電磁開閉器とは?電磁接触器との違い・記号・選定・配線を解説

電磁開閉器とは?電磁接触器との違い・記号・選定・配線を解説

電磁開閉器(でんじかいへいき)とは、電磁石の力で接点を開閉する「電磁接触器」と、過負荷を検出して回路を切る「サーマルリレー」を組み合わせた機器で、主にモーター(電動機)の運転・停止と保護を担う装置です。マグネットスイッチとも呼ばれ、図面では文字記号「MS」で表されます。

「電磁開閉器と電磁接触器って何が違うの?」「図面のMSってどれのこと?」「モーターのサーマルがすぐ飛ぶ/飛ばない原因がわからない」「盤改修で機器選定を任されたけど、どう選べばいいか不安」——動力設備や制御盤まわりを担当し始めると、こうした疑問が一気に押し寄せてきますよね。

この記事では、電気設備の施工管理として制御盤や動力設備に立ち会ってきた僕が、電磁開閉器の意味から電磁接触器・サーマルリレーとの関係、記号と回路図の読み方、選定・配線の実務、そして現場で実際に起きる故障の切り分けと更新の目安までを、現場の感覚を交えて解説します。読み終わるころには、図面のMSを見て「これはモーター保護の要だな」と中身まで想像できるようになっているはずです。

目次

電磁開閉器とは|役割と文字記号(MS)

電磁開閉器は、前述のとおり「電磁接触器」と「サーマルリレー」をひとまとめにした機器です。役割をひと言でいえば、モーターを「動かす・止める」操作と、「焼けないように守る」保護を、1台で受け持つことです。

文字記号は「MS(Magnetic Switch)」。構成要素である電磁接触器は「MC(Magnetic Contactor)」、サーマルリレーは「THR」や「OL(Over Load)」「2E」などで表されます。つまり、MS=MC+THR という関係です。

なぜモーターに専用の機器が必要なのか。モーターは起動の瞬間に定格電流の6〜8倍ほどの大きな始動電流が流れ、運転中も過負荷(軸の固着、ベルトの噛み込みなど)で電流が増えると巻線が焼損します。この「起動の大電流は許し、継続的な過負荷は止める」という、ふつうのスイッチやブレーカーでは難しい制御を実現するのが電磁開閉器です。

僕の感覚だと、電気の現場で「MS」という記号は出てくる頻度が非常に高い割に、新人が中身をきちんと説明できないことが多い機器の代表格です。ポンプ、ファン、シャッター、空調の室外機——動くものの裏にはたいてい電磁開閉器がいる。ここを押さえておくと、動力盤の図面が一気に読みやすくなります。

電磁接触器とサーマルリレーの違い|2つの構成要素

電磁開閉器を理解する核心は、「電磁接触器」と「サーマルリレー」がそれぞれ何をしているかを分けて捉えることです。役割がまったく違う2つの機器が合体しているだけ、と考えるとスッキリします。

電磁接触器(MC) は、電磁石(操作コイル)に電気を流すと、その吸引力で主接点がカチッと閉じ、モーターに電気を送る機器です。コイルへの電気を切れば接点が開いてモーターが止まります。要するに「電気の力で動く大きなスイッチ」で、頻繁な入切に耐え、遠隔・自動制御ができるのが特徴です。

サーマルリレー(THR) は、過負荷(過電流)を検出してトリップする保護機器です。内部のヒーターが電流で発熱し、その熱でバイメタル(熱膨張率の違う2枚の金属板)が湾曲して接点を切り替えます。これにより電磁接触器のコイル回路を遮断し、結果としてモーターを止めます。注意したいのは、サーマルリレー自体には主回路を遮断する能力はない点。あくまで「異常を検知してMCに知らせ、MCに切らせる」係です。

項目 電磁接触器(MC) サーマルリレー(THR)
役割 主回路の開閉(運転・停止) 過負荷の検出
動作原理 電磁石による接点の開閉 ヒーター+バイメタルの熱変形
遮断能力 あり(接点で開閉) なし(検出のみ)
文字記号 MC THR / OL / 2E

そして、電磁開閉器と電磁接触器の違いはシンプルで、「サーマルリレーが付いているかどうか」だけ です。電磁接触器単体(MC)に過負荷保護はありません。そこにサーマルを足して保護機能を持たせたものが電磁開閉器(MS)です。電磁接触器そのものの詳細は電磁接触器とはで深掘りしているので、合わせて読むと違いがはっきりします。

僕としては、現場で「これは接触器?開閉器?」と迷ったら、まず本体の下側にサーマル(電流調整ダイヤルの付いた箱)がぶら下がっているかを見ます。付いていればMS、なければMC。見た目で一発で判断できるので、図面と現物の照合がぐっと楽になります。

モーター回路の3点セット|配線用遮断器との違い

電磁開閉器は単独で使うわけではありません。モーター回路では、保護の役割が違う3つの機器を組み合わせるのが標準です。これを押さえると「なぜMCCBだけではダメなのか」が腹落ちします。

機器 役割 守る対象
配線用遮断器(MCCB) 短絡(ショート)保護 電線・回路
電磁接触器(MC) 運転・停止の開閉 (操作)
サーマルリレー(THR) 過負荷保護 モーター本体

ポイントは、配線用遮断器(MCCB)とサーマルリレーは守る対象も検出の速さも違う ことです。MCCBは短絡時の大電流を瞬時に遮断して電線を守る機器で、モーターの「じわっとした過負荷」は得意ではありません。逆にサーマルは過負荷をゆっくり検出するのが得意で、短絡のような瞬間的大電流には向きません。役割が補完関係なので、両方そろって初めてモーター回路が安全に成立します。

「汎用のブレーカー(MCCB)でモーターを直接保護すればいいのでは?」とよく聞かれますが、これはうまくいきません。モーターの始動電流をMCCBが「異常」と誤認してすぐトリップしてしまったり、逆にトリップ特性を緩めると今度は本当の過負荷を見逃したりするからです。だからこそ、開閉はMC、過負荷検出はサーマル、と役割を分けるわけです。遮断器・断路器・開閉器の役割の違いは遮断器・断路器・開閉器の違いにも整理しています。

僕の感覚だと、トラブル対応の現場でいちばん大事なのがこの「3点セットの役割分担」の理解です。モーターが止まったとき、MCCBが落ちたのか、サーマルが飛んだのか、MCのコイルが切れたのかで、原因も対処もまったく違う。どの機器がどの異常を見ているかを頭に入れておくと、切り分けが早くなります。動力盤全体の構成は動力盤とはも参考になります。

電磁開閉器の記号と回路図の読み方

電磁開閉器を扱うには、回路図(シーケンス図)が読めることが欠かせません。回路は大きく「主回路(メイン)」と「操作回路(制御回路)」の2つに分かれます。

  • 主回路:電源(R・S・T)→ MCCB → MCの主接点 → サーマルのヒーター → モーター(U・V・W)と、動力が流れる太い回路。
  • 操作回路:押しボタン、MCのコイル、自己保持用のa接点、サーマルのb接点などで構成される、制御の弱電回路。

操作回路の基本が「自己保持回路」です。起動ボタン(押している間だけ閉じる)を押すとMCコイルが励磁され、同時にMCのa接点(補助接点)が閉じて、ボタンから指を離してもコイルへの電気が保持されます。停止ボタンを押すか、サーマルが過負荷を検出してb接点を開くと、保持が解けてモーターが止まる——これが基本動作です。

記号 意味
MS 電磁開閉器
MC 電磁接触器
THR / OL サーマルリレー(熱動過電流継電器)
a接点 通常開(押すと閉じる)
b接点 通常閉(押すと開く)

回路図の読み解きそのものに不安があれば、シーケンス制御とはラダー図とはで記号と回路の基本を押さえておくと、電磁開閉器まわりの図面が驚くほど読めるようになります。

僕としては、自己保持回路は手で図をなぞって「ON→保持→OFF」の電気の通り道を1回追ってみるのがいちばんの近道だと思っています。文字で覚えるより、指で回路を一周させる。これをやると、現場で操作回路の不具合が出たときに「保持が効いていない=補助接点かb接点が怪しい」とアタリを付けられるようになります。

電磁開閉器の選定方法

電磁開閉器の選定は、つなぐモーターの仕様から逆算していきます。設計図で決まっていることも多いですが、盤改修や機器更新では施工管理が選定を任される場面もあるので、考え方を押さえておきましょう。

選定の基本ステップは次のとおりです。

  1. モーターの定格出力(kW)と電圧(200V/400V)を確認 する。
  2. 使用負荷種別(AC級)を決める。一般的なかご形モーターの開閉はAC-3。寸動(ジョギング)など過酷な用途はAC-4。
  3. 出力・電圧・AC級から電磁接触器のフレーム(定格使用電流)を選ぶ。メーカーの選定表が用意されている。
  4. サーマルリレーの整定電流をモーターの定格電流に合わせる。調整ダイヤルでモーター銘板の定格電流値に設定する。
  5. 正逆運転なら2台+電気的・機械的インターロック、スターデルタ始動なら所定の台数構成にする。

特に注意したいのが、サーマルの整定電流(セット値)です。モーターの銘板に書かれた定格電流に合わせるのが原則で、ここを大きくしすぎると過負荷を見逃して焼損、小さくしすぎると正常運転でも飛んでしまいます。始動方法によって電流の出方が変わるため、スターデルタ始動とは三相誘導電動機とはも合わせて確認すると選定の精度が上がります。

僕の感覚だと、更新・改修の選定でいちばんやりがちなのが「既設と同じ品番をそのまま手配」して、廃番や後継機種の定格違いに当日気づくパターンです。既設の銘板(メーカー・品番・コイル電圧・サーマル整定値)を必ず写真に撮っておき、後継機種の定格使用電流とコイル電圧(AC100V/200Vなど)が合っているかを発注前に照合する。これだけで段取りの事故がかなり減ります。

配線・結線で押さえるポイント

配線の基本は、主回路を「電源側→負荷側」の向きで一直線に通すことです。電源(R・S・T)を電磁接触器の上部端子に入れ、下部から出してサーマルリレーを経由し、モーター(U・V・W)へ送ります。サーマルは電磁接触器の負荷側(下流)に付けるのが原則です。

操作回路では、コイル電圧(AC200Vコイルなのか、別電源のAC100Vコイルなのか)を取り違えないことが最重要です。コイル電圧と供給電圧が合っていないと、吸引しない、あるいはコイルを焼くことになります。

  • 主回路:電源側はMCの上部、負荷側は下部(サーマル経由でモーターへ)
  • 操作回路:コイル電圧と供給電圧を一致させる
  • 補助接点(a/b):自己保持・インターロック・表示灯に使い分ける
  • 端子の締め付けトルクを規定値で管理する(緩みは発熱・焼損の元)

僕としては、結線後に必ず「コイル電圧の指差し確認」と「端子の増し締め」をセットでやります。動かない・唸る・焼けるといった初期トラブルの多くは、コイル電圧の不一致か端子の緩みが原因。通電前のこのひと手間が、火を噴くトラブルを未然に防ぎます。動力側のケーブル選定は動力配線とはにまとめています。

よくある故障・トラブルと対処

電磁開閉器は可動部と接点を持つ機器なので、経年で必ず劣化します。現場で遭遇しやすい不具合と、その切り分けの考え方を整理します。

症状 主な原因 対処の方向性
モーターが起動しない コイル断線・操作回路の接点不良・サーマル未復帰 操作回路の導通・コイル電圧確認
サーマルがすぐ飛ぶ 整定値が小さい・過負荷・欠相 整定値とモーター負荷・電源を確認
サーマルが飛ばない 整定値が大きすぎ・サーマル故障 整定値の見直し・機器更新
接点が溶着して止まらない 開閉回数過多・過電流 電磁接触器を交換
ブーンと唸る 鉄心の汚れ・コイル電圧低下・異物 清掃・電圧確認・交換

切り分けのコツは、まず「主回路の異常か、操作回路の異常か」を分けて考えることです。モーターがうんともすんとも言わないならまず操作回路(コイルが励磁しているか)、起動して少し回って止まるならサーマルや過負荷、を疑う。原因を機器の役割に当てはめて順番に潰していきます。

僕の感覚だと、現場で多いのは「サーマルが飛ぶ=サーマルが悪い」と決めつけてしまうミスです。実際にはモーター側の過負荷や、電源の欠相(3本のうち1本が来ていない)でサーマルが正しく仕事をして飛んでいるケースが少なくない。サーマルはあくまで「結果」を知らせているだけなので、飛んだら整定値・モーター・電源の3方向を順に確認するのが鉄則です。欠相や地絡が絡むときは地絡とは漏電遮断器とはの知識も役に立ちます。

点検・更新の目安

電磁開閉器には「機械的寿命(開閉回数)」と「電気的寿命(負荷を入切できる回数)」があり、頻繁に入切する用途ほど早く摩耗します。一般に電気的寿命は機械的寿命より短く、開閉頻度の高いモーターでは消耗品として捉えるべき機器です。

点検では、接点の荒れ・摩耗、コイルの異音・発熱、端子の緩みや変色、サーマル整定値のズレなどを確認します。製造から年数が経った盤では、接点溶着やコイル焼損が起きる前に計画的に更新するのが安全です。

僕としては、更新の判断は「故障してから」ではなく「盤の改修や定期点検のタイミングでまとめて」が基本だと考えています。1台が壊れた盤は、たいてい他のMSも同じだけ歳をとっている。1台ずつ後追いで交換するより、改修に合わせてロットで更新したほうが、結果的に停止リスクもコストも抑えられます。制御盤・動力盤全体の更新計画は制御盤とはも参考にしてください。

まとめ|電磁開閉器は「動かす+守る」の要

電磁開閉器について、要点を振り返ります。

  • 電磁開閉器(MS)=電磁接触器(MC)+サーマルリレー(THR)。モーターの運転・停止と過負荷保護を1台で担う。
  • 電磁接触器との違いは「サーマルリレーが付いているか」だけ。MCには過負荷保護がない。
  • モーター回路は「配線用遮断器(短絡保護)+電磁接触器(開閉)+サーマル(過負荷保護)」の3点セットが標準。
  • 選定はモーター出力・電圧・AC級から接触器を選び、サーマルは銘板の定格電流に整定する。
  • 故障は「主回路か操作回路か」で切り分け、サーマルが飛んだら整定値・モーター・電源の3方向を確認する。

電磁開閉器は、図面のMS記号ひとつの裏に「動かす」と「守る」の両方の役割が詰まった、動力設備の要です。中身を分けて理解できれば、選定も配線も故障対応も自分で判断できるようになります。まずは電磁接触器とはとセットで、構成要素から押さえていくのがおすすめです。

よくある質問(FAQ)

Q. 電磁開閉器と電磁接触器の違いは何ですか?
A. 違いはサーマルリレーの有無です。電磁接触器(MC)に過負荷保護用のサーマルリレーを組み合わせたものが電磁開閉器(MS)です。

Q. 電磁開閉器の文字記号は?
A. 「MS」です。構成要素の電磁接触器は「MC」、サーマルリレーは「THR」「OL」「2E」などで表されます。

Q. なぜ配線用遮断器だけでモーターを守れないのですか?
A. 配線用遮断器は短絡保護が主で、モーターの始動電流を誤検知しやすく、継続的な過負荷の細かな保護には向かないためです。過負荷はサーマルリレーで守ります。

Q. サーマルがすぐ飛ぶのはなぜですか?
A. 整定値がモーター定格より小さい、実際に過負荷になっている、電源が欠相している、などが主な原因です。整定値・モーター負荷・電源の3方向を確認します。

Q. 電磁開閉器はどのくらいで交換すべきですか?
A. 開閉回数や使用環境で寿命が変わります。接点の荒れ・コイルの異音・端子の変色などが出たら、盤の改修や定期点検に合わせて計画的に更新するのが安全です。

電気施工管理の専門性は、キャリアの武器になる(最後に少しだけ)

電磁開閉器の選定や故障の切り分けができる力は、図面とモーターの両方を理解していないと身につかない、電気施工管理ならではの専門性です。そしてこの「動力設備を一人で見られる力」は、会社が変わっても通用する、市場価値の高いスキルでもあります。

僕の感覚だと、動力盤のトラブルを自分で切り分けて直せるようになったあたりが、自分のキャリアを一度見つめ直すいいタイミングです。今の現場で経験を深めるのも一つ。より規模の大きい設備や、より良い待遇・働きやすい環境を求めて動くのも一つ。どちらが正解ということはありませんが、選択肢を知っておくこと自体が、現場で踏ん張る支えになります。

電気・設備系の施工管理経験者向けの転職やキャリアの考え方については、当サイトの他の記事でも具体的に紹介しています。まずは「自分の市場価値はどれくらいか」を知るところから、気軽に情報を集めてみてください。

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