- 弾性率とヤング率って何が違うの?
- 縦弾性係数とかせん断弾性係数って同じこと?
- 単位は何を使えばいい?
- どっちが大きい数値?
- 鋼やコンクリートの目安は?
- 計算でどう使うの?
上記の様な悩みを解決します。
弾性率とヤング率は構造計算で頻繁に出てくる用語ですが、「同じ意味で使っている人」と「区別して使う人」が混在していて、初学者には紛らわしい言葉です。実は弾性率は 総称、ヤング率は その一種 という関係になっているので、頭の中で整理しておくと教科書を読むときも構造図を読むときもスッと入ってきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
弾性率とヤング率の違い:結論
弾性率とヤング率の違いとは、結論「弾性率は『弾性係数の総称』、ヤング率はそのうち『縦方向の引張・圧縮に対する弾性係数』を指す用語」です。
包含関係を絵で表すとこうなります。
弾性率(弾性係数)の体系
- 弾性率(総称)
- 縦弾性係数(ヤング率、ヤング係数、E)
- 横弾性係数(剛性率、せん断弾性係数、G)
- 体積弾性係数(バルク弾性率、K)
つまり「ヤング率」は弾性率の中の 一種類 であって、両者はイコールではないんです。ただ実務の現場では「ヤング率」と「弾性率」を区別せずに使うこともあって、文脈で判断する必要があります。例えば構造設計で「鋼のヤング率は205kN/mm²」と書かれていれば、それは縦弾性係数のことを指しています。
弾性率の3つの種類
弾性率は受ける力の方向によって3つに分類されます。
| 種類 | 別名 | 記号 | 受ける力の方向 |
|---|---|---|---|
| 縦弾性係数 | ヤング率、ヤング係数 | E | 引張・圧縮(軸方向) |
| 横弾性係数 | 剛性率、せん断弾性係数 | G | せん断(ずれ方向) |
| 体積弾性係数 | バルク弾性率 | K | 等方圧縮(全方向) |
それぞれの意味を簡単に。
縦弾性係数(ヤング率)E:棒を引っ張ったり押したりしたときの「軸方向のひずみ」と「軸方向の応力」の比。建築構造で最も頻繁に登場する。
横弾性係数(剛性率)G:棒や板にせん断力をかけたときの「せん断ひずみ」と「せん断応力」の比。柱梁の接合部やボルトのせん断検討で使う。
体積弾性係数 K:物体に均一な圧力をかけたときの「体積ひずみ」と「圧力」の比。建築では使う場面は少なく、地盤や流体の解析で出てくる程度。
建築構造ではほぼ EとG の2つしか使わないので、まずはこの2つを押さえれば実用上十分です。
ヤング率(縦弾性係数)の定義式と単位
ヤング率(縦弾性係数)の定義式は以下です。
E = σ(応力)/ ε(ひずみ)
応力 σ=荷重P ÷ 断面積A、ひずみ ε=伸び ΔL ÷ 元の長さ L。
具体例で確認すると、
- 100mm長さの棒を100Nで引っ張って 0.05mm 伸びた
- 断面積が 10mm²
- 応力 σ=100N ÷ 10mm²=10 N/mm²
- ひずみ ε=0.05mm ÷ 100mm=0.0005
- ヤング率 E=10 ÷ 0.0005 = 20,000 N/mm²
つまりヤング率は「単位ひずみあたりに必要な応力」と捉えると分かりやすいです。値が大きいほど 同じ伸びを起こすのに大きな力が必要 = 硬い材料 を表します。
単位
- N/mm²(ニュートン毎平方ミリメートル)
- MPa(メガパスカル):N/mm²と等価
- GPa(ギガパスカル):N/mm² の1,000倍
- kN/mm²:N/mm² の1,000倍(GPaと等価)
慣習的に建築構造では N/mm² または kN/mm² で書かれることが多いです。鋼のヤング率を「205,000 N/mm²」「205 kN/mm²」「205 GPa」と書いても全部同じ意味です。
ヤング率の詳細はこちらの記事に詳しくまとめています。

剛性率(せん断弾性係数)との関係
ヤング率Eと剛性率Gは独立した値ではなく、ポアソン比 ν を介して以下の式で関係づけられています。
G = E / 2(1 + ν)
鋼の場合、ν=0.3 なので、
G = 205,000 ÷ 2(1 + 0.3) = 205,000 ÷ 2.6 ≒ 79,000 N/mm²
つまり鋼の剛性率は約79kN/mm²。ヤング率の約4割の値になります。
「ヤング率しか覚えてなくても、ポアソン比から剛性率は算出できる」というのは構造計算の便利テクニック。逆に剛性率しか教科書に書いていない問題でも、ν=0.3を当てはめれば E を逆算できる訳ですね。
ちなみに「剛性率」は構造設計上もう一つ別の意味を持つ用語(建物の階間の剛性のばらつきを表す値)でもあるので、文脈に注意が必要です。
階間の剛性率の方はこちら。

代表材料のヤング率と剛性率
主な建築材料のヤング率(縦弾性係数)と剛性率(横弾性係数)の代表値を整理します。
| 材料 | ヤング率 E(N/mm²) | 剛性率 G(N/mm²) | ポアソン比 ν |
|---|---|---|---|
| 鋼(SS400・SM400・SN400全般) | 205,000 | 79,000 | 0.30 |
| コンクリート(Fc=24) | 約23,000 | 約9,500 | 0.20 |
| コンクリート(Fc=36) | 約28,000 | 約11,500 | 0.20 |
| アルミニウム合金 | 70,000 | 27,000 | 0.33 |
| ステンレス(SUS304) | 197,000 | 73,000 | 0.30 |
| 木材(針葉樹、繊維方向) | 8,000〜12,000 | 500〜1,000 | — |
| ガラス | 70,000 | 28,000 | 0.22 |
注目ポイント
- 鋼のヤング率は205kN/mm²で固定。SS400もSM400もSN400も同じ値を使う
- コンクリートのヤング率はFc(設計基準強度)で変動。強度が高いほどヤング率も大きい
- 木材は繊維方向と直交方向で大きく異なる。直交方向は1/30程度になる
- アルミは鋼の約1/3。同じ断面なら鋼の3倍たわむ
鋼は強度が変わってもヤング率が変わらないのが特徴です。SN490を使ってもSS400を使っても、「同じ断面なら同じだけたわむ」ということ。剛性(変形しにくさ)を確保したい場合は、鋼種ではなく 断面を大きくする が直接的な解になります。
ポアソン比の詳細はこちら。

構造設計でヤング率はどう使うか
ヤング率は構造計算の様々な場面で登場します。
主な使われ方
- 応力とひずみの変換:応力 σ = E × ε。フックの法則の核
- 梁のたわみ計算:δ = PL³/(48EI) など、たわみ式の分母に必ずEが入る
- 柱の座屈荷重:オイラー座屈式 Pcr = π²EI/L²
- 連続体力学・FEM解析:材料定数として入力
- 複合構造の応力分担:合成梁・RCの引張側鉄筋など、Eの比で力が分配される
特に「梁のたわみ」と「柱の座屈」では、E は分子側・分母側の両方で効くので、計算結果に直接効いてきます。
たわみ計算の例(単純梁、中央集中荷重)
たわみ δ = PL³/(48 × E × I)
スパンL=6m、断面H-400×200×8×13、P=10kNの場合
I ≒ 23,700 cm⁴ = 23,700 × 10⁴ mm⁴
E = 205,000 N/mm²
δ = (10,000 × 6,000³) / (48 × 205,000 × 23,700×10⁴)
δ ≒ 9.3 mm
これがアルミ(E=70,000)なら、同じ断面でたわみは205/70 ≒ 2.9倍の 約27mm になります。同じ断面なら鋼の3倍曲がる、というのが感覚として掴めますね。
たわみの基礎はこちら。

弾性率とヤング率の違いに関する情報まとめ
- 弾性率とヤング率の違いとは:弾性率は「弾性係数の総称」、ヤング率はそのうち「縦方向の引張・圧縮に関する係数」
- 弾性率の3種類:縦弾性係数(E=ヤング率)、横弾性係数(G=剛性率)、体積弾性係数(K)
- ヤング率の定義:応力 σ/ひずみ ε(単位:N/mm²、MPa、GPa、kN/mm²)
- 剛性率との関係:G = E/2(1+ν)、鋼ならG ≒ 79kN/mm²
- 代表値:鋼205、コンクリート23〜28、アルミ70、木材8〜12(kN/mm²)
- 使い方:応力・たわみ・座屈・FEM解析・複合構造の応力分担で頻出
以上が弾性率とヤング率の違いに関する情報のまとめです。
弾性率という言葉だけが独り歩きしがちですが、本来は 「弾性率という大きな枠の中にヤング率がある」 という上下関係を押さえると教科書も構造計算書もすっきり読めるようになります。鋼・コンクリート・木材の代表値も覚えておくと、現場で図面を読むときに「これくらいたわむな」と直感が働きますので、押さえておきましょう。一通り弾性率とヤング率の基礎知識は理解できたと思います。
合わせて、関連する力学知識もチェックしておきましょう。









