- 過電流継電器(OCR)ってなに?
- 動作原理について知りたい
- 記号は?
- 限時特性はどのようなもの?
- 整定値って?
- 試験方法は?
上記のような悩みを解決します。
電路を安全に使用するには遮断器が必要ですが、遮断器はあくまで遮断専用の装置です。検知までは含まれておらず、検知専用の装置がセットで必要になります。それが継電器です。
どの電気設備にも過電流継電器は組み込まれています。基礎知識については理解しておきましょう。
この記事では過電流継電器(OCR)とは?といったところから、動作原理、記号、限時特性、整定値、試験方法について解説していきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にもそれなりに分かりやすい表現になっているかなと思います。
過電流継電器(OCR)とは?
過電流継電器(OCR)とは、結論「過電流を検知して遮断器へと知らせる装置のこと」です。
まず過電流とは「通常以上の電流」のことでして、例えば、20Aが最大の電流で想定している電路に対して30Aが流れたら、それは「過電流」になります。
要するに、想定以上の電流のことを過電流と呼ぶ訳です。
過電流の何がいけないかというと、電路や負荷(照明器具や弱電設備など)が壊れてしまう点です。簡単な話、100Vの照明器具に200Vを送電すれば照明器具が壊れてしまう、というのは容易に想像しやすいと思います。
過電流により負荷が壊れてしまうのを防ぐために必要なのが「遮断器」です。MCCB(配線用遮断器)やELCB(漏電遮断器)に代表される遮断器は、電路を遮断することによって、過電流が電路に流れ続けるのを防ぎます。
ただ、遮断器はあくまで「遮断する装置」な訳で、過電流を検知する働きはありません。そこで過電流継電器が必要になってきます。
過電流継電器は過電流を検知し、遮断器へと伝える役割を果たします。
電路が遮断するまでの流れ
- 過電流が流れる
- 過電流を過電流継電器が検知する
- 過電流継電器が遮断器に信号を送る
- 遮断器が電路を遮断する
継電器には様々な種類があります。
地絡継電器や不足電圧継電器(27)などが代表的ですが、それぞれ「検知して遮断器を伝える」という働きは一緒です。継電器ですから。
違いは、検知する電気の種類です。
例えば、地絡継電器だったら「地絡を検知して遮断器へと伝える」というのが仕事ですし、「不足電圧継電器」だったら「不足電圧を検知して遮断器へと伝える」のが仕事になります。
過電流継電器は過電流や短絡などを検知するのが仕事です。電気にも様々な種類がありますので、違いについては抑えておきましょう。
もう少し深い話をすると、過電流継電器は真空遮断器とセットで使用されることが多いです。
真空遮断器を簡単に説明すると「比較的大きな電気を遮断する遮断器」でして、配電盤などの受変電設備などに組み込まれる遮断器です。
つまり、過電流継電器も同様に比較的大きめの電気を扱う、という認識で間違いないでしょう。
過電流継電器(OCR)の動作原理
前提の知識として、過電流継電器(OCR)は「誘導円盤型」と「静止型」の2種類に分けられます。それぞれ動作原理が異なりますので、説明します。
誘導円盤型の動作原理をざっくりと説明すると、下記のような流れになります。
誘導円盤型過電流継電器の動作原理
- ①過電流継電器の中に円盤が組み込まれている
- ②電気が流れると円盤が回転する仕組みになっている
- ③円盤の回転速度で電気の大きさを判断する
- ④一定以上の速度で円盤が回転すると過電流を検知する
誘導円盤型は比較的アナログな動作原理をしていると言えます。
欠点として挙げられるのは、過電流以外でも発報してしまうという点です。
要するに円盤の回転速度で電流を検知している訳ですから、何かしらの原因によって円盤の回転速度に影響を与えてしまった場合、誤発報が発生してしまいます。
具体的に言えば、地震や建物利用者の起こす振動などです。
また、劣化しやすい点も欠点に挙げられます。誘導円盤型は円盤が起点となっていますので、円盤が劣化してしまったら、過電流継電器を交換しなければいけません。
対して、静止型の動作原理は、電子回路内に組み込まれた計測器での判断です。
可動部分の劣化を考慮すると、静止型の過電流継電器の方が寿命が長いです。実際、近年では静止型の過電流継電器の方が採用される率が高い傾向にあります。
過電流継電器(OCR)の記号
過電流継電器の記号は「OCR」です。
登場するのは単線結線図などになります。受変電設備を担当する、もしくは将来的に受変電設備を担当する可能性がある方なんかは必須の知識です。
設備番号における過電流継電器
- 51:交流過電流継電器
- 76:直流過電流継電器
それぞれ違いは説明するまでも無いかもしれませんが、直流の回路か交流の回路かです。交流の方が多いと思います。
また、設備番号で合わせて押さえておいた方がいいのは「27」と「52」です。
特に「52」である真空遮断器と過電流継電器はセットで使用されることが多いので、真空遮断器に関する知識も一緒に抑えておきましょう。
過電流継電器(OCR)の限時特性
過電流継電器(OCR)の限時特性について理解する為には「限時」の意味について理解する必要があります。意外と意味を理解していない人が多い印象がありますので覚えておきましょう。。
まず「限時」は「時限」と似た様なものですが、明確に言えば異なります。(イメージを掴むには時限を想像してもいいかもしれません。)
よくドラマなんかで時限爆弾とか言ったりしますよね。時限爆弾は爆弾にタイマーがセットしてあり、信号を送った数秒もしくは数分後に爆弾が爆発します。
少し抽象的に解説すれば「入力された信号に対し、遅れて出力を起こす」のが時限です。
対して、限時は「出力そのものに遅れがある」という意味になります。
「3秒後に爆発する」とあらかじめセットされた爆弾が限時爆弾です。信号が入力された直後に出力が発生します。ただその出力自体が「3秒後に爆発する」というものですから、爆発するのは3秒後という訳です。
過電流継電器には限時特性があります。
入力が電流(過電流)であり、出力が発報です。あらかじめセットされた時間が経過したタイミングで発報します。
過電流継電器の限時特性の大枠の考え方は「大きな過電流ほど早く、小さな過電流ほどゆっくり」というものです。
要するに緊急度の話で、大きな過電流は早く遮断しなければなりませんよね。対して、小さな過電流なら早く遮断する必要はありません。20Aの電路に対しては100Aが流れたらすぐに遮断の必要があり、21Aならそこまで急いで遮断しなくても良いという考え方です。(数字はあくまで具体例です)
保護強調とも絡みがあるので、保護強調についても理解しておくと良いでしょう。
過電流継電器(OCR)の整定値
過電流継電器(OCR)の整定値は、結論「負荷電流の150%」です。
まず整定値について簡単に説明すると「特性の調節」でして、要するに何アンペアで発報するのか?という値です。採用する電路の大きさによって、整定値を調節します。
例えば、100Aの電路に対して過電流継電器をセットするなら、整定値は150Aが適切であるという話です。負荷電流を1.5倍すればいい訳ですから、覚えやすいですよね。
電気の大きさは揺れています。常に100Aというより、103Aになったり97Aになったりします。もし負荷電流をそのまま整定値にセットすると、電気が揺れて103Aになった時に電路が遮断されてしまいます。
それでは一般業務に支障が出ますので、ある程度の余裕を見た方がいい。ただ整定値を大きくしすぎると過電流が流れた際も発報されなくなってしまう。そこで適切とされたのが150%という訳です。
過電流継電器(OCR)の試験方法
過電流継電器(OCR)の試験方法に関しては、各メーカーのHPから調べるのが正確です。
下に代表的なメーカーのリンクを貼っておくので、参照してみてください。
過電流継電器(OCR)の試験方法
- ムサシインテック:http://www.musashi-in.co.jp/manual/ort-50m.08.pdf
- 双興電機製作所:http://www.soukou.co.jp/pdf/0038.pdf
- オムロン制御機器:https://www.fa.omron.co.jp/products/family/819/preuse.html
過電流継電器に関する情報まとめ
過電流継電器に関する情報のまとめ
- 過電流継電器(OCR)とは:過電流を検知して遮断器へと知らせる装置のこと
- 動作原理:「誘導円盤型」か「静止型」によって異なる
- 記号:OCR、51、76
- 限時特性:大きな過電流ほど早く、小さな過電流ほどゆっくり
- 整定値:負荷電流の150%
- 試験方法:上章参照
以上が過電流継電器に関する情報のまとめです。
一通り、基礎知識は網羅できたと思います。
過電流継電器とセットで使用されることが多いのは、真空遮断器です。合わせて知識として抑えておきましょう。その延長で、受変電設備や配電盤に関しても知っておくと良さそうです。
あとは短絡や地絡など、電気の種類についても理解しておきましょう。
下に分かりやすい記事のリンクを貼っておくので、よかったら読んでみてください。
過電流継電器(OCR)と合わせて知っておきたい単語