- 保護協調ってなに?
- どんな考え方をすればいいの?
- 保護協調曲線について知りたい
- ブレーカーは?
- 整定値って?
保護協調とは、電気設備において非常に大切な考え方です。ある程度上流の仕事を任される様になると耳にすることが増えると思います。
基礎知識について抑えておきましょう。
この記事では保護協調とは?といったところから、考え方、保護協調曲線、ブレーカーなどについて解説します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも分かりやすい記事になるかなと思います。
保護協調とは?
保護協調とは、結論「事故が発生した際、事故が起こった電路を切り離し、それ以外の電路と負荷を保護できる様に調節すること」です。
まず、電気というのは逆流します。
例えば、回路A・回路B・回路Cというものがあったとしましょう。回路Aで事故が発生したとしたら、回路Bと回路Cは無関係ではありません。
回路Aで発生した事故電流が逆流して流れ込むことにより、回路Bと回路Cに異常が発生することがあります。回路Aから電気が逆流して上位側まで行き、上位側から回路B回路Cへと事故電流が流れていってしまうわけです。これを防ぐのが保護協調です。
事故電流が流れ込むと、具体的にどの様な異常が発生するのかというと「電路がおかしくなる」と「負荷がおかしくなる」の2点があります。
まず電路、電線だったりケーブルだったり幹線がおかしくなります。
電線・ケーブル・幹線には許容電流があります。例えば、スマホの充電ケーブルの様な細い電線に、発電所で流れる様な大きな電気が流れたら壊れる、というのは容易に想像がつくと思います。
また、同様に負荷にも定格電流というものがあります。
負荷というのは照明器具だったり、動力機器だったり、コンセントだったりです。簡単な話、100Vの照明器具に200Vが流れたら壊れますよね。これもまた問題です。
保護協調では、事故電流を切り離し、事故が起こってない回路を保護する目的があります。ブレーカーやヒューズなどの安全装置でそれを達成します。
ただ、それだけではただの遮断では?と思う方もいるかもしれません。
先ほどの説明では「保護する様に調節すること」と言いました。電路を遮断するだけでは「調節する」という要素が抜けています。「調節する」というのが保護協調において重要な考え方になってきます。
保護強調の考え方
保護協調としての考え方を一言で説明すると「全ての安全装置の連携が卒なく動作する様に考える」と言えるでしょう。詳しく解説します。
まず前提として、電気設備には数多くの安全装置がありますよね。
電気設備に組み込まれている様々安全装置
- MCCB(配線用遮断器)
- ELCB(漏電遮断器)
- OCR(過電流継電器)
- ZCT(零相変流器)
- トランス(変圧器)
- コンデンサー
- リアクトル
- ヒューズ
- etc
これら全てが噛み合わなければ、保護協調が取れません。
例えば、CB(ブレーカー)を投入した時、変圧器には励磁突入電流というものが流れます。簡単に説明すると、突発的に大きな電流が流れるんです。この励磁突入電流によってOCRが動作してしまうことがあります。
励磁突入電流でOCRが動作しない様、調節しなければなりません。その為には変圧器の励磁突入電流を計算し、OCRの設定に組み込む必要性があります。これ一つを取っても「CB(ブレーカー)」と「変圧器」と「OCR」でバランスを取らなければなりません。
この様に保護協調では、何かの機器の動作で、何かの機器の動作に不具合が発生しない様、調節しなければならないんです。
それだけ多くの機器連動について考えなければならないのは大変ですよね。
そこで保護協調を考える時、保護協調曲線というものを作成することで保護協調を表で明確化することが多いです。
保護協調曲線について
引用:オムロン
保護協調を考える時、上表の様な保護協調曲線を作成します。
横軸が電流値(A)でして、縦軸が時間です。簡単に説明するなら、時間経過に対してどの様に電流値が変化するのか?を示した表になります。
具体的な項目としては下記の様なものが挙げられます。
保護協調曲線に組み込む項目
- 低圧MCCB
- OCR(過電流継電器)
- 変圧器の熱特性
- 配電変電所のOCR(過電流継電器)
- 変圧器の励磁突入電流
- 高圧コンデンサの充電電流
「OCR(過電流継電器)」と「配電変電所のOCR(過電流継電器)」について考えてみましょう。
OCRとは「過電流を検知して遮断器へと知らせる装置のこと」でして、2つのOCRの違いとしては受電端側のOCRか配電変電所側のOCRかの違いです。
まず前提の考え方として「受電端側のOCRが先に動作しなければならない」というものがあります。
先ほども言った通り、電気は逆流します。最悪の場合、建物内で発生した事故が配電変電所まで流れていってしまう可能性があります。これが起こらない様、OCRで常に事故電流を監視しているという訳です。
まとめると、表における「形K2CA静止形過電流継電器」は「配電変電所のOCR」よりも左側に来なければならないということです。
保護協調を取る為のブレーカー調節
結論から言うと、ブレーカー(低圧MCCB)はOCRよりも小さい電流値でなければなりません。
注目して欲しいのは「低圧MCCB」という部分と「形K2CA静止形過電流継電器」という部分です。まずはこの2つだけ考えてみましょう。
低圧MCCBというのは、分岐して数多くあるMCCBの総称だと考えましょう。低圧のMCCBにおいて考えなければならないのは「電流値」です。
MCCBの電流値が大きくなりすぎると、表においては右側によっていきますよね。
もしMCCBの電流値が大きくなり、表の右側へ行き、過電流継電器よりも大きくなると、問題が発生します。具体的にどんな問題かというと、低圧MCCBの極めて限定的な事故なのに、OCRが動作してしまうということです。
つまり「低圧MCCB」は「形K2CA静止形過電流継電器」よりも左側、小さい電流値でなければなりません。
よって、MCCBを選定する際、電流値の大きさがOCRを超えない様注意する必要があります。もしくはOCRの電流値を大きくするか。
この様に保護協調では様々な安全装置が絡み合い、互いに位置関係があります。
保護協調に関する情報のまとめ
保護協調に関する情報のまとめ
- 保護協調とは:事故が発生した際、事故が起こった電路を切り離し、それ以外の電路と負荷を保護できる様に調節すること
- 考え方:全ての安全装置の連携が卒なく動作する様に考える
- 保護協調曲線とは:時間経過に対してどの様に電流値が変化するのか?を示した表
- 保護協調におけるブレーカー:ブレーカー(低圧MCCB)はOCRよりも小さい電流値でなければならない
以上が保護協調に関する情報のまとめです。
一通り基礎知識は網羅できたと思います。
保護協調を取るには様々な装置が絡み合っている必要があります。それぞれに対する理解をしておけば、保護協調に対する理解も深まります。
下に分かりやすい記事のリンクを貼っておくので、よかったら読んでみてください。
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