- SUS304のヤング率って何N/mm²?
- 鉄(SS400)と同じ値で計算していい?
- 単位は何で書けばいい?
- 温度が上がると下がるって本当?
- SUS316やアルミと比べてどう違う?
- 現場で気をつけることは?
上記の様な悩みを解決します。
ステンレスの手摺や外装パネルのたわみを計算するときに「ヤング率は鉄と同じ205でいいよね?」と進めてしまうと、撓み量を1割近く小さく見積もってしまうことがあります。SUS304のヤング率は 193,000 N/mm²(193GPa) で、一般構造用鋼の 205,000 N/mm²(205GPa) より約6%低いんですね。たかが6%ですが、長尺の手摺や薄板パネルだとこの差が「ビビり」や「想定外のたわみ」として現れます。今回は施工管理視点で、SUS304のヤング率の数値と扱い方を整理してみます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
SUS304のヤング率の値(数字一発)
SUS304のヤング率は、結論「193,000 N/mm²(=193 GPa)」です。
JIS G 4303(ステンレス鋼棒)やJIS G 4304(ステンレス鋼板)のオーステナイト系SUS304では、設計用の縦弾性係数として 193 kN/mm²(193 GPa)を採用するのが一般的です。出典としてはステンレス協会の「ステンレス鋼データブック」、機械工学便覧、構造用鋼設計指針などで同じ値がよく使われています。
並べてみるとこんな感じ
| 材料 | ヤング率 [N/mm²] | ヤング率 [GPa] |
|---|---|---|
| 一般構造用鋼(SS400) | 205,000 | 205 |
| 溶接構造用鋼(SM400) | 205,000 | 205 |
| SUS304(オーステナイト系) | 193,000 | 193 |
| SUS316(オーステナイト系) | 193,000 | 193 |
| SUS430(フェライト系) | 200,000 | 200 |
| アルミニウム(A5052等) | 70,000 | 70 |
| 鋳鉄(FC250) | 100,000〜130,000 | 100〜130 |
ポイントは、SS400に対してSUS304は約6%低い ということ。「ステンレス=鉄より硬そう」というイメージとは逆で、たわみやすさで言えばSUS304のほうが少し撓みやすい材料です。
ヤング率の基本の話はこちら。

弾性率全体との関係はこちら。

SUS304ヤング率の単位と表記
SUS304のヤング率は、現場でも教科書でも 3つの表記 が混在します。換算に戸惑うので押さえておきましょう。
3つの表記の換算
| 表記 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| N/mm² | 193,000 | 単位応力での記載。建築構造でよく使う |
| MPa | 193,000 | N/mm² と同じ値(1 MPa = 1 N/mm²) |
| GPa | 193 | 機械系・物性表でよく使う表記 |
| kN/mm² | 193 | 構造計算書での略記 |
| kgf/mm² | 19,700 | 旧単位系。古い文献で見かける |
「193GPa」「193,000 N/mm²」「193 kN/mm²」は すべて同じ値 です。構造計算書では 193 kN/mm² と書かれることが多く、引っ張られて見比べたときに別物に見えやすいので注意しましょう。
応力やひずみとの関係はこちらの応力ーひずみ曲線記事で押さえておくとスムーズです。

温度上昇でSUS304のヤング率はどう変わる?
ヤング率は温度依存性があり、SUS304も例外ではありません。
SUS304の温度別ヤング率(参考値)
| 温度 | ヤング率 [GPa] | 常温比 |
|---|---|---|
| 室温(20℃) | 193 | 100% |
| 100℃ | 191 | 99% |
| 200℃ | 184 | 95% |
| 300℃ | 177 | 92% |
| 400℃ | 170 | 88% |
| 500℃ | 161 | 83% |
| 600℃ | 152 | 79% |
出典は機械工学便覧やステンレス協会の物性データを目安としています。常温〜200℃では大きな影響はないですが、500℃を超えると2割ほど落ちる イメージです。
建築の常温環境ならほぼ気にしなくていい話ですが、厨房の排気フード、工場内の高温配管、機械室の煙突周辺など「常時高温に晒される」部位ではこの低下を見込んで計算する必要があります。常温計算のまま設計すると、長尺ステンレスダクトが熱で予想外に撓む、という事故につながります。
スパイラルダクトとの絡みはこちら。

鉄(SS400・SM400)との違いと使い分け
「ステンレスは硬い」というイメージとは裏腹に、ヤング率はSUS304のほうが鉄より低い、というのが盲点です。
ヤング率以外も含めた比較
| 項目 | SS400 | SUS304 |
|---|---|---|
| ヤング率 | 205 GPa | 193 GPa |
| 引張強さ | 400〜510 N/mm² | 520 N/mm² 以上 |
| 0.2%耐力(降伏点) | 245 N/mm²(板厚16mm以下) | 205 N/mm² 以上 |
| 密度 | 7.85 g/cm³ | 7.93 g/cm³ |
| 線膨張係数 | 12 × 10⁻⁶ /℃ | 17.3 × 10⁻⁶ /℃ |
| 耐食性 | 低い(防錆塗装が必須) | 高い(屋外使用OK) |
| 加工性 | 優 | 加工硬化しやすい |
たわみ計算では「材料が違うことを忘れない」
たわみδの基本式は、たとえば等分布荷重が乗る単純梁で δ = 5wL⁴ /(384EI)で表せます。Eが分母にあるので、Eが小さいほどたわみが大きくなる関係です。
SUS304はEがSS400より6%低いため、同じ寸法・同じ荷重なら たわみは1.06倍 程度になります。「鉄と同じ感覚で薄板を片持ちで突き出す」と、想定より大きく撓んで実装後に「思ったよりブヨンブヨンする」となりがちなので、ステンレス部材は 少し剛性に余裕をもった寸法選定 をするのが現場の鉄則です。
たわみの基本公式はこちら。

SS400・SM400の鋼材スペックはこちら。


SUS304ヤング率の使いどころ(計算例)
ステンレス部材で実際にヤング率を使う場面を、簡単な計算例で見てみましょう。
例:SUS304の薄板ステンレスフラットバー(手摺の中桟)
- 部材:SUS304 製 PL-50×4.5(幅50mm、厚み4.5mm)の中桟
- 支持間隔:L = 1,200 mm(柱間)
- 中央集中荷重:P = 100 N(軽く手を掛けて押す程度)
- 単純支持(両端ピン)と仮定
たわみ式 δ = PL³ /(48EI)に代入。
- I = b・h³/12 = 50 × 4.5³/12 ≒ 380 mm⁴
- E(SUS304)= 193,000 N/mm²
- δ ≒ 100 × 1,200³ /(48 × 193,000 × 380)≒ 4.9 mm
これを SS400で計算したつもり で E = 205,000 を入れると、δ ≒ 4.6 mm。0.3 mm の差ですが、手摺中桟のように「触ったときの剛性感」を要求される部材だと体感に響きます。長尺の屋外用ステンレス笠木やパネルだと、6%の差が「想定より波打って見える」要因になります。
つまり 計算式そのものは同じだけど、Eの数字だけ正しいSUS304の値に差し替える という運用がポイントです。
許容応力度の話はこちら。

ステンレス部材の重量計算で使う比重の話はこちら。

SUS304ヤング率に関する施工管理の注意点
最後に、ヤング率の周辺で施工管理者として押さえておきたい注意点を整理します。
注意点①:構造計算書の「鋼種」を必ず確認する
構造計算書に「鋼材:S」とだけ書かれていてヤング率が 205 となっていたら、それはSS400・SM400・SN400系の前提です。一方で「ステンレス手摺の検討」のページで E = 205 のまま計算されていたら 計算ミスの可能性あり。設計者に「SUS304ですよね? Eは193じゃないですか?」と確認しておくと、後の手戻りを防げます。
注意点②:たわみの実測値が大きい時はEを疑う前にIを疑う
「現物のステンレス部材が想像より撓む」と感じたら、まず板厚や断面寸法(=断面二次モーメントI)を再確認しましょう。Eは6%しか違わないので、「思ったより撓む」場合の主因はEより Iの取り違え(板厚違い・補強リブの省略) であるケースが大半です。
断面二次モーメントの話はこちら。

注意点③:温度差の大きい部位は線膨張係数も気にする
SUS304の線膨張係数は SS400 の約 1.4倍 です(17.3 vs 12 × 10⁻⁶/℃)。屋外で太陽光に晒される長尺ステンレス笠木は、夏冬の温度差で見た目以上に伸縮します。Eの計算とは別に、伸縮目地や逃げを取らないと、応力集中で割れることがあります。
注意点④:加工硬化したSUS304は別物扱い
冷間圧延や曲げ加工が入ると、SUS304は加工硬化で耐力が大きく上がります。ただしヤング率自体はあまり変わりません(材料の弾性域の傾きは加工硬化でほとんど変わらない)。「降伏耐力」と「ヤング率」を混同しないのが肝です。
病院案件の機械室で、3 m スパンのSUS304製ダクトサポート(FB-50×6)を渡したことがあります。完成検査の段階で「振ると指先で揺れが分かる」レベルの撓みが出てしまい、原因を遡ったら、設計時に流用したExcelシートのE値が「205,000」のまま、つまり SS400 の値で計算されていたんですね。E=193,000 に直して再計算すると、許容たわみのギリギリを超えていました。最終的にC型アングル(C-100×50×20×2.3)を裏当てして剛性アップで対応しましたが、最初からE=193 で組んでいれば、サポートを FB-65×6 に1ランク上げて済んだ話。Excelの「E」セルが鋼種に追従していない構造計算書は、いまだに散見されます。
SUS304のヤング率に関する情報まとめ
- SUS304のヤング率:193,000 N/mm²(193 GPa)
- 単位の換算:193 GPa = 193,000 MPa = 193 kN/mm² = 193,000 N/mm²
- 鉄(SS400)との差:約6%低い(205 GPa → 193 GPa)
- 温度依存:常温〜200℃はほぼ変わらず、500℃で約2割低下
- 同じ値の親戚:SUS316 も 193 GPa/SUS430 は 200 GPa
- たわみへの影響:同じ条件ならSUS304はSS400より約1.06倍撓む
- 施工管理の注意:構造計算書のE値・線膨張・加工硬化を切り分けて確認
以上がSUS304のヤング率に関する情報のまとめです。
ヤング率という1つの数字でも、6%の違いを「設計上の想定」として正しく扱えるかどうかが、ステンレス部材を品良く納めるコツになります。「ステンレスは鉄より硬そう」というイメージで突っ走ると、現場でブニョブニョする後悔につながるので、E=193 という数字を頭に焼き付けておきましょう。一通りSUS304のヤング率に関する基礎知識は理解できたと思います。
合わせて、関連するヤング率・鋼材・たわみ計算の知識もチェックしておきましょう。









