- 電気の複線図ってそもそも何?
- 単線図と何が違うの?
- 試験で書く時のコツが知りたい
- 現場でも複線図って使うの?
- 接地側・非接地側がいつも分からなくなる…
上記の様な悩みを解決します。
電気複線図とは、結論「電気回路の電線の本数や接続関係を、すべての線について1本1本描き分けて表現した図」のことです。第二種電気工事士の技能試験で必ず出るので試験勉強で目にした方も多いと思いますが、実務でも配線結線の検討で役立つ図面です。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
電気複線図とは?
電気複線図とは、電気回路の各電線(接地側・非接地側・スイッチへの電線・接地線など)を1本ごとに分けて描いた配線図です。
単線図が「機器と機器を結ぶ配線を1本の線で簡略化して描いた図」であるのに対して、複線図は「実際の電線の本数」と「接続関係」を正確に表現します。電気工事士が結線・端子台・差込形コネクタでの接続を考える時、最終的には複線図が必要、という訳です。
ざっくり言うと「単線図は配線の概念図、複線図は施工のための設計図」、と捉えると役割の違いが見えますね。
なぜ複線図が必要か
電気回路を施工する際、たとえば「スイッチで天井のライトをON/OFFする」というシンプルな回路でも、配線は実際には2本以上必要です。
- 電源から器具(ランプ)の接地側端子(白線)へ
- 電源から器具の非接地側端子へ向かう電線が、途中スイッチを経由
- スイッチ経由の電線が再びランプの非接地側端子へ
- 接地工事の必要な機器なら接地線も別途必要
これを「電源とランプを線でつないで、間にスイッチを描く」だけの単線図で表すと、結線の細かい関係が分からなくなります。複線図はこれを1本ずつ書き出して曖昧さをなくすための図、という訳です。
単線図と複線図の違い
両者の違いを整理しておきましょう。
| 項目 | 単線図 | 複線図 |
|---|---|---|
| 線の本数 | 1本にまとめて描く | 実際の電線本数を全て描く |
| 用途 | 設計の概念整理、施工配置確認 | 結線方法の検討、施工計画、技能試験 |
| 描く時の判断 | 機器配置中心 | 配線色・接続点中心 |
| 試験での扱い | 問題で与えられる | 受験者が自力で書き起こす |
第二種電気工事士の技能試験では「単線図が問題として出される → 受験者が複線図に書き起こす → 配線図に基づいて実技施工する」という流れです。複線図を正確に書ければ、本番の結線ミスは大幅に減ります。
電気複線図の書き方の手順
技能試験対策としてのスタンダードな書き順を紹介します。手順を体に染み込ませると、複線図そのものを覚えるより応用が効きやすくなります。
ステップ1:機器を配置する
まず単線図の通りに、ランプ・コンセント・スイッチ・ジョイントボックスなどの機器を紙の上に配置します。位置関係は単線図と同じです。
ステップ2:接地側電線(白線)を引く
電源の接地側(白)から、すべての「接地側に直結する機器」(ランプ・コンセント・引掛シーリング)の接地側端子に向けて1本ずつ線を引きます。
ポイントは「スイッチを介さない」こと。ランプの白側はスイッチでON/OFFされず、常に接地側に直結します。
ステップ3:非接地側電線(黒線)を引く
電源の非接地側(黒)から、コンセントの非接地側端子と、各スイッチの片側に線を引きます。
ステップ4:スイッチの戻り線を引く
各スイッチのもう片側から、対応するランプの非接地側端子に線を引きます。これがスイッチでON/OFFされる回路です。
ステップ5:接地線(緑線)を引く(必要な場合)
接地工事が必要な機器(屋外コンセントなど)には、接地線を電源側または接地工事の接地端子から接続します。
ステップ6:差込形コネクタ・リングスリーブの位置を決める
各ジョイントボックス内で、何本ずつどの線を結合するかを決めます。試験では「接続箇所のリングスリーブの種類(小・中)」も問われるので、束ねる本数で正しく選びます。
慣れるまでは時間がかかりますが、20問くらい練習すれば大体のパターンに対応できるようになります。
電気複線図でよく使う図記号
技能試験・実務でも頻出の記号を整理します。
| 機器・部材 | 図記号の特徴 |
|---|---|
| ランプ(白熱灯) | 円の中に×印 |
| 引掛シーリング | 丸の中に「H」(角型は丸の中に「H□」) |
| 蛍光灯 | 円の中に「○」(タイプにより種別記号) |
| 一般コンセント | 丸の中に「○」 |
| 接地端子付コンセント | 「Et」 |
| 接地極付コンセント | 「E」 |
| 防水コンセント | 「WP」 |
| スイッチ(一般) | 「●」 |
| 3路スイッチ | 「●3」 |
| 4路スイッチ | 「●4」 |
| 換気扇 | 「∞」を含む記号 |
| ジョイントボックス | 「□」または「○」(種別による) |
| 配線 | 実線(VVF)、破線(隠ぺい配線)、二点鎖線(露出配線)等 |
これは試験用の最低限ですが、現場でも使う基本的な記号なので覚えておいて損はないです。
VVFケーブル・IVケーブルなど、配線に使う電線の種類は別記事で詳しく解説しているので、複線図と合わせて覚えると現場でのイメージが繋がります。
電気複線図の現場での使い方
試験用というイメージが強い複線図ですが、実務でも使われる場面はあります。
現場での使い方その1:複雑な照明制御回路の検討
3路・4路スイッチを使った階段灯、ホテル客室の連動制御、店舗の調光調色回路など、配線が複雑になる照明回路では、現場で簡易的な複線図を書きながら結線を検討します。
僕も若手の頃、ある飲食店の改装案件で「客席エリアの照明を3箇所で操作したい」という依頼があり、3路スイッチ+4路スイッチの組み合わせで複線図を書きながら配線計画を作った記憶があります。単線図だけだと頭の中で混乱してしまい、結局現場ノートに複線図を書いて職人さんと共有しました。「ああ、この配線でON/OFFが連動するんですね」と職人さんの理解も早かったので、コミュニケーションツールとしても複線図は有効、と感じた経験があります。
現場での使い方その2:トラブルシュートの整理
完成した回路で「スイッチを入れても点灯しない」「特定のスイッチだけ反応しない」みたいな不具合が出たら、現状の配線を複線図で書き起こすと原因を特定しやすくなります。
現場での使い方その3:教育・引き継ぎ
新人作業員に配線の考え方を教える時、いきなり現場の複雑な単線図を見せても理解できません。「電源→接地側→ランプ」「電源→非接地側→スイッチ→ランプ」という基本の複線図から教えると、頭が整理されやすいです。
現場での使い方その4:申請図書での補足説明
電気工事登録業務に伴う申請や、認定電気工事従事者として作業する際、設計図に対する補足説明として複線図を添付するケースがあります。役所や元請への説明資料として使う感覚です。
電気複線図の注意点
最後に、書く時・読む時のハマりポイントをいくつか。
1. 接地側と非接地側の取り違えは致命的
電源の白線(接地側)はランプ・コンセントの「W」マーク端子に、黒線(非接地側)はスイッチを経由してランプ側に行く、という流れを確実に覚えます。逆になると、スイッチを切っても電源側がランプまで来ているため感電リスクが残ります。
2. コンセントは接地側・非接地側どちらにもスイッチを入れない
コンセントは常時電源を取りたい機器が接続されるため、接地側・非接地側いずれもスイッチを介さず直結します。「うっかりコンセントの黒側にスイッチを入れる」のはありがちな間違いです。
3. 3路・4路スイッチは結線方向が固定
3路スイッチは「電源側」「負荷側」のどちらに配置するかで結線が変わります。試験では問題で位置が指示されているので、忠実に書きます。
4. リングスリーブのサイズ・本数を確認
差込形コネクタはどんな本数でも対応できますが、リングスリーブは束ねる本数と電線の太さで「小」「中」を使い分けます。「IV1.6mm × 2本=小」「IV1.6mm×3〜4本=小か中(要確認)」など、試験基準で覚えましょう。
5. 試験では「単線図と複線図は同じ向きで書く」
試験中に複線図を別の向き・別配置で書くと、対応関係が分からなくなって混乱します。問題用紙の単線図と同じ向き・同じ配置で書くのが鉄則です。
6. 認定電気工事従事者では複線図の理解がベースになる
認定電気工事従事者の講習では、複線図を読み解く力が前提になっています。資格取得を考えている方は、第二種電気工事士で身に付けた複線図の力をしっかり活用しましょう。
電気複線図に関する情報まとめ
- 電気複線図とは:電気回路の各電線を1本ずつ描いた、施工のための配線図
- 単線図との違い:単線図は概念、複線図は施工のための具体図
- 書き方手順:機器配置→白線→黒線→スイッチ戻り線→接地線→接続点
- 主な記号:ランプ、引掛シーリング、コンセント、スイッチ(1路・3路・4路)など
- 現場での使い方:複雑回路の検討、トラブルシュート、教育、申請補足
- 注意点:接地側・非接地側の取り違え、コンセントは直結、リングスリーブのサイズ
以上が電気複線図に関する情報のまとめです。
複線図は試験対策のためだけのものに見えますが、現場で配線の仕組みを腹落ちさせる最強のツールでもあります。第二種電気工事士の合格を目指している方も、現場で配線図を読む施工管理者の方も、複線図を「自分で書ける」ようになっておくと業務の解像度が一段上がりますよ。合わせてVVFケーブル・IVケーブル・接地工事・認定電気工事従事者・電気工事登録あたりも目を通しておくと、電気工事の知識体系が立体的に組み上がります。

