S10Tとは?高力ボルトの規格、F10Tとの違い、トルシア形、選定など

  • S10Tってなに?
  • F10Tと何が違うの?
  • トルシア形ってどういう仕組み?
  • 専用工具って必要なの?
  • 施工管理として何を見ればいい?
  • どんな現場で使われている?

上記の様な悩みを解決します。

S10Tは、鉄骨工事の現場で圧倒的に使用頻度の高い高力ボルトのひとつ。「ピンテール(先端の細い軸)が破断したら締付け完了」というシンプルな機構で、締付けトルクのバラつきを大幅に減らせるのが最大の特徴です。施工管理としてS10TとF10Tの違い・施工手順・品質管理ポイントを理解できると、鉄骨建方の現場で職人さんと正しく会話できるようになりますね。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

S10Tとは?

S10Tとは、結論「トルシア形高力ボルトの規格名で、引張強さ1000 N/mm²級のボルト」のことです。

S10TのSはStructural(構造用)、10は引張強さ100 kgf/mm²(≒1000 N/mm²)、TはTorque-shear type(トルシア形)を意味します。

JIS B 1186や日本鋼構造協会規格JSS II 09で規定されている、建築鉄骨の標準的な高力ボルトのひとつ。

ざっくりイメージすると

S10Tは、

[頭] ━━━━━━━━━━━ [ボルト軸] ━━━━━ [破断溝] ━━ [ピンテール]
                                     ↑
                                 専用工具で
                                 ここがちぎれる

通常のボルトと違って先端に細い延長軸(ピンテール)が付いており、専用シャーレンチで締付けると規定トルクに達した瞬間にピンテールがちぎれる仕掛けになっています。

「ピンテールがちぎれる=締付け完了」という分かりやすい合図があるため、締付けトルクのバラつきが少なく品質管理が楽。

主な役割

  • 鉄骨梁・柱の継手部分を摩擦接合で結合
  • ブレースとガセットプレートの接合
  • スプライスプレートでのフランジ・ウェブの結合
  • ベースプレートと柱の接合(一部)

なぜ建築で重要か

鉄骨造の建物は、現場で部材同士をボルトで継ぐ作業が大量に発生。S10Tはその主役として、

  • 品質安定性:締付けの良否が目視で判断できる
  • 施工効率:トルクレンチでのトルク管理より速い
  • 再現性:作業員の技量による差が出にくい
  • 検査効率:ピンテール破断の有無で締付け完了を確認できる

という4つのメリットで、現代の鉄骨工事の標準ボルト。1980年代以降、日本の建築鉄骨では現場ボルトの主流として定着しています。

ボルトの基礎は別記事も参考にしてください。

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S10TとF10Tの違い

S10Tと並んでよく登場するのがF10T。両者の違いを整理します。

①基本スペックの違い

項目 S10T F10T
種類 トルシア形 フリクション形(六角頭)
形状 ピンテール付き 通常の六角ボルト
引張強さ 1000 N/mm²級 1000 N/mm²級
規格 JSS II 09 JIS B 1186
締付け方法 専用シャーレンチ トルクレンチ
完了の判断 ピンテール破断 トルク値達成

強度はほぼ同じで、締付け方式と確認方法が違うのが本質的な差。

②使い分けの傾向

用途 主流ボルト
鉄骨梁・柱の現場継手 S10T(圧倒的多数)
ブレース取付 S10T
機械的継手の事前組立 F10T(プレ組立に向く)
狭所・特殊部位 F10T(シャーレンチが入らない場所)

S10Tは現場での迅速施工F10Tは特殊部位や事前組立向きという使い分け。

③専用工具の有無

  • S10Tシャーレンチ(電動)が必須。本体・補助手の2本立てが標準
  • F10Tトルクレンチで対応。標準的な工具で施工可

S10T施工には専用シャーレンチの調達が必要なので、小規模現場ではF10Tが選ばれるケースもあります。

④価格

ボルト単価では、

  • S10T:F10Tよりやや高価(ピンテール構造のため)
  • F10T:標準的なボルト価格

ただし、施工効率(時間短縮・人件費)を含めて考えるとS10Tの方が現場全体ではコスト安になることが多い。

⑤遅れ破壊への対応

両者とも1000 N/mm²級の高力ボルトは、過去に「遅れ破壊(締付け後しばらくしてから突然破断)」の事故事例があり、水素脆性対策が施されています。最近の製品は遅れ破壊リスクは大幅に低減されていますが、保管時の湿気管理は今も基本ルール。

S10Tの構造とトルシア形の仕組み

S10Tのピンテール破断による締付けの仕組みを詳しく見てみます。

①各部の名称

[頭部]
  │
  │
[座面]
  │
[首下(ねじなし部)]
  │
[ねじ部]
  │
[破断溝(ノッチ)]   ← ここがちぎれる
  │
[ピンテール]   ← 専用工具がつかむ部分
部位 役割
頭部 工具との接触面
座面 母材との接触
首下 円柱状(ねじなし)
ねじ部 ナットとの結合
破断溝 締付け完了時に折れる
ピンテール シャーレンチがつかむ

②シャーレンチの動き

シャーレンチは2つのソケットを持っており、

  1. アウターソケット:ナットを回す
  2. インナーソケット:ピンテールをつかむ

両者が逆方向に回転することで、ナットを締めながらピンテールにねじりトルクを加えます。

③ピンテール破断のメカニズム

ナットをどんどん締めていくと、ボルトに作用する軸力(締付け力)が増加。それと連動して、ピンテールにねじり応力もかかります。

ねじり応力が破断溝の強度を超えた瞬間に、ピンテールがちぎれて作業終了。「破断溝の強度=設計軸力に対応するトルク」になるよう、製品設計時に厳密に調整されています。

④軸力管理の精度

S10TのM22ボルトの場合、

規格 標準軸力
S10T M22 約205 kN(締付け軸力の標準値)

通常のトルクレンチによる締付けでは±15〜20%程度のバラつきが出るのに対し、S10Tは±5%以内に収まるとされています。

⑤締付け後の状態

正しく締まったS10Tは、

  • ピンテールがきれいに切れている(破断面が円形)
  • マーキング(一次締め後の印)が一定角度ずれている(120°前後)
  • ナットからボルト先端のはみ出し量が規定範囲

の3点で確認できます。

H鋼の継手部での使われ方は別記事も参考にしてください。

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S10Tの施工方法と手順

S10Tの施工は、5ステップで進みます。

①ステップ1:受入検査

ボルト・ナット・座金が規定品か、ロット番号は揃っているかを検査。保管中の錆・水濡れもチェック。

ボルト1個でも錆びていたら、そのロット全体の遅れ破壊リスクを疑うのが原則。

②ステップ2:仮組立

ボルトを孔に差し込み、手締めで軽く固定。1組あたりボルト・座金(フランジ側のみ)・ナットの構成。

③ステップ3:一次締め

電動レンチで標準軸力の約60%まで締付け。「ガッチリ動かなくなったところ」が目安。

④ステップ4:マーキング

一次締め完了後、ナット・ボルト・母材一直線にマジックでマーキング。これが本締め後の判定基準になります。

⑤ステップ5:本締め

シャーレンチでピンテールがちぎれるまで締付け。ピンテールが落ちたらその場で完了。

⑥ステップ6:マーキング確認

マーキングのズレを確認。

状態 判定
ナットが120°前後ズレ・ボルトは動いていない 正常
ナットが過大に動いた 締めすぎ(ボルト交換)
ナットが動いていない・ピンテールも切れていない 共回り(再施工)
ナット・ボルトの両方が動いた 共回り(再施工)

「ナットだけが動いた、ボルト本体は静止」が正しい状態。共回りは絶対NG

S10Tの品質管理と現場の着眼点

施工管理としてS10Tの現場で押さえたいポイントを整理します。

①ボルトの保管

  • 湿気を避ける:水濡れは遅れ破壊の最大原因
  • 箱から出したボルトは即日施工:開封後の長時間放置NG
  • 塗装・油分の付着NG:摩擦接合の摩擦係数が変化

②孔径と摩擦面の処理

  • 孔径:ボルト径より約1.5mm大きい(M22なら24mm)
  • 摩擦面処理:ショットブラスト、赤錆発生まで放置(防錆塗装NG)
  • 摩擦係数μ ≧ 0.45が標準値

③1次締めと本締めの順序

群(複数ボルトの集合)で施工する場合、

  • 1次締めは中央から外側へ
  • 本締めも中央から外側へ

の順で、応力が均等に伝わるように。順序を守らないとボルト間で応力差が出て、特定のボルトだけ過大な負荷がかかる。

④ピンテール処理

破断したピンテールは現場に散乱するので、

  • 専用回収袋を準備
  • 作業終了後の清掃
  • 足場板の隙間に落ちないよう養生

特に高所からの落下事故を防ぐため、回収を徹底。

⑤共回りへの対応

共回り」とは、ナットだけでなくボルト本体も一緒に回ってしまう現象。

  • 原因:ねじ山の咬み合い不良、ボルトの傾き、座金の挟み込み不良
  • 対応:ボルトを抜いて新しいもので施工し直し

共回りボルトは正しい軸力が出ていないので、絶対に使い続けないこと。

⑥検査記録

  • マーキング写真:施工前後の状態を全数記録
  • 共回り発生本数:ロットごとに記録
  • 再施工本数:交換歴を記録

これらは竣工図書として保管する必要があります。

⑦シャーレンチの定期校正

シャーレンチは1年に1回程度の校正が推奨。経年でピンテール破断トルクがズレると、軸力の精度が落ちます。

⑧雨天時の施工

雨天時の本締めは原則禁止。ボルト・ナット・摩擦面が濡れると、摩擦係数の低下・遅れ破壊リスクが増大。

スプライスプレートの使い方は別記事も参考になります。

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S10Tに関する情報まとめ

最後に、S10Tの重要ポイントを整理します。

  • S10Tとは:トルシア形高力ボルトの規格名。引張強さ1000 N/mm²級
  • F10Tとの違い:S10Tはピンテール付きでシャーレンチ施工、F10Tは六角頭でトルクレンチ施工
  • ピンテール破断方式:規定軸力に達すると先端が自動的にちぎれて完了
  • 軸力精度:±5%以内(トルクレンチの±15〜20%より高精度)
  • 施工手順:受入検査→仮組立→一次締め→マーキング→本締め→確認の6ステップ
  • マーキング判定:ナットが120°前後ズレ・ボルトは静止が正常
  • NG事象:共回り、ピンテール残存、ナット過回転は再施工
  • 品質管理:保管時の湿気管理、孔径・摩擦面処理、施工順序、ピンテール回収、検査記録

以上がS10Tに関する情報のまとめです。

S10Tは「ピンテールがちぎれたら締付け完了」というシンプルな仕掛けで、鉄骨工事の現場で圧倒的なシェアを持つ高力ボルト。ボルト保管→施工順序→マーキング→共回り対応の流れを押さえれば、施工管理として現場で職人さんと自信を持って会話できるようになります。「ピンテールが切れていれば品質OK」と短絡せず、マーキングまで確認する目線を持っておきたいですね。一通りS10Tの基礎知識は理解できたと思います。

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