- 許容応力度計算ってなに?
- F値とf値の違いがよく分からない
- 長期と短期ってどう使い分けるの?
- 鋼材・コンクリート・木材で何が違うの?
- 2025年の建築基準法改正で変わった?
- 試験で点を落とさないための優先順位は?
上記の様な悩みを解決します。
許容応力度計算は構造設計の中でも「一次設計」と呼ばれる、建物の安全性を最初にチェックする計算です。施工管理者でも、構造図面の見方や鉄骨の検査での応力評価に直結する話なので、最低限の用語は押さえておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
許容応力度計算とは?
許容応力度計算とは、結論「建物に荷重が作用したときに発生する応力が、材料ごとに決まった『許容できる応力(許容応力度)』の範囲に収まっているかを確認する計算」のことです。
建築基準法で定められている構造計算ルートのうち、「ルート1」「ルート2」の核となる部分で、いわゆる一次設計に当たります。地震や風など稀に発生する大きな荷重ではなく、日常的に作用する荷重(自重・積載荷重)と、稀に発生する短期荷重(中地震・暴風)に対して「壊れない・大きく変形しない」ことを確かめるのが目的です。
ざっくり言えば「材料の強度の何割までしか応力を出させないようにしますよ」という安全側の決め事を、設計の段階で確認するための計算、というイメージです。
僕は電気施工管理が本業で、構造設計を自分で回したことはありませんが、鉄骨検査やコンクリートの圧縮強度試験の立ち会いで「設計時に長期で○○、短期で○○の許容を見ています」という話が飛び交うので、最低限の用語は押さえておかないと話に入っていけません。
F値・f値・基準強度の違い
許容応力度計算でつまずきやすい最大のポイントが、似た用語の使い分けです。整理します。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| F値(基準強度) | 材料の降伏点や引張強さから決まる「設計の基準値」 | SS400ならF=235 N/mm²(板厚40mm以下) |
| 許容応力度 f | F値を倍率(安全率の逆数)で割った設計値 | 長期せん断応力度 fs = F/(1.5√3) |
| 降伏点 σy | 実材の塑性変形が始まる応力 | SS400で公称235 N/mm² |
| 引張強さ σu | 実材が破断する応力 | SS400で公称400〜510 N/mm² |
つまり「材料の生の強度(σy, σu)から、安全側に丸めた基準値(F)を出して、さらに荷重の継続時間で割り引いた設計値(f)を使う」という3段階構造です。
SS400の基準強度については以下の記事で詳しく扱っているので、F値の考え方を素材側から眺めたい方は合わせて読むと立体的に理解できます。
長期許容応力度と短期許容応力度
許容応力度計算で必ず出てくるのが「長期」と「短期」の区別です。覚え方は荷重の継続時間で考えるのが早いです。
長期許容応力度
– 自重・積載荷重・長期間積もる雪など、ずっと作用する荷重に対する許容値
– 鋼材なら f = F / 1.5(鋼材の長期引張・圧縮)
– 安全側に大きく見ているので、値は小さい
短期許容応力度
– 中地震・暴風・積雪短期など、短時間しか作用しない荷重に対する許容値
– 鋼材なら f = F / 1.0(=F)
– 長期に対して 1.5倍まで踏み込んでよい、という考え方
つまり「短期荷重のときは材料を限界近くまで使ってよい、ただし長期で同じ応力が出続けるのはダメ」というルールです。
ここで初学者がよく迷うのが「短期 = F そのものなら、何のために倍率をかけてるの?」という疑問。短期がF=降伏点までの値を許す、というのは「降伏まで使ってよいが、降伏を超えてはダメ(弾性域内に収める)」という考え方の表れです。塑性変形まで踏み込まない設計、というニュアンスを掴むと、ルート1〜2の意味も見えてきます。
塑性変形そのものについては別記事で扱っているので、合わせて読むと「なぜ降伏点で止めるのか」が腑に落ちます。
材料ごとの許容応力度
材料が変われば、F値の決め方も、長期/短期の倍率も変わります。代表的なものを整理します。
鋼材(鋼構造設計規準)
– 長期 = F / 1.5(引張・圧縮・曲げ)
– 短期 = F(弾性域の上限まで使う)
– せん断は更に √3 で割る(√3≒1.732)
– SS400, SN400, SS490 などごとに F値が決まっている
– 板厚で F値が変わるので、設計時は板厚区分の確認が必須
コンクリート(RC構造)
– 長期圧縮 = Fc / 3(Fc は設計基準強度)
– 短期圧縮 = (2/3)・Fc
– 長期/短期で2倍関係
– コンクリート自体は引張に弱いので、引張は鉄筋に持たせる
木材
– F値は樹種・等級・含水率で決まる
– 長期 = F × (1.1/3) のように、倍率が鋼やRCより複雑
– 短期と長期で約1.6倍の差
鉄筋
– 長期 = F / 1.5(基本)
– 短期 = F
– 鉄筋の F値は SD295A=295N/mm², SD345=345N/mm², SD390=390N/mm²
材料ごとに考え方が微妙に違うので「鋼材の感覚でRCを設計しない」が鉄則です。コンクリートの基礎は以下も合わせて読むと理解が深まります。

許容応力度計算の手順
実務での流れをざっくり整理します。
- 荷重の整理:固定荷重・積載荷重・地震力・風荷重・雪荷重を分類
- 荷重の組み合わせ:長期(G+P, G+P+S)と短期(G+P+W, G+P+E)を作る
- 応力解析:各部材に発生する σ, τ を求める
- 許容応力度の算出:F値から長期 f, 短期 f を出す
- 検定比のチェック:σ / f ≦ 1.0 になっているか確認
- 変形のチェック:層間変形角や梁のたわみが基準内か確認
- 必要に応じて追加検討:保有水平耐力、層間変形角の偏り、剛性率・偏心率
検定比1.0以下というのは「許容応力度ぴったりまでは使ってよい」という意味で、現場で「検定比0.95でカツカツ」「0.6で余裕がある」みたいな会話が出るのはこの値のことです。
層間変形角や偏心率の話は以下の記事も参考になります。
https://seko-kanri.com/soukanhenkeikaku/
https://seko-kanri.com/henshinritu/
https://seko-kanri.com/gousei/
2025年改正で変わったこと
2025年4月施行の建築基準法改正で、許容応力度計算そのもののロジックは変わっていませんが、関連する周辺ルールが大きく動いています。
- 木造建築物で構造計算が必要になる範囲が拡大(4号特例の縮小)
- 2階建て以下の小規模木造でも、壁量計算・許容応力度計算のいずれかで安全確認が事実上必須に
- 必要壁量・必要床倍率の見直し
- 構造計算が必要になる規模の閾値変更(200㎡超など)
特に木造住宅を扱う設計事務所・工務店では、これまで4号特例で省略できた構造計算を、改正後は許容応力度計算でしっかり確認するケースが増えました。
壁量計算の改正については別記事で詳しく扱っています。


許容応力度計算に関する注意点
実務・試験で陥りやすいポイントを整理します。
長期と短期の組み合わせを取り違えない
– 地震時は短期、自重は長期。混ぜて使うのが事故のもと
– 「G+P+E」のような荷重組み合わせ表を必ず確認する
板厚で F値が変わる(鋼材)
– SS400 でも板厚40mm超で F値が下がる
– 厚板を使う設計では板厚区分の確認を忘れない
コンクリートと鋼材の倍率を混同しない
– RC の長期は Fc/3、鋼材の長期は F/1.5
– 倍率が違うので「3で割る」「1.5で割る」を材料とセットで覚える
ひび割れ後の剛性低下を考慮する
– RC造ではひび割れ後の剛性低下を加味した解析が必要なケースがある
– 弾性解析だけで終わらないように
層間変形角や保有水平耐力との連動
– 許容応力度計算だけで終わるルートは限定的
– 60m超の建物や複雑な形状では時刻歴応答解析まで必要
このあたりは「許容応力度をクリアした=完成」ではなく、ルート2・ルート3まで進む必要があるかをきちんと判定するのが、構造設計者の責任範囲です。建物高さ・規模・形状・用途で必要な計算ルートが決まるので、設計初期にルート判定を確定させておくと後戻りが減ります。
許容応力度計算に関する情報まとめ
- 許容応力度計算とは:発生応力が材料ごとの許容値以下に収まっているかを確認する一次設計の計算
- F値:材料の降伏点や引張強さから決まる基準強度
- 許容応力度 f:F値を倍率で割った設計値(長期/短期)
- 長期:自重・積載・長期積雪に対する許容値(鋼材で F/1.5)
- 短期:中地震・暴風に対する許容値(鋼材で F)
- 材料ごとに倍率が違う:鋼材1.5、RC3、木材は樹種ごと
- 検定比 σ/f ≦ 1.0 を全部材で確認
- 2025年改正で木造の構造計算範囲が拡大、4号特例縮小
以上が許容応力度計算に関する情報のまとめです。
「材料強度の3割〜7割までしか使わない」という安全側の縛りが、建物を地震や風に耐えさせている根幹のロジックです。試験対策でも実務でも、長期/短期と材料区分の組み合わせを表で押さえてから細部に入ると迷いが減ります。応力・ひずみ・断面の基礎は以下も合わせて読んでみてください。




