- ボルトって種類が多すぎて、何が違うの?
- 六角ボルトと高力ボルトはどう違う?
- 「M20」のMの後の数字は何を表してる?
- 強度区分「4.8」「10.9」の数字の意味は?
- 締付けトルクは何で決まるの?計算式はある?
- 高力ボルトの締め方(一次締め・本締め)の手順は?
- F10TとS10T、トルシア形って何が違う?
- 締付け検査では何を見ればいい?
上記の様な悩みを解決します。
ボルトは建築・鉄骨工事で日常的に扱う締結部品ですが、「種類・寸法表記・強度区分・締付けトルク」を正しく押さえていないと、発注ミスや締付け不良につながります。特に鉄骨の高力ボルトは、締め方と検査を間違えると構造の安全性に直結します。今回は定義・種類・寸法の見方といった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「強度区分の数字の意味」「締付けトルクの計算式」「高力ボルト摩擦接合の締め方と検査」まで、よくある質問も交えて網羅的に整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
ボルトとは?
ボルトとは、結論「らせん状にねじ山が刻まれた金属の棒で、ナットと組み合わせて部材を締結する部品」のことです。
ねじ山の摩擦と、締め付けたときに生まれる軸力(部材を引き付ける力)で部材同士を固定します。基本的にはナットとセットで使い、座金(ワッシャ)を挟んで使うのが一般的です。建築・土木・機械まで幅広く使われていて、用途や強度に応じて多くの種類があります。
ここで押さえておきたいのは、ボルトが部材を留めているのは「ねじ込んだから」ではなく「軸力で部材同士を押し付け合っているから」だという点です。締め付けると、ボルトはわずかに伸びてバネのように元に戻ろうとし、その力(軸力)で部材を挟み込みます。この軸力をいかに正確に・安定して出せるかが、ボルト締結の品質を決めます。後で出てくる強度区分も締付けトルクも、すべて「狙った軸力を出す」ための管理だと考えると一本につながります。
ナットとの違いや組み合わせはこちらが参考になります。

僕の整理では、ボルトは「ねじ込んで固定する部品」ではなく「締め付けた軸力で部材を押し付け合う部品」と捉えると、規格や検査の話がスッと入ってきます。
ボルトの種類と用途
ボルトは形状と用途でいくつかの種類に分かれます。建築・施工でよく出てくる主なものを整理します。
- 六角ボルト:頭が六角形の最も一般的なボルト。汎用的な締結に使う
- 高力ボルト(ハイテンションボルト):高い強度を持ち、鉄骨の摩擦接合に使う構造用ボルト
- 寸切りボルト(全ねじ):頭がなく全長にねじが切られた棒。吊りボルトや設備固定に使う
- アンカーボルト:コンクリートに埋め込み、土台や機器を基礎に固定する
- 通しボルト・豆ボルト:木造や型枠で部材を貫通して締結する
このうち六角ボルトは、さらに「全ねじ六角ボルト」「呼び径六角ボルト(半ねじ)」「有効径六角ボルト」に分かれます。せん断力がかかる接合部では、ねじ山ではなく軸のねじ無し部分(円筒部)でせん断を受けたいので半ねじ(呼び径六角ボルト)を使う、という考え方が基本です。
材質は鉄(鋼)が基本ですが、屋外や水まわりではステンレス、軽量化が必要な箇所ではアルミなどを使い分けます。錆びやすい環境では溶融亜鉛めっき品を選ぶことも多く、めっきの有無は後述の締付けトルク(摩擦の効き方)にも影響します。用途別の詳しい記事は下記にまとめています。


個人的には、種類を丸暗記するより「汎用=六角ボルト、構造=高力ボルト、基礎固定=アンカーボルト」という3本柱でまず捉えておくと、現場での会話に乗りやすいと思います。豆ボルトや通しボルトの違いは、木造や型枠まわりで出てきたときに個別に押さえれば十分です。

ボルトの寸法の見方
ボルトの寸法表記は、読み方さえ分かれば一気に楽になります。結論、「M(呼び径)×長さ」が基本の読み方です。
たとえば「M20×60」なら、ねじの呼び径(外径)が20mm、長さが60mmという意味です。Mはメートルねじを表す記号で、Mの後の数字がねじ山の外径(呼び径)になります。長さは基本的に首下長さ(頭の付け根から先端まで)で表します。
押さえておきたい寸法用語を整理します。
- 呼び径:ねじ山の外径。M6・M12・M20などのMの後の数字
- 首下長さ:頭の下から先端までの長さ。締結する板厚+ナット・座金分が必要
- ピッチ:隣り合うねじ山の間隔。並目(標準)と細目(ピッチが細かい)がある
- 二面幅:六角頭の対辺の幅。使うスパナ・ソケットのサイズに対応
- 全ねじ・半ねじ:全長にねじがあるのが全ねじ、軸の一部だけがねじなのが半ねじ
首下長さの選定は地味に重要で、短すぎるとナットがかからず、長すぎると余りねじが出て納まりが悪くなります。締結する板厚の合計に、ナットの高さ・座金の厚み・余ねじ(数山)を足した長さを選ぶのが基本です。並目と細目は、細目の方がピッチが細かく緩みにくい一方、ねじ山を傷めやすい性質があります。二面幅を知っておくと、必要なスパナ・ソケットのサイズ(例:M16なら二面幅24mm)がすぐ分かるので、工具の段取りにも役立ちます。
ボルトの規格
ボルトの規格はJISで体系的に決まっています。結論、形状・寸法は「JIS B 1180」、機械的性質(強度)は「JIS B 1051」が基本です。
六角ボルトの形状・寸法・寸法精度はJIS B 1180で規定されていて、ここに「全ねじ六角ボルト」「呼び径六角ボルト」「有効径六角ボルト」の3種類が定められています。一方、ボルトの強度区分など機械的性質はJIS B 1051で規定されています。つまり「形はB 1180、強さはB 1051」と覚えておくと整理できます。
建築の鉄骨で使う高力ボルトは別系統の規格で管理されます。高力六角ボルト(F10T)はJIS B 1186、トルシア形高力ボルト(S10T)は日本鋼構造協会規格(JSS)などで規定され、摩擦接合用として強度・寸法・締付け方法まで体系化されています。普通ボルトと高力ボルトでは、よりどころとなる規格も管理の厳しさも違う、という点は押さえておきたいところです。
鋼材側の規格と合わせて確認したい場合は、鋼板の規格の記事も参考になります。

実務だと、発注時にこの規格番号まで意識することは多くありませんが、図面や仕様書で規格が指定されたときに「どっちが形状でどっちが強度か」を分かっていると、拾い出しのミスが減ります。
ボルトの強度区分
ここは多くの人がつまずくポイントですが、仕組みを知れば簡単です。結論、強度区分の数字は「引張強さ」と「降伏点」を表しています。
JISでは強度区分が3.6・4.6・4.8・5.6・5.8・6.8・8.8・9.8・10.9・12.9の10段階に分かれています。この数字の読み方は次の通りです。
- 小数点の前の数字 ×100 = 呼び引張強さ(N/mm²)
- 前の数字 × 後ろの数字 ×10 = 呼び下降伏点(N/mm²)
- 後ろの数字 ÷10 = 降伏比(降伏点÷引張強さ)
たとえば「4.6」なら、前の4×100で呼び引張強さは400N/mm²、4×6×10で呼び下降伏点は240N/mm²、降伏比は0.6、という意味になります。「10.9」なら引張強さ1000N/mm²、降伏点900N/mm²で、かなり高強度のボルトということです。この刻印(強度区分)はボルト頭に表示されているので、現場で「これは何のボルトか」を確認するときの手がかりになります。
選び方の考え方としては、強度区分が高いほど強い力に耐えられますが、その分硬く、遅れ破壊(時間が経ってから突然割れる現象)のリスクも上がります。実際、かつて高力ボルトのF11T(強度区分11.9相当)は遅れ破壊の問題から使用が避けられ、現在はF10Tが主流になっています。だから「とにかく高強度を選べばいい」わけではなく、設計で指定された区分に従うのが大原則です。僕の考えでは、強度区分は現場で勝手に上げ下げしてよいものではなく、図面・仕様書の指定を厳守すべき項目だと捉えています。
ボルトの締付けトルク
「何N・mで締めればいいのか」は現場で必ず出る疑問です。結論、普通ボルトの締付けトルクはJISで明確に規定されておらず、計算式で求めるのが基本です。ここが高力ボルトとの大きな違いです。
一般的な締付けトルクの計算式は次の通りです。
T = K × d × F
ここでTが締付けトルク(N・m)、Kがトルク係数、dがねじの呼び径(m)、Fが軸力(N)です。トルク係数Kは、ねじ面の摩擦状態によって変わる係数で、計算上は0.17あたりがよく使われます。つまり、同じ軸力を出したくても、ねじ面が乾いているか・潤滑されているか・めっきがあるかで必要なトルクは変わる、ということです。
注意したいのは、締付けトルクと軸力は「トルク係数を介した間接的な関係」だという点です。トルクで管理しているつもりでも、ねじ面の状態次第で実際の軸力はばらつきます。だから本来は、トルクだけでなく軸力そのものを管理したい。これが高力ボルトで「ナット回転法」や「トルシア形のピンテール破断」といった、トルク以外の方法で軸力を担保する仕組みが使われる理由です。
締めすぎ・緩すぎで起きることも整理しておきます。締めすぎればボルトが降伏点を超えて伸びきり(最悪は破断して)軸力が出ず、緩すぎれば軸力不足で緩み・がたつき・脱落につながります。どちらも締結としては失敗です。トルクの単位や換算がよく分からない場合はこちらを確認してください。

実務だと、普通ボルトは「計算値や経験値を目安にしつつ、ばね座金・ダブルナット・ねじロックなどの緩み止めを併用して管理する」ことが多いです。一方で、構造を担う高力ボルトは、次の章のように締め方と検査が厳格に決まっています。
ダブルナットによる緩み止めの考え方はこちらが参考になります。

高力ボルトの締め方と検査
建築の鉄骨工事で一番重要なのがここです。結論、高力ボルトは摩擦接合で力を伝えるため、「一次締め→マーキング→本締め→検査」という決まった手順を守ります。
まず摩擦接合とは、高力ボルトで接合材を強く締め付けたときに生まれる材間の圧縮力で、接合面の摩擦抵抗によって応力を伝える接合法です。ボルトのせん断ではなく「面と面の摩擦」で力を伝えるのがポイントで、だからこそ正確な軸力(締付け力)が命になります。接合面に塗装やサビ・油があると摩擦力が出ないため、摩擦面はミルスケールを除去して所定のすべり係数を確保する処理(ブラスト処理や自然発錆など)をします。
種類の記号も押さえておきましょう。高力六角ボルトはF10T、トルシア形高力ボルトはS10Tです。FはFriction(摩擦)、SはStructural(構造)、10は引張強さ1000N/mm²、TはTensile strength(引張強さ)を表します。トルシア形は、本締めで先端のピンテールがねじ切れることで規定軸力に達したと分かる仕組みになっていて、専用のシャーレンチで締めます。
締付け手順は次の流れです。
- 鉄骨を仮組みし、仮ボルトで固定する
- トルクレンチや専用工具で、所定トルクの一次締めを行う
- 全ボルトを一次締めした後、ボルト・ナット・座金・母材にまたがる合いマーク(マーキング)を付ける
- 本締めを行う(六角ボルトF10Tはナット回転法で120°±30°など、トルシア形S10Tはピンテール破断まで)
マーキングがなぜ重要かというと、本締め後にマークのずれを見れば、ナットがどれだけ回ったか、ボルトが共回り・軸回りしていないかが一目で分かるからです。マークが無いと、締め忘れや異常を見抜けません。締付けは原則として中央のボルトから外側に向かって順に行い、板の浮きを外へ逃がします。
締付け後の検査では、次を目視で確認します。
- 全ボルトのピンテールが破断しているか(トルシア形の場合)
- マークのずれから、共回り・軸回りが起きていないか
- ナット回転量が適正範囲(おおむね120°±30°)に収まっているか
- 一次締め忘れ(マークの基準がない)ボルトがないか
正直なところ、高力ボルトの締付けは「締めて終わり」ではなく「マーキングと検査までがワンセット」です。新人のうちはピンテールが切れていれば安心しがちですが、共回りや軸回りを見逃すと軸力が出ていない接合部を作ってしまう。ここは検査まで含めて手順を体で覚えておくべき部分だと考えています。
ハイテンションボルトの詳細はこちらにもまとめています。

ボルトに関するよくある質問
最後に、現場や試験勉強でよく出る疑問をまとめておきます。
六角ボルトと高力ボルトは何が違いますか?
六角ボルトは汎用の締結に使う一般的なボルトで、高力ボルトは鉄骨の摩擦接合に使う高強度の構造用ボルトです。高力ボルトは強い軸力で部材を締め付け、その材間摩擦で力を伝えるため、締め方(一次締め→本締め)と検査が厳格に決められている点が大きく違います。
強度区分「8.8」はどういう意味ですか?
前の数字8×100で呼び引張強さ800N/mm²、8×8×10で呼び下降伏点640N/mm²、降伏比0.8を表します。数字が大きいほど高強度ですが、その分硬く遅れ破壊のリスクも上がるため、設計指定の区分に従って選びます。
普通ボルトの締付けトルクはどう決めますか?
普通ボルトはJISで一律のトルク値が定められていないため、T=K×d×F(トルク係数×呼び径×軸力)の計算式で求めるのが基本です。ねじ面の状態でトルク係数が変わるので、計算値を目安にしつつ緩み止めを併用して管理します。
トルシア形高力ボルト(S10T)の締付けが完了した目安は何ですか?
本締めで先端のピンテールがねじ切れて脱落したことが、規定軸力に達した目安です。締付け後は全ボルトのピンテール破断と、マークのずれによる共回り・軸回りの有無を目視検査します。
高力ボルトの摩擦面に塗装してはいけないのはなぜですか?
摩擦接合は接合面の摩擦力で応力を伝えるため、塗装や油・サビがあると必要なすべり係数(摩擦力)が確保できないからです。摩擦面はミルスケールを除去し、ブラスト処理や自然発錆で所定の粗さを出してから組み立てます。
ボルトに関する情報まとめ
- ボルトとは:ねじ山を刻んだ金属棒。締め付けた軸力で部材を締結する部品
- 種類:汎用の六角、構造用の高力、基礎固定のアンカーなど用途で使い分け
- 寸法の見方:「M(呼び径)×長さ」。首下長さ・ピッチ・二面幅・全/半ねじを押さえる
- 規格:形状・寸法はJIS B 1180、強度区分はJIS B 1051、高力ボルトは別規格
- 強度区分:前の数字×100=引張強さ、前×後×10=降伏点(例4.6→400/240)
- 締付けトルク:普通ボルトはT=K×d×Fで計算。高力ボルトは手順が厳格
- 高力ボルト:摩擦接合。一次締め→マーキング→本締め→検査の順を守る
以上がボルトに関する情報のまとめです。
ボルトは「ただの締結部品」に見えて、寸法・規格・強度区分・締付けの管理が品質と安全に直結する部品です。特に高力ボルトはマーキングと検査まで含めて一連の作業なので、手順を正確に押さえておくと現場で信頼されます。締結部品まわりの基礎は下の記事も合わせてどうぞ。





