- 三相誘導電動機ってどんなモーター?
- 仕組みって、どうなってるの?
- かご形・巻線形ってどう違うの?
- 始動方法って何種類あるの?
- どんな機械に使われてる?
- 選定や運用で気をつけることは?
上記の様な悩みを解決します。
三相誘導電動機は、工場・ビル・設備機械で使われている 業務用モーターの定番。ファン・ポンプ・コンプレッサー・コンベアなど、産業界で動いているモーターのほとんどがこのタイプです。電気施工管理として配線・始動方式・保護装置の選定に絡む場面が多いので、仕組みからじっくり押さえておくと現場が一気に分かりやすくなります。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
三相誘導電動機とは?
三相誘導電動機とは、結論「三相交流を使い、磁界の回転で回転子を引きずって回転させるモーター」のことです。
英語で Three-Phase Induction Motor。「インダクション(誘導)」の名の通り、回転子に直接電気を流すのではなく、固定子側の磁界変化によって 回転子の中に電流が誘導されて発生する回転力 で動く仕組み。シンプル・頑丈・メンテ容易・安価という4拍子そろった、産業界の主役モーターです。
家電製品(洗濯機・冷蔵庫の小型モーターは単相誘導電動機)と区別したい場合は、「業務用=三相」「家庭用=単相」 とざっくり覚えればOK。
直流モーター・同期電動機などとの違いも整理しておきます。
| 種類 | 特徴 | 主用途 |
|---|---|---|
| 三相誘導電動機 | 構造単純、頑丈、安価、回転数固定(ほぼ) | ポンプ・ファン・コンプレッサー |
| 直流電動機 | 速度制御容易、ブラシ消耗、メンテ大 | 古い電車、特殊用途 |
| 同期電動機 | 回転数厳密一定、力率改善も可能 | 大型コンプレッサー、力率改善用 |
| ステッピングモーター | 角度制御正確、低速精密 | プリンタ、半導体装置 |
直流と交流の基本はこちら。

三相誘導電動機の仕組み
仕組みの本質は 「回転磁界」と「すべり」 の2つに集約されます。
回転磁界
固定子(ステータ)に三相交流(U・V・Wの3線)を流すと、それぞれの巻線が 位相が120°ずれた磁界 を作ります。3つを重ねると、合成磁界が 時間とともに回転している ように見える。これを「回転磁界」と呼びます。
回転磁界の回転速度(同期速度)は次の式で決まります。
Ns = 120 × f / P
- Ns: 同期速度(rpm)
- f: 電源周波数(50Hz or 60Hz)
- P: 極数(4極なら4)
例:50Hz・4極なら Ns = 120 × 50 / 4 = 1,500 rpm
すべり
回転子(ローター)は回転磁界に 少し遅れて 回ります。この遅れの割合を「すべり(s)」と呼び、
実回転速度 = Ns × (1 − s)
定格運転時のすべりは 2〜5% くらいが普通。すべりがゼロだと誘導起電力が起きないので、絶対に同期速度にはならない、というのがポイント。
実際の回転数は4極50Hzで 1,425〜1,470 rpm くらいになる、と覚えればOKです。
電源周波数や極数の関係を理解しておくと、インバータで周波数を変えれば回転数が変えられるという話もすっと頭に入ります。
三相誘導電動機の種類
回転子の構造で大きく2種類に分かれます。
かご形誘導電動機
回転子が アルミや銅のかご状(リス籠形)の導体 で構成されたタイプ。構造が単純で、安価、頑丈、メンテほぼ不要。産業用モーターの90%以上はかご形。一般に「三相誘導電動機」と言えばかご形を指すと思って間違いない。
巻線形誘導電動機
回転子に コイル巻線 を入れ、外部に スリップリングとブラシ で抵抗器を接続するタイプ。始動時に外部抵抗を入れて始動電流を抑え、始動トルクも調整可能。大型クレーン・圧延機など、始動トルクが大きく必要な特殊用途 で使われます。最近はインバータ制御の普及で需要は減少傾向。
| 項目 | かご形 | 巻線形 |
|---|---|---|
| 構造 | 回転子はかご状 | 巻線+スリップリング |
| 価格 | 安い | 高い |
| メンテ | ほぼ不要 | ブラシ・スリップリングの保守 |
| 始動電流 | 大(定格の5〜7倍) | 抵抗で抑制可 |
| 始動トルク | 中 | 大 |
| 用途 | 一般産業機械 | 大型クレーン、圧延機 |
三相誘導電動機の始動方法
始動の瞬間、定格電流の 5〜7倍 という大電流(始動電流)が流れます。電源系への影響を抑えるため、容量に応じて始動方式を選ぶのが施工管理の腕の見せどころ。
1. 直入始動(直入れ)
電源を直結で投入する最もシンプルな方式。約3.7kW(5馬力)以下 の小容量モーターで採用。
- メリット:装置構成シンプル、安価
- デメリット:始動電流が大きく、電源電圧が瞬間的に下がる
2. スターデルタ始動
固定子巻線を始動時は Y結線(スター)、回転後に Δ結線(デルタ) に切り替える方式。3.7〜37kW クラスのモーターで主流。
- 始動電流が直入の 1/3 に抑えられる
- 始動トルクも1/3になるので、軽負荷始動に限定
3. リアクトル始動
電源とモーターの間に リアクトル(インダクタ) を直列に入れて始動電流を制限する方式。リアクタンスとインピーダンスの基本はこちら。

4. インバータ始動(VVVF)
周波数を低い値から徐々に上げて回転速度を上げる方式。始動電流が 定格以下 に収まるうえ、回転数を自由にコントロールできるので、最近の主流。
- メリット:始動電流抑制、回転数制御、省エネ
- デメリット:装置コスト高、高調波対策が必要
5. ソフトスタータ始動
サイリスタで電圧を徐々に上げて始動する方式。インバータより安価で、始動電流抑制目的だけなら十分。
施工管理として、容量と用途に応じてどの方式を選ぶか を設計者・電気主任技術者と確認するのが日常業務です。電気主任技術者の役割はこちら。
三相誘導電動機の用途
産業界の動力源として、ほぼあらゆる回転機械に使われています。
| 用途分野 | 具体例 | 容量レンジ |
|---|---|---|
| ポンプ | 給水・排水・冷温水循環 | 0.4〜数百kW |
| ファン | 空調機・換気・送風 | 0.4〜数百kW |
| コンプレッサー | 冷凍機・空気圧縮機 | 数〜数千kW |
| コンベア | 搬送・選別 | 0.75〜数十kW |
| クレーン・ホイスト | 揚重・搬送 | 数〜数十kW |
| 工作機械 | 旋盤・フライス盤 | 0.75〜数十kW |
| エレベーター | 巻上機 | 数〜数十kW |
| 厨房機器 | ミキサー・ディスポーザ | 0.4〜数kW |
家電以外の 「動くもの」のほとんどがこのモーターで動いている と言っても過言ではないですね。空調系の代表機器であるAHU・FCUの送風機もここに含まれます。FCUとパッケージエアコンはこちら。
三相誘導電動機の選定と注意点
施工管理として押さえておきたいポイントを並べます。
1. 容量・極数の選定
「機械側の必要トルク × 安全率」で容量を決めるのが基本。極数は 4極(1,500/1,800rpm)が最もポピュラー。低速大トルクが欲しい場合は6極・8極を選びます。
2. 保護装置の組合せ
- 配線用遮断器(MCCB):短絡保護
- 電磁接触器(MC):運転制御の主接点
- サーマルリレー(過負荷継電器):過負荷保護
- ヒューズ or 短絡保護専用器:用途による
電磁開閉器・電磁接触器・サーマルリレーの基本はこちら。



3. 焼損事故の典型パターン
電気施工管理として、モーター焼損は最も嫌な事故。よくあるパターンは以下。
- 欠相運転:3線のうち1線が断線・接触不良で動き続け、残り2線に過電流→焼損
- 拘束運転:機械側がロックして回転子が回らないまま電流が流れ続ける→焼損
- 過負荷運転:定格を超える負荷で連続運転→絶縁劣化→焼損
- 絶縁劣化:湿気・ホコリ・経年で巻線絶縁が低下→地絡・短絡
サーマルリレーの設定値を モーター定格電流に正確に合わせる ことと、欠相検出機能付き の保護装置を採用することで、相当数の事故が防げます。
4. 絶縁種別と耐熱
絶縁種別は B種(130℃)/F種(155℃)/H種(180℃) が主流。屋外・高温環境ではF種以上を選定。
5. 防爆構造
化学プラント・粉塵環境では 防爆構造(耐圧防爆・安全増防爆など) のモーターを選定。一般用と取り違えると重大事故に直結。
6. 騒音と振動
機械室にずらっと並ぶと 騒音・振動が問題化 することがあります。防振基礎・カップリング での対策が必要。
7. 結線(Y/Δ)の確認
電源電圧と巻線結線が合っていないと焼損。例:「200Vだからとデルタ結線にしたが、モーターの定格は400V/Y、200V/Δだった」と気付かず焼損、というミスは多発します。端子箱の結線図と銘板を必ず照合。
三相誘導電動機に関する情報まとめ
- 三相誘導電動機とは:三相交流の回転磁界で回転子を引きずって回す業務用モーター
- 仕組み:回転磁界(同期速度 = 120×f/P)+すべり(2〜5%)で実回転数が決まる
- 種類:かご形(産業用主流)/巻線形(大型・特殊用途)
- 始動方法:直入/スターデルタ/リアクトル/インバータ/ソフトスタータ
- 用途:ポンプ・ファン・コンプレッサー・コンベア・クレーン等
- 選定:容量/極数/保護装置/絶縁種別/防爆/騒音
- 焼損パターン:欠相/拘束/過負荷/絶縁劣化(サーマル+欠相検出で防止)
- 注意:結線(Y/Δ)と電源電圧の整合確認
以上が三相誘導電動機に関する情報のまとめです。
三相誘導電動機は「電気施工管理が触る機会の多い、現場の動力源そのもの」。仕組み・種類・始動方法・保護装置・焼損対策の5点を押さえておけば、設備設計・電気主任技術者・職人さんの誰とでも会話が成立します。シーケンス制御や保護継電器の関連記事もあわせて読んでおくと、配電盤まわりの理解が一気に深まりますよ。










