- SM材って結局どんな鋼材?
- SS材と何が違うの?
- SM400とSM490の数字は何を表してる?
- A・B・Cのグレードって何が違う?
- 規格や化学成分はどう決まってる?
- どんな構造物に使うの?
- 建築の鉄骨でも使うの?SN材とどっち?
- 現場でSM材を見たとき何を確認すればいい?
- 溶接するときに注意点はある?
上記の様な悩みを解決します。
SM材は「溶接構造用」と名前が付く通り、溶接する構造物のために作られた鋼材です。橋梁や船舶でおなじみですが、建築の鉄骨では今やSN材が主流になっていて、SM材の立ち位置は意外と知られていません。今回は定義・種類・規格・SS材との違いといった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「建築鉄骨でのSN材との使い分け」「現場でのミルシート確認や溶接の注意点」まで、材料カタログで終わらない形で整理しました。
なるべく分かりやすい表現でまとめていくので、鋼材に詳しくない方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
SM材とは?
SM材とは、結論「溶接性に優れた溶接構造用圧延鋼材」のことです。JIS G3106で規定されていて、橋梁・船舶・車両・石油貯槽など、溶接して組み立てる構造物に使われます。
名前の由来は「Steel(鋼)」と「Marine(海洋・船舶)」の頭文字です。もともとは船舶を溶接で造るために、溶接しても割れにくい鋼材として開発された経緯があります。だから「SM=溶接構造用」と覚えておくと、後で出てくるSS材との違いがすっきり理解できます。
ここでポイントになるのが「溶接性」です。鋼材は溶接で熱を受けると、溶接部の周りが硬くもろくなって割れやすくなることがあります。SM材は、この溶接割れを防ぐために、炭素(C)やマンガン(Mn)といった化学成分を細かく管理して、溶接しても性能が落ちにくいように作られています。普通の鋼材を溶接するのと、溶接前提で成分管理された鋼材を溶接するのとでは、安心感がまるで違うわけです。
鋼材全体の分類を一度整理しておきたい方は、こちらが参考になります。

僕の感覚だと、SM材は「溶接して使うことを前提に成分を整えた鋼材」と捉えるのが一番わかりやすいです。SS材が「とりあえず使える一般的な鋼材」だとすれば、SM材は「溶接構造物のために一段気をつかった鋼材」。この性格の違いが、規格にも用途にも表れています。
SM材の種類(SM400・SM490など)とA・B・Cグレード
SM材は、強度の違いで複数の種類に分かれ、さらにそれぞれがA・B・Cのグレードに分かれます。記号の読み方さえ分かれば、SM材の表記はすぐに理解できます。
代表的な種類は次の通りです。
| 種類 | 引張強さの目安 | 主な用途イメージ |
|---|---|---|
| SM400 | 400N/mm²級 | 一般的な溶接構造物 |
| SM490 | 490N/mm²級 | 強度が必要な橋梁・重量構造物 |
| SM520 | 520N/mm²級 | より高強度が求められる構造物 |
| SM570 | 570N/mm²級 | 大スパン橋梁など特殊用途 |
SM400・SM490のように、SMの後ろに付く数字は引張強さ(の最低保証値の目安)を表しています。数字が大きいほど強い鋼材で、SM490はSM400より強度が高い分、薄い断面で同じ力を受けられる、といった使い分けになります。
そして、SM400A・SM400B・SM400Cのように末尾に付くA・B・Cはグレードで、靭性(粘り強さ=衝撃に対する強さ)のレベルを表します。具体的には、シャルピー衝撃試験での吸収エネルギーの保証値が違います。
- Aグレード:シャルピー吸収エネルギーの規定なし(靭性の保証なし)
- Bグレード:一定温度で27J以上を保証
- Cグレード:より高い47J以上を保証(最も靭性が高い)
同じSM400でも、CのほうがBより粘り強く、低温や衝撃に強い、ということです。寒冷地や、衝撃・繰り返し荷重がかかる重要な部材ほど、靭性の高いグレードが選ばれます。
SM400そのものをもっと詳しく知りたい方は、こちらが参考になります。

実務だと、図面や鋼材の表記で「SM490B」と書いてあれば、「490N/mm²級の溶接構造用鋼材で、靭性はBグレード」と一目で読めるようになります。数字=強度、アルファベット=靭性、この2軸で覚えると、SM材の種類は怖くありません。
SM材の規格・化学成分・機械的性質
SM材の規格はJIS G3106で定められ、化学成分と機械的性質の両面から品質が管理されています。ここがSS材との一番の違いにつながる部分です。
化学成分では、溶接性を確保するために炭素(C)・ケイ素(Si)・マンガン(Mn)・リン(P)・硫黄(S)の含有量が細かく規定されています。特に炭素量は溶接割れに直結するため、上限が抑えられています。リンと硫黄は鋼を脆くする不純物なので、これも低く管理されます。この「溶接のために成分を絞り込んでいる」点が、SM材が溶接構造用と呼ばれる理由です。
鋼の化学成分が性能にどう効くかは、こちらが参考になります。

機械的性質では、降伏点(または耐力)・引張強さ・伸び・シャルピー吸収エネルギーが規定されます。降伏点は板厚が厚くなるほど下がるため、JISでは板厚区分ごとに保証値が決められています。同じSM490でも、薄い板と厚い板では保証される降伏点が違う、という点は実務で押さえておくべきポイントです。
引張強さそのものの考え方は、こちらが参考になります。

僕の整理では、SM材の規格は「溶接で困らないように化学成分を絞り、構造材として使えるように機械的性質を保証している」二段構えだと捉えると分かりやすいです。成分と性質の両方が決まっているからこそ、溶接構造物に安心して使える、というのがSM材の規格の意味です。
SM材とSS材の違い
SM材を理解するうえで避けて通れないのが、SS材との違いです。どちらも建設でよく使われる鋼材ですが、規定されている項目がはっきり違います。
| 項目 | SS材(一般構造用) | SM材(溶接構造用) |
|---|---|---|
| JIS | G3101 | G3106 |
| 化学成分の規定 | P・Sのみ | C・Si・Mn・P・Sを規定 |
| 溶接性 | 保証されない(板厚による) | 溶接前提で管理 |
| 靭性(衝撃値) | 規定なし | グレードで規定(B・C) |
| 降伏比の規定 | なし | (SN材ほどではないが管理) |
| 代表鋼種 | SS400 | SM400・SM490 |
一番本質的な違いは、化学成分の管理範囲です。SS材(代表はSS400)は化学成分としてリン(P)と硫黄(S)の上限しか規定されておらず、炭素量が保証されていません。そのため厚板を溶接すると、炭素量によっては溶接部が割れるリスクがあります。一方SM材は、炭素を含む主要成分が規定されているので、溶接しても割れにくい。だから「溶接する構造物にはSM材、溶接が主体でない部材や二次部材にはSS材」という使い分けが基本になります。
SS400について詳しく知りたい方は、こちらが参考になります。

正直なところ、SS400とSM材の使い分けは「溶接するかどうか」で考えると外しません。重要な溶接接合部にSS400をそのまま使うのはリスクがあり、溶接構造ならSM材(や後述のSN材)を選ぶのがセオリー。図面の鋼種指定にはこういう理由があるんだ、と分かると材料の見方が変わります。
SM材とSN材の違い、建築鉄骨での使い分け
ここが、鋼材商社のカタログ記事ではあまり踏み込まれない、建築の施工管理として一番知っておきたい話です。結論から言うと、現代の建築鉄骨ではSM材よりSN材が主流で、SM材は橋梁や重量構造物が主戦場になっています。
SN材は「Steel New structure(建築構造用圧延鋼材)」で、JIS G3136として1994年に制定された、建築の鉄骨構造のために作られた鋼材です。建築物が地震で大きく変形しても粘り強く耐えられるよう、SM材をベースに靭性や降伏比といった建築向けの性能を上乗せして作られ、阪神・淡路大震災以降、建築鉄骨の標準として広く使われるようになりました。
SM材とSN材の主な違いは次の通りです。
- 降伏比の上限規定:SN材(B種・C種)は降伏比80%以下を規定。地震で塑性変形しても粘り強く耐える
- 降伏点の範囲規定:SN材は降伏点に上限も設けて、設計の前提から外れないようにしている
- 板厚方向の特性:SN材C種は板厚方向の絞り(ラメラテア対策)を規定
- 用途の明確化:SN材A種は溶接しない部材、B種は一般、C種は溶接+板厚方向性能が必要な部材
降伏比の考え方そのものは、こちらが参考になります。

つまり、建築の主要な鉄骨(柱・梁の溶接接合部など)には、耐震性を考慮したSN材が使われるのが今の標準です。SM材は溶接性は優れているものの、降伏比や降伏点の上限といった「地震で粘る」ための規定がSN材ほど整っていないため、建築構造のメインからはSN材に置き換わってきました。SM材が活躍するのは、橋梁・船舶・鉄塔・クレーンといった、建築基準法とは別の世界の溶接構造物です。
鉄骨の材料全体の使い分けは、こちらが参考になります。

僕の考えでは、「SS400→SM材→SN材」という流れは、溶接性と耐震性を段階的に高めてきた歴史だと捉えると腑に落ちます。SS材は一般用、SM材は溶接用、SN材は建築の耐震用。建築の鉄骨図でSN材が指定されている理由は、ここにあります。
施工管理が押さえるSM材の確認ポイント
材料を理解したら、施工管理として現場で何を確認するかが本番です。SM材(やSN材)を扱う現場では、ミルシートの確認と溶接施工の管理が二本柱になります。
ミルシート(鋼材検査証明書)は、その鋼材が規格通りの化学成分・機械的性質を持っていることを証明する書類です。現場に搬入された鉄骨の鋼種・板厚・ロットが、図面の指定(例:SM490B)と一致しているか、ミルシートと刻印を照合します。鋼種が違う、グレードが違う、といった取り違えは構造の安全に直結するので、受け入れ時の確認は欠かせません。
材料記号の読み方を整理しておきたい方は、こちらが参考になります。

溶接については、SM材は溶接性が良いとはいえ、板厚が厚い場合や低温時には予熱が必要になることがあります。溶接の入熱・パス間温度の管理、開先の精度、溶接後の検査(外観・超音波探傷など)は、SM材を使う溶接構造物の品質を左右します。せっかく溶接性の高い鋼材を使っても、溶接施工が雑だと意味がないので、施工要領書に沿った管理が大事です。
溶接そのものの基礎は、こちらが参考になります。

現場目線で言えば、SM材を扱ううえでの施工管理の役割は「正しい鋼材が、正しく溶接されているか」を担保することです。図面の鋼種指定(SM490なのかSN490なのか)には設計上の理由があるので、勝手な置き換えは厳禁。ミルシート照合と溶接管理を押さえておけば、SM材を使う現場でも落ち着いて対応できます。
SM材に関する情報まとめ
- 定義:溶接性に優れた溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106)。名前はSteel+Marine由来
- 種類:SM400・SM490・SM520・SM570。数字は引張強さ(級)を表す
- グレード:末尾のA・B・Cは靭性(シャルピー吸収エネルギー)の違い。C>B>A
- 規格:化学成分(C・Si・Mn・P・S)と機械的性質を両面で規定
- SS材との違い:SS400はP・Sのみ規定で溶接性の保証が弱い、SM材は溶接前提で成分管理
- SN材との違い:SN材は降伏比80%以下など耐震規定を追加した建築構造用鋼材
- 建築鉄骨の主流は今やSN材。SM材は橋梁・船舶・鉄塔など溶接構造物が主戦場
- 施工管理の確認:ミルシートと刻印の照合(鋼種・板厚・グレードの一致)
- 溶接管理:板厚や低温では予熱、入熱・パス間温度、溶接後検査が品質を左右
- 鋼種指定には設計上の理由があり、勝手な置き換えはしない
以上がSM材に関する情報のまとめです。
SM材は、溶接構造物のために成分を整えた「溶接構造用圧延鋼材」です。種類(SM400・SM490)とグレード(A・B・C)、SS材との違いという基本を押さえた上で、建築の施工管理としては「建築鉄骨ではSN材が主流」という棲み分けと、ミルシート照合・溶接管理という現場の役割まで理解しておくと、図面の鋼種指定の意味が読めるようになります。SS400→SM材→SN材という鋼材の進化の流れが頭に入ると、材料の見方が一段深くなるはずです。
SM材に関するよくある質問
Q1:SM材とSS材、どちらを使えばいいですか?
「溶接するかどうか」で選ぶのが基本です。SS400はリンと硫黄しか化学成分が規定されておらず炭素量が保証されないため、厚板の溶接では割れるリスクがあります。SM材は炭素を含む主要成分が管理されているので、溶接構造物に安心して使えます。溶接が主体の重要な接合部にはSM材(建築ならSN材)、溶接の少ない二次部材にはSS400、という使い分けが定番です。
Q2:SM400とSM490の違いは何ですか?
数字が表す強度が違います。SM400は400N/mm²級、SM490は490N/mm²級の引張強さで、SM490のほうが高強度です。SM490は強度が高い分、同じ力を受けるのに薄い断面で済むので、橋梁や重量構造物など強度が必要な部材に使われます。どちらも溶接構造用という性格は共通で、強度帯の違いで使い分けます。
Q3:SM400のA・B・Cは何が違うんですか?
靭性(粘り強さ)が違います。末尾のアルファベットはシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーの保証レベルで、Aは規定なし、Bは27J以上、Cは47J以上を保証します。Cが最も靭性が高く、寒冷地や衝撃・繰り返し荷重がかかる重要部材ほど、靭性の高いグレードが選ばれます。数字が強度、アルファベットが靭性、と覚えると整理できます。
Q4:建築の鉄骨にSM材は使われますか?
使われることもありますが、現在の建築鉄骨の主流はSN材です。SN材は1994年に制定され、地震で塑性変形しても粘り強く耐えるよう、降伏比80%以下などの耐震規定を加えた建築構造用鋼材で、阪神・淡路大震災以降に建築鉄骨の標準となりました。建築の柱・梁の主要な溶接接合部にはSN材が標準で、SM材は橋梁・船舶・鉄塔・クレーンといった建築以外の溶接構造物が主戦場になっています。
Q5:現場でSM材を受け入れるとき何を確認しますか?
ミルシート(鋼材検査証明書)と鋼材の刻印を照合し、図面で指定された鋼種・板厚・グレード(例:SM490B)と一致しているかを確認します。鋼種やグレードの取り違えは構造の安全に直結するため、受け入れ時の照合は必須です。溶接する場合は、板厚や気温に応じた予熱、入熱・パス間温度の管理、溶接後の外観・超音波探傷検査まで、施工要領書に沿って管理します。
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