高力ボルト摩擦接合とは?仕組み、すべり係数、施工の流れなど

  • 高力ボルト摩擦接合って結局どういう仕組み?
  • ボルトのせん断で持ってるんじゃないの?
  • すべり係数0.45ってどこから来た数字?
  • 摩擦面をわざと錆びさせるって本当?
  • ボルト本数ってどうやって決まってるの?
  • 一次締め→マーキング→本締めの流れと理由を知りたい
  • 共回り・軸回りってどうやって見つけるの?
  • 雨に濡れたボルトや使い回しはアリ?
  • 監理者の検査で何を見られる?

上記の様な悩みを解決します。

高力ボルト摩擦接合は、鉄骨造の柱・梁接合のほぼ標準と言っていい接合方法です。ところが「摩擦で力を伝える」という仕組みが直感に反するせいで、なんとなく締めて、なんとなく検査している現場が少なくありません。今回は仕組みとすべり係数の理屈を押さえた上で、施工管理目線で「すべり耐力と本数の決め方」「施工の流れ」「検査と品質管理の落とし穴」「試験で問われるポイント」まで一気に整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

高力ボルト摩擦接合とは?

高力ボルト摩擦接合とは、結論「高力ボルトで部材同士を強烈に締め付け、接合面に生じる摩擦力で力を伝える接合方法」のことです。

ここで多くの人が引っかかるのが「ボルトのせん断強度で持ってるんじゃないの?」という疑問です。実は逆で、摩擦接合ではボルト軸にせん断力を負担させないのが設計の前提になっています。ボルトの役割は、部材を貫いて「万力のように板同士を押さえ付けること」だけ。力の伝達そのものは、押さえ付けられた板と板の接触面に生じる摩擦が受け持ちます。

イメージとしては、手のひらで机に置いた本を真上から強く押さえる状態です。押さえる力が強いほど、本を横にずらそうとしても動きません。高力ボルトに導入する張力(軸力)が「押さえる力」、板がずれない抵抗が「摩擦力」に当たります。F10TのM20ボルト1本で約182kNという標準ボルト張力を導入するので、小型乗用車十数台分の重さに相当する力で板を挟んでいる計算になります。これだけ強く挟めば、接合面は外力が多少かかった程度ではビクともしません。

摩擦接合のメリットは、力が接合面全体に分散して伝わることです。ボルト孔のまわりに応力が集中しないため、繰り返し荷重に強く(疲労に有利)、すべりが生じるまで部材間のずれがゼロなので接合部の剛性も高くなります。ナットの緩みも起きにくく、橋梁や鉄塔のような振動環境でも長期間安定します。鉄骨造の主要構造部の接合に高力ボルト摩擦接合が標準採用されているのは、この「ずれない・緩まない・疲れない」という3拍子が揃っているからです。

高力ボルトそのものの種類や規格はこちらで詳しく解説しています。

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僕の感覚だと、新人のうちは「ボルトで留めている」ではなく「ボルトで挟んで、摩擦で持たせている」と言い換えて覚えるのが一番の近道です。この一言が腹落ちしていると、後述する摩擦面の処理や再使用禁止のルールが全部「当然そうなるよね」とつながって理解できます。

高力ボルト摩擦接合のすべり係数とは?

すべり係数とは、結論「接合面のすべりにくさを表す指標」のことです。

すべり荷重(接合面が明確にすべり出すときの荷重)を、導入した初期ボルト張力で割った値として定義されます。物理で習う静止摩擦係数と意味合いは同じですが、ボルト張力を基準に算定する「見かけ上の摩擦係数」なので、区別してすべり係数と呼びます。

設計上の基準値は次の通りです。

摩擦面の状態 要求すべり係数
黒皮除去+自然発錆(赤錆) 0.45以上
ブラスト処理(表面粗度50μmRz以上) 0.45以上
溶融亜鉛めっき面(リン酸塩処理等) 0.40以上

0.45という数字は、建築基準法施行令第92条の2に基づく高力ボルト摩擦接合の許容せん断力が「すべり係数0.45」を前提に定められていることから来ています。つまり設計者は「摩擦面で0.45が確保されている」前提で接合部のボルト本数を計算しているわけで、現場がこの前提を崩すと設計が成立しません。施工側がすべり係数を守る責任を負っている、と言い換えてもいいです。

ここで冒頭の疑問「錆はダメなのに、摩擦面はわざと錆びさせるの?」に答えておきます。答えはイエスで、摩擦面はミルスケール(黒皮)をグラインダー等で除去した後、屋外に自然放置して一様に赤錆を発生させるのが伝統的な処理方法です。赤錆面はザラザラで引っかかりが強く、基準値の0.45を十分に上回る値が得られるとされています。錆が「悪」なのは断面欠損や美観の話であって、摩擦面に限っては錆のザラつきが味方になる、という整理です。ショットブラストで表面を粗らす方法も同等に扱われます。ただし、手で触ってボロボロ落ちる浮き錆は粉が滑り材のように働くので逆効果で、密着した赤錆に整えるのがポイントです。

逆に絶対NGなのが、摩擦面への塗装や油・ごみの付着です。塗膜は接合面をツルツルにする方向に働くので、すべり係数が一気に落ちます。錆止め塗装の指示範囲に「摩擦面を除く」と書かれているのはこのためで、現場で鉄骨に手塗りでタッチアップする際に摩擦面まで塗ってしまうのは典型的な事故パターンです。また溶融亜鉛めっき鉄骨は、めっき面が滑らかですべり係数が確保できないため、リン酸塩処理などを行った上で0.40に低減した設計とします。めっきの傷を後からジンク塗料で補修しても規定のすべり係数は出ないので、めっき面の摩擦接合部は補修方法まで設計図書の指示に従う必要があります。

現場目線で言えば、すべり係数は「試験で数字を覚えるもの」ではなく「建方前に摩擦面の状態をチェックする根拠」です。摩擦面が雨ざらしで泥をかぶっていないか、塗料が回り込んでいないか、ここを見るのが施工管理の仕事になります。

高力ボルト摩擦接合のすべり耐力と本数の決め方

図面のボルト本数の根拠を理解しておくと、現場での判断力が一段上がります。すべり耐力(その接合部が摩擦ですべらずに耐えられる力)は、次の4つの掛け算で決まります。

要素 内容
すべり係数 μ 摩擦面の効きやすさ(標準0.45)
設計ボルト張力 ボルト1本に導入する軸力(F10T-M22で約205kN)
摩擦面の数 m 1面摩擦か2面摩擦か
ボルト本数 n 接合部に使うボルトの数

ざっくり書くと「すべり耐力 = すべり係数 × ボルト張力 × 摩擦面数 × 本数」を安全率で割って許容値にする、という構造です。たとえばF10T-M22を1面摩擦・すべり係数0.45で使うと、ボルト1本あたりのすべり耐力はおよそ0.45×205=約92kN。これに本数と摩擦面数を掛けて、接合部に必要な耐力を満たすように本数が決まります。

ここで現場的に効いてくるのが「摩擦面の数」です。鉄骨の継手でスプライスプレートを両面に当てると2面摩擦になり、同じ本数でも耐力が2倍稼げます。図面のボルト本数が「思ったより少ないな」と感じる時は、たいてい2面摩擦で計算されています。

スプライスプレートまわりはこちらが参考になります。

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もうひとつ、ボルト孔をあけると母材の断面が欠ける(断面欠損)ので、引張材ではその影響も設計で見ています。ボルト孔と有効断面の関係はこちらで解説しています。

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僕の考えでは、施工管理がこの計算を自分で解く必要はないですが、「本数・ボルト径・摩擦面数・摩擦面の状態」の4つが耐力を決めている、という骨格だけは持っておくべきです。これが分かっていると、現場で「ボルトを1本省略していいか」「摩擦面に塗料が付いた」といった相談が来た時に、なぜ駄目なのかを設計の言葉で説明できるようになります。

高力ボルト摩擦接合と支圧接合・引張接合の違い

高力ボルトの接合形式は摩擦接合だけではありません。力の伝え方で3種類に分かれます。

接合形式 力の伝達 主な用途
摩擦接合 接合面の摩擦力 鉄骨造の主要構造部(標準)
支圧接合 ボルト軸のせん断+孔壁の支圧 建築では原則使われない
引張接合 ボルト軸方向の引張力 柱継手・スプリットティー接合等

支圧接合は、普通ボルトと同じく「ボルト軸が孔壁に引っかかって持つ」接合です。締付け力が小さいとまず摩擦で抵抗し、すべった後にボルト軸がボルト孔に当たって支圧で抵抗する、という2段階の挙動になります。部材のずれ(がた)が出ること、ボルト軸にせん断力が直接作用することから、建築の主要構造部では原則使用されません。胴縁や母屋など二次部材の中ボルト接合がこの仕組みです。

ちなみに、摩擦接合もすべり耐力を超える大きな力を受ければ接合面がすべり、最終的には支圧接合と同じ持ち方に移行します。ただし設計ではあくまで「すべらせない」のが前提で、支圧側の耐力は当てにしません。試験でも「摩擦接合はすべり耐力以下で使う」という出題のされ方をします。

引張接合は、ボルトの軸方向に力を伝える形式で、ボルトに導入した張力と部材を引き離そうとする外力が相殺される仕組みを使います。柱の継手やトップ・アンド・ボトムアングル形式などで登場します。

接合部全体の整理はこちらが参考になります。

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僕の整理では「摩擦=面で持つ/支圧=軸の引っかかりで持つ/引張=軸の張力で持つ」の3行で覚えるのが結局一番速いです。面接や試験で「違いを説明して」と言われたときも、この3行から肉付けすれば破綻しません。

高力ボルト摩擦接合に使うボルトの種類

摩擦接合に使う高力ボルトは、大きく2種類に分かれます。

項目 高力六角ボルト トルシア形高力ボルト
等級の例 F10T(JIS B 1186) S10T(大臣認定品)
見た目 普通の六角ボルトと同形 先端にピンテール付き
締付け工具 トルクレンチ 専用シャーレンチ
軸力管理 トルク値 or ナット回転量 ピンテール破断で自動管理
座金 頭側・ナット側に各1枚 ナット側に1枚

F10Tの「F」はFriction(摩擦)、10は引張強さ1000N/mm²級を表します。S10Tはトルシア形で、引張強さはF10Tと同等です。トルシア形はJIS品ではなく、日本鋼構造協会規格に基づく国土交通大臣認定品という位置付けになります。

現場の主流は圧倒的にトルシア形(S10T)です。理由はシンプルで、シャーレンチで締めるとピンテール(先端の軸)が所定トルクで自動的に破断するため、職人の腕や感覚に頼らず一定の軸力が入るからです。締付け完了の確認も「ピンテールが落ちているか」を見るだけなので、検査性も高いです。六角ボルト(F10T)は、シャーレンチが入らない狭い箇所や、溶融亜鉛めっき高力ボルト(F8T)を使う箇所などで登場します。

なお、強度区分10.9の高強度ボルト(六角穴付ボルト等)は引張強さこそ近いものの、摩擦接合用としての軸力・トルク係数の管理がされていない別物です。図面に高力ボルトと指定された箇所への代用は不可なので、資材手配時は混同しないよう注意してください。

ハイテンションボルトの規格・種類の詳細はこちらにまとめています。

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実務だと、ボルトの発注で気を付けたいのは「セット概念」です。高力ボルトはボルト・ナット・座金がセットでトルク係数を管理された製品なので、別ロットのナットを組み合わせる、座金だけ流用するといった行為は軸力管理が崩れます。箱単位・ロット単位で使い切る運用が基本です。

高力ボルト摩擦接合の施工の流れ

施工の流れは、結論「搬入・保管 → 摩擦面確認 → 仮ボルト → 一次締め → マーキング → 本締め」の6段階です。

Step 1:搬入・保管

高力ボルトは未開封の包装のまま、雨や結露を避けて保管します。トルク係数はねじ部の状態に敏感で、錆・ごみ・水濡れで簡単に変わってしまうからです。包装を開けるのは使用直前、その日使わなかった分は元の箱に戻して再包装が原則です。雨に濡れたボルトをウエスで拭いて使う、のはNG側の運用と考えてください。

Step 2:摩擦面・肌すきの確認

建方前に摩擦面の状態(赤錆の発生具合、塗料・油の付着がないか)を確認します。併せて、部材同士の合わせ面に隙間(肌すき)がないかをチェックします。肌すきが1mm以下なら処理不要、1mmを超える場合はフィラープレート(薄板)を挟んで面を密着させます。隙間を残したまま締めると、ボルト張力が板の引き寄せに食われて摩擦面に必要な圧縮力が入りません。

Step 3:仮ボルトで建入れ調整

建方時はまず仮ボルトで部材を留め、建入れ直し(柱の倒れ調整)を行います。仮ボルトは本締め用とは別のボルトを使い、本数は1群のボルト数の1/3以上かつ2本以上が目安です。建入れ調整で力がかかった仮ボルトを、そのまま本ボルトに流用してはいけません。

Step 4:一次締め

ボルトを呼び径ごとの規定トルクで締め、板同士を密着させます。代表値はM16で約100N・m、M20・M22で約150N・m、M24で約200N・mです。一次締めの目的は軸力導入ではなく「部材の密着」なので、本締めトルクの1/4程度の控えめな値になっています。

Step 5:マーキング

一次締め完了後、ボルト軸・ナット・座金・母材を貫く一直線のマーキングを白マーカーで入れます。これが後工程の品質管理の生命線です。本締めでナットが正しく回転すれば、ナットの線だけがずれて他の線は一直線のまま残る。この「線のずれ方」で締付けの良否を全数判定できるわけです。マーキング無しで本締めされたボルトは適否の判定ができないため、原則交換になります。

Step 6:本締め

トルシア形はシャーレンチでピンテールが破断するまで締めれば完了です。高力六角ボルトの場合は、トルクコントロール法(目標トルクT=k×d×N で管理)またはナット回転法(一次締め位置からナットを120度回転)のどちらかで管理します。重要なのは、一次締めから本締めまでをその日のうちに完了させること。一次締めだけで放置すると、ねじ部の錆や汚れでトルク係数が変わり、翌日に本締めしても設計どおりの軸力が入らなくなるからです。

締付け順序は、ボルト群の中央から端部に向かって締めます。端から締めると板の反りが中央に逃げ場を失い、密着不良の原因になります。

トルクの単位や計算の基礎はこちらが参考になります。

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個人的には、この流れは「軸力を設計どおりに入れるための儀式」と捉えると覚えやすいと思っています。一次締めもマーキングも当日本締めも、全部「正しい軸力が入ったことを保証する」ための段取りです。目的から逆算すると、手順を1つ飛ばすことの怖さが見えてきます。

高力ボルト摩擦接合の検査と品質管理のポイント

本締め後の検査は、結論「全数を目視で、マーキングのずれ方を見る」のが基本です。

検査で確認する項目を整理します。

  • ピンテールの破断(トルシア形):全数で破断していること
  • マーキングのずれ:ナットの線だけが回転し、ボルト軸・座金・母材の線が一直線のまま
  • ナット回転量:ナット回転法の場合120度±30度の範囲内
  • 余長:ナット面から突き出たねじ山が1〜6山程度
  • 共回り・軸回りの有無:後述
  • 締め忘れ:マーキングが一直線のまま残っているボルトがないか

共回りとは、ナットを回したときに座金やボルトまで一緒に回ってしまう現象です。一見ピンテールが破断して締まったように見えても、ナットと板の間で滑っているだけで、所定の軸力は入っていません。マーキングを見ると、ナットと座金(またはボルト軸)の線が同じ角度だけ一緒にずれているので発見できます。軸回り(ボルト軸が供回りする)も同様です。共回り・軸回りが確認されたボルトは、緩めて締め直すのではなく、新しいセットに交換が原則です。

ここで再使用禁止の理屈にも触れておきます。高力ボルトは本締めで降伏点近くまで締め込むため、一度使ったボルトは軸が微妙に伸び、ねじ部の状態も変わってトルク係数が当てになりません。「外して別の孔に使う」「共回りしたボルトを締め直す」がダメなのは、2回目の締付けで設計どおりの軸力が入る保証がないからです。落として土を噛んだボルトも同じ理由で使いません。

監理者の受入検査・締付け検査では、ボルトの検査成績書(トルク係数値の確認)、施工要領書どおりの締付け記録、マーキングの状態、ピンテールの回収状況あたりを見られます。ピンテールは「破断した=締めた」の物証なので、袋にまとめて本数管理しておくと、締め忘れ確認の裏付けとしても機能します。

継手部の納まりや種類はこちらで解説しています。

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現場目線で言えば、検査で一番怖いのは派手な不良よりも「締め忘れの見逃し」です。何百本とあるボルトの中の数本は、人間の目だけだと普通にすり抜けます。ブロックごとに検査済みの範囲をマーカーで塗り分ける、ピンテールの回収数と照合するなど、二重のチェック構造を最初から仕組みにしておくのが安全です。

高力ボルト摩擦接合の試験頻出ポイント

1級・2級建築施工管理技士や建築士の試験では、高力ボルト摩擦接合は定番の出題分野です。実務と直結する頻出論点だけ先に押さえておきましょう。

論点 押さえる数字・キーワード
すべり係数 0.45以上(溶融亜鉛めっき面は0.40)
ボルト孔径 公称軸径+2mm以下(呼び径27mm未満)
肌すき処理 1mm以下は処理不要、超えたらフィラープレート
締付け順序 ボルト群の中央から端部へ
本締め時期 一次締め・マーキング・本締めは同日中
ナット回転法 一次締め後120度±30度が合格範囲
余長 ねじ山1〜6山
再使用 不可(共回り・締め過ぎも交換)

出題パターンは「数字の正誤を問う」形がほとんどです。たとえば「肌すき2mmだったので処理せず締め付けた→誤り」「ナット回転量が160度だったので合格とした→誤り(120度±30度を超過)」のような形ですね。実務で手順の意味を理解していれば、数字がうろ覚えでも理屈から正解を引き出せる問題が多いのがこの分野の特徴です。

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自分としては、試験対策と現場業務を別物として勉強するのはもったいないと感じます。この記事の施工の流れと検査の章は、そのまま試験の出題範囲でもあるので、現場で1回サイクルを経験してから過去問を解くと、暗記量が半分くらいに感じられるはずです。

電気・設備の施工管理が鉄骨建方で押さえるべき点

ここは競合記事ではまず触れられない論点ですが、建築以外の工種から鉄骨造に関わる人にこそ知っておいてほしい部分です。

電気・設備の施工管理が摩擦接合を直接締めることはありませんが、鉄骨に後から穴をあけたり、現場溶接で金物を付けたりする場面で無関係ではいられません。接合部や摩擦面の近くで勝手に孔をあけたり溶接したりすると、断面欠損や熱影響で接合部の性能に関わるからです。

  • 接合部・摩擦面の近くで無断の孔あけ・溶接をしない(必ず鉄骨業者・元請に確認)
  • ボルト頭やナットを支持金物の取付位置にしない(ボルトに後付けの力をかけない)
  • 建方中はボルト締付け完了エリアを把握し、未締結部に配管・ラックの荷重をかけない
  • 受電日など自分の工程と建方工程を並べて管理し、先行金物が必要なら鉄骨段階で相談する

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現場目線で言えば、電気・設備が鉄骨に絡む時の鉄則は「構造体に手を入れる時は必ず構造側に確認」です。摩擦接合は接合部の性能を前提に設計されているので、その近くに後施工で穴や熱を加えるのは、構造の人からすると一番嫌がられる動きになります。逆に、建方工程と自分の先行配管・金物の工程を並べて相談しておくと、後から鉄骨に穴をあける羽目にならず、現場全体がスムーズに回ります。

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高力ボルト摩擦接合に関する情報まとめ

  • 高力ボルト摩擦接合は「ボルトで挟んで摩擦で持たせる」接合方法で、ボルト軸にせん断を負担させない
  • すべり係数は接合面のすべりにくさの指標で、基準は0.45以上(溶融亜鉛めっき面は0.40)
  • すべり耐力はすべり係数×ボルト張力×摩擦面数×本数で決まり、2面摩擦なら同じ本数で耐力2倍
  • 摩擦面は黒皮除去+自然発錆またはブラスト処理。塗装・油・泥の付着はNG
  • 支圧接合は軸の引っかかり、引張接合は軸方向の張力で持つ。建築の主要構造部は摩擦接合が標準
  • ボルトはトルシア形(S10T)が主流。F10T六角はトルクコントロール法かナット回転法で管理
  • 施工は搬入保管→摩擦面・肌すき確認→仮ボルト→一次締め→マーキング→本締めの6段階、同日完結が原則
  • 検査は全数目視。マーキングのずれ方で共回り・軸回り・締め忘れを判定し、不良は交換対応
  • 試験では0.45・孔径+2mm・肌すき1mm・120度±30度・余長1〜6山あたりの数字が頻出

以上が高力ボルト摩擦接合に関する情報のまとめです。

摩擦接合は「なぜそうするのか」が分かると、保管・一次締め・マーキング・当日本締め・再使用禁止という一連のルールが全部1本の線でつながります。丸暗記で現場に立つのと、理屈で押さえて立つのとでは、監理者対応の説得力も検査の精度も変わってきます。鉄骨建方を初めて担当する人は、まず「軸力を設計どおりに入れて、それを証明する」という目的だけ頭に置いて手順を見直してみてください。

高力ボルト摩擦接合に関するよくある質問

Q1:雨に濡れた高力ボルトは使えますか?

使わないのが原則です。高力ボルトはねじ部の状態でトルク係数が管理されており、水濡れや発錆でトルク係数が変動すると、規定トルクで締めても設計どおりの軸力が入りません。包装の開封は使用直前、未使用分は再包装して保管が基本ルールです。濡れてしまったボルトは現場判断で拭いて使わず、監理者と協議の上で原則交換としてください。

Q2:一次締めと本締めを別の日に分けてはダメですか?

ダメです。一次締め・マーキング・本締めは同日中に完了させるのが原則です。一次締めの状態で夜をまたぐと、ねじ部に錆や結露が生じてトルク係数が変わり、翌日の本締めで正しい軸力が入る保証がなくなります。その日に本締めまで終えられる範囲だけ一次締めを進める、という段取りが正解です。

Q3:一度外した高力ボルトを別の場所で再使用できますか?

できません。高力ボルトは本締めで降伏点近くまで締め込むため、一度使用するとボルト軸が伸び、ねじ部の状態も変化してトルク係数が信頼できなくなります。共回りや締め過ぎで交換する場合も、ナットだけでなくボルト・ナット・座金のセットごと新品に交換します。仮ボルトを本ボルトに流用するのも同じ理由でNGです。

Q4:溶融亜鉛めっきの鉄骨だと、なぜすべり係数が0.40になるのですか?

めっき面は表面が滑らかで、通常の赤錆面やブラスト面ほどの摩擦が確保できないためです。リン酸塩処理などでめっき表面を粗化した上で、設計上も0.40に低減したすべり係数で許容耐力を計算します。なお、めっきの傷をジンク塗料で塗って補修しても規定のすべり係数は確保できないので、摩擦接合面の補修方法は必ず設計図書・施工要領書の指示に従ってください。

Q5:肌すきが見つかったらどう処理すればいいですか?

隙間の量で対応が分かれます。1mm以下なら処理不要でそのまま締め付けて構いません。1mmを超える場合はフィラープレートを挿入して面を密着させます。肌すきを放置して締めると、ボルト張力が板を引き寄せることに消費され、摩擦面に必要な材間圧縮力が確保できません。建方精度の悪さが接合部の品質に直結する典型例なので、本締め前の確認項目に必ず入れておきましょう。

Q6:ボルト本数はどうやって決まっているんですか?

すべり耐力(すべり係数×設計ボルト張力×摩擦面数×本数)が、その接合部にかかる力を上回るように本数が決められています。摩擦面の数が効くのがポイントで、スプライスプレートを両面に当てた2面摩擦なら、同じ本数でも耐力が2倍稼げます。施工管理が自分で計算する必要はありませんが、「本数・ボルト径・摩擦面数・摩擦面の状態」の4つで耐力が決まると理解しておくと、現場で本数省略や摩擦面汚損の相談が来た時に設計の言葉で説明できます。

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