洗浄)、水分の除去(完全乾燥)、を行います。
素地調整の等級は、1種ケレン(完全な素地調整、ブラスト処理)、2種ケレン(浮き錆・浮き塗膜の除去、機械工具併用)、3種ケレン(浮き錆のみ除去、ワイヤブラシ・サンダー)、4種ケレン(簡易な清掃)、と4段階。設計図書で1種ケレンが指定されている場合、ブラスト処理が必須です。
錆止め・中塗り・上塗り
錆止め塗料の塗布は、素地調整後できるだけ早く塗布(湿気・錆び再発防止)、塗布方法はエアレススプレー・ローラー・刷毛、1回塗りまたは2回塗り(仕様による)、塗膜厚は1回30〜50μm、というあたり。
中塗りは錆止めの乾燥確認後に施工、塗膜厚30〜60μm、隅角部・凹凸部の確実な塗布、を行います。上塗りは中塗りの乾燥確認後、塗膜厚30〜50μm、仕上がり美観の確認、というステップ。
各層間の管理は、乾燥時間(塗料の指定通り4〜24時間)、再塗装可能時間(塗料の指定通り)、塗膜厚測定(膜厚計で1ロットあたり数点測定)、付着性試験(必要時・規格値以上の付着強度)、を行います。
環境・機械・溶接部
乾燥環境は、温度(5℃以上、できれば10℃以上)、湿度(85%以下)、降水(雨天・降雪時は中止)、風速(強風時は塗料飛散注意)、を守ります。
塗装機械は、エアレススプレーガン(大面積・効率的)、エアスプレーガン(細部・調整用)、ローラー(平面の追加塗布、刷毛では塗りにくい部位)、刷毛(隅角部・補修)、と用途で使い分け。
鉄骨溶接部の塗装は、溶接ビード周りは塗膜が不均一になりがち、スパッタ・スラグの除去後に塗装、タッチアップ塗装で隙間を埋める、というケアが必要。溶接ビードのスパッタや酸化物などの不良部位は、塗装前に必ず補修・除去します。
工場塗装と現場塗装の違い
鉄骨塗装は工場塗装と現場塗装を組み合わせるのが標準です。
工場塗装と現場塗装の特徴
工場塗装は、施工場所が鉄骨製作工場、対象が鉄骨部材本体、環境は温湿度コントロール可で雨風影響なし、塗料は錆止め塗料が中心で中塗りも一部、品質は均一・確実な塗膜形成、メリットは天候影響なし・効率的・塗膜厚管理が確実、デメリットは搬入・建方時に塗膜が損傷する、というあたり。標準工程は、素地調整(1種ケレン・ブラスト処理)→ 錆止め塗料1回目(搬入時のキズ防止)→ 錆止め塗料2回目(仕様による・完全防錆)→ 中塗り(仕様による)、で錆止め+中塗りまで完了させる方式が一般的です。
現場塗装は、施工場所が建設現場、対象が建方後の高所部・溶接接合部周辺・補修部、環境は天候・温湿度の影響大、塗料は上塗り・補修用錆止め、メリットは露出部を最終仕上げ・補修の確実性、デメリットは天候影響・足場必要・塗装環境の制約、というところ。標準工程は、建方完了 → 接合部・溶接部の素地調整 → タッチアップ塗装(搬入時のキズ・接合部・補修部に錆止め)→ 中塗り(必要時)→ 上塗り → 完了検査、という流れです。

役割分担と注意点
工場塗装と現場塗装の役割分担を表で整理しておきます。
| 工程 | 工場塗装 | 現場塗装 |
|---|---|---|
| 素地調整 | 1種ケレン(ブラスト) | 補修部のみ3種ケレン |
| 錆止め塗料 | 1〜2回塗り(メイン) | 補修・タッチアップ |
| 中塗り | 一部(仕様による) | 接合部・補修 |
| 上塗り | 通常なし | 全体仕上げ |
| 検査 | 工場検査 | 完了検査 |
工場塗装の品質確認は、鋼材検査時のミルシート、塗装出荷前の塗装記録(塗料銘柄・ロット・膜厚)、第三者検査(重要案件)、で行います。現場塗装の注意点は、天候依存(晴天・低湿度の連続が必要)、足場・養生(周辺部材・既設部位への塗料付着防止)、粉塵・ゴミ(塗膜への異物混入防止)、乾燥時間(作業ステップ間の確実な管理)、というあたりです。
鉄骨塗装の注意点と施工管理
鉄骨塗装で現場で出やすいトラブルと対応を整理します。
素地調整・膜厚・異物・互換性
素地調整不足はケレン不足で塗膜剥離・早期腐食につながるので、設計仕様の素地調整等級を必ず確認し検査で目視確認します。塗膜厚不足は設計値の80%以下では防食性能が確保できないので、膜厚計での測定、不足部の追加塗布、を行います。塗膜厚過剰は厚すぎると塗膜割れ・剥離リスクがあるので、1回あたりの塗布量管理、回数の調整、で防ぎます。
異物混入は塗膜に砂・粉塵が入って表面荒れになるので、塗装環境の清掃、塗料の濾過、養生徹底、を行います。異種塗料の重ね塗りは適合性のない塗料を重ねると剥離・しわ発生するので、塗料の適合性表を確認、メーカー推奨の組合せ、を守ります。乾燥不足での重ね塗りは下層が乾く前に重ねるとしわ・浮きが起きるので、乾燥時間の遵守、温湿度・風通し管理、を徹底します。
溶接部・接合面・耐火被覆
溶接部の腐食は溶接ビード周りのスパッタ・酸化で錆止め不良になるので、スパッタ除去後の塗装、タッチアップ、を行います。
高力ボルト接合面は摩擦面なので塗装してはいけない、接合面の事前マスキング、無塗装で出荷、というルール。耐火被覆との取り合いでは、耐火被覆の下になる部分は錆止めまでで止める(上塗りはしない・耐火被覆との付着を阻害)、設計図書での仕様確認が必須、というあたり。
雨天・低温時は塗装中止が基本で、天候情報の事前確認、養生で延期に対応、を行います。
施工管理者の視点と経験談
施工管理者として押さえる視点は、設計図書の理解(塗装仕様・塗料銘柄・膜厚)、工場塗装の検収(搬入時の塗膜状態、タッチアップ箇所の特定)、現場塗装の指導(天候・温湿度の管理、塗料の適合性確認)、塗膜厚測定(規定値の遵守確認)、完了検査(目視・膜厚計での仕上がり確認)、記録管理(塗料ロット・膜厚記録・検査写真)、というあたり。
僕が新築工場の鉄骨建方を担当した時、梅雨時期の現場塗装で連日雨が降り、当初の工程から3週間遅延したことがありました。「現場塗装は天候にすべて握られている」という現実を、工程会議で全関係者に共有して電灯つきの仮設テント養生を導入。結果として湿度コントロールができる範囲で塗装を進めて、何とか工期内に完了できました。「鉄骨塗装は工場塗装でどこまで完了させるか、現場塗装の天候余裕をどう取るかが工程の鍵」というのが、その経験で得た教訓です。
法令・規格の遵守として、建築基準法(構造体の保護)、公共建築工事標準仕様書(塗装仕様)、JIS規格(塗料の品質基準)、環境関連法(VOC規制、鉛規制・鉛系塗料制限)、を意識します。塗替え・改修時は、既存塗膜の劣化診断、既存塗膜の除去または補強、新規塗装系の互換性確認、改修工事の流れの中での塗装位置付け、を確認します。

鉄骨塗装に関する情報まとめ
最後に、鉄骨塗装の重要ポイントを整理します。
- 鉄骨塗装とは:鉄骨表面に錆止め・上塗り塗料を塗布して腐食防止と美観確保を行う仕上げ工事
- 目的:腐食防止、美観確保、耐火被覆下の準備
- 塗料の種類:錆止め(鉛系・エポキシ系・無機ジンク等)、上塗り(アルキド・ウレタン・シリコン・フッ素)
- 塗装系統:B・C・D・F塗装系(仕様書での標準仕様)
- 工程:①素地調整 → ②錆止め塗装 → ③中塗り → ④上塗り(合計100〜200μm)
- 工場塗装:錆止め+中塗りまで、温湿度コントロール下で確実な施工
- 現場塗装:上塗り、接合部・溶接部のタッチアップ、天候依存
- 規格:JIS K 5621(錆止め)、JIS K 5516(合成樹脂調合)、JIS K 5658〜5660(ウレタン・エポキシ・フッ素)
- 重要トラブル:素地調整不足、塗膜厚不足、異種塗料重ね、乾燥不足、接合面塗装ミス
- 施工管理者の視点:仕様確認、工場塗装検収、現場塗装の天候管理、膜厚測定、検査記録
以上が鉄骨塗装に関する情報のまとめです。
鉄骨塗装は「鉄骨工事の最後を締めくくる仕上げ工程」で、錆止め+中塗り+上塗りの3層構造による防食体系が標準。工場塗装と現場塗装の使い分け、塗料の適合性、天候による施工管理といった、知っているようで意外と整理されていない要素が多い分野です。設計図書の塗装仕様を正確に読み取り、工程と天候を組み合わせた計画を立てるのが、施工管理者として押さえるべき核心ポイント。塗膜厚と素地調整という地味だけど決定的な品質要素を抜かりなく管理することが、鉄骨を長く守るための確実な手段ですね。
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