- モールの応力円って結局なに?
- 何を表している円なの?
- 縦軸・横軸が何か分からない
- 描き方の手順を知りたい
- 主応力・最大せん断応力って何?
- なぜ45°でせん断が最大になるの?
- そもそも何のために学ぶの?
- 建築士試験に出る?実務で使うの?
上記の様な悩みを解決します。
モールの応力円は、構造力学のテキストでも一二を争う「とっつきにくい」テーマです。円と数式がいきなり出てきて、しかも建築系のサイトには「実務ではFEMがあるからあまり使わない」とまで書かれていて、「じゃあ何のために覚えるの?」とモヤモヤしている人も多いはず。今回は定義・描き方・主応力・最大せん断といった基本を押さえた上で、機械系や大学の解説がまず触れない「何のために学ぶのか」「斜めのひび割れやせん断破壊とどうつながるか」まで、建築・施工管理の文脈に翻訳して整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
モールの応力円とは?
モールの応力円とは、結論「縦軸にせん断応力、横軸に垂直応力をとり、ある一点に生じている応力状態を1つの円で表したもの」です。
ある部材の中の一点には、向きを変えながら垂直応力(押す・引く力)とせん断応力(ずらす力)が同時に作用しています。断面をとる角度を変えると、この垂直応力とせん断応力の組み合わせも変わります。その「角度を変えたときの応力の変化」を、いちいち計算しなくても1つの円としてまとめて表せるのがモールの応力円です。
横軸(σ軸)に垂直応力、縦軸(τ軸)にせん断応力をとり、ある面の応力を点としてプロットしていくと、すべての角度の応力が1つの円の上に乗ります。これがモール円の正体です。
応力そのものがあやふやな人は、まずこちらで土台を固めると理解が早いです。


僕の感覚だと、モール円は「応力状態の地図」だと思うと腑に落ちます。地図があれば任意の角度の応力がひと目で読める。この“読める”感覚が、数式を追うより先に掴めると一気に楽になります。
なぜモールの応力円を学ぶのか
ここが、機械系の解説サイトや建築の用語サイトがまず答えてくれないところです。建築系のサイトには「実務ではFEM(コンピュータ解析)があるからモール円をあえて手で描く機会は少ない」と書かれていることもあり、それを読むと学ぶ意味を見失いがちです。
正直なところ、現場でモール円を手描きする場面はほとんどありません。では何のために学ぶのか。理由は2つあります。
1つ目は、応力状態を「方向を持ったもの」として直感的に理解できるようになるからです。応力は単なる数字ではなく、向きによって最大・最小が変わります。モール円が読めると、「この点では45°方向のせん断が一番きつい」といった応力の方向性が、計算なしでイメージできるようになります。
2つ目は、建築士試験や構造力学の単位取得で問われるからです。実務で手描きしないとしても、主応力や最大せん断の概念は構造設計の基礎であり、試験では応力円の読み取りや主応力の計算が出題されます。
構造力学全体の中での位置づけは、公式集とあわせて見ると整理できます。

個人的には、モール円は「電卓で答えを出すための道具」というより「応力に方向があることを体で覚えるための道具」だと捉えています。FEMが結果を出してくれる時代だからこそ、その結果を読み解く目を養う意味がある、と考えています。
モールの応力円の描き方
描き方は、慣れれば3ステップです。x方向・y方向の垂直応力(σx, σy)と、せん断応力(τxy)が分かっていれば描けます。
- 横軸にσ(垂直応力)、縦軸にτ(せん断応力)をとった座標を用意する
- (σx, τxy) と (σy, −τxy) の2点をプロットし、その2点を直線で結ぶ
- その直線が横軸(σ軸)と交わる点を中心とし、結んだ線を直径とする円を描く
これで応力円が完成します。円の中心は横軸上の (σx+σy)/2 の位置にきて、円の半径が後で出てくる最大せん断応力に対応します。あとは円の上の任意の点を読めば、その角度の面に生じる垂直応力とせん断応力の組み合わせが分かる、という仕組みです。
ここで一つ注意点があります。実際の部材を回した角度をθとすると、モール円の上では2θ動く、という関係になっています。つまり部材を45°傾けると、円の上では90°回る。この「実物の2倍の角度で円が回る」という点が、最初の混乱ポイントなので押さえておきましょう。
x・y方向に同時に応力が生じる状態(二軸応力)のイメージは、断面に働く力の種類とあわせて見ると掴みやすいです。

実務だと、手で正確に描くより「中心と半径さえ出せれば、主応力も最大せん断も読める」と割り切るのが効率的です。作図の美しさより、円から何が読めるかを優先しましょう。
主応力(σ1・σ3)
モール円が横軸(σ軸)と交わる2点、ここがとても重要です。この2点では、せん断応力τがゼロになり、垂直応力だけが残ります。このときの垂直応力を主応力と呼びます。
2つの交点のうち、垂直応力が大きいほうを最大主応力(σ1)、小さいほうを最小主応力(σ3)といいます。式で書くと、主応力は「中心 ± 半径」、つまり (σx+σy)/2 を中心に、半径ぶんだけプラスマイナスした値になります。
主応力が重要なのは、「その点で最も強く引っ張られている(または押されている)方向と大きさ」を表すからです。材料は引張に弱い・圧縮に強いといった方向性のある壊れ方をするので、最大主応力がどの方向にどれだけ生じているかは、破壊を考えるうえで核心になります。
引張・圧縮それぞれの応力は、別記事で基礎を確認できます。


僕の整理では、主応力は「せん断を消したときに見える、その点の素の引張・圧縮」です。複雑に見える応力状態も、主応力で見ると一番シンプルな形に整理できる、というのがモール円のありがたみです。
最大せん断応力となぜ45°か
モール円の一番上と一番下の点、ここが最大せん断応力(と最小せん断応力)です。その大きさは、ちょうど円の半径に等しくなります。つまり最大せん断応力は (σ1−σ3)/2、主応力の差の半分です。
そして、ここがモール円の一番おもしろいところなのですが、最大せん断応力が生じる面は、主応力の面から45°傾いた方向になります。理由はモール円の幾何で説明できます。主応力(τ=0)の点は円と横軸の交点、最大せん断(τが最大)の点は円のてっぺん。この2点は円の中心から見て90°離れています。前述の通り、円の上の角度は実物の2倍なので、円上で90°ということは、実物では45°。だから最大せん断は主応力面から45°の方向に出る、というわけです。
「45°でせん断最大」は丸暗記されがちですが、モール円を描けば「円のてっぺんと交点が90°離れている → 実物では半分の45°」と、理屈で導けます。この導き方が分かると、暗記が理解に変わります。
弾性・塑性など材料の壊れ方の前提もあわせて押さえると、応力の意味がさらにクリアになります。

現場目線で言えば、この45°という数字は後で出てくる「斜めのひび割れ」と直結します。なぜ部材が斜めに割れるのか、その答えがこの45°に隠れています。
モールの応力円の方程式と導出
数式アレルギーの人は、ここは流し読みでも構いません。ただ、導出の筋道だけ掴んでおくと「なぜ円になるのか」が腹落ちします。
任意の角度θの面に生じる垂直応力σとせん断応力τは、二軸応力のつりあいから次の形で表せます。σは「(σx+σy)/2 + (σx−σy)/2・cos2θ + τxy・sin2θ」、τは「−(σx−σy)/2・sin2θ + τxy・cos2θ」という、2θを含む式になります。
この2式から2θを消去するために、σの式を中心ぶん移項して両辺を2乗し、τの式も2乗して足し合わせます。すると sin²+cos²=1 の関係で2θが消え、「(σ−中心)² + τ² = 半径²」という、まさに円の方程式が出てきます。これがモール円の方程式です。
要するに、応力を角度の関数として書くと、その軌跡が円になる。これがモール円が「円」である理由です。許容応力度の計算など、実務の応力評価にもこの基礎がつながっていきます。

僕の考えでは、導出は「一度は自分で追ってみる」価値がありますが、試験本番では結果(中心と半径、主応力の式)を使えれば十分です。理屈は理解、本番は道具、と割り切るのが現実的です。
主応力・最大せん断が実構造でどう効くか
ここが、機械系や大学の解説がまず建築の言葉で語ってくれないところです。モール円で出てくる主応力と最大せん断は、実際の構造物の壊れ方とぴったり対応しています。
まず斜めのひび割れです。コンクリートの梁がせん断破壊するとき、ひび割れは部材軸に対して斜め(おおむね45°)に入ります。これは、最大せん断応力が主応力面から45°の方向に生じるという、まさにモール円が示す関係そのものです。コンクリートは引張に弱いので、斜め方向に生じる引張に耐えきれずに斜めひび割れが入る。だからせん断補強筋(スターラップ)を斜めひび割れをまたぐように入れる、という設計の理屈につながります。
次に材料による破壊面の違いです。引張に弱い脆い材料は最大主応力(引張)に直角な面で割れ、延性のある材料はせん断が効く45°方向で滑るように壊れる傾向があります。同じ力を受けても、材料の性質と応力の方向で壊れ方が変わる、というのを応力円は説明してくれます。
そして建築士試験です。1級・2級建築士の構造では、応力円の読み取りや主応力・最大せん断の計算が問われます。「主応力はτ=0の点」「最大せん断は半径」「45°の関係」を押さえておけば、計算問題で確実に得点できます。構造力学の問題演習とあわせて手を動かすのが近道です。

自分としては、モール円の本当の価値は「斜めにひび割れる理由が説明できるようになること」だと思っています。試験のための作図技術ではなく、構造物の壊れ方を方向まで含めて理解する道具、という見方ができると、学ぶ意味がはっきりします。
モールの応力円に関する情報まとめ
- モールの応力円とは:縦軸せん断・横軸垂直で、一点の応力状態を1つの円に表したもの
- なぜ学ぶか:応力に方向があることを直感で掴むため、そして建築士試験で問われるため
- 描き方:(σx,τxy)と(σy,−τxy)を結ぶ線を直径に円を描く。円上の角度は実物の2倍(2θ)
- 主応力:円と横軸の交点(τ=0)。中心±半径でσ1(最大)とσ3(最小)
- 最大せん断応力:円の半径=(σ1−σ3)/2。主応力面から45°方向に生じる
- 方程式:応力を角度の関数で書き2θを消去すると円の方程式になる
- 実構造との関係:45°の斜めひび割れ・せん断破壊・材料別の破壊面に直結する
以上がモールの応力円に関する情報のまとめです。
一通りモールの応力円の基礎知識は理解できたと思います。モール円は「手で描く技術」ではなく「応力を方向まで含めて読む目」を養う道具です。主応力・最大せん断が斜めひび割れにつながると分かると、構造の見方が一段深くなります。応力やせん断応力の基礎とあわせて理解を深めてみてください。




