- 鉄骨と鉄筋ってどう違うの?
- 材料の鉄としては同じもの?
- どっちが強いの?
- 工事の流れはどう変わる?
- S造とRC造の関係は?
- 名前が紛らわしいけど現場ではどう使い分ける?
上記の様な悩みを解決します。
「鉄骨」と「鉄筋」は名前が1文字違いで、しかも両方とも建物を支える鉄の材料。なので新人さんが最初に混乱するポイントの代表格ですね。実際は使い方も施工の流れもまったく違っていて、ここを混同していると現場で「鉄筋の入荷予定」を「鉄骨の入荷予定」と勘違いするような事故にも繋がります。今回はこの2つの違いを、材料の側面と工事の側面から1度に整理してみます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
鉄骨と鉄筋の違いとは?
鉄骨と鉄筋の違いは、結論「鉄骨は建物の骨組みそのもの、鉄筋はコンクリートの中で引張に耐えるための補強材」という役割の違いです。
| 項目 | 鉄骨 | 鉄筋 |
|---|---|---|
| 役割 | 建物の主要構造(柱・梁・ブレースなど) | コンクリート内部の引張補強材 |
| 単独使用 | できる(鋼材だけで建物を成立させる) | できない(コンクリートとセットで使う) |
| 主な構造 | S造・SRC造 | RC造・SRC造 |
| 加工場所 | 鉄骨ファブ(工場) | 鉄筋加工所+現場 |
| 接合方法 | 高力ボルト・溶接 | 重ね継手・機械式継手・ガス圧接 |
→ ものすごく雑に言えば、鉄骨は「鉄でできた骨組み」、鉄筋は「コンクリートの中に入ってる細長い鉄の棒」。役割の階層が違います。
材料としては「鉄」だが規格が違う
どちらも炭素鋼が原料という意味では同じ鉄系の材料ですが、JIS規格・形状・加工性で完全に別物。
- 鉄骨:JIS G 3101(SS400)、JIS G 3136(SN材)など。H形鋼・角形鋼管・C形鋼などの「形鋼」
- 鉄筋:JIS G 3112(SD295A、SD345、SD390など)。「異形棒鋼」または「丸鋼」
鉄骨は「形がある(板・形鋼)」、鉄筋は「棒1本」の構造材、という見た目の違いも分かりやすいポイントです。
鉄筋・鉄骨を主役にした構造体の話はこちらも参考にしてください。

鉄骨と鉄筋の役割
それぞれが建物のどこで何をしているかをもう少し詳しく見ていきます。
鉄骨の役割:建物そのものの骨
鉄骨は、建物の主要構造部材として「柱」「梁」「ブレース」「床」「屋根組」を構成します。
- 柱:H形鋼または角形鋼管。階高を支える縦の主役
- 梁:H形鋼が基本。スパンを横に飛ばす
- ブレース:丸鋼・山形鋼。地震・風の水平力に抵抗
- 床:デッキプレートにコンクリートを打って合成スラブ化
- 屋根組:トラス・C形鋼で軽量に組む
→ 鉄骨は「鉄だけで骨組みを成立させる」のが特徴。極端な話、鉄骨を組んで仕上げを付ければ、コンクリートが無くても建物として成立します(軽量鉄骨倉庫など)。
S造(鉄骨造)そのものについてはこちらの記事も参考にしてください。

鉄筋の役割:コンクリートの引張側を負担
コンクリートは圧縮には強いものの、引張には弱い(圧縮強度の1/10程度)。この弱点をカバーするために、引張力がかかる位置に鉄筋を入れます。
- 主筋:梁・柱の長手方向に通る、引張力を負担する主役
- せん断補強筋(あばら筋・スターラップ):せん断ひび割れを抑える横方向の鉄筋
- 帯筋(フープ筋):柱の主筋を取り囲む横筋。座屈防止と拘束効果
- 配力筋:スラブで荷重を分散させる横方向の鉄筋
→ 鉄筋は「コンクリートと一緒に働く」のが大前提。だから鉄筋を加工しても、コンクリートを打って初めて構造として完成します。
主筋の話はこちらも参考になります。

帯筋・あばら筋の役割はこちらの記事で詳しく書いています。

鉄骨と鉄筋が使われる構造(S造・RC造・SRC造)
建築の主要構造種別と、鉄骨・鉄筋の登場場所を整理します。
S造(鉄骨造):鉄骨が主役、鉄筋はほぼ脇役
- 主要構造:鉄骨(柱・梁)
- 鉄筋:基礎やスラブの中だけ(建物本体には鉄筋を使わない部分が多い)
- 特徴:軽量・高層化に向く、工期が短い
- 用途:オフィスビル、倉庫、工場、店舗
→ 純粋なS造の柱・梁は鉄骨だけ。鉄筋が登場するのは基礎・床スラブ・耐火被覆まわり。
RC造(鉄筋コンクリート造):鉄筋+コンクリートが主役
- 主要構造:鉄筋コンクリート(柱・梁・壁・スラブ)
- 鉄骨:登場せず(柱・梁にも使わない)
- 特徴:耐火性・遮音性に優れる、自重が大きい
- 用途:マンション、学校、病院、低中層のビル
→ RC造に鉄骨は基本登場しません。「鉄筋+コンクリート+型枠」の3点セットで構造体を作ります。
RC造の概要はこちらの記事も参考にしてください。

SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造):両方の合わせ技
- 主要構造:鉄骨を芯にして、その周りに鉄筋を配して、コンクリートで包む
- 鉄骨と鉄筋が両方主役
- 特徴:高層に向く、剛性・粘り強さ両立
- 用途:超高層マンション、超高層オフィス、大スパン構造
→ SRC造の柱・梁を切ると、中央にH形鋼、周囲に鉄筋、その外側にコンクリートという「3層構造」になっています。
SRC造の詳細はこちらの記事を参考にしてください。

選び方の基本
| 規模・要求 | 推奨構造 |
|---|---|
| 低層住宅・低層集合住宅 | RC造 or 木造 |
| 中層オフィス・倉庫 | S造 |
| 高層マンション・オフィス | SRC造 |
| 超高層ビル | S造 or SRC造 |
→ 建物の高さ・スパン・要求性能で最適な構造が変わる、というのが構造種別を選ぶ際の基本的な考え方です。
鉄骨工事と鉄筋工事の流れの違い
それぞれの工事はまったく別の業種・職方が担当します。流れを並べてみると、違いが立体的に見えてきます。
鉄骨工事の流れ
- 設計(構造設計者)→ 鉄骨製作図(製作要領書・工作図)
- 工場製作(ファブで切断・孔あけ・組立・溶接)
- 工場検査(製品検査・ミルシート確認)
- 現場搬入(トレーラー輸送)
- 現場建方(クレーンで建てて高力ボルトで仮締め)
- 建入れ直し・本締め
- 本溶接・超音波探傷検査(UT)
- 耐火被覆・仕上げ
→ 工場で大半を作り込んで現場で組み立てる、というのが鉄骨工事の特徴。建方は短期決戦で、1日で1フロア分を建てることも珍しくありません。
建方そのものについてはこちらの記事も参考にしてください。

鉄筋工事の流れ
- 設計(構造設計者)→ 配筋図・鉄筋リスト
- 鉄筋加工所での切断・曲げ加工(または現場加工)
- 現場搬入(10t車・4t車)
- 組立(結束線で結束、スペーサーで被り確保)
- 配筋検査(監理者・設計者・第三者)
- 型枠建て込み
- コンクリート打設
- 養生・脱型
→ 加工は工場(あるいは加工場)で行いますが、組立は現場で人海戦術。鉄筋工が結束線でひたすら結んでいくので、人手と時間がかかります。
鉄筋の結束についてはこちらの記事を参考にしてください。

配筋検査の進め方はこちらにまとめています。

工程比較
| 項目 | 鉄骨工事 | 鉄筋工事 |
|---|---|---|
| 工場製作の比率 | 高い(7〜8割が工場製作) | 低い(加工は工場、組立は現場) |
| 現場での主作業 | 建方・本締め・溶接 | 結束・スペーサー設置・継手処理 |
| 工期 | 短い(建方は短期決戦) | 長い(フロアごとに繰り返し) |
| 主な検査 | 超音波探傷・トルク確認 | 配筋検査(被り・本数・継手長) |
| 後工程 | 耐火被覆・床コン打設 | 型枠建て込み→コン打設 |
→ 鉄骨は「ある日突然建つ」、鉄筋は「毎日コツコツ組み続ける」というイメージの違いがあります。
鉄骨と鉄筋の接合方法の違い
材料同士をどう繋ぐかも、鉄骨と鉄筋で全く違います。
鉄骨の接合:高力ボルト・溶接が主役
- 高力ボルト摩擦接合:母材同士を高力ボルトで強く締めて、摩擦力で力を伝える
- 突合せ溶接:柱と柱、梁端と柱の接合部などで使用
- 隅肉溶接:直角に交わる部材の付け根を溶接で繋ぐ
- 工場溶接:ファブで完全溶接を仕上げてから現場へ
- 現場溶接:建方後、柱と梁、梁の継手で部分的に実施
→ ミリ単位の精度と検査が要求される世界。超音波探傷(UT)で内部の溶接欠陥まで確認します。
スプライスプレートを使った継手はこちらの記事も参考にしてください。

溶接の基本はこちらの記事を参考にしてください。

鉄筋の接合:継手で長手方向に繋ぐ
- 重ね継手:2本の鉄筋を平行に重ねて結束線で結ぶ。最も一般的
- ガス圧接継手:火炎で加熱して圧着。継手部分が膨らむ
- 機械式継手:スリーブカップラーで機械的に接続
- 溶接継手:突合せ溶接で繋ぐ(高層・特殊用途)
→ 鉄筋の長さ(一般的に定尺は5.5mや12m)を超える配筋で、必ずどこかに継手が登場します。継手位置・継手長さ・継手の種類は構造図で指定されます。
重ね継手の話はこちらの記事を参考にしてください。

継手全般の話はこちらの記事も参考にしてください。
鉄骨と鉄筋を施工管理する上での注意点
現場での管理の違いも整理しておきます。
鉄骨の施工管理ポイント
- 工場での製品検査:ミルシート・寸法・溶接の検収
- 建方時の建入れ精度:通り・倒れを厳密にチェック
- 高力ボルト:マーキングと締付け順序、本締め後のずれ確認
- 現場溶接:天候管理、予熱、超音波探傷
- 耐火被覆:吹付けの厚み・付着強度
僕も以前、鉄骨ファブで製品検査に立ち会ったとき、納品直前のH鋼に「ピンホール(溶接の微細な穴)」が探傷検査でいくつか出てきて、その場で補修溶接からやり直しになって翌週納品が1日遅れた、という経験があります。鉄骨は工場で作り込む分、現場に来てから直しが効きにくいので、製品検査の段階でいかに見つけきるかが鉄骨工事の山場だと感じました。
鉄筋の施工管理ポイント
- 加工図・鉄筋リストとの照合:径・本数・長さ
- 結束密度:四つ目以上の結束、結束線のヒゲ向き
- スペーサー:被り厚さの確保(コンクリート品質を左右)
- 継手:継手位置・継手長さ・ガス圧接の外観・突合せ角度
- 配筋検査:監理者・第三者検査で全数または抜き取り
鉄筋のサイコロやスペーサーについてはこちらの記事も参考にしてください。


コミュニケーションの違い
- 鉄骨:ファブ担当者・工場検査員・建方鳶・本締め班・溶接工と、関係者が多岐
- 鉄筋:鉄筋工の親方と直接やり取りすることが多く、加工所と現場の2拠点で完結
→ 鉄骨は「製作と建方の二段階の打合せ」、鉄筋は「現場主導のチームプレイ」というのが現場の体感です。
鉄骨と鉄筋に関する情報まとめ
- 違いの結論:鉄骨は「建物の骨組みそのもの」、鉄筋は「コンクリート内部の引張補強材」
- 単独使用:鉄骨はそれだけで構造になる/鉄筋はコンクリートとセットで構造になる
- 主な構造種別:S造は鉄骨主役、RC造は鉄筋主役、SRC造は両者の合わせ技
- 工事の流れ:鉄骨は工場製作7〜8割、鉄筋は組立が現場
- 接合方法:鉄骨は高力ボルト・溶接/鉄筋は重ね継手・ガス圧接・機械式継手
- 検査:鉄骨は超音波探傷とトルク確認/鉄筋は配筋検査(被り・本数・継手長さ)
以上が鉄骨と鉄筋の違いに関する情報のまとめです。
字面が似ているせいで混同しがちですが、役割と工事の流れがここまで違うと知ると、現場での会話も整理しやすくなります。施工管理としては、まず「自分が今喋っているのは構造の骨組みか、コンクリート内の補強材か」を意識的に分けることが、鉄骨工程と鉄筋工程の混乱を防ぐ最短ルートです。一通り鉄骨と鉄筋の違いに関する基礎知識は理解できたと思います。
合わせて、構造種別や鉄筋・鉄骨まわりの関連記事もチェックしておくと現場感覚が一段上がります。







