- アンカーボルトってそもそも何?
- 種類が多すぎて何を選べばいいか分からない
- ABRとABMの違いって?
- M16とかM24とか、サイズの決め方は?
- 鉄骨柱脚の埋め込み深さはどれくらい?
- 強度計算ってどうやるの?
- 現場でよくある失敗は?
上記の様な悩みを解決します。
アンカーボルトは建物の足元を支える、文字通り「アンカー(錨)」の役割を果たす部材です。鉄骨柱を基礎に固定する構造用、設備機器を据え付けるあと施工型など、用途によって使う規格が全然違います。発注前に種類とサイズの感覚を掴んでおかないと、現場で「あれ、ボルト足りない」「これ規格違うやん」となる単語ですね。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
アンカーボルトとは?
アンカーボルトとは、結論「コンクリートに埋め込んで、上に乗る鉄骨柱や機器を固定するためのボルト」のことです。英語では Anchor Bolt、構造図面上は「ABR」「ABM」と書かれることが多いですね。
下にコンクリート基礎、上に鉄骨柱があるとして、その間を縁を切らずに繋ぐ役目を持っているのがこのアンカーボルト。柱脚部の地震時の力をベースプレート経由でコンクリートに逃がす、という建物の足元の要の部材です。
ボルト単体について整理したい場合はこちらをどうぞ。

似たような部材で「インサート」がありますが、こちらは天井や床下に先付けして金物を吊るための雌ねじです。役割が全然違うので混同しないようにしましょう。

アンカーボルトの種類
大きく分けると3グループに分類できます。
- 構造用アンカーボルト(先付け/鉄骨柱脚向け):ABR・ABM
- 機械的あと施工アンカー:オールアンカー、グリップアンカーなど
- 化学的あと施工アンカー(接着系):カプセル方式、注入方式
構造用は鉄骨柱の脚部固定が主用途で、建物の構造そのものを担うため一番グレードが高いタイプ。機械的あと施工アンカーは既設のコンクリートに穴をあけて施工するもので、設備機器の脚、配管支持金物、手すり下地などに使われます。化学的あと施工アンカーは振動の大きい機器や荷重の重い設備に強くて、後施工でも構造用に近い性能を出せます。
施工管理として最低限押さえるのは「先付けの構造用」と「あと施工」の違い。先付けは型枠→配筋→アンカーセット→コンクリート打設の順で、後からの位置調整が一切効きません。一方あと施工は既設コンクリートに穴を開けるので、墨さえ正確に出せれば現場合わせで何とかなる、というのが大きな差ですね。
あと施工アンカーには資格制度もあるので、現場で打つ職人さんが有資格者かどうかは確認しましょう。

アンカーボルトのサイズと規格
構造用アンカーボルトのJIS規格は JIS B 1220 に統合されていて、2015年12月の改正でABRとABMが同じ規格番号にまとまりました。材質は炭素鋼のSNR400B・SNR490B(JIS G 3138)、ステンレスのSUS304A(JIS G 4321)が標準。
| 呼び径 | 主な用途 |
|---|---|
| M16〜M22 | 小規模S造、軽量鉄骨 |
| M24〜M30 | 一般的なS造工場・倉庫の柱脚 |
| M33〜M42 | 中〜大規模S造、SRC造 |
| M48〜M100 | 超高層、重量機器据付 |
JIS B 1220の寸法ルールは「ボルト全長は呼び径(d)の25倍以上」「ねじ部長3d以上」「ナット高さ0.8d」「ABMは細目ねじ採用(ABRは並目)」。
僕としては、電気設備のキュービクルや自家発電機の据付ではM16〜M24を使うことが多くて、構造で出てくるM33以上はあまり扱わない、というように用途で「よく使うサイズ帯」が違うことを意識しておくと現場で迷いません。建築の鉄骨屋さんだとM33〜M42が普通の世界、という具合に住み分けがありますね。
杭基礎と組み合わせる場合は、こちらの記事もどうぞ。

アンカーボルトの施工方法
- 基礎の配筋を確認
- アンカーフレーム(テンプレート)でアンカーボルトの位置・通りを固定
- レベル・通り・出を測定
- コンクリート打設
- 養生後、鉄骨建方の際にナットで固定
ポイントは「アンカーフレームの精度」です。コンクリート打設の振動でズレると、後から鉄骨柱が乗らずに「現場でガス切断して逃げる」ことになります。建方当日になって発覚するケースが多いので、コンクリート打設前のレベル・通り確認はガチで全数チェックすべきポイント。
基礎工事の流れ全体はこちら。

- 墨出し
- ハンマードリルで所定径・深さの穴あけ
- 穴内の切粉をブロアーで除去(手抜くと強度が出ない)
- アンカーを挿入してハンマーで打ち込み、またはカプセル破砕
- トルクレンチで規定トルクまで締め付け
ここで一番手を抜かれやすいのが「切粉除去」のステップ。メーカー試験の数字はキレイな穴前提なので、ここを飛ばすと許容引抜力が出ません。化学アンカーなら接着不良の原因にもなるので、現場立会いではブロアーが回っているかを必ず確認したいところです。
コンクリート打設関連の予備知識はこちらにまとまっています。

アンカーボルトの強度計算
設計実務では「引抜き力」と「せん断力」の2軸で計算します。
引抜方向の許容耐力は、ボルトの材質に応じた許容引張応力度 × ねじ部の有効断面積で算出。SNR400Bなら長期で約157N/mm²、短期で約235N/mm²あたりが目安です。引っ張られたアンカーがコンクリートごと逆円錐状にすっぽ抜ける「コーン破壊」も忘れずに検討する必要があって、コーンの斜面角度は45°で見て、コーン体積×コンクリート引張強度で許容値を算出します。
ABMの細目ねじは、ねじ部の有効断面積(Ae)を軸部断面積(Ab)に近づけることで、地震時にボルト全体が均等に伸びるよう設計されています。簡単に言うと「ボルトが粘る」性能ですね。Ae/Abが大きいほど、降伏後に塑性変形で踏ん張れる、と覚えておくと現場でも構造でも会話が通じます。
僕としても、引抜きとせん断とコーン破壊の3点セットを「常にこの順で見ていく」習慣を持っておくと、検算で抜けが出ないかなと思います。ボルトの締付けトルクやナットの向きはこちらに整理しました。

アンカーボルトに関する注意点
現場でやらかしやすい3つを挙げておきます。
注意点①:ABRは曲げ加工NG
ABRは転造で作っているので、後から曲げると応力集中で破断します。図面通りに発注、現場では絶対に曲げない、が鉄則。「現場で少し曲げて納める」鉄筋系の感覚を持ち込むと事故るタイプの部材です。
注意点②:突出長さ管理
ベースプレートの厚み+ナット高さ+座金厚さ+締代を計算して突出長さを決めます。ここを甘く見ると「ナットが噛まない」「逆にネジ山が露出しすぎる」が起きるので、発注時のサイズ選定で確実に詰めておきましょう。
注意点③:電気設備の据付ベースでも耐震計算は手を抜かない
キュービクルや屋外機器の架台は耐震Sクラス(重要機器)になることが多く、構造用と同等レベルの計算が必要です。「設備だから簡易で良い」ではないので注意。受変電設備の据付要領はこちら。

アンカーボルトに関する情報まとめ
- アンカーボルトとは:コンクリートに埋め込んで上の柱や機器を固定するボルト
- 種類:構造用(先付け/ABR・ABM)/機械的あと施工/化学的あと施工
- 規格:JIS B 1220(2015年12月改正で統合)、SNR400B/490B、SUS304A
- サイズ:M16〜M100、S造柱脚はM24〜M42帯
- 施工:先付けはフレーム精度命、あと施工は切粉除去とトルク管理
- 強度計算:引抜き+せん断+コーン破壊、ABMは細目ねじで伸び性能
- 注意点:ABRは曲げ厳禁/突出長さ管理/設備架台でも耐震計算
以上がアンカーボルトに関する情報のまとめです。
「鉄骨柱脚」と「機器据付」では同じアンカーボルトでも要求精度が違う、という横断視点を持つと、現場での会話の解像度が一気に上がります。一通り基礎知識は網羅できたかなと思います。
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