- 溶接って結局どういう原理?金属を溶かしてくっつける?
- アーク・ガス・TIG・MIG・MAG、種類が多すぎ
- 溶接記号(矢印と三角)の読み方が分からん
- 突合せ溶接とすみ肉溶接って何が違う?
- 開先(かいさき)って何?V形・X形って?
- のど厚・脚長って図面のどこを見る?
- 溶接資格ってどんな種類?JIS溶接って?
- 鉄骨の溶接で施工管理は何を確認すればいい?
- 溶接欠陥ってどんな種類?ブローホール?
- UT(超音波探傷)検査って何を見てる?合否は?
- 予熱・パス間温度って何?なぜ必要?
- 結局、施工管理として溶接の何を押さえればいい?
上記の様な悩みを解決します。
溶接は、鉄骨をはじめ建築の構造を支える重要な接合方法です。ところがネットの解説は、溶接資格の専門サイトと、溶接記号の機械加工向けサイトに分断されていて、しかも製造業目線のものが多く、「鉄骨建築の施工管理として何を確認・検査すればいいのか」が1本にまとまっていないのが正直なところです。
今回は定義・種類・継手・開先・記号・資格といった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「鉄骨溶接の施工管理の注意点(開先・予熱・パス間温度・WPS・有資格者確認・工場/現場)」「溶接欠陥とUT(超音波探傷)検査」まで、現場で実際にハマるポイントを網羅的に整理しました。
なるべく分かりやすい表現でまとめていくので、溶接を扱い始めた方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
溶接とは?
溶接とは、結論「金属などの材料を、熱や圧力によって溶かし合わせて一体に接合する方法」のことです。
ボルトやリベットが「部材を機械的に締めて留める」のに対し、溶接は「材料そのものを溶かして連続的に一体化する」点が大きな違いです。接合部が母材と一体になるため、適切に施工すれば母材と同等以上の強度を出せます。だからこそ鉄骨造の柱梁接合部など、大きな力がかかる箇所に多用されます。
溶接は熱源によって大きく分類されます。
- アーク溶接:電気のアーク放電の熱で溶かす(建築・鉄骨の主流)
- ガス溶接:ガスの燃焼熱で溶かす
- 抵抗溶接:電気抵抗の熱と加圧で接合する(スポット溶接など)
建築・鉄骨の現場で中心になるのはアーク溶接です。ボルト接合(高力ボルト)との使い分けも実務では重要で、高力ボルトの整理はこちらが参考になります。

僕の感覚だと、溶接は「材料を溶かして一体にする接合」、ボルトは「締めて留める接合」と対比で覚えると、構造図で溶接記号とボルトのどちらが指示されているかを見たときに意図が読みやすくなります。
溶接の種類
溶接は熱源・操作方法・材料で細かく分かれます。建築・鉄骨で押さえるべき代表的な種類を整理します。
| 分類 | 代表的な溶接 | 特徴 |
|---|---|---|
| 被覆アーク溶接(手溶接) | 溶接棒を使う手作業 | 設備が簡素で現場向き。風に強い |
| マグ溶接(MAG) | 半自動・炭酸ガス系 | 鉄骨で多用。能率が高い |
| ミグ溶接(MIG) | 半自動・不活性ガス | ステンレス・非鉄に使う |
| ティグ溶接(TIG) | 高品質な手溶接 | 仕上がりがきれい。薄板・配管・ステンレス |
| ガス溶接 | ガス燃焼熱 | 薄板・切断など |
操作の自動化の度合いでも分類されます。
- 手溶接:溶接棒の操作を手で行う(被覆アーク溶接など)
- 半自動溶接:ワイヤ送給が自動、トーチ操作は手(MAG/MIGなど)
- 自動溶接:送給も移動も自動化
TIG溶接・MIG溶接の詳細はこちらが参考になります。


実務だと、鉄骨建築でまず押さえるのは「被覆アーク溶接(手溶接)」と「マグ溶接(半自動)」です。工場(ファブ)では能率の高い半自動・自動が主流、現場では取り回しのよい被覆アーク溶接が使われる、という住み分けをイメージしておくと、施工要領書を読んだときに腹落ちします。
溶接継手と開先
溶接の「継手」は、部材をどう突き合わせて溶接するかの形式です。建築で頻出するのは次の2つです。
| 継手 | 形状 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 突合せ溶接 | 端面同士を突き合わせて溶接 | 柱梁接合部など大きな力がかかる箇所 |
| すみ肉溶接 | 直角に配置した部材の隅を溶接 | プレート接合・補強など |
突合せ溶接でよく出てくるのが「開先(かいさき/グルーブ)」です。開先とは、厚い部材をしっかり溶け込ませるために、溶接面をV形・X形などに削って隙間をつくる加工のことです。
- I形:薄板向け(開先加工なし、または小)
- V形:中厚板の片面溶接
- X形:厚板の両面溶接
また、溶け込みの程度で「完全溶込み溶接(部材の全断面を溶接)」と「部分溶込み溶接(一部のみ)」に分かれます。柱梁接合部のように全強度が必要な箇所は完全溶込みが基本です。
個人的には、開先は「厚い材料を芯まで溶かすための準備加工」と捉えると理解しやすいです。開先角度やルート間隔が施工要領書で決められていて、これがずれると溶け込み不良や欠陥につながるので、施工管理としては開先の精度を最初に押さえる意識が大事です。
溶接記号の読み方
溶接記号は、JIS Z 3021で規定された「図面で溶接の指示を伝える共通言語」です。基準線と矢線を骨格に、記号と数値で内容を表します。
基本の構成は次の通りです。
- 基準線(水平の実線):この線を基準に記号・寸法を記載
- 矢線(斜めの線):溶接箇所を指す
- 基本記号:継手の種類(すみ肉は三角△、突合せはI・V・X など)
- 補助記号:全周溶接(○)、現場溶接(旗)など
- 寸法:基本記号の左に脚長・のど厚、右に長さ・ピッチ
矢線の側か反対側かは、記号が基準線の上か下かで決まります(下=矢の側、上=反対側)。
すみ肉溶接で重要なのが「脚長」と「のど厚」です。脚長は溶接金属の直角二辺の長さ、のど厚は最小断面の厚さで、等脚すみ肉ではのど厚=脚長×0.7が目安です。これらは強度計算の基準になるため、図面指示の数値を正確に読み取ります。
現場目線で言えば、溶接記号は「どこを・どの継手で・どのサイズで・全周か現場か」を一度に伝える記号です。とくに見落としやすいのが補助記号(全周・現場溶接)と寸法の単位なので、施工図の溶接記号は基本記号だけでなく周囲の補助記号まで含めて確認するのが鉄則です。
溶接資格とJIS溶接
溶接は、品質を担保するために有資格者が行うのが原則です。代表的なのがJIS規格に基づく「溶接技能者資格(JIS溶接)」です。
JIS溶接技能者資格は、溶接方法・材料・業界によって大きく分かれ、さらに次の条件で細かく区分されます。
- 溶接方法(被覆アーク/半自動など)
- 裏当て金の有無
- 板厚・肉厚
- 溶接姿勢(下向き・横向き・立向き・上向き)
資格記号は「N-1F」のような形で表され、前半が溶接方法・材料・裏当ての有無、後半(1F など)が板厚や溶接姿勢を示します。Fは下向き姿勢などを表す記号です。
JIS溶接資格は、発注者の仕様書で要求される溶接品質を、施工者が証明する手段として公的・国際的に認知されています。
自分としては、施工管理が押さえるべきは「その溶接箇所に必要な資格を、実際に溶接する人が持っているか」を確認することだと考えています。資格の中身を暗記するより、施工要領で要求される資格区分と、作業者の資格証(有効期限を含む)を照合する、という管理の流れを掴んでおく方が実務では役立ちます。
鉄骨溶接の施工管理の注意点
ここが、資格サイトや記号サイトには載っていない、鉄骨建築の施工管理が一番知りたいところです。溶接は「やり方」だけでなく「管理」で品質が決まります。順に整理します。
① 開先・組立精度の確認
溶接前の段取りが品質を左右します。
- 開先角度・ルート間隔が施工要領書どおりか
- 部材の建入れ・目違い・ギャップの精度
- 開先面の油・錆・水分・スラグの除去
② 予熱とパス間温度の管理
厚板や高強度鋼では、急冷による割れを防ぐために「予熱(溶接前に母材を温める)」を行います。さらに、多層溶接では各層(パス)の間の温度=パス間温度を一定範囲に管理します。
- 予熱:低温割れ防止のため、板厚・鋼種に応じた温度に加熱
- パス間温度:高すぎると強度・靭性低下、低すぎると割れリスク
③ エンドタブ・裏当て金・スカラップ
完全溶込み溶接では、溶接の始終端の欠陥を母材外に逃がす「エンドタブ」、裏側の溶け落ちを防ぐ「裏当て金」、溶接線の交差を避ける「スカラップ(扇形の切欠き)」などの納まりが使われます。これらが施工要領どおりかを確認します。
④ WPS(溶接施工要領書)の遵守
WPS(Welding Procedure Specification)は、溶接方法・電流・電圧・予熱・パス間温度・溶接材料などを定めた要領書です。現場の溶接がWPSどおりに行われているかを確認するのが施工管理の基本動作です。
⑤ 工場溶接と現場溶接
鉄骨は、品質の安定する工場(ファブ)溶接が基本で、現場では建方後の継手などを現場溶接します。現場溶接は風・雨・温度の影響を受けやすいため、風速・降雨・気温の管理や養生がより重要になります。
鉄筋の継手で使われるガス圧接の管理はこちらが参考になります。

現場目線で言えば、鉄骨溶接の管理で事故りやすいのは「予熱・パス間温度の管理漏れ」と「開先・組立精度の確認不足」です。溶接そのものは有資格の職人が行いますが、施工管理は開先精度・予熱・WPS遵守・気象条件を押さえる役割。ここを溶接工任せにすると、後のUT検査で欠陥が出て、はつり直し・再溶接という大きな手戻りになります。
溶接欠陥と検査
溶接の品質は、施工後の検査で確認します。まず代表的な溶接欠陥を押さえます。
| 欠陥 | 内容 |
|---|---|
| ブローホール(気孔) | 溶接金属内に閉じ込められた空洞 |
| アンダーカット | 止端部が母材を削り溝になる |
| 溶込み不良 | 開先の根元まで溶けていない |
| 割れ | 低温割れ・高温割れなど。最も危険 |
| スラグ巻込み | スラグが内部に残る |
| オーバーラップ | 溶接金属が母材に融合せず重なる |
これらを見つけるための検査が、外観検査と非破壊検査です。
- 外観検査:ビードの形状・アンダーカット・脚長などを目視・ゲージで確認
- UT(超音波探傷試験):超音波で内部の欠陥(溶込み不良・割れ等)を検出
- RT(放射線透過試験):内部欠陥を画像で確認
- PT(浸透探傷)・MT(磁粉探傷):表面・表層近くの欠陥を検出
鉄骨の完全溶込み溶接は、内部欠陥を見つけられるUT(超音波探傷試験)が多用され、規定の基準で合否を判定します。検査は社内検査に加え、第三者検査が入ることもあります。材料の品質確認に使うミルシート(材料証明書)の見方はこちらが参考になります。

僕の整理では、施工管理にとって検査は「悪いものを見つける」だけでなく「良い溶接ができる段取りを前工程で作る」こととセットです。UTで欠陥が出てから直すのは手戻りが大きいので、開先・予熱・WPS遵守で欠陥を出さない管理をした上で、外観検査とUTで担保する、という二段構えが現場では効きます。
溶接に関する情報まとめ
- 定義:金属を熱・圧力で溶かし合わせて一体に接合する方法。ボルトの機械的接合と対比される
- 種類:アーク(被覆アーク・MAG・MIG・TIG)・ガス・抵抗溶接。手溶接/半自動/自動の別もある。鉄骨は被覆アークと半自動が主流
- 継手と開先:突合せ(V・X形開先、完全/部分溶込み)とすみ肉。柱梁接合部は完全溶込みが基本
- 溶接記号:JIS Z 3021。基準線・矢線・基本記号・補助記号・寸法(脚長/のど厚)で構成
- 資格:JIS溶接技能者資格。溶接方法・裏当て・板厚・姿勢で区分(N-1F等)。施工管理は資格と作業者を照合
- 施工管理:開先・組立精度、予熱・パス間温度、エンドタブ/裏当て/スカラップ、WPS遵守、工場/現場の差
- 欠陥と検査:ブローホール・アンダーカット・溶込み不良・割れ等。外観検査+UT等の非破壊検査で合否判定
以上が溶接に関する情報のまとめです。
溶接は「種類や記号を知る」だけでなく、「開先・予熱・パス間温度をどう管理し、WPSどおりに施工させ、欠陥をどう検査するか」まで押さえて初めて施工管理として使えます。資格や記号はカタログ的に調べられますが、鉄骨の現場で品質を担保するのは前工程の段取りと検査の二段構えです。溶接の全体像と、開先・予熱・WPS・UT検査という管理の勘所を押さえておくと、鉄骨工事の溶接を安心して回せるようになるはずです。
溶接に関するよくある質問
Q1:溶接とボルト接合はどう使い分けるんですか?
溶接は材料を溶かして連続的に一体化する接合で、適切に施工すれば母材と同等以上の強度が出せます。ボルト接合(高力ボルト)は部材を機械的に締めて留める接合です。鉄骨では、工場で溶接して仕口をつくり、現場では高力ボルトで接合する、といった併用が一般的です。大きな力が連続的にかかる箇所は溶接、現場での組立や後からの取り外しを考える箇所はボルト、という使い分けが基本です。
Q2:突合せ溶接とすみ肉溶接の違いは何ですか?
突合せ溶接は部材の端面同士を突き合わせて溶接する継手で、柱梁接合部など大きな力がかかる箇所に使われます。厚い材料では開先(V形・X形など)を加工して芯まで溶け込ませます。すみ肉溶接は直角に配置した部材の隅を溶接する継手で、プレート接合や補強に多用されます。突合せの方が一般に高い強度を確保でき、完全溶込み溶接なら母材の全断面を溶接します。
Q3:開先(かいさき)とは何ですか?
開先とは、厚い部材を根元までしっかり溶け込ませるために、溶接面をV形・X形などに削って隙間をつくる加工のことです。薄板はI形(開先なし・小)、中厚板はV形(片面)、厚板はX形(両面)が目安です。開先角度やルート間隔は溶接施工要領書で決められており、これがずれると溶込み不良などの欠陥につながるため、施工管理は溶接前に開先精度を確認します。
Q4:鉄骨の溶接で施工管理は何を確認すればいいですか?
ポイントは前工程の段取りと条件管理です。具体的には、開先角度・ルート間隔・組立精度(目違い・ギャップ)、開先面の清掃、板厚・鋼種に応じた予熱とパス間温度、エンドタブ・裏当て金・スカラップの納まり、WPS(溶接施工要領書)どおりの施工、有資格者による作業、現場溶接なら風・雨・気温の管理です。これらを押さえた上で、外観検査とUT等の非破壊検査で品質を担保します。
Q5:UT(超音波探傷試験)は何を検査しているんですか?
UTは超音波を使って、溶接部の内部にある欠陥(溶込み不良・割れ・ブローホールなど)を検出する非破壊検査です。表面からは見えない内部の欠陥を見つけられるため、鉄骨の完全溶込み溶接で多用されます。規定の判定基準に照らして合否を判断し、不合格なら欠陥部をはつって再溶接します。外観検査(ビード形状・アンダーカット・脚長など目視・ゲージ)と組み合わせて、表面と内部の両面から品質を確認するのが基本です。
Q6:予熱とパス間温度はなぜ必要なんですか?
どちらも溶接割れを防ぐための温度管理です。予熱は溶接前に母材を温めることで、溶接後の急冷による低温割れを防ぎます。厚板や高強度鋼ほど重要になります。パス間温度は、多層溶接で各層(パス)の間の母材温度を一定範囲に保つ管理で、高すぎると強度・靭性が低下し、低すぎると割れのリスクが上がります。板厚・鋼種に応じてWPSで管理値が定められるので、施工管理はその範囲を守らせます。
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