- モールの応力円ってなに?
- 描き方が分からない
- 主応力ってどう読み取るの?
- 何のために使う図なの?
- 構造設計でホントに使うの?
- 試験でつまずくポイントは?
上記の様な悩みを解決します。
モールの応力円は構造力学のなかでも「式で覚えても理解できないけど、図で見ると一気に腑に落ちる」典型的なテーマです。建築士試験や構造系の入門講義で必ず出てくるので、最低限の描き方と読み方は押さえておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
モールの応力円とは?
モールの応力円とは、結論「ある点に働く垂直応力(σ)とせん断応力(τ)の関係を、座標平面上の円としてまとめた図」のことです。
横軸にσ、縦軸にτを取り、要素の角度を変えていったときに「その面に出てくるσとτの組み合わせ」がぐるっと一周描かれる、というのが正体です。19世紀のドイツの技術者オットー・モール(Otto Mohr)が考案したものなので、彼の名前が冠されています。
ポイントは「材料の中に新しい力が増えるわけではない」という点。同じ点に働いている応力を、見る角度(要素の回転角)を変えるだけで、見え方が変わる。その「見え方の変化」を1枚の円にまとめてあるのがモールの応力円、というイメージです。
正直、僕は電気の施工管理が本業で、構造計算の現場感覚は躯体屋さんほど持ち合わせていません。ただ、強度試験や鉄骨の検査立ち合いで「主応力で見ると効いてる方向はこっち」みたいな話が出てくると、この円の存在を知っているかどうかで、図面と試験報告書の読み方が一段くっきりします。
モールの応力円の描き方(手順)
実際に描けるようになるのが一番の近道なので、平面応力(σx, σy, τxy)が分かっている前提で手順を整理します。
手順
- σx, σy, τxy の値を確認する
- 円の中心座標を求める:(σx + σy) / 2 を横軸にプロット
- 円の半径を求める:√{((σx − σy)/2)² + τxy²}
- (σx, τxy) と (σy, −τxy) の2点をプロットする
- その2点を直径とする円を描く
- 横軸との交点が「主応力 σ1, σ2」、縦軸方向の最大値が「最大せん断応力 τmax」
慣れるまでは「円を描く前に表を作る」のがコツ。中心 C と 半径 R を先に出して、(σx, τxy) を1点だけプロットして、Cを中心にコンパスでぐるっと回せば、もう片方の点(σy, −τxy)に必ず到達します。
詳しい応力の前提知識については、以下の応力ひずみ曲線の記事と合わせて読むと、垂直応力とせん断応力のイメージがクリアになります。
主応力と主せん断応力の読み方
モールの応力円が一番おいしい使い方は「主応力(principal stress)」を一発で読み取れるところです。
主応力 σ1, σ2
– 円が横軸(σ軸)と交わる2点
– σ1:右側(大きい方)
– σ2:左側(小さい方)
– そのとき せん断応力 τ = 0 になる
– つまり「せん断が消える特別な角度」が存在し、その角度が主軸方向
最大せん断応力 τmax
– 円の最上点(または最下点)
– |τmax| = (σ1 − σ2) / 2 = 半径 R に等しい
– このときσは中心の値 (σ1 + σ2)/2 になる
ここでよく試験で問われるのが「主軸の方向はどう求めるか」。答えは「円上で(σx, τxy)から横軸まで、円の中心を基準に回転した角度の半分」です。物体の世界で θ 回転すると、応力円の中では 2θ 回転する。この「2倍の関係」がモールの応力円の最大の特徴です。
僕も電気施工管理の現場では座標角度の感覚が鈍りがちで、最初に勉強したときは「物体は45°回転、円の中では90°」が腑に落ちず、白紙の上で何度も書き直した記憶があります。ここを丸暗記ではなく図で押さえれば、構造力学の問題で手が止まらなくなります。
モールの応力円の使い方(実務での出番)
「式で計算すれば済むのに、なんで円を描くの?」と思う方も多いはず。実務で円を描く意味は次のような場面で出てきます。
鉄骨梁・柱の応力チェック
– 主応力の方向と値を一発で確認できる
– 局部的な応力集中部で「最大せん断はどの面で出るか」をイメージできる
– 鉄骨の検査記録(ミルシートやひずみゲージ測定データ)と突き合わせやすい
ひずみゲージの貼り方の検討
– 主軸が分からないとロゼットゲージの貼り付け角度を決めにくい
– 主応力方向が読めると、ゲージ1本で済むのか、3本ロゼットが必要かの判断が早くなる
地盤・基礎の応力解析
– 土圧やせん断破壊の議論で「クーロンの破壊基準」とセットで使われる
– 円が破壊包絡線に接した瞬間が「滑り破壊が起きる応力状態」
地盤系では特に、N値や許容支持力の検討と一緒に語られることが多いです。地盤の基礎用語は以下の記事も合わせて確認できます。

他の構造指標との関係
モールの応力円が「応力の角度依存性」を可視化するためのものなのに対し、似た用語に「主ひずみ」「破壊包絡線」「von Mises 相当応力」などがあります。整理しておきます。
| 用語 | 何を表す | モールの応力円との関係 |
|---|---|---|
| 主ひずみ | ひずみの主軸方向の値 | 同じ要領で「ひずみの円」も描ける |
| 最大せん断応力(τmax) | せん断が最大になるときの値 | 円の半径に等しい |
| von Mises 相当応力 | 多軸応力を1値に換算 | 円から直接読めない(別途計算) |
| クーロン破壊基準 | 摩擦・粘着で決まる破壊条件 | 円が直線に接した瞬間が破壊点 |
混同されがちなのが「最大せん断応力=主応力差の半分」。式だけ見るとピンと来ないですが、円を描けば「直径の半分が半径だから」と一瞬で納得できます。
ヤング係数や応力ひずみの基礎は以下も参考になります。
モールの応力円を使うときの注意点
教科書通りに描いても、ハマりやすい落とし穴がいくつかあります。
符号規約に揃える
– 引張:σ プラス/圧縮:σ マイナス、というのが土木・建築の一般慣習
– ただし機械系の教科書は逆向きを採用しているケースもある
– せん断応力 τ の正負は「要素を時計回りに回そうとする向き」を正とすることが多いが、これも教科書ごとに違う
– 自分が読む文献で必ず符号規約を確認してから手を動かす
3次元応力ではモール円が3つになる
– 平面応力なら円は1つ
– 3次元になると σ1, σ2, σ3 のペアで円が3つ重なる
– 学部レベルでは3次元はあまり使わないが、地盤の三軸試験などで出てくるので頭の片隅に置く
主応力が同符号のときの最大せん断応力
– σ1 と σ2 の両方が引張のとき、最大せん断応力は (σ1 − σ2)/2 ではなく σ1/2(σ3=0と置いたときの円の半径)になる
– 平面応力で計算したつもりでも、実は3次元応力として見るのが正しい場面がある
このあたりは「2次元で完結させていいのか」を常に疑う癖があると安全側になります。建築の構造設計では平面応力で扱うことがほとんどですが、地盤や容器の座屈解析では3次元での扱いが必須です。
合わせて、応力と密接に関わる断面の話は以下も参考になります。
モールの応力円に関する情報まとめ
- モールの応力円とは:ある点の垂直応力とせん断応力を、要素の回転角に応じて1つの円としてまとめた図
- 描き方:σx, σy, τxy から中心 C と半径 R を求め、(σx, τxy) を起点に円を描く
- 主応力:横軸との交点で σ1, σ2 を読み取る。そこではせん断応力がゼロ
- 最大せん断応力:円の半径に等しく、τmax = (σ1 − σ2)/2
- 物体の角度 θ に対し、円の中では 2θ 回転する(角度2倍の関係)
- 使い方:鉄骨応力チェック、ひずみゲージ計画、地盤の破壊解析など
- 注意点:符号規約の確認、3次元応力への拡張、同符号主応力での最大せん断の扱い
以上がモールの応力円に関する情報のまとめです。
数式で詰めるよりも、A4のコピー用紙に何度か描いてみる方が圧倒的に早く理解できる図ですので、まずは具体的な数値で1〜2問解いてみてください。応力やひずみの基礎を一緒に押さえたい方は、以下も合わせて読んでみると体系的に整理できます。



