- 鋼材の単位体積重量って何?
- 数値はいくつ?覚え方は?
- kg/m³とkN/m³の違いって?
- SS400・SM490・ステンレス・アルミで値はどう違う?
- 鉄骨の重量はこの値からどうやって求める?
- 構造計算では何のために使うの?
上記の様な悩みを解決します。
鋼材の単位体積重量は、結論「7,850 kg/m³ ≒ 78.5 kN/m³」が標準値です。これは鉄の比重 7.85 に対して 1m³ あたりの重量を出した値で、構造計算・鉄骨重量算定・部材の自重計算など、建築の世界で最も頻繁に使われる物性値の一つ。SS400もSM490も普通鋼と呼ばれる範囲ならほぼ同じ値で扱えますし、ステンレス(SUS304で約7,930 kg/m³)やアルミ(約2,710 kg/m³)と比較すると、鋼材の重さの感覚が一気にクリアになりますね。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
鋼材の単位体積重量とは?
鋼材の単位体積重量とは、結論「鋼材1立方メートルあたりの重さ」のことです。
英語では unit weight of steel または unit volume weight。記号は通常 γ(ガンマ) または w で表されます。
標準値(建築・土木の常識)
鋼材の単位体積重量 = 7,850 kg/m³
= 78.5 kN/m³
= 7.85 t/m³
= 77 kN/m³(建築学会の値、計算では78.5kN/m³も使う)
「7,850」を反射で出せるようにするのが、構造を扱う人間の必修暗記。鉄筋のかぶり計算や部材自重計算など、何の問題でも最初に出てくる数字です。
なぜ「単位体積重量」が必要か?
鋼材の重量=体積 × 単位体積重量で出せます。例えば、鉄板1m × 1m × 厚み10mm(=0.01m)の重さは、
体積 = 1 × 1 × 0.01 = 0.01 m³
重量 = 0.01 × 7,850 = 78.5 kg
つまり、厚み1mmの1m²鉄板は約7.85kg。「鉄板1mm当たり、1m²で7.85kg」と覚えておくと、現場で電卓を叩く前に概算ができます。
「比重」との関係
| 物性値 | 単位 | 鋼材の値 |
|---|---|---|
| 比重(密度の比) | 無次元 | 7.85 |
| 密度 | g/cm³ | 7.85 |
| 密度 | kg/m³ | 7,850 |
| 単位体積重量 | kgf/m³ | 7,850 |
| 単位体積重量 | kN/m³ | 76.93 ≒ 77 (古い記法) または 78.5(新SI) |
「比重 7.85」「密度 7,850 kg/m³」「単位体積重量 78.5 kN/m³」の3つは、全部同じものを違う単位で言っているだけと理解するのがコツです。
ヤング率や弾性係数との関係についてはこちらの記事もどうぞ。

鋼材の単位体積重量の数値と覚え方
数値の暗記は構造の世界では避けて通れないので、覚え方から押さえます。
①一発で覚える基本値
ρ(密度) = 7,850 kg/m³ = 7.85 g/cm³ = 7.85 t/m³
γ(単位体積重量) = 78.5 kN/m³(≒ 77 kN/m³)
「七八五十(ななはちごじゅう)」の語呂で「7,850」を記憶している現場マンも多いです。あるいは「鉄の比重 7.85」を入り口に、「kg/m³に直すと7,850」「重力加速度をかけると78.5 kN/m³」と展開するのが体系的でラク。
②kg/m³とkN/m³の換算
1 kg = 9.81 N(重力加速度 g ≒ 9.81 m/s²)
1 kg/m³ = 9.81 × 10⁻³ kN/m³ = 0.00981 kN/m³
つまり、
7,850 kg/m³ × 9.81 / 1,000 ≒ 76.97 kN/m³ ≒ 77 kN/m³(厳密)
建築学会の構造設計指針では 77 kN/m³ が公式値ですが、実務の概算や教科書では 78.5 kN/m³(重力加速度 g = 10 m/s²で計算した近似値)もよく使われます。設計実務では77、暗算では78.5と使い分ければOK。
③暗記用の数値表
| 形状 | 寸法 | 重量目安 |
|---|---|---|
| 鉄板(1m²あたり、厚み1mm) | — | 7.85 kg |
| 鉄板(1m²あたり、厚み10mm) | — | 78.5 kg |
| 鉄板(1m²あたり、厚み20mm) | — | 157 kg |
| 鉄板(1m²あたり、厚み100mm) | — | 785 kg |
「厚みmm × 7.85 = 1m²あたりの重量kg」という関係さえ覚えれば、図面を見た瞬間に重量を概算できます。
④覚えやすい比較
- 鉄板厚10mmの1m² → 約78.5kg(成人男性くらい)
- 鉄板厚20mmの1m² → 約157kg
- 鉄板厚100mmの1m² → 約785kg(クルマ1台分くらい)
実物の鉄板を持ったことがあれば、「あの重さ=78.5 kg/m²」と感覚が結びついて忘れません。
材料記号の整理はこちらの記事もどうぞ。

SS400・SM490・SN490の単位体積重量はどう違う?
「SS400とSM490で重さが違うんじゃないか?」と疑問を持つ方も多いですが、答えは「ほぼ同じ」です。
①一般構造用圧延鋼材(SS材)・溶接構造用圧延鋼材(SM材)など
| 鋼材 | 用途 | 単位体積重量 |
|---|---|---|
| SS400(一般構造用圧延鋼材) | 鉄骨二次部材、ボルト | 7,850 kg/m³ |
| SS490 | 鉄骨二次部材 | 7,850 kg/m³ |
| SM400A/B/C(溶接構造用圧延鋼材) | 鉄骨主要部材 | 7,850 kg/m³ |
| SM490A/B/C/YA/YB | 鉄骨主要部材 | 7,850 kg/m³ |
| SN400A/B/C(建築構造用圧延鋼材) | 鉄骨主要部材 | 7,850 kg/m³ |
| SN490A/B/C | 鉄骨主要部材 | 7,850 kg/m³ |
| TMCP鋼(高性能鋼) | 高層・大型鉄骨 | 7,850 kg/m³ |
普通鋼(炭素鋼)の範囲では、強度(降伏点)の違いはあっても単位体積重量はすべて同じとして扱います。化学成分の差は重量にはほぼ影響しません。
②なぜ違わないのか?
鋼材の主成分は鉄(Fe)で、それに炭素・マンガン・シリコンなどが微量混ざる程度。SS400もSM490も98%以上が鉄なので、密度の差は実質ゼロに近い、というのが理由です。
③強度と重量の関係
「強度が違っても重量は同じ」のがポイント。
例えば、SS400(降伏点235 N/mm²)とSM490(降伏点325 N/mm²)を比較すると、
- 同じ重量なら → SM490のほうが約1.4倍の強度
- 同じ強度なら → SM490なら重量約7割で済む
つまり、SM490を使うと軽量化(鉄骨重量の削減)ができる、というのが構造設計上のメリットです。
④覚え方
「普通鋼はぜんぶ7,850 kg/m³」と一括で覚えてOK。例外はステンレスや特殊合金鋼に進んだときだけ意識する、という整理が実務的です。
SS400についての詳細はこちらの記事もどうぞ。

ステンレス・アルミ・チタンとの比較
普通鋼以外の金属材料と比較すると、鋼材の重さの感覚が一気に立体的になります。
①主要金属材料の単位体積重量比較表
| 材料 | 比重 | 密度 | 単位体積重量 | 用途例 |
|---|---|---|---|---|
| アルミニウム(純) | 2.70 | 2,700 kg/m³ | 26.5 kN/m³ | サッシ、外装 |
| アルミ合金 A6063 | 2.70 | 2,700 kg/m³ | 26.5 kN/m³ | 押出形材 |
| チタン | 4.51 | 4,510 kg/m³ | 44.2 kN/m³ | 屋根材、特殊建築 |
| ステンレス SUS304 | 7.93 | 7,930 kg/m³ | 77.8 kN/m³ | 装飾、外装、設備配管 |
| ステンレス SUS316 | 7.98 | 7,980 kg/m³ | 78.3 kN/m³ | 高耐食用途 |
| 鉄(純鉄) | 7.86 | 7,860 kg/m³ | 77.1 kN/m³ | 参考値 |
| 鋼材(SS400等) | 7.85 | 7,850 kg/m³ | 77.0 kN/m³ | 鉄骨主役 |
| 鋳鉄 | 7.20 | 7,200 kg/m³ | 70.6 kN/m³ | マンホール、パイプ |
| 銅 | 8.96 | 8,960 kg/m³ | 87.9 kN/m³ | 配線、避雷導体 |
| 鉛 | 11.34 | 11,340 kg/m³ | 111.3 kN/m³ | 放射線遮蔽 |
②感覚的な比較
- アルミは鋼材の約3分の1の重さ(軽量化のキング)
- チタンは鋼材の約半分強の重さ(高い強度比)
- ステンレスは鋼材よりわずかに重い(約1%増し)
- 鋳鉄は鋼材より約8%軽い
- 鉛は鋼材の約1.4倍の重さ
③なぜアルミが建築サッシに選ばれるか?
アルミ単位体積重量 26.5 kN/m³ は、鋼材 77 kN/m³ の約3分の1。同じ強度を持たせるには断面を大きくする必要がありますが、それでもサッシのような薄物部材なら圧倒的に軽い。建物に取り付ける外装の重量を抑えたい場合、アルミ材は鉄骨の選択肢にない軽さを提供してくれます。
④ステンレスを使うときの重量計算
「ステンレスは鋼材とほぼ同じ重さ」と覚えておけば実用的にはOK。SUS304で7,930 kg/m³(鋼材より1%重い程度)、SUS316で7,980 kg/m³(鋼材より2%重い程度)。重量計算で大きく差が出るほどではありません。
⑤チタンが建築で広がりにくい理由
チタンの密度は鋼材の半分強で軽量、強度は鋼材並み、耐食性も抜群──と良いことずくめですが、価格が鋼材の10倍以上。コスト面で建築の主役になりにくく、特殊建築(六本木ヒルズの屋根、福岡ドームの屋根など)の限られた場面でしか出番がありません。
材料そのものの種類整理はこちらの記事もどうぞ。

鋼材の重量計算の実例
実際に現場で使う重量計算の手順を、形状別に整理します。
①鉄板の重量計算
重量 [kg] = 縦 [m] × 横 [m] × 厚み [m] × 7,850
例題:5m × 2m × 厚み12mmの鉄板
重量 = 5 × 2 × 0.012 × 7,850 = 942 kg
ほぼ1トン弱。クレーンで吊る前に重量を必ず把握する習慣を。
②H形鋼の重量計算
H形鋼は規格表に単位質量 [kg/m] が掲載されているので、長さをかけるだけ。
例題:H-300×150×6.5×9(単位質量 36.7 kg/m)、長さ8m
重量 = 36.7 × 8 = 293.6 kg
H形鋼の規格についてはこちらの記事もどうぞ。

③鉄筋の重量計算
鉄筋も規格表に単位質量があります。代表値だけ覚えるなら、
| 呼び径 | 単位質量 | 概算 |
|---|---|---|
| D10 | 0.560 kg/m | 約0.56 |
| D13 | 0.995 kg/m | 約1 |
| D16 | 1.56 kg/m | 約1.6 |
| D19 | 2.25 kg/m | 約2.3 |
| D22 | 3.04 kg/m | 約3 |
| D25 | 3.98 kg/m | 約4 |
| D29 | 5.04 kg/m | 約5 |
| D32 | 6.23 kg/m | 約6 |
「D10は0.56kg/m、D32は6.2kg/m」だけ覚えておけば、ほかは比例で見当が付きます。
④鋼管の重量計算
重量 [kg/m] = π × (D - t) × t × 7.85 × 10⁻³
- D:外径 [mm]
- t:肉厚 [mm]
これは厚肉管の正確な式。薄肉なら (平均直径 × π × t × 7.85) で近似できます。
⑤鉄骨全体の重量計算
設計図面から部材リストを拾い、各部材を単位質量 × 長さで計算してすべて合算します。鉄骨製作工場のソフトでは部材1本ずつBOM(部品表)を出して自動集計しますが、概算は手計算でも可能。
⑥鉄筋コンクリート床の自重
RC造のスラブ自重はコンクリート + 鉄筋を合わせて出します。
コンクリート自重:23.5 kN/m³(普通コンクリート)
鉄筋分の追加:1.0 kN/m³(鉄筋比1%程度)
合計:24.5 kN/m³ → 厚み200mmなら 24.5 × 0.2 = 4.9 kN/m²
[talk words=’現場で「H形鋼の柱、設計図には500キロくらいって書いてあるけど、本当に1人か2人で動かせる?」と若手から聞かれたことがあって、規格表でH-300×300×10×15の単位質量94 kg/mを確認、長さ4mなら376kg。まあ4人がかりでも動かないし、絶対に手で持つものじゃない。ところが「単位質量がkg/m単位で書いてあるんだ」と気付いた瞬間に、その若手は次から「設計図を見て鉄骨重量を即座に計算する」というスキルを身につけてくれました。鋼材の単位体積重量7,850 kg/m³も大事だけど、現場の人間にとっては規格表の単位質量[kg/m]を当たり前に拾えるかどうか、というのも生きた技能ですね。’ name=”” avatarimg=”https://seko-kanri.com/wp-content/uploads/2020/02/c-run.png” avatarsize=70 avatarbdcolor=#d0d0d0 avatarbdwidth=1 bdcolor=#d0d0d0]
設計荷重の全体像はこちらの記事もどうぞ。

構造計算で単位体積重量が必要な理由
「なぜわざわざ単位体積重量という値を覚えるのか?」を構造計算の文脈で整理します。
①固定荷重(自重)の計算
建物に常時作用する荷重のうち、部材自身の重さ=自重は単位体積重量から計算します。
- 鉄骨梁・柱の自重 → 単位質量[kg/m] × 長さ
- スラブの自重 → 厚み × コンクリートの単位体積重量
- 壁の自重 → 壁厚 × 壁材の単位体積重量
これを階ごと・通り芯ごとに集計し、鉛直荷重として基礎まで伝達します。
②地震荷重の計算(質量=重量)
地震力は 質量 × 加速度 で発生するので、建物全体の質量を出す必要があります。質量 = 重量 / g(重力加速度)なので、結局重量=単位体積重量 × 体積を集計することが出発点。
建物総重量 → 階別重量 → 階別質量 → 地震力 → 各階せん断力
の流れで構造計算が進みます。
③耐震診断・耐震改修
既存建築物の重量を再計算する場面でも、図面から拾える寸法に単位体積重量を掛けて重量を出します。
④仮設材・足場の重量計算
鋼管足場・枠組足場の重量も、規格表の単位質量から計算します。背景にある単位体積重量7,850 kg/m³が共通の前提です。
⑤輸送・揚重計画
クレーン能力・トラック積載重量・揚重順序を計画するとき、部材重量を1つずつ拾うのは構造担当の仕事。単位体積重量を知らずに揚重計画は組めません。
⑥確認申請・構造計算書
構造計算書には固定荷重一覧が必ず載り、各部材ごとに「材種・寸法・単位体積重量・重量」が表記されます。審査機関はこの数字の妥当性をチェックするので、根拠となる単位体積重量は標準値を使うのが原則です。
設計荷重の種類についてはこちらの記事もどうぞ。

鋼材の単位体積重量に関する情報まとめ
- 鋼材の単位体積重量とは:鋼材1立方メートルあたりの重さ
- 標準値:7,850 kg/m³ = 7.85 g/cm³ = 78.5 kN/m³(厳密には77 kN/m³)
- 比重・密度・単位体積重量はどれも同じものを違う単位で表したもの
- SS400・SM490・SN490など普通鋼はすべて同じ値で扱う
- 鉄板厚1mmの1m²で約7.85 kg(暗算の基本)
- ステンレス(SUS304: 7,930 kg/m³)は鋼材より約1%重い
- アルミ(2,700 kg/m³)は鋼材の約1/3、チタン(4,510 kg/m³)は約半分強
- 構造計算では:固定荷重・地震荷重・揚重計画・確認申請のすべての出発点
以上が鋼材の単位体積重量に関する情報のまとめです。
一通り鋼材の単位体積重量の基礎知識は理解できたかなと思います。7,850 kg/m³(または 7.85 g/cm³、78.5 kN/m³)さえ反射で出れば、鉄板・H形鋼・鉄筋・鋼管の重量計算は全部この値から出発できます。SS400もSM490もSN490も「全部7,850 kg/m³で扱う」と一発で割り切れるので、暗記コストも最小限。鋼材の重さの感覚が体に入ると、図面を見た瞬間に「この梁は約500kg、4人で持てるかどうか」のような判断が頭の中で走るようになります──それが構造を扱う人間の基礎体力ですね。
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