- ポアソン比ってなに?
- ヤング率とどう関係するの?
- 計算式はどう書くの?
- 鋼やコンクリートの値はどれくらい?
- なんで「比」なの?単位はないの?
- 現場で意識する場面はある?
上記の様な悩みを解決します。
ポアソン比は、構造力学のテキストでヤング率と並べて出てくる材料定数のひとつです。ヤング率は「縦に押されたとき・引っ張られたときの硬さ」を表すのに対し、ポアソン比は「そのときに横方向にどれだけ膨らむ・縮むか」を表す比率で、両方そろって初めて材料の性質を立体的に評価できます。施工管理側でも、地盤の土圧計算や水圧設計など、ポアソン比の発想が必要になる場面は意外と多いです。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
ポアソン比とは?
ポアソン比とは、結論「材料を引張または圧縮したときに発生する『横方向のひずみ』と『縦方向のひずみ』の比のこと」です。
英語では Poisson’s ratio。記号は ν(ニュー)またはμ(ミュー)が使われます。フランスの数学者シメオン・ドニ・ポアソンが提唱した概念に由来しています。
ざっくりイメージすると、ゴム消しゴムを上下から押し縮めると、上下方向には縮みつつ、横方向にはちょっと膨らみますよね。この「縦の縮み」に対する「横の膨らみ」の割合が、ポアソン比の正体です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 記号 | ν(ニュー) |
| 単位 | 無単位(比なので) |
| 範囲 | 0〜0.5(一般的な材料) |
| 縦ひずみと横ひずみの符号 | 反対(縦に縮めば横は膨らむ) |
ポアソン比が0なら「縦に押しても横は膨らまない」、0.5なら「体積は変わらず横にだけ膨らむ」状態です。実際の材料はだいたい0.2〜0.4の範囲に収まります。
[talk words=’ヤング率は「材料の硬さ」、ポアソン比は「材料の太り方」と覚えると、それぞれが何を表しているかがすっと頭に入ってきますよ。’ name=”” avatarimg=”https://seko-kanri.com/wp-content/uploads/2020/02/c-run.png” avatarsize=70 avatarbdcolor=#d0d0d0 avatarbdwidth=1 bdcolor=#d0d0d0]
ポアソン比の計算式
ポアソン比は、縦ひずみと横ひずみから次のように求めます。
ν = −(横ひずみ ÷ 縦ひずみ)
縦ひずみ:荷重方向の伸び縮みの割合
横ひずみ:荷重方向と直角な方向の伸び縮みの割合
マイナス記号がついているのは、縦に伸びれば横は縮み、縦に縮めば横は伸びる、という符号関係を反映するためです。式の中でマイナスを掛けることで、計算結果がプラスの値になるよう調整しています。
例えば、長さ100mmの試験片を引張試験で1mm伸ばしたとき、横方向の幅10mmが0.03mm細くなったとすると、
- 縦ひずみ = 1 ÷ 100 = 0.01
- 横ひずみ = −0.03 ÷ 10 = −0.003
- ポアソン比 ν = −(−0.003 ÷ 0.01)= 0.3
となり、よくある鋼材のポアソン比0.3が再現できます。
ミルシートに直接ポアソン比が記載されることはあまりないですが、構造計算書や材料カタログでは材料定数として標準的に登場します。

主な材料のポアソン比の値
実務でよく扱う材料のポアソン比をざっと整理しておきます。
| 材料 | ポアソン比 |
|---|---|
| 鋼(一般構造用鋼) | 約0.3 |
| ステンレス鋼 | 約0.30 |
| 鋳鉄 | 0.25〜0.27 |
| アルミニウム | 約0.33 |
| 銅 | 約0.34 |
| コンクリート(普通) | 0.15〜0.25 |
| ガラス | 0.20〜0.25 |
| ゴム | 約0.49(ほぼ0.5) |
| 水 | 0.5(理論上の上限) |
| コルク | 約0.0(横にほぼ膨らまない) |
ポイントを整理すると、
- 金属材料:おおむね0.3前後
- コンクリート:金属より小さく0.2前後
- ゴム・水:体積がほぼ変わらないので0.5に近い
- コルクや発泡材:横に膨らみにくい性質で0近く
という傾向です。鋼0.3、コンクリート0.2、と覚えておけば建築構造の場面はほぼカバーできます。
鉄骨と鉄筋では同じ「鋼」でも材質や規格が違いますが、ポアソン比はどちらも0.3でほぼ同じです。

ヤング率とポアソン比の関係
ポアソン比は単独で使われる場面より、ヤング率(E)とセットで材料の弾性挙動を表す場面の方が多いです。等方的な材料の弾性係数のうち、独立した定数は2つだけで、その代表がヤング率Eとポアソン比νです。
ヤング率・ポアソン比から計算できる主な弾性係数
- せん断弾性係数 G = E ÷ [2 × (1 + ν)]
- 体積弾性係数 K = E ÷ [3 × (1 − 2ν)]
例えば鋼(E=205,000N/mm²、ν=0.3)の場合、せん断弾性係数Gは、
G = 205,000 ÷ [2 × (1 + 0.3)] = 205,000 ÷ 2.6 ≒ 78,800N/mm²
体積弾性係数Kは、
K = 205,000 ÷ [3 × (1 − 0.6)] = 205,000 ÷ 1.2 ≒ 170,800N/mm²
と計算できます。構造解析ソフトの材料定数入力画面で「Eとνを入れたらGが自動計算で出てきた」というケースは、まさにこの式が裏で動いている状態です。
ポアソン比0.5の材料(水・ほぼ非圧縮ゴムなど)では、上の体積弾性係数の式の分母がゼロに近づくため、体積はほぼ変えられない=非圧縮性、という特殊な扱いになります。
H鋼やIビームのような梁材を構造解析するときも、E・νをセットで入力するのが基本です。

ポアソン比が施工管理で関わる場面
「材料力学の話でしょ?」と感じるかもしれませんが、ポアソン比は基礎工事や仮設の設計で意外と顔を出します。
現場でポアソン比の発想が活きる代表的な場面
- 山留め壁の側圧計算(土の静止土圧係数 K0 = ν ÷ (1 − ν) でポアソン比が出てくる)
- 地下水圧の評価(水のポアソン比0.5を前提に、深さに応じた水圧が一様に作用するモデル)
- マスコンクリートの温度応力解析(コンクリートのEとνを入力して温度ひずみを評価)
- 既存改修工事での解析モデル更新(古いSS41からSS400相当に置き換える際もνは0.3で固定)
- 地盤改良後の地盤剛性の再評価(地盤のEとνを推定して上部建物への影響を計算)
特に地下工事や基礎工事の場面では、地盤の静止土圧係数を求めるときにポアソン比が直接効いてきます。例えばν=0.3の地盤ならK0は約0.43になり、ν=0.4の地盤ならK0は約0.67に上がる、という関係です。
[talk words=’山留めの設計レビューに同席したとき、構造担当者が「この地盤、ポアソン比を0.4で入れているから側圧が大きく出ているんだよ」と説明していて、そこで初めてポアソン比が現場の側圧計算に直結していることを知った覚えがあります。’ name=”” avatarimg=”https://seko-kanri.com/wp-content/uploads/2020/02/c-run.png” avatarsize=70 avatarbdcolor=#d0d0d0 avatarbdwidth=1 bdcolor=#d0d0d0]
地盤側のN値を使った地耐力評価については、こちらが詳しいです。


マスコンクリートの温度応力解析でもE・νが必須の入力項目になります。

ポアソン比に関する情報まとめ
- ポアソン比とは:縦ひずみに対する横ひずみの比(記号 ν)
- 計算式:ν = −(横ひずみ ÷ 縦ひずみ)
- 値の範囲:0〜0.5(一般的な材料は0.2〜0.4)
- 主要材料:鋼≒0.3、コンクリート≒0.2、ゴム・水≒0.5
- ヤング率との関係:G=E÷2(1+ν)、K=E÷3(1−2ν)
- 単位:無単位(縦ひずみと横ひずみの比なので)
- 施工管理での扱い:山留め設計・地盤解析・マスコンの応力解析で利用
以上がポアソン比に関する情報のまとめです。
一通りポアソン比の基礎知識は理解できたかなと思います。「ヤング率は硬さ、ポアソン比は太り方」という対比を頭に入れておけば、構造計算書の材料定数欄を見たときに「この材料はちゃんと評価されているな」と腹落ちしやすくなりますよ。
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