フィラープレートとは?役割、寸法、すべり係数、施工管理など

  • フィラープレートってなに?
  • スプライスのところに薄い板が挟まってるけど何?
  • どんなときに必要になる?
  • 寸法やボルト本数はどう決まる?
  • 入れることで耐力が下がるって本当?
  • 施工管理として何をチェックすればいい?

上記の様な悩みを解決します。

フィラープレート(フィラー)は鉄骨の高力ボルト接合で、母材の板厚差を埋めるために挟む「調整板」のこと。地味な部材ですが、これが必要な場面と不要な場面の判断、そして「入れたときに耐力がどう変わるか」が分からないと施工図のチェックが甘くなります。フィラーひとつで設計者と協議になることもあるので、施工管理として理屈を押さえておきたいポイントです。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

フィラープレートとは?

フィラープレートとは、結論「鉄骨の高力ボルト接合で、板厚の異なる母材同士をスプライスプレートで接合するときに、板厚差を埋めるために挿入する薄い鋼板」のことです。

英語のfiller(フィラー)は「埋めるもの」「詰め物」という意味。日本語では「フィラー」「詰め板」「調整板」とも呼ばれます。図面記号では「FIL」「FP」と略記されることも。

役割をひと言で言うと「板厚差をなくすための隙間埋め」。たとえば梁端のスプライス部で、上側の母材板厚が16mm、下側の母材板厚が12mmだと、その差4mmの隙間が空いてしまう。この隙間にPL-4の鋼板を挟んで面を揃えるのがフィラーの仕事です。

スプライスプレート自体の役割は別記事で解説しているので、用語が曖昧な方はこちらを先に読むと整理しやすいです。

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フィラーが必要になる場面

「板厚が違うから挟む」というシンプルな話ですが、実務では次の3つのパターンが多いです。

①梁背の段差処理

スパンの長い梁では、応力分布に合わせて中央付近のフランジ板厚を厚くする「ハンチ加工」が施されることがあります。このとき、ハンチ部とその外側のフランジで板厚が違うので、スプライス位置にフィラーが必要になります。

ただし最近は工場製作の精度が上がり、設計段階で板厚を揃える設計が増えているので、この用途は以前ほど多くはないかも。

②柱と梁ブラケットの板厚差

工場で柱に取り付けたブラケット(梁の根元部)と、現場で取り付ける梁本体で、フランジ板厚が違うケース。設計上は応力で必要板厚を決めているので、必ずしも一致しません。このとき、ブラケット側と梁本体側の板厚差をフィラーで埋めます。

③改修・増築時の既設材との取り合い

既設鉄骨を活かして増築する場合、既設のフランジ板厚と新設材の板厚が合わないことがある。この調整にもフィラーが使われます。

④誤差レベルの調整は不可

「製作公差で1mm違うからフィラーで合わせよう」という発想は基本NG。フィラーは「設計上の板厚差を吸収する」ものであって、「現場の誤差を吸収する」ものではありません。製作公差レベルのズレは、母材側の機械加工で揃えるのが原則です。

フィラーの寸法と材質

フィラーの寸法は、JASS 6(鉄骨工事標準仕様書)で次のように規定されています。

項目 標準的な扱い
板厚 板厚差ぴったり、または板厚差以下の組合せで調整
平面寸法 接合する母材と同等以上、ボルト孔位置・本数も同じ
材質 接合する母材と同質または同等以上
厚みの組合せ 1mm刻みで複数枚重ねるのは原則NG(設計者協議)

板厚の決まり方

フィラー板厚は「接合する2枚の母材板厚差」と一致させるのが基本。例えば16mmと12mmならフィラーは4mm。これより薄いフィラーを複数枚重ねるのは、すべり耐力の信頼性が下がるので避けるのが原則です。

材質

母材と同じ材質(SS400、SN400B、SN490Bなど)を使うのが一般的。設計者によっては「フィラーはSS400で可」と指定することもあります。ミルシート(鋼材検査証明書)で確認するのが確実。

ボルト孔の処理

フィラーのボルト孔は、母材と同じ位置・同じ径で開けます。当然、ボルトはフィラーを貫通するので、有効ねじ部の長さやボルト長さの選定にも影響します。施工管理として、ボルト長さの確認が漏れないようにしたいですね。

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フィラー挿入で何が変わるのか(耐力低減係数)

ここが一番のポイント。フィラーを挟むと、高力ボルト接合のすべり耐力(ボルト摩擦面で滑らない耐力)が低下します。

なぜ耐力が下がるのか

高力ボルトは「母材を強く締め付けて、その摩擦力でずれない」という仕組み。ところがフィラーを挟むと、

  • 摩擦面の数が増える(母材-フィラー、フィラー-スプライスプレートなど)
  • フィラーの表面摩擦係数が母材ほど均質ではない
  • フィラーが薄い場合、ボルト軸力の伝達経路が複雑になる

という理由で、すべり耐力が低下します。

JASS 6での耐力低減

JASS 6では、フィラーの厚みと枚数に応じてすべり耐力低減係数が規定されています。代表的なのは、

フィラーの状態 すべり耐力低減係数(参考値)
フィラーなし(標準) 1.0
両側にフィラー(厚み6mm以下) 約0.85〜0.90
両側にフィラー(厚み6mm超) さらに低減
片側のみフィラー(厚み6mm超) 約0.65〜0.75

※ 具体的な低減係数は構造設計者と要協議。JASS 6最新版・建築学会の鉄骨工事関連指針が一次情報。

つまり、フィラーを入れた接合は「すべり耐力で15〜35%損する」ことを織り込んで、ボルト本数を増やすか板厚を上げるかして対応する必要がある。これが構造計算上の重要ポイントです。

設計と施工の役割分担

フィラーが必要かどうかを判断し、必要本数のボルトを設定するのは構造設計者の仕事。施工管理は、設計図でフィラーが指示されているかを確認し、製作要領書で寸法・材質を確認し、現場で正しく挿入されているかをチェックするのが役割。「フィラーを勝手に入れる/省く」は絶対NG。

フィラーの施工管理ポイント

施工管理として、現場で押さえるチェックポイントを5つに整理します。

①設計図書との照合

設計図にフィラーの記載があるか、ない場合は本当に不要かを構造設計者と確認。「板厚差があるのに設計図にフィラー指示がない」場合は、施工側で勝手に挿入せず、必ず設計者に問い合わせます。

②フィラーの寸法・材質

板厚、平面寸法、ボルト孔位置、材質を製作要領書と照合。ミルシートで材質を確認。製品検査で実測しておくと、現場での組立時に手戻りが減ります。

③摩擦面の処理

高力ボルト接合の摩擦面は、ショットブラストや赤錆処理などで「すべり係数0.45以上」を確保する処理が必要。フィラーの両面にも同じ処理が必要ですが、フィラーは小さい部材なので処理が漏れがち。製作工場でちゃんと処理されているかを目視+写真で確認するのが確実。

④挿入位置の確認

両側にフィラーを挟むのか、片側だけなのか、フィラーがどちら側に入っているのかは、設計上の前提と一致しているかを確認。「片側フィラーで設計したのに両側に挟まれている」と耐力評価が変わってしまいます。

⑤ボルト長さの再確認

フィラーが入る分、母材を貫通するボルトの長さが変わります。フィラーなしのボルト長さで発注していると、長さが足りない/余りすぎるが起きるので、施工要領書のボルト長さ表に「フィラーありの場合」が反映されているかを確認。

⑥摩擦面のすべり係数試験

重要な接合部では、施工前に摩擦面のすべり係数試験(標準ボルトを締めて、すべり荷重を測定)を実施することがあります。試験体にフィラー挿入の有無を反映させているかを確認。

「フィラーは入れて終わりじゃない、入れることでボルト本数や接合面処理が変わるので、設計と施工の両側で整合させる必要がある」というのが鉄則ですね。

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フィラープレートに関する情報まとめ

  • フィラープレートとは:高力ボルト接合で、母材の板厚差を埋めるために挟む薄い鋼板
  • 使う場面:ハンチ加工部の板厚差、柱ブラケットと梁本体の板厚差、改修時の既設材との取り合いなど
  • 寸法:板厚は母材の板厚差と同じ、平面寸法は母材と同等以上、ボルト孔位置も母材と同じ
  • 材質:母材と同等以上が原則。ミルシートで確認
  • 構造上の注意:フィラーを挟むとすべり耐力が低下(両側で約0.85〜0.90、片側でさらに低減)
  • 施工管理ポイント:設計図との照合、寸法・材質、摩擦面処理、挿入位置、ボルト長さの再確認

以上がフィラープレートに関する情報のまとめです。

フィラープレートは「板厚差を埋める板」ですが、入れることですべり耐力が低下し、ボルト本数や接合面処理に影響する。施工管理としては「設計図書通りに入れる」「材質と寸法を確認する」「摩擦面処理が適正か」を製作要領書と現場で照合するのが基本動作。「現場で板厚が合わないからフィラーで調整する」という発想は構造の前提を崩すので、必ず設計者と協議の上で扱う部材ですね。

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