- 受水槽ってどんな設備?
- どんな建物に必要なの?
- 容量ってどう決めるの?
- 点検は法律で決まってる?
- 清掃の頻度は?
- メンテで気をつけることは?
上記の様な悩みを解決します。
受水槽は、マンション・病院・学校・工場などの大規模建物で、水道本管から引き込んだ水を一時的にためておくタンク。建物の規模が一定以上になると、水道直結だと給水圧と流量が足りないため必須になります。設備施工管理・ビル管理の現場では「法定点検と清掃、衛生管理」をきちんと回せるかが評価ポイント。一度は全体像を押さえておきたい設備です。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
受水槽とは?
受水槽とは、結論「水道本管からの水をいったんためておくタンクで、建物全体に安定して水を供給するための貯水槽」のことです。
中規模以上の建物では、水道本管の圧力だけでは 同時使用ピーク時の給水量 や 高層階への揚水 が追いつきません。そこでまず受水槽に水をためてから、ポンプや高架水槽を経由して各階・各部屋に配水する、というのが基本的な流れですね。
代表的な給水方式の中での位置を整理するとこう。
| 給水方式 | 受水槽の有無 | 用途 |
|---|---|---|
| 直結直圧式 | なし | 戸建て、小規模店舗 |
| 直結増圧式 | なし(増圧ポンプ) | 中規模マンション(給水管口径制限内) |
| 高架水槽方式 | あり+高架水槽 | 中〜高層マンション、ビル |
| 圧力タンク方式 | あり+圧力タンク | 中規模事務所 |
| ポンプ直送方式 | あり+直送ポンプ | 中〜高層オフィス、商業施設 |
「直結式=受水槽なし」「それ以外=受水槽あり」と覚えておけば実用上はOK。配管工事全般の流れはこちら。

受水槽の役割と種類
主な役割
- 断水対策:水道本管が断水しても、受水槽に貯まっている分は使える
- 同時使用ピークの吸収:朝のシャワー集中など、瞬時最大給水量に対応
- 給水圧の安定化:本管圧力の変動を吸収
- 消火用水の確保:屋内消火栓設備の水源として共用するケースがある(屋内消火栓はこちら)

材質による種類
| 材質 | 特徴 |
|---|---|
| FRP製(ガラス繊維強化プラスチック) | 軽量・組立式で多用途、現場組立可、耐用年数20年程度 |
| ステンレス製 | 耐久性・衛生性が高い、価格高め、新築の高級物件で増加 |
| 鋼板+ライニング | 大型槽で採用、内面はエポキシ樹脂等でライニング |
| コンクリート製 | 地下大型槽(消火用兼用など)で採用 |
最も多いのは FRP製のパネルタンク。マンション屋上や地下ピットに行くと、ほぼこのタイプが見られます。
設置場所による種類
- 地上設置型:屋外地盤の上に置く
- 地下式(ピット式):地下のピット内に設置
- 屋上設置型:屋上に高架水槽として置く(高架水槽は別物として扱う)
地下式は 湧水・湿気・換気 の問題が出やすいので、点検通路と換気ガラリの設計が重要です。換気周りはこちら。

受水槽の構造
主要な構成パーツを覚えておきましょう。
| パーツ | 役割 |
|---|---|
| ボールタップ | 水位に応じて給水を自動でON/OFF |
| 定水位弁 | ボールタップの精度を補完する自動弁 |
| 揚水ポンプ | 受水槽から高架水槽 or 各階へ送水 |
| オーバーフロー管 | 満水時に水を排出 |
| 通気管(ベント) | 槽内圧の調整、衛生確保 |
| 排水管 | 清掃時の水抜きと底部排水 |
| マンホール | 点検・清掃のための入口、施錠が必須 |
| 水抜き弁 | 清掃時用 |
| 電極(液面センサ) | ポンプ起動・停止信号、満水・減水警報 |
電気施工管理が押さえるポイント
電極からの信号で 揚水ポンプの起動/停止 を行う制御盤が必須。満水・減水警報 は中央監視に上げて、長時間ポンプが連続運転しないようインターロックを組みます。動力盤・制御盤との関係はこちら。


電極棒の長さで「ポンプ運転開始」「停止」「満水警報」「減水警報」「渇水ポンプ停止」の5点を制御するのが標準。図面では「E5電極」と呼ばれることが多いですね。
受水槽の容量計算
受水槽の容量は 1日の使用水量の40〜60% を確保するのが目安。
用途別の使用水量目安
| 用途 | 1人1日あたり使用水量 |
|---|---|
| 集合住宅 | 200〜350 L/人 |
| 事務所 | 60〜100 L/人 |
| 学校 | 40〜70 L/人 |
| 病院 | 1,500〜3,500 L/床 |
| ホテル | 350〜500 L/床 |
| 飲食店 | 55〜130 L/席 |
例:100戸のマンション(1戸3人)で、1人1日250L使う場合
– 1日使用水量 = 100戸 × 3人 × 250L = 75,000 L = 75m³
– 受水槽容量 = 75m³ × 50% = 37.5m³(実機は40m³程度を選定)
容量を大きくしすぎると 水が滞留してしまい衛生上NG、小さすぎると 断水リスク ということで、40〜60%が定石です。
受水槽の点検・清掃の法的義務
ここが受水槽運用の本丸。容量によって法的扱いが変わる のが要注意ポイントです。
| 区分 | 容量 | 法的位置づけ | 主な義務 |
|---|---|---|---|
| 簡易専用水道 | 10m³超 | 水道法第34条の2 | 年1回以上の検査(厚労省登録機関)/年1回以上の清掃/日常点検 |
| 小規模貯水槽水道 | 10m³以下 | 各自治体の条例 | 自治体ごとに異なるが多くは年1回清掃を推奨 |
簡易専用水道(10m³超)
- 年1回以上の法定検査:登録検査機関による外観・水質・書類の検査が義務
- 年1回以上の清掃:受水槽内部の清掃と消毒
- 記録の保管:3年間保存
- 報告:検査結果は所轄の保健所へ提出
違反すると 100万円以下の罰金(水道法第55条)の対象。ビル管理者は必ず押さえておきたいポイントです。
小規模貯水槽水道(10m³以下)
「条例の範囲内」で各自治体が独自にルールを定めています。多くは年1回の清掃を推奨していますが、罰則がない自治体もあるなど 緩やかな運用。それでも衛生面から実施が望ましい。
清掃の流れ
- 居住者・利用者へ事前周知(清掃中は断水)
- 槽内の水を排水
- 内壁・天井・底面の清掃
- 次亜塩素酸ナトリウム等で消毒
- 給水再開・残留塩素濃度確認
- 報告書作成・保管
清掃事業者に外注するのが一般的で、1回あたり 5〜30万円(容量・現場条件による)が相場です。
受水槽の注意点・トラブル事例
1. マンホールの施錠
衛生・防犯上、マンホールは常時施錠 が必要。鍵の保管管理ルールも整備しておく。施錠なしで放置すると、異物混入・小動物侵入のリスク。
2. 上部の汚染対策
屋上や地上に設置する場合、鳥のフン・落ち葉・砂埃 が槽の天面に堆積しがち。マンホールから槽内に落ちないよう、清掃前に天面の清掃も実施します。
3. 越流口・通気口の防虫網
虫・小動物の侵入を防ぐため、通気口・越流口には防虫網(ステンレス製・40メッシュ程度)を設置するのが基準。網の劣化チェックも点検項目。
4. ボールタップの動作不良
ボールタップが固着すると オーバーフロー or 給水停止。年1回の点検時にバルブ動作の確認が必要。
5. 電極の汚れ
電極棒の表面が汚れると誤作動して ポンプが停止しない・起動しない などのトラブルに。清掃時に電極の磨きもセットでやります。
6. 凍結対策
寒冷地の屋外設置型は、冬場の 配管凍結 に要注意。保温材巻き+ヒーターケーブルで凍結防止します。
7. 耐震対策
阪神・東日本大震災以降、FRP受水槽の地震脱落事故 が多発。基礎ボルト・転倒防止バンドの仕様強化が進んでいます。アンカーボルトの基本はこちら。

受水槽に関する情報まとめ
- 受水槽とは:水道本管からの水をためる貯水槽。建物の安定給水・断水対策・消火兼用に使う
- 種類:FRP/ステンレス/鋼板ライニング/コンクリート、地上・地下・屋上設置
- 主要パーツ:ボールタップ・揚水ポンプ・オーバーフロー・通気管・電極・マンホール
- 容量計算:1日使用水量の40〜60%が目安
- 法的義務:10m³超は簡易専用水道、年1回の検査・清掃が義務
- 清掃費用:1回5〜30万円(容量・現場条件による)
- 注意点:マンホール施錠/防虫網/ボールタップ動作/電極清掃/凍結/耐震
以上が受水槽に関する情報のまとめです。
受水槽は「設置して終わり、ではなく、年1回の点検・清掃を回し続けるための設備」。法定点検をサボると罰金リスク、衛生管理をサボると健康被害、というシビアな性格を持っています。設備施工管理として工事に関わる場合も、ビル管理側の運用視点を理解しておくと、引渡し時の説明や維持管理計画書の作成がスムーズに。給水・消火・電気盤周りの関連記事もあわせて読んでみてください。








