- 鉄骨塗装って結局どこまでが塗装なの?
- 工場で錆止め、現場で仕上げって役割分担で合ってる?
- 下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りって何のため?
- 錆止めのA種・B種って何が違うの?
- ケレン1種〜4種ってどれを指定すればいいの?
- 高力ボルトの摩擦面って塗っちゃダメ?
- 耐火被覆する鉄骨は錆止めしないって本当?
- 建方でワイヤー掛けたら塗装が剥げた、補修は?
- 現場溶接のスラグを残すと塗装が浮くって聞いた
- 雨の日に現場塗装していいの?
- 塗装の検査では何を見られるの?
上記の様な悩みを解決します。
鉄骨塗装は、S造の現場で施工管理が必ず関わる「鉄骨を錆から守り、見た目を仕上げる」工程です。塗装業者がやる仕事だと思われがちですが、実は施工管理側に「塗ってはいけない部位を守る」「建方で剥げた塗装を補修管理する」という重要な役割があります。今回は塗料の種類・3回塗りの工程・ケレン・工場と現場の違いといった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「摩擦面や溶接部を塗らない管理」「建方後のタッチアップ補修」「塗装検査の着眼点」など、現場で実際にハマるポイントまで整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
鉄骨塗装とは?
鉄骨塗装とは、結論「鉄骨を錆(腐食)から守り、必要に応じて美観を整えるために塗料を塗る工程」のことです。
鉄骨は鋼材なので、放っておくと空気中の水分と酸素で錆びていきます。錆びると断面が痩せて強度が落ちるため、塗膜でコーティングして錆を防ぐのが塗装の第一の目的です。第二の目的が美観で、工場や倉庫のように鉄骨がむき出しになる建物では、見た目を整える仕上げ塗装も求められます。
鉄骨塗装を理解するうえで最初に押さえたいのが、「工場で錆止め(下塗り)、現場で仕上げ(中塗り・上塗り)」という役割分担です。鉄骨は加工場(ファブ)で素地調整と1回目の錆止め塗装をしてから現場に搬入され、建方が終わってから現場で仕上げ塗装に入る、という流れが基本になります。
なお、屋外で鉄骨がむき出しになる建物では、塗装ではなく溶融亜鉛メッキで防錆するケースもあります。鉄骨そのものの基礎知識はこちらも参考になります。

僕の感覚だと、鉄骨塗装は「塗装屋さんの仕事」と丸投げで捉えると現場で痛い目を見ます。どこを塗り、どこを塗らせないかを管理するのは施工管理の仕事なので、まずは「防錆+美観」「工場で錆止め・現場で仕上げ」という全体像を頭に入れておくのが出発点です。
鉄骨塗装の種類(錆止め・上塗り)
鉄骨塗装で使う塗料は、結論「下塗りの錆止め塗料」と「中塗り・上塗りの仕上げ塗料」の2系統に分かれます。
役割が違うので、まず2系統で整理しておきます。下塗りは錆を抑える防錆の役割、中塗り・上塗りはその錆止めを保護しつつ色や艶を出す役割です。
| 系統 | 役割 | 代表的な塗料 |
|---|---|---|
| 下塗り(錆止め) | 防錆。鉄に直接塗る一次防錆 | 鉛・クロムフリー錆止めペイント(JIS K5674) |
| 中塗り・上塗り(仕上げ) | 錆止めの保護+美観(色・艶) | 合成樹脂調合ペイント(SOP)、シリコン・フッ素樹脂塗料など |
錆止め塗料のA種・B種
錆止め塗料は、鉄骨面用ではA種とB種に分かれます。A種(鉛・クロムフリー錆止めペイント1種、溶剤系)は屋外・屋内の両方に使え、B種(水系錆止めペイント、鉛・クロムフリー2種)は屋内のみ、という使い分けです。亜鉛メッキ鋼面用の錆止めはこれとは別系統(鉛酸カルシウム錆止めペイントや変性エポキシ樹脂プライマーなど)になるので、図面の指定をよく確認します。
現在、鉄工所で使われる錆止めはほぼJIS K5674(鉛・クロムフリー)に統一されています。一昔前は鉛・クロム化合物を含むJIS K5621が主流でしたが、噴霧時に吸い込むと人体に有害だと分かり、K5674へ移行しました。
上塗りの種類
仕上げの上塗りは、特に指定がなければ合成樹脂調合ペイント(SOP、いわゆるペンキ)が基本です。耐久性や耐候性を求める場合は、シリコン樹脂塗料やフッ素樹脂塗料といったグレードの高い塗料を選びます。屋外で長持ちさせたいほど高耐候の塗料になり、その分コストも上がります。

実務だと、錆止めは「A種かB種か(=屋外か屋内か)」、上塗りは「どこまで耐久性が要るか」で決まる、と割り切って考えると塗料選びの軸がぶれません。塗料名を全部覚えるより、下塗りは防錆・上塗りは保護と美観、という役割で押さえる方が現場では応用が利きます。
鉄骨塗装の工程(下塗り・中塗り・上塗り)
鉄骨塗装の工程は、結論「素地調整 → 下塗り(錆止め)→ 中塗り → 上塗り」という重ね塗りが基本形です。
塗装は基本的に3回塗りで、合計の塗膜で鉄骨を守ります。1回目の下塗り(錆止め)が防錆の本体で、その上に中塗り・上塗りを重ねることで、錆止め塗料そのものも紫外線や雨から守られ、長持ちするようになります。上塗り塗料は通常2回塗って性能を発揮するため、上塗り1回目を「中塗り」と呼ぶ、という整理です。
| 工程 | 内容 | 主な実施場所 |
|---|---|---|
| 素地調整(ケレン) | 錆・旧塗膜・汚れを落とし、目荒しする | 工場(新設時) |
| 下塗り(錆止め) | 防錆塗料を塗る一次防錆 | 工場 |
| 中塗り | 上塗りの1回目、密着と膜厚確保 | 現場 |
| 上塗り | 仕上げ、色・艶を出す | 現場 |
塗装方法は、工場ではエアレス吹き付けが中心です。塗料そのものに圧力をかけて霧状に噴霧する方式で、広範囲を効率よく塗れます(飛散による近隣クレームに注意が必要な現場では使えないこともあります)。一方、刷毛やローラー塗りは手間はかかりますが、膜厚や塗りムラを管理しやすく、補修や狭所で使われます。
塗膜の厚み(膜厚)は塗装品質を左右する重要管理項目で、仕様書で規定されます。膜厚の考え方はこちらが参考になります。

現場目線で言えば、3回塗りは「とりあえず3回塗ればいい」のではなく、各層に役割があると理解するのが大事です。下塗りが防錆の主役、中塗り・上塗りがそれを守る盾、という関係が分かると、どの層を抜いたら何が起きるかが見えてきます。
ケレン(素地調整)の種類
ケレンとは、結論「塗装前に錆・旧塗膜・汚れを落とし、塗料が密着するよう表面を整える素地調整作業」のことです。
塗装の出来は、塗る前のケレンでほぼ決まると言ってよいほど重要です。錆や死んだ旧塗膜の上に塗料を重ねても、すぐ剥がれてしまうためです。ケレンには表面を「目荒し」して塗料の食いつきを良くする狙いもあります。
ケレンは、さびの面積や旧塗膜の状態に応じて1種から4種に分類されます(鋼道路橋防食便覧などに基づく分類)。
| 種類 | 作業内容 | 工法 |
|---|---|---|
| 1種ケレン | 錆・旧塗膜を全て除去し鋼材面を露出 | ブラスト法 |
| 2種ケレン | さび面積30%以上、動力工具で旧塗膜・錆を除去 | ディスクサンダー等 |
| 3種ケレン | 活膜は残し、死膜・錆・割れを除去(A/B/Cに細分) | 動力工具・手工具 |
| 4種ケレン | 軽い汚れ落としと目荒し(清掃ケレン) | 動力工具・手工具 |
ここで出てくる「活膜」と「死膜」が分かりにくいポイントですが、活膜は密着が十分で上から塗っても支障のない良好な旧塗膜、死膜はひび割れ・膨れなどで防錆機能を失った旧塗膜のことです。3種ケレンは「活膜は残し、死膜は除去する」のが基本方針になります。
新設の鉄骨では工場でしっかり素地調整してから錆止めを塗りますが、塗り替え(改修)ではケレンの種類を施主が指定して発注するのが一般的です。現場溶接でできたスラグ(溶接かす)は塗膜浮きの原因になるので、ワイヤーブラシなどで入念に除去してから塗るのが鉄則です。

僕の整理では、ケレンは「塗装の土台づくり」です。1種が最も強力(ブラスト)で4種が最も軽い、活膜は残す・死膜は落とす、という大枠を押さえておけば、仕様書のケレン指定を見たときに「どこまでやる作業か」がイメージできます。塗装トラブルの多くは、このケレン不足が原因だと捉えています。
工場塗装と現場塗装の違い
工場塗装と現場塗装の違いは、結論「工場は錆止め(下塗り)まで、現場は中塗り・上塗りの仕上げ」という役割分担です。
新築の鉄骨は、加工場で素地調整と1回目の錆止め塗装を済ませてから現場に搬入されます。これが工場塗装です。鉄骨が現場に届き、建方(組立)が終わってから着手するのが現場塗装で、中塗り・上塗りの仕上げを行います。
| 項目 | 工場塗装 | 現場塗装 |
|---|---|---|
| 主な工程 | 素地調整+錆止め(下塗り) | 中塗り・上塗り(仕上げ) |
| 環境 | 天候に左右されず安定 | 天候・足場の制約を受ける |
| 品質 | 管理しやすい | 建方後の補修も含む |
| 塗装方法 | エアレス吹き付け中心 | 刷毛・ローラー中心 |
なぜ工場で全部塗らないかというと、運搬や建方の段階で塗装が必ず傷つくからです。鉄骨をワイヤーやクランプで吊って組み立てる以上、塗膜は擦れて剥がれます。だから工場では一次防錆の錆止めまでにとどめ、仕上げは建方後に現場で行う、という流れが合理的なわけです。
注意したいのは、工場の錆止めは「あくまでサービス塗装(一次防錆)」という位置づけだという点です。建方後に剥げた箇所はタッチアップ補修が必要になります。鉄骨建方そのものの流れはこちらも参考になります。

僕としては、工場と現場の塗り分けは「どっちがどこまでやるか」を契約・仕様の段階で握っておくのが揉めないコツだと感じます。後のセクションで触れますが、この線引きが曖昧だと現場で「これは誰が塗るの」という押し付け合いが起きやすいです。
鉄骨塗装してはいけない部位
ここが施工管理が一番見落としやすい論点です。結論から言うと「高力ボルトの摩擦接合面・現場溶接部・耐火被覆部・コンクリート埋設部」は塗装してはいけません。
塗ってしまうと、その部位が本来の性能を発揮できなくなるからです。それぞれ理由があります。
- 高力ボルト摩擦接合面(スプライスプレート・ガセットプレートの接合面):摩擦力で力を伝えるため、塗装すると滑って所定の耐力が出ない
- 現場溶接部:塗膜があると溶接欠陥(ブローホール等)の原因になる。溶接後に補修塗装する
- 耐火被覆を施す部位:塗装があると耐火被覆材が密着しない
- コンクリートに埋設される部位:付着を阻害する
高力ボルトの摩擦面は特に重要で、塗装どころか所定の「赤錆状態」やブラスト面で摩擦係数を確保するよう管理されます。摩擦接合の考え方はこちらが参考になります。

耐火被覆まわりの取り合いはこちらも押さえておくと安心です。

現場目線で言えば、「塗ってはいけない部位を塗らせない」のは施工管理の腕の見せどころ……ではなく、絶対に外せない基本管理です。塗装業者は良かれと思って全面を塗ろうとすることもあるので、摩擦面・溶接予定部・耐火被覆部には事前に養生やマーキングをして「ここは塗らない」と明示しておくのが、後戻りを防ぐ一番確実な方法だと考えています。
建方後のタッチアップ補修
タッチアップ補修とは、結論「運搬・建方で傷ついた工場塗装の剥げを、現場で錆止め塗料を塗って補修する作業」のことです。
どれだけ丁寧に扱っても、鉄骨をワイヤーやクランプで吊って建方すれば、塗装は必ず一部剥げます。剥げたまま放置すると、そこから錆が進行するため、現場でタッチアップ(部分補修)をして防錆を回復させます。
補修の基本的な流れは次の通りです。剥げた範囲のケレンをしてから錆止めを塗り直すのがポイントで、錆や汚れの上から塗っても密着しません。
- 剥げ・傷の箇所を確認(建方後に全体を巡回チェック)
- 該当箇所のケレン(錆・浮いた塗膜を除去、目荒し)
- 工場塗装と同等の錆止め塗料を塗布
- 仕上げ塗装がある場合は中塗り・上塗りまで合わせる
現場溶接した部分も同様で、溶接後にスラグやスパッタを除去してから錆止めを塗り直します。スラグを残したまま塗ると塗膜が浮くので、溶接部の清掃はタッチアップとセットで管理します。

僕の感覚だと、タッチアップは「建方が終わってから誰かがやるだろう」で抜けがちな工程です。建方後の巡回で剥げを拾い、塗装業者の手配と合わせて補修範囲を指示する、ここまでを施工管理が段取りして初めて防錆が完結します。地味な工程ほど、抜けると後で錆として表面化するんですよね。
工場と現場で揉めない塗り分けの段取り
塗り分けで揉めないコツは、結論「どこまでを工場塗装、どこからを現場塗装にするかを、発注・仕様の段階で文書で握っておく」ことです。
鉄骨塗装は工場(ファブ)と現場(塗装業者)の複数業者が関わるため、線引きが曖昧だと「これは工場の範囲」「いや現場でやる話」という押し付け合いが起きやすい工程です。特に揉めやすいのが、タッチアップの範囲、色の指定、摩擦面・溶接部の扱いです。
揉めないために、着工前〜鉄骨発注の段階で次を確認しておくと安全です。
- 工場塗装の範囲(錆止めのみか、中塗りまで含むか)
- 現場塗装の範囲(仕上げ・タッチアップの担当)
- 色の指定(赤錆かグレーか、JIS品番とメーカー)
- 塗らない部位の明示(摩擦面・溶接部・耐火被覆部)
- 膜厚・ケレン種別など仕様書の要求
色は意外な落とし穴で、図面に「JIS K5674を使用」とだけ書かれて色が後から指定されるケースがあります。塗料が途中で足りなくなりメーカー違いの塗料を使ったら、グレーの濃淡が変わってツートンになりクレーム、という事例もあります。赤錆はメーカー差が出にくい一方、グレー系はメーカーで色味が変わるので、品番だけでなく色味まで確認して揃えるのが無難です。
正直なところ、塗り分けは技術論より段取り論です。誰がどこを塗り、何色で、どの部位は塗らないか、これを先に文書で握っておくだけで、現場での手戻りと業者間トラブルの大半は防げると感じます。
鉄骨塗装の検査と天候の注意点
鉄骨塗装の検査は、結論「素地調整の程度・使用塗料・膜厚・色・塗ってはいけない部位の養生」を確認するのが基本です。
塗装は見た目だけでは品質が分かりにくいので、工程ごとに記録と確認を残します。施工管理が塗装で見るべき着眼点を整理すると次の通りです。
- 素地調整:指定したケレン種別どおりに錆・旧塗膜が除去されているか
- 使用塗料:仕様どおりの錆止め・上塗り塗料か(JIS品番・色)
- 膜厚:規定の塗膜厚を満たしているか(膜厚計で測定する場合あり)
- 摩擦面・溶接部:塗装してはいけない部位が養生されているか
- タッチアップ:建方後の剥げが補修されているか
天候の注意も重要です。現場塗装は、降雨・降雪時や高湿度時、低温時には原則として行いません。塗膜が結露や水分を巻き込むと密着不良や白化(ブラッシング)の原因になるためです。一般に気温5℃以下・湿度85%以上では塗装を避けるのが目安とされ、屋外の現場塗装は天気と相談しながら工程を組みます。
僕の考えでは、塗装検査は「塗った後の見た目チェック」だけではなく、ケレン・膜厚・養生といった工程の途中を押さえることが肝心です。仕上がってしまうと下地の良し悪しは見えなくなるので、素地調整の段階で写真を残し、膜厚と塗らない部位の養生を要所で確認しておく、この積み重ねが後のクレームを防ぎます。
鉄骨塗装に関する情報まとめ
- 定義:鉄骨を錆から守り美観を整える塗装。工場で錆止め、現場で仕上げが基本
- 種類:下塗り(錆止めA種・B種、JIS K5674)と中塗り・上塗り(SOP・シリコン・フッ素)の2系統
- 工程:素地調整 → 下塗り(錆止め)→ 中塗り → 上塗りの3回塗り、各層に役割がある
- ケレン:1種(ブラスト)〜4種(清掃)、活膜は残し死膜は除去、スラグも除去
- 工場と現場:工場は錆止めまで、現場は中塗り・上塗りとタッチアップ
- 塗ってはいけない部位:高力ボルト摩擦面・現場溶接部・耐火被覆部・コンクリート埋設部
- タッチアップ:建方で剥げた箇所をケレン後に錆止め塗り直し、溶接部も補修
- 塗り分けの段取り:工場/現場の範囲・色・塗らない部位を発注段階で文書化
- 検査と天候:ケレン・塗料・膜厚・色・養生を確認、雨天・低温・高湿度は塗装を避ける
以上が鉄骨塗装に関する情報のまとめです。
鉄骨塗装は「塗装業者に任せる仕事」ではなく、施工管理が塗り分けとタッチアップを管理して初めて成立する工程です。塗料の種類と3回塗りの工程を押さえた上で、塗ってはいけない部位を守り、建方後の補修を段取りし、工場と現場の線引きを発注段階で握る、ここまでできれば塗装まわりのトラブルはほぼ防げます。S造の現場を回す施工管理として、防錆と美観の両面で一段上の管理ができるようになるはずです。
鉄骨塗装に関するよくある質問
Q1:工場塗装と現場塗装はどう役割分担しているんですか?
工場塗装は素地調整と1回目の錆止め(下塗り)まで、現場塗装は建方後の中塗り・上塗りの仕上げとタッチアップ補修を担当するのが基本です。なぜ工場で全部塗らないかというと、運搬や建方で鉄骨をワイヤー・クランプで吊る以上、塗膜が必ず擦れて剥がれるからです。そのため工場では一次防錆の錆止めにとどめ、仕上げは建方後に現場で行う、という分担が合理的になっています。
Q2:高力ボルトの摩擦面はなぜ塗装してはいけないんですか?
摩擦力で力を伝える接合だからです。高力ボルト摩擦接合は、ボルトで締め付けた鋼材同士の摩擦で応力を伝えます。接合面に塗装すると摩擦係数が下がって滑り、所定の耐力が出なくなります。そのためスプライスプレートやガセットプレートの摩擦面は塗装せず、所定の赤錆状態やブラスト面で摩擦係数を確保するよう管理します。塗装業者が全面を塗ろうとすることもあるので、摩擦面は事前に養生・マーキングして「塗らない」と明示しておくのが確実です。
Q3:ケレンの1種〜4種はどう選べばいいですか?
旧塗膜とさびの状態で決まり、新設か塗り替えかでも変わります。新設の鉄骨は工場で十分な素地調整をしてから錆止めを塗ります。塗り替え(改修)では、さびや塗膜異常の面積に応じて施主がケレン種別を指定します。1種はブラストで全除去(橋梁など大型構造物向け)、2種は動力工具でさび30%以上を除去、3種は活膜を残して死膜を除去、4種は軽い清掃と目荒し、という段階です。迷ったら仕様書の指定に従い、活膜は残す・死膜は落とすという原則を守ります。
Q4:建方で塗装が剥げたらどうすればいいですか?
タッチアップ補修をします。建方で鉄骨を吊れば塗装は必ず一部剥げるので、剥げた箇所のケレン(さび・浮いた塗膜の除去と目荒し)をしてから、工場塗装と同等の錆止め塗料を塗り直します。剥げたまま放置すると、そこから錆が進行します。現場溶接した部分も同様で、スラグやスパッタを除去してから錆止めを塗り直します。建方後に全体を巡回して剥げを拾い、塗装業者の手配と合わせて補修範囲を指示するのが施工管理の段取りです。
Q5:現場塗装は雨の日にやってもいいですか?
避けるべきです。現場塗装は降雨・降雪時、高湿度時、低温時には原則行いません。塗膜が結露や水分を巻き込むと、密着不良や白化(ブラッシング)の原因になります。一般的な目安として気温5℃以下・湿度85%以上では塗装を避けるとされ、屋外の現場塗装は天気予報を見ながら工程を組みます。どうしても工程が厳しい場合は、屋内側や養生で環境を確保できる部位を先行させるなど、塗れる条件の場所から進める段取りが有効です。
Q6:塗装の検査では何を見られますか?
素地調整の程度・使用塗料・膜厚・色・塗ってはいけない部位の養生が主な確認点です。指定したケレン種別どおりにさび・旧塗膜が除去されているか、仕様どおりの錆止め・上塗り塗料(JIS品番・色)か、規定の塗膜厚を満たしているか、摩擦面や溶接部が養生されているか、建方後の剥げが補修されているかを確認します。仕上がると下地の良し悪しは見えなくなるので、素地調整の段階で写真を残し、膜厚と養生を要所で押さえておくのがコツです。
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