- DGRってなに?地絡継電器(GR)と何が違うの?
- 「方向性」って何のこと?
- どんなときにDGRが必要になるの?
- 整定値ってどう決めるの?
- 試験のやり方が知りたい
- 結局GRとどっちを使えばいいの?
上記の様な悩みを解決します。
DGRはキュービクルの中で「自分の構内で起きた地絡だけ動作し、構外の地絡では動作しない」ように作られた継電器のこと。CVケーブルの距離が長い受電設備では、GRだけだと外部地絡時に誤動作してしまうので、DGRに置き換えるのがセオリーです。電気施工管理として高圧受電を扱う現場では、保護協調の打ち合わせでまず話題に出る装置の1つですね。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
DGRとは?
DGRとは、結論「地絡電流の大きさだけでなく、流れる方向まで判定して動作する継電器」のことです。
正式名称は 地絡方向継電器(Directional Ground Relay)。記号は DG あるいは DGR で示されることが多く、JEMの保護番号でいうと「67G」あたりに対応します。地絡継電器(GR、64)が「ある一定値を超える地絡電流」で動作するのに対し、DGRは「地絡電流の方向(自分の構内向きか、構外向きか)」を見て、構内側の地絡のときだけ動作する仕組みになっています。
受電設備全体の話は受変電設備とキュービクルの記事も合わせてどうぞ。


DGRとGR(地絡継電器)の違い
ここがいちばんよく聞かれるところ。違いは「方向性の有無」の1点に集約されます。
| 項目 | GR(地絡継電器・64) | DGR(地絡方向継電器・67G) |
|---|---|---|
| 入力 | ZCTの零相電流のみ | ZCTの零相電流+ZPDの零相電圧 |
| 判定 | 電流の大きさのみ | 大きさ+向き(位相) |
| 構外地絡時 | 誤動作する可能性あり | 動作しない(不動作) |
| 主な用途 | 短いケーブル、近距離の受電 | 長距離CV受電、メッシュ系統 |
| 代表的な整定 | 0.2〜0.4A程度 | 0.2〜0.4A+位相0〜45°など |
GRはあくまで「電流の大きさ」しか見ません。なので、自分の受電設備の外側で地絡事故が起きたときでも、構内の対地静電容量を通じて流れ込む充電電流を引き金に動作してしまうことがあるんです。これが、いわゆる「もらい事故(不要動作)」と呼ばれるやつ。長いCVケーブルで受電している現場ほど起きやすい現象なので、ここは押さえておきましょう。
地絡そのものの仕組みを忘れていたら、地絡の解説記事から戻ってきてください。


DGRの動作原理(方向判定の仕組み)
DGRは ZCT(零相変流器) と ZPD(零相電圧検出器) を組み合わせて使います。
- ZCT で零相電流(地絡電流)の大きさと位相を取り出す
- ZPD(あるいはGPT) で零相電圧の位相を取り出す
- DGR内部で、両者の位相差を比較して「自分の方を向いているか」を判定する
電流と電圧の位相差が 約0°〜45° の範囲(自分の構内側で地絡が起きている向き)なら動作、逆位相に近ければ「これは構外の事故だな」と判断して動作しない、というロジックです。位相差で「向き」を判別するというのが、方向性継電器の本質ですね。
なぜこの仕組みが必要かというと、長いCVケーブル(特にHFケーブルで数百m以上)を持つ受電点では、ケーブル自体の 対地静電容量 が無視できないレベルになるから。構外で地絡が起きると、自分の構内にあるケーブルの静電容量を通って充電電流が外向きに流れます。GRは大きさだけ見るので、これだけで動作してしまうケースがあるわけです。DGRは位相を見るので、「外向きに流れている=うちの事故じゃない」と正しく判断できる。
ZCTそのものの話はこちら。

DGRの整定値(整定の考え方)
DGRの整定は 電流タップ・電圧タップ・位相整定・動作時間 の4要素で決まります。
電流タップ(地絡電流の感度)
代表的な値は 0.2A/0.4A/0.6A。一般的なキュービクルでは 0.2A整定 がデフォルト。需要家側の対地静電容量が大きい場合(長いCVケーブル等)は0.4Aに緩めることもありますが、安易に上げると感度が落ちるので、対地静電容量から計算で出すのが正攻法です。
電圧タップ(零相電圧の感度)
JIS C 4609ではDGRの電圧整定は 5V/20% が標準。これより小さい零相電圧では誤動作しやすくなるので、整定値以下の電圧では動作しないように設計されています。
位相整定
製品によっては最大感度角を 0°、30°、45° などから選べる仕様。多くの現場では 30° が選ばれます。これは、コンデンサ性の充電電流を確実に外す角度として標準化されたもの。
動作時間
0.2秒 が一般的。GRと同じ整定にしておけば保護協調も組みやすいです。
整定値は受電点の系統条件(ケーブル長、変圧器容量、上位の地絡保護)から逆算するのが本来の手順なので、新設・更新時は必ずキュービクルメーカーに整定計算書を出してもらうのが安全です。
保護協調の全体像はこちら。

DGRの試験方法
DGRの動作試験は、年次点検(自家用電気工作物の停電点検)で必須項目です。試験は 試験器を使って模擬的に零相電圧と零相電流を加える 方法で行います。
試験の流れ
- キュービクルを停電させ、CB(VCB/LBS)を開放
- DGRの試験端子(試験プラグ)から試験器を接続
- 整定値より少し高い電流を流し、動作するか確認
- 整定値より少し低い電流で動作しないことを確認
- 位相を逆向きに振って 動作しないこと を確認(ここが方向性試験)
- 動作時間を測定(タイムテスト)
試験器はムサシインテックの MOR-Lシリーズ や戸上電機の 専用試験器 が定番。GRと違って 位相試験までセットで実施するのがDGRの特徴 です。位相試験を省略するとDGRの本質が確認できないので、ここは横着しないこと。
試験項目は電気保安法人や電気主任技術者の作成する点検チェックリストに必ず入っているはずなので、現場では作業前にリストの項目数も突き合わせるのがおすすめ。電気主任技術者の役割はこちらを参照。

DGRの主なメーカー
国内でDGRを製造している主要メーカーは以下のとおり。新設キュービクルの設計時に名前が出るのはだいたいこのあたりです。
- 三菱電機: MELPRO-A/DシリーズなどでDGR内蔵
- オムロン(K8AB-VWシリーズなど): 比較的小型、汎用キュービクルで採用多
- 東芝(GRZシリーズなど): デジタル形多機能リレーでOCR・DGR一体型
- 戸上電機製作所: GR・DGR専用機の老舗。試験端子の使い勝手が良いことで有名
- ムサシインテック: 試験器メーカーだが、DGR内蔵盤も手がける
- エナジーサポート: 屋外用や柱上向けに強い
最近は マルチ(多機能)リレー が主流で、OCR・DGR・OVR・UVRが1台に集約されているケースが増えています。盤がスッキリする一方で、整定の組み合わせが複雑になりやすいので、現場で更新工事を扱うときは「どの機能をどの番号で入れるか」を最初に整理するのが鉄則。
不足電圧継電器の話はこちら。

DGRに関する注意点
1. ZCT・ZPDの極性を間違えると方向判定が逆転する
ZCT・ZPDの一次側のK-L方向、二次側のk-l方向を取り違えると、本来動作してほしい構内地絡で 動作しない、構外地絡で 動作する という最悪の状態になります。盤の更新や改修で配線を組み直したときは、必ず方向試験で「向き」を確認しましょう。
2. 上位の地絡保護とのタイムラグ
DGRの動作時間整定は0.2秒がスタンダードですが、上位(変電所側)の地絡保護とのタイムラグを取らないと、波及事故のリスクが残ります。電力会社との協議で、引込電力会社の地絡保護より速く動作する整定を出してもらうのが大事。
3. 屋外受電点でのZPDの取り付け位置
屋外キュービクルでZPDを変圧器二次側に付けてしまうと、本来検出したい一次側地絡電圧を拾えません。ZPDは GPT(接地形計器用変圧器)の三次側 に接続するのが原則です。
4. 試験時の感電リスク
DGRは制御回路(DC100Vや110Vが多い)で動いているので、試験プラグの抜き差し時に短絡や感電を起こすケースがあります。停電作業の手順書通りに、必ずキュービクル内部で 検電→接地→確認 の流れを守りましょう。
検電の基本はこちらの記事を参照。

DGRに関する情報まとめ
- DGRとは: 地絡電流の大きさ+方向まで判別して動作する継電器(67G)
- GRとの違い: 方向性の有無。長距離CV受電では誤動作回避のためDGR必須
- 動作原理: ZCTで電流、ZPDで電圧の位相を取り、位相差で構内/構外を判定
- 整定値: 電流0.2〜0.6A、電圧5V/20%、位相30°、動作時間0.2秒が一般的
- 試験: 電流タップ試験+位相試験+タイムテストの3点セット
- 主なメーカー: 三菱電機、東芝、戸上電機、オムロン、エナジーサポートなど
- 注意点: ZCT・ZPDの極性、上位保護とのタイムラグ、ZPD設置位置、試験時の感電
以上がDGRに関する情報のまとめです。
DGRは「方向性」というキーワード1つで全体像がつながる装置なので、ZCT・ZPD・GRと合わせてセットで理解するのが結局いちばん近道です。年次点検で位相試験まで必ずやる、というところまで習慣化できれば、もう怖くない継電器になりますよ。
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