- 鉄骨ってどんな材料でできてる?
- SS400・SM490・SN材って何が違う?
- 鉄骨の形状にどんな種類がある?
- 建築と橋梁で使う材料は同じ?
- 鉄骨と一緒に使う補助材って?
- 現場で押さえるポイントは?
上記の様な悩みを解決します。
「鉄骨造のビル」と一言で言っても、組み上げる材料は柱の H 形鋼、梁の H 形鋼、ブレースの山形鋼、デッキプレート、スタッド、ボルト…と十数種類が混在します。さらに同じ H 形鋼でも、鋼種が SS400 か SN490B かで耐震性能はまるで違う。鉄骨工事の段取りを組むうえでは、「どこにどの材料が使われるか」のマップを頭に入れておくのが第一歩です。今回は施工管理視点で、鉄骨の材料を主要鋼種・形状・補助材の3軸で整理してみます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
鉄骨の材料とは?
鉄骨の材料とは、結論「建築物の主要構造を組み立てるために使う鋼材一式 のこと」です。
英語では Structural Steel。広い意味では、構造材本体だけでなく、接合金物・補助材・建方治具まで含めて「鉄骨の材料」と呼ぶことがあります。
鉄骨材料の大分類
| カテゴリ | 主な材料 |
|---|---|
| 主要構造材 | H 形鋼、角形鋼管、円形鋼管、山形鋼、I 形鋼 |
| 接合金物 | 高力ボルト、フィラー、ダイヤフラム、スプライスプレート |
| 補助材 | スタッドジベル、デッキプレート、フラットバー、リブ |
| 副次部材 | 階段部材、手摺部材、サブガーター |
| 建方治具 | エレクションピース、仮設ボルト、ハイテンボルト |
鋼材の基本性質
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 密度 | 約 7,850 kg/m³ |
| ヤング率 | 205,000 N/mm²(205 GPa) |
| 降伏点 | 235〜460 N/mm²(鋼種で変動) |
| 引張強さ | 400〜720 N/mm²(鋼種で変動) |
| 線膨張係数 | 約 12 × 10⁻⁶ /℃ |
| 融点 | 約 1,500℃ |
鋼材は「強い・粘い・大量生産できる・リサイクル可能」という4拍子そろった材料で、近代建築の主役を100年以上担い続けています。
鋼材の単位体積重量はこちら。

鋼種・材料記号の読み方はこちら。

主要な鋼種(SS、SM、SN、SUS)
鉄骨で使う鋼種は、用途と性能ごとに JIS で規格化されています。
主な構造用鋼の鋼種一覧
| JIS規格 | 鋼種名 | 鋼種記号例 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| JIS G 3101 | 一般構造用圧延鋼材 | SS400 | 軽微な部材、二次部材 |
| JIS G 3106 | 溶接構造用圧延鋼材 | SM400、SM490 | 橋梁、産業プラント、副次部材 |
| JIS G 3136 | 建築構造用圧延鋼材 | SN400、SN490 | 建築の主要構造 |
| JIS G 3138 | 建築構造用圧延棒鋼 | SNR400、SNR490 | アンカーボルト、ターンバックル |
| JIS G 3466 | 一般構造用角形鋼管 | STKR400 | 角形鋼管 |
| JIS G 3475 | 建築構造用炭素鋼鋼管 | STKN400、STKN490 | 建築用角形鋼管 |
| JIS G 4304 | ステンレス鋼 | SUS304、SUS316 | 屋外・耐食用 |
SS400・SM400・SN400 の違い
| 項目 | SS400 | SM400 | SN400 |
|---|---|---|---|
| 化学成分の管理 | 最低限 | C・Si・Mn 等を規定 | より厳しく規定 |
| 衝撃靱性 | 規定なし | B、C グレードで規定 | 規定あり |
| 降伏点上限 | 規定なし | 規定なし | 規定あり(耐震性) |
| 炭素当量 | 規定なし | 大型材のみ規定 | 規定あり(溶接性) |
| 主な用途 | 二次部材、ガセット | 橋梁、産業プラント | 建築主要構造 |
「建築の柱・梁は SN 材」が現代の標準
1981年新耐震基準以降、建築は 「想定外の地震に対して、塑性変形で粘って崩壊を遅らせる」 設計が基本になりました。ここで重要なのが「降伏点上限規定」と「炭素当量規定」を持つ SN 材です。
| 鋼種 | F値(基準強度)[N/mm²] | 用途 |
|---|---|---|
| SS400 | 235 | 軽微な構造、副次部材 |
| SM400 | 235 | 橋梁、二次部材 |
| SN400A | 235 | 建築(小規模) |
| SN400B/C | 235 | 建築の主要構造(耐震要求) |
| SN490B/C | 325 | 建築の主要構造(高強度) |
SS400 の話はこちら。

SM材の話はこちら。

鉄骨の形状(H形鋼・角形鋼管・山形鋼など)
同じ鋼種でも、断面形状によって役割が変わります。
主要な鉄骨形状
| 形状 | 略号 | 主な用途 |
|---|---|---|
| H 形鋼 | H | 柱・梁・大梁・小梁の主力 |
| 角形鋼管 | □ | 柱(特にBOX柱として) |
| 円形鋼管 | ○ | 柱、デザイン柱、構造体 |
| 山形鋼(アングル) | L | ブレース、トラス、下地材 |
| 溝形鋼(チャンネル) | C | 副次部材、トラス材 |
| I 形鋼 | I | 古い構造物(現在は減少) |
| フラットバー | FB | スチフナー、補強材 |
| 鋼板(プレート) | PL | ガセット、ベース、ダイアフラム |
| デッキプレート | デッキ | スラブ型枠兼鉄筋 |
| 異形棒鋼(鉄筋) | D | スタッド、アンカー |
H 形鋼が鉄骨建築の主役
H 形鋼は 断面が H 字型 で、ウェブ(縦の板)とフランジ(上下の横板)でできています。
| サイズ表記 | 内容 |
|---|---|
| H-300×150×6.5×9 | 高さ300、幅150、ウェブ厚6.5、フランジ厚9(mm) |
H 形鋼は「曲げに強い・座屈に強い・接合がやりやすい」という3拍子そろった形状で、建築の柱・梁の8割以上はこれで構成されます。
角形鋼管(BOX柱)
| サイズ表記 | 内容 |
|---|---|
| □-400×400×19 | 400×400角、肉厚19mm |
角形鋼管は 四面に均等に強度を持つ ため、地震時の水平力を方向によらず受けられます。中高層建築の柱では H 形鋼より BOX 柱が好まれる傾向。
山形鋼(アングル)
| サイズ表記 | 内容 |
|---|---|
| L-100×100×10 | 等辺山形鋼、100×100、厚さ10mm |
| L-90×75×9 | 不等辺山形鋼 |
山形鋼は ブレース、トラスの斜材、下地材 で活躍する形状。軽量で加工しやすいのが特徴。
H 形鋼の規格詳細はこちら。

H 形鋼の強度の話はこちら。

用途別の鋼材選定(建築・橋梁・住宅)
建物の用途・規模で、選ぶ鋼材が変わります。
建築用途別の鋼材選定の目安
| 用途 | 主柱・主梁 | 副次部材 |
|---|---|---|
| 軽量鉄骨住宅 | リップ溝形鋼(LSG)、CT 形鋼 | 山形鋼、平鋼 |
| 工場・倉庫(軽量S造) | H 形鋼(SS400 または SN400B) | 山形鋼、デッキ |
| オフィスビル(中規模) | H 形鋼(SN490B)、BOX柱 | デッキスラブ、スタッド |
| 中高層オフィス | BOX柱(SN490C)、H 形鋼梁(SN490B) | RC スラブ、スタッド |
| 超高層ビル | BOX柱(SN490C/SN570) | RC スラブ、メガブレース |
| 工場の重量設備支持 | H 形鋼(SM490A/B) | 鋼板床 |
橋梁用の鋼材
| 用途 | 主な鋼種 |
|---|---|
| 一般道路橋(中小) | SM400B、SM490B |
| 高速道路橋 | SM490YA/YB、SM520B/C |
| 鉄道橋 | SM490YA/YB、耐候性鋼 SMA |
| 大規模橋梁 | SM570、SBHS500/700 |
橋梁では SM 材が主流。SN 材の「降伏点上限規定」は橋梁設計で不要なため、引張強度ベースの SM 材が経済的です。
住宅・小規模建築の軽量鉄骨
軽量鉄骨住宅では、リップ溝形鋼(C 形鋼にリップを付けた形)や薄板鋼板を冷間加工した材料が主役です。Cチャンネル(C-100×50×20×2.3) のような寸法で、軽量・コスト優先で選ばれます。
S 造の特徴はこちら。

Cチャンネルの話はこちら。

接合金物・補助材
鉄骨工事は「主要構造材」だけでなく「接合金物」と「補助材」がセットで動きます。
主な接合金物
| 金物 | 用途 |
|---|---|
| 高力ボルト(F10T、S10T) | 鉄骨梁・柱の接合 |
| 普通ボルト | 軽微な接合、仮設 |
| アンカーボルト | 柱脚と基礎の接合 |
| ダイヤフラム | 柱梁接合部の補強板 |
| スプライスプレート | 梁継手の挟み板 |
| ガセットプレート | ブレース・トラス接合 |
| エレクションピース | 建方時の仮固定用 |
主な補助材
| 補助材 | 用途 |
|---|---|
| デッキプレート | スラブ型枠+永久型枠 |
| スタッドジベル | 鉄骨梁と RC スラブの一体化 |
| キャンバー | 梁先端の上向きむくり |
| スチフナー | 鋼板の補強(座屈防止) |
| ベースプレート | 柱脚の支持板 |
| リブプレート | ガセットの補強板 |
鉄骨工事で同時に発注する材料
| 主要構造材 | 必ずセットで来る材料 |
|---|---|
| H 形鋼梁 | スプライスプレート、高力ボルト、フィラー、スタッド |
| 角形鋼管柱 | ダイヤフラム、ベースプレート、アンカーボルト、エレクションピース |
| ブレース(山形鋼) | ガセットプレート、高力ボルト、ターンバックル |
主要構造材を発注するときは、これらの 付帯材料の見落とし がないように、製作要領書を細かくチェックする必要があります。
ダイヤフラムの話はこちら。

スプライスプレートの話はこちら。

鉄骨の材料に関する施工管理の注意点
最後に、施工管理として鉄骨材料を扱うときの注意点をまとめます。
注意点①:鋼種と JIS 規格を必ず照合
「SN490B 指定で SS400 が納入される」というのは稀ですが、ファブ工場の事務手続きで発生し得ます。ミルシート、ロール刻印、製作要領書、構造図 の4点照合を必ず行いましょう。
注意点②:板厚で F 値(基準強度)が変わる
特に SN490 や SM490 は、板厚 40mm 以下と 40〜100mm で F 値が変動します。柱の継手位置に厚板を使うときは要確認。
注意点③:耐候性鋼(SMA)の特殊性
橋梁用の耐候性鋼(SMA-W、SMA など)は、表面に保護皮膜(さび層)を形成して内部の腐食を抑える特殊鋼。塗装しないで使うのが特徴ですが、海岸線では適用範囲が制限されるなどローカルルールがあります。
注意点④:補助材(特にスタッド)の本数・配置を見落とさない
鉄骨梁とRCスラブの合成効果を出すスタッドジベルは、本数や配置を間違えると 合成梁としての耐力が出ません。製作要領書のスタッド本数を必ず確認しましょう。
ある中高層オフィスの鉄骨建方を担当したとき、3階梁の継手位置に SN490C の指定があるのに、ファブから入った1本だけ SN490B だったことがありました。ミルシートには SN490C と書かれていたのですが、現品のロール刻印を確認すると SN490B。チャージ番号で追跡すると、ミルシートの転記ミスで違う材料が入っていたという事象でした。SN490B と C の違いは「シャルピー衝撃試験の温度と吸収エネルギー」で、構造設計でC指定だったのは寒冷地での低温脆性破壊対策のため。建方を1日止めて鋼種差し替えを実行しましたが、もし発見が遅れて建方完了後だったら、ボルトを外して梁を1本入れ替えるという大掛かりな手戻りになっていました。ミルシートだけでなく現品の刻印照合まで実施 するのを社内ルールにしているのは、こうした事例があるからです。
ミルシートの読み方はこちら。

鉄骨の材料に関する情報まとめ
- 鉄骨の材料とは:建築物の主要構造を組み立てるための鋼材一式
- 主要鋼種:SS400、SM400/490、SN400/490、SUS304 等
- 形状:H 形鋼、角形鋼管、山形鋼、溝形鋼、フラットバー、鋼板など
- 用途別:軽量住宅は LSG、建築主要構造は SN 材、橋梁は SM 材
- 接合金物:高力ボルト、ダイヤフラム、スプライスプレート、ガセット
- 補助材:デッキプレート、スタッド、ベースプレート、スチフナー
- 注意点:鋼種照合、板厚別F値、耐候性鋼の特性、補助材の数量管理
以上が鉄骨の材料に関する情報のまとめです。
鉄骨工事は「H 形鋼を組み立てる」だけのシンプルな作業に見えますが、実際には鋼種・形状・接合金物・補助材が複雑に絡んだシステム。建築の主要構造は SN 材、橋梁は SM 材、軽量住宅は LSG という大きな棲み分けと、H 形鋼・角形鋼管・山形鋼の使い分けを押さえておくと、製作要領書や構造図がスッと読めるようになります。一通り鉄骨の材料に関する基礎知識は理解できたと思います。
合わせて、関連する鋼材・接合・形鋼の知識もチェックしておきましょう。










