高力ボルトとは?種類、強度、締付けトルク、施工方法、F10Tなど

  • 高力ボルトって普通のボルトと何が違うの?
  • 種類や強度区分が知りたい
  • F10TってどんなJIS規格?
  • トルシア形ボルトって何?
  • 締付けトルクの目安は?
  • マーキングや本締めは何のために?

上記の様な悩みを解決します。

高力ボルトは鉄骨造の柱・梁の接合で必ず登場する重要部品で、施工不良がそのまま建物の安全性を左右します。施工管理として現場で接合部の検査をする上で必須の知識ですので、抑えておきましょう。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

高力ボルトとは?

高力ボルトとは、結論「鋼材を高い軸力(締付け力)で締め付けて、鋼材同士を強く接合するための高強度ボルト」のことです。

英語ではhigh-strength bolt、現場では「高力ボルト」「高張力ボルト」「ハイテンボルト」と呼ばれます。普通ボルト(中ボルト)と区別する一番の違いは、鋼材自体の引張強さ。普通のM20のボルトが400 N/mm²級なのに対し、高力ボルトは800 N/mm²超〜1,000 N/mm²超まであり、文字通り「強さの桁が違う」部品です。

ポイントは、高力ボルトは「ボルトをぐいぐいに締めて、接合面の摩擦力で鋼材を一体化させる」設計思想。普通ボルトのように「ボルト軸そのものでせん断を受ける」のとは仕組みが違います。

接合方式 力の伝わり方
摩擦接合 接合面の摩擦力でせん断を伝える(高力ボルトの主流)
支圧接合 ボルト軸とボルト孔のフチで支える
引張接合 ボルト軸方向の引張力で伝える

建築の鉄骨工事の98%以上は「摩擦接合」を選ぶのが標準です。摩擦面の処理(赤錆処理、ブラスト処理)を厳格にすることで、設計時に想定したすべり係数を担保する、という流れになります。

高力ボルトの種類と強度区分

高力ボルトはJIS規格で強度区分が決められており、現場では「F〇〇T」という記号で識別されます。

強度区分 引張強さ 主な使われ方
F8T 800 N/mm²級 一般建築の摩擦接合(やや古い基準)
F10T 1,000 N/mm²級 現在の建築の主流
F11T 1,100 N/mm²級 過去に使われたが、遅れ破壊問題で現在は使用停止
S10T 1,000 N/mm²級 トルシア形(後述)の代表
F14T 1,400 N/mm²級 特殊用途(橋梁等で限定使用)

「F10T」は現在の建築鉄骨で最も多く使われる規格で、一度は耳にする呼び名です。F11Tは1960〜70年代に使われましたが、遅れ破壊(締付け後しばらくしてから突然破断する現象)が問題になり、現在は新規設計では使われていません。改修工事で既存F11Tに遭遇した場合は、撤去・交換の判断が入るので要注意ですね。

JIS形(六角ボルト)とトルシア形

形状でいうと、大きく2系統に分かれます。

種類 形状の特徴 締付け方法
JIS形(六角高力ボルト) 一般的な六角頭、ナット、ワッシャ トルクレンチで一定トルクまで締める
トルシア形(S10T) 軸の先端にピンテール(細い軸)あり 専用シャーレンチで締め、規定軸力でピンテールが切れる

トルシア形は、締めると先端のピンテールが「ポンッ」と切れる仕組みになっており、切断=必要軸力到達のサインなので、本締め完了が一目で分かります。締付けの確実性が高く、近年の建築鉄骨では主流に近い存在です。

それぞれ見た目が違うので、現場で「ピンテールが残っていないボルト」を見たら本締め完了、「ピンテールが残っているボルト」は仮締めまたは未締め、と判別できる、という運用ですね。

ボルト全般の規格・寸法は別記事でも整理しているので、合わせて読んでみてください。

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高力ボルトと普通ボルトの使い分け

普通ボルト(中ボルト)と高力ボルトをどう使い分けるかを整理します。建築の現場では明確に役割が分かれています。

項目 普通ボルト 高力ボルト
強度 400 N/mm²級 800〜1,000 N/mm²級
接合方式 主に支圧接合・引張接合 摩擦接合が主流
主な用途 軽微な仮接合、付帯部材 主要構造部の柱・梁接合
必要な検査 簡易(締付け確認程度) 本締めトルク管理・マーキング

主要構造部の柱・梁接合は、ほぼ100%高力ボルト摩擦接合です。普通ボルトは仮設足場、雑壁の補強プレート、付帯設備の取り付けなど、構造耐力を直接負担しない箇所に限定されるイメージ。

ボルトを巡る話題で「主要構造部の現場接合は溶接で代替できないか」と聞かれることがありますが、現場溶接は品質管理の難易度が一段上がるため、よほど特殊な事情がない限り高力ボルト摩擦接合を選ぶのが標準です。

高力ボルトの施工方法

高力ボルトの施工は、大きく3ステップに分かれます。1本のボルトに対して必ずこの順序で進めるのが鉄則です。

ステップ 内容
①一次締め(仮締め) 規定トルクの約60%程度で軽く締める。建方の整形に使う
②マーキング ボルト・ナット・座金・母材にまっすぐ1本の線を引く
③本締め 規定トルク/規定軸力まで締め付ける。トルシア形ならピンテールが切れる
④締付け検査 マーキングの回転角・本締め痕跡を確認

一次締め(仮締め)

建方では複数本のボルトをまず軽く通し、鉄骨の通り・倒れを調整した上で一次締めをします。一次締めの目的は「鉄骨を所定の位置に固定する」までで、構造耐力は出していません。

マーキング

一次締め完了後、ボルト・ナット・座金・母材にマジックでまっすぐ1本の線を引くのが鉄則。本締めをするとナット側が回転するので、本締め後にマーキングが「ズレている」状態が正常、「全くズレていない」のは本締めしていない、「マーキングがバラバラに乱れている」のは共回り(座金やボルトも一緒に回ってしまう不具合)の可能性、と判別できます。

本締め

JIS形は校正済みのトルクレンチで規定トルクまで締めます。M20・F10Tなら標準トルクは約500 N・m前後(メーカー・気温で変動)。トルシア形は専用シャーレンチで締め、規定軸力に到達するとピンテールが自動的に切れる、というメカニズム。本締めは「中央から外周へ」「全箇所を均等に進める」のが原則です。

締付け検査

施工管理として最重要なのが、本締め後の締付け検査。マーキングの回転角を全数または抜き取りで確認し、共回り・追従回転(座金が回る)・本締め忘れがないかを目視+記録でチェックします。検査記録は鉄骨工事の品質管理書類の中核を占める重要書類ですね。

ボルト関係の規格・締付けトルクの考え方は、ナット・ワッシャ記事も合わせて参照しておくと理解が深まります。

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高力ボルトに関する施工管理の注意点

現場で「ヒヤリ」を生みやすいポイントを整理しておきます。

摩擦面の処理

高力ボルトは摩擦力で力を伝えるので、ボルト孔周辺の鋼材表面の状態が極めて重要。ペンキやサビ(黒皮)が付いた状態で締めても摩擦係数が出ないので、ブラスト処理(鋼面にショットを吹き付けて粗面化)または赤錆処理が前提。施工要領書で確認し、表面が要求基準通りかを必ず確認しましょう。

ボルトの保管・管理

高力ボルトは出荷時に防錆油でコーティングされており、開封後は使用までの期間が決まっています(一般に開封後3カ月以内)。屋外で雨ざらしにしたボルト、使用期限を過ぎたボルトは性能保証されないので、現場で「箱から出しっぱなし」のボルトがないか、入念に。

規定トルク・軸力の校正

トルクレンチ・シャーレンチは年1回程度の校正が必要。校正記録のないレンチで本締めしても検査エビデンスとしては成立しないので、書類管理も含めて施工計画段階で押さえておきます。

遅れ破壊リスク(古い建物の改修)

F11Tの遅れ破壊は1970年代に多発した事故で、締付け数年〜数十年後に突然破断するという厄介な現象。改修工事で既存鉄骨に着手する場合、ボルトの強度区分(首部や軸部の刻印)を確認し、F11Tだったら設計者と協議して対応方針を決めるのが安全です。

温度補正

冬場の極寒や夏場の高温は、トルクと軸力の関係に少しズレが出ます。施工要領書ではこの補正を考慮した規定トルクが記載されているので、現場の気温にあった値で締めることが大事。「規定トルクを守ったのに軸力が出ていない」ケースの裏に温度誤差が潜んでいることもあります。

共回り・追従回転の見抜き方

マーキングの線が乱れたら共回りの可能性、線がほぼ一致+本締め痕が薄ければ本締め不足、と判別。施工管理として「ボルト1本ずつ目視で確認」する地道な作業が効くのは、ここが一番の見せ場かもしれません。鉄骨の鉄骨スプライスプレート(添え板)の話と一緒に押さえておくと、検査の精度が上がりますね。

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高力ボルトに関する情報まとめ

  • 高力ボルトとは:鋼材を高軸力で締めて摩擦で接合する高強度ボルト
  • 強度区分:F8T/F10T(現在主流)/S10T(トルシア形)/F11T(使用停止)/F14T(特殊用途)
  • 種類:JIS形(六角)はトルクレンチ、トルシア形は専用シャーレンチ+ピンテール切断で軸力管理
  • 普通ボルトとの違い:構造耐力は高力ボルトが担当、普通ボルトは仮設・付帯部材中心
  • 施工:一次締め→マーキング→本締め→締付け検査の4ステップ
  • 注意点:摩擦面処理、保管期限、トルクレンチ校正、F11Tの遅れ破壊リスク、温度補正、共回り

以上が高力ボルトに関する情報のまとめです。

高力ボルトは「鉄骨造の建物の安全性を直接担う部品」で、施工管理として最後まで気を抜けない検査対象です。マーキングの確認は地味な作業ですが、これが甘いと数十年単位で建物の信頼性に影を落とすので、本締めの一筆ごとに記録を残す姿勢が現場品質を支えますね。

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