- 吸収式冷凍機ってそもそもなに?
- 普通のエアコン(ターボ冷凍機)と何が違うの?
- 仕組みがイメージできない…
- 一重効用・二重効用ってなに?
- COP(成績係数)はどれくらい?
- 選定するときの判断基準は?
上記の様な悩みを解決します。
吸収式冷凍機は、ガスや蒸気の「熱」をエネルギー源にして冷水を作る、ちょっと変わったタイプの冷凍機です。電動のターボ冷凍機と並んでセントラル空調の主力機ですが、「電気をほとんど使わない冷凍機」という特殊性ゆえに、施工管理として絡むときには電源容量や燃料配管の話で頭を切り替える必要が出てきます。電気施工管理として絡んだ現場でも、吸収式が入ると主幹ブレーカー容量がガクッと小さくて済むので、「あ、これターボじゃないんだな」と分かるくらい違うんですよね。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
吸収式冷凍機とは?
吸収式冷凍機とは、結論「水とリチウムブロマイド(臭化リチウム)水溶液の組み合わせを使い、熱(ガス・蒸気・温水)をエネルギー源として冷水を作る冷凍機」のことです。
ポイントは2つ。
- 「電気で圧縮機を回す」のではなく、「熱で水を蒸発・吸収させる」サイクルで冷凍する
- 冷媒は 水(H2O) で、フロンや代替フロンを使わない
この特徴のおかげで、
- ガス・蒸気・廃熱が豊富にある建物(病院・工場・大型ビル)と相性が抜群
- フロン排出量が少なく、地球温暖化係数(GWP)の規制を気にしなくていい
- 電気の主幹容量を抑えられるので、受電設備が小さくて済む
というメリットを持っています。逆に、「電気が安い・ガスが高い」という料金体系の地域では、ターボ冷凍機の方が圧倒的に優位、という具合に、エネルギー単価で勝ち負けが大きく動く機械でもあります。
吸収式冷凍機の仕組み
吸収式の動作原理は、エアコン(蒸気圧縮式)に慣れた人ほど最初は混乱します。「圧縮機がない」「水で冷えるって何?」と頭の中で?マークが3つくらい並ぶはず。整理すると、4つの槽(タンク)が冷凍サイクルを回しています。
4つの槽の役割
| 槽 | 役割 | 中身の動き |
|---|---|---|
| 蒸発器(エバポレータ) | 冷水を冷やす | 真空中で水(冷媒)が低温で蒸発し、冷水管を冷やす |
| 吸収器(アブソーバ) | 蒸発した水蒸気を吸収 | リチウムブロマイド(臭化リチウム)水溶液が水蒸気を吸い込んで濃度低下 |
| 再生器(ジェネレータ) | 水を追い出す | 吸収器から送られた希溶液を加熱し、水を蒸発させて濃溶液に戻す |
| 凝縮器(コンデンサ) | 蒸発した水を液体に戻す | 再生器で出た水蒸気を冷却水で冷やし、液体に戻す |
ざっくり言うと、
- 蒸発器の中で 真空に近い状態 にして水を低温で蒸発させる(このとき周りの冷水管から熱を奪う=冷却)
- 蒸発した水蒸気を吸収器のリチウムブロマイド水溶液が吸い取る
- 水を吸い込んで薄まった溶液を再生器で 加熱 して、水分だけ蒸発させて濃溶液に戻す
- 再生器で蒸発した水を凝縮器で液体に戻し、蒸発器に送り返す
このサイクルが連続的に回ることで、冷水(通常 7℃)を作って空調機やFCU・AHUに送るわけですね。FCUやAHUの中身は別記事に詳しいので合わせてどうぞ。


真空がポイント
「水って100℃で蒸発するんじゃないの?」と思った方、その通り。だから吸収式冷凍機は内部を 真空に近い圧力(数kPa) に保ち、水が 5〜10℃ くらいで蒸発するようにしています。富士山頂で水が低い温度で沸くのと同じ原理ですね。
吸収式冷凍機の種類
吸収式冷凍機は「効用(再生器の段数)」と「熱源」の2軸で分類されます。
効用による分類
一重効用(シングルエフェクト)
再生器が1段の最もシンプルな構成。COPは0.6〜0.7程度。温水・低圧蒸気 といった低温熱源を使えるため、太陽熱・廃熱回収・温泉熱の利用に向いています。最近はゼロエネルギー建築(ZEB)の蓄熱槽組み合わせでも見かけるようになってきました。
二重効用(ダブルエフェクト)
再生器を2段にして、1段目の再生器で発生した高温の冷媒蒸気を2段目の再生器の熱源に使うタイプ。熱を二度使う分、COPが0.9〜1.4程度まで向上します。中〜大規模ビルの主流。
三重効用(トリプルエフェクト)
再生器を3段にしてCOP1.6前後を狙うタイプ。研究開発・一部商用化されていますが、機構が複雑でコスト・耐久性とのトレードオフが大きく、まだ主流にはなっていません。
熱源による分類
| 種別 | 熱源 | 特徴 |
|---|---|---|
| 直焚き(直炊き)式 | ガス・油を直接バーナで燃焼 | 単独機で完結、立ち上がり早い |
| 蒸気焚き式 | プラントからの蒸気 | 工場・病院など蒸気が常時ある現場向き |
| 温水焚き式 | 温水(90℃程度) | 太陽熱・廃熱・コージェネ排熱と組合せ |
| 排ガス焚き式 | コージェネレーション排ガス | 発電と排熱の両取り |
冷温水両用機(吸収式冷温水機)
冷凍機としてだけでなく、冬は 温水(45〜50℃) を作って暖房用にも使えるタイプを「吸収式冷温水機」と呼びます。1台で年中動かせるので、ビル空調の中心熱源としてもよく採用されます。
吸収式冷凍機のCOP(成績係数)
COP(Coefficient of Performance)は、入力した熱エネルギーに対して何倍の冷熱を取り出せるかを示す効率指標。電動冷凍機(ターボ・チラーなど)と直接比較すると低く見えますが、評価軸が違う ことに注意が必要です。
| 種別 | 一次エネルギー基準のCOP目安 |
|---|---|
| 一重効用 吸収式 | 0.6〜0.7 |
| 二重効用 吸収式 | 0.9〜1.4 |
| 三重効用 吸収式 | 1.6前後 |
| 電動ターボ冷凍機(直接COP) | 5〜7 |
| 電動ターボ冷凍機(一次エネ換算COP) | 1.7〜2.4 |
電動ターボの「直接COP(電力ベース)」は5〜7と非常に高く見えますが、発電所での発電効率を含めた 一次エネルギー換算 で比較すると1.7〜2.4まで落ちます。吸収式の二重効用1.4と比べたらそこまで差が大きくない、というのが実態です。なので「電気が安い地域ではターボ、ガス・廃熱が安い地域では吸収式」という選定軸が成り立つわけですね。
ターボ冷凍機との違い
吸収式と並んでセントラル空調の主役なのが ターボ冷凍機。両者の違いを表にまとめると以下の通りです。
| 比較項目 | 吸収式冷凍機 | ターボ冷凍機 |
|---|---|---|
| 動力 | 熱(ガス・蒸気・温水) | 電気(電動圧縮機) |
| 冷媒 | 水(リチウムブロマイド吸収液) | フロン系(HFO・HFC) |
| 主幹ブレーカー容量 | 小さい(補機モーターのみ) | 大きい(圧縮機モーター) |
| 騒音・振動 | 小さい(圧縮機なし) | 大きい(高速回転体あり) |
| イニシャルコスト | やや高い | 中 |
| ランニングコスト | ガス・蒸気単価次第 | 電力単価次第 |
| 立ち上がり | やや遅い | 速い |
| 法定点検 | 高圧ガス保安法対象(直焚き含む) | 第一種特定製品(フロン排出抑制法)対象 |
電気施工管理側で一番効くのは、主幹ブレーカー容量 のところ。同じ冷凍能力なら、吸収式の方がターボの 1/5〜1/10程度 の電気容量で済みます。受電容量に余裕がない既存ビルの空調更新では「吸収式しか入らない」というケースもあります。受電設備の話は別記事で詳しく解説しています。


ターボ冷凍機のような電動機の話は、別途インバータ制御や始動方式とも絡むので合わせてどうぞ。

吸収式冷凍機の選定・施工の注意点
施工管理として現場に関わるとき、押さえておきたいポイントを整理します。
注意点1: 熱源(ガス・蒸気・温水)の手配
吸収式は熱源がないと動きません。直焚きならガス会社との都市ガス・LPガス引込み契約、蒸気焚きなら蒸気プラントとの配管接続、温水焚きならコージェネ・太陽熱集熱器との接続など、熱源インフラの段取りが工事の前提条件になります。電動冷凍機なら「動力盤から太い線を引っ張ればOK」で済みますが、吸収式はそうはいかない、というところが大きな違いです。
注意点2: 冷却水系統が必須
吸収式は凝縮器・吸収器の冷却に 冷却塔(クーリングタワー)→冷却水循環ポンプ→冷凍機 のループが必要です。冷却塔の設置スペース、冷却水の水質管理、配管系統設計が一括で必要になります。受水槽・高架水槽との水の動線整理も合わせて押さえておきたいところ。

注意点3: 真空維持・気密管理
吸収式は内部が真空に近い状態で動くため、わずかな空気の混入で性能が落ちます。年に1回程度の 真空ポンプによる気密点検 が必須。施工時の溶接・配管接続で気密が取れていないと、現地で再生作業が必要になります。
注意点4: 高圧ガス保安法
直焚き吸収冷凍機(ガス焚き)は 第二種圧力容器 に該当することがあり、高圧ガス保安法に基づく定期検査が発生します。発注者側の保守体制(ボイラー技士・冷凍機械責任者の配置)と合わせて確認が必要です。
注意点5: ヒートポンプとの選定比較
最近は 空気熱源ヒートポンプチラー の効率が向上し、中規模ビル空調では「吸収式 vs ヒートポンプ」の比較案件が増えています。ヒートポンプの方がガス配管・冷却塔不要でシンプルに施工できるため、再エネ電力の活用方針とも相性が良い、というのが最近のトレンド。ヒートポンプの仕組みは別記事を参照してください。

注意点6: 廃熱利用との組合せ
工場・病院・データセンターの 廃熱(排ガス・排温水) を熱源とする吸収式は、エネルギー効率が劇的に上がります。ZEB認証や省エネ法の届出でも有利になるため、再エネ・コージェネ計画と合わせて吸収式を採用する事例は増えてきています。ZEBの基本は別記事で解説しています。

吸収式冷凍機に関する情報まとめ
- 吸収式冷凍機とは:水+リチウムブロマイド水溶液を使い、熱を動力源として冷水を作る冷凍機
- 仕組み:蒸発器・吸収器・再生器・凝縮器の4槽で冷凍サイクルを構成。内部は真空近く
- 種類(効用):一重効用(COP 0.6〜0.7)、二重効用(0.9〜1.4)、三重効用(1.6前後)
- 熱源:直焚き(ガス)/蒸気焚き/温水焚き/排ガス焚き
- 冷温水両用:暖房もできる吸収式冷温水機が主流
- ターボ冷凍機との違い:熱源・冷媒・電気容量・騒音などの違い。一次エネ換算で比較するのがフェア
- 選定の鍵:熱源インフラの有無、受電容量、ランニングコスト、廃熱の活用余地
以上が吸収式冷凍機に関する情報のまとめです。
吸収式は「電気を使わずに冷やす」という、ちょっと不思議な仕組みの機械ですが、中身を分解すれば「真空・吸収液・熱の3要素」で説明できる素直なサイクルです。施工管理としては、ターボ冷凍機との比較で電気容量・配管・熱源インフラの段取りが大きく変わってくるので、計画段階で熱源条件の整理から入るのがコツ。電気施工管理側でも、主幹容量の決定や動力盤の設計に直結するので、輪郭は押さえておきたい機械ですね。
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