- デマンド制御ってそもそも何?
- なんで30分平均で計算されるの?
- 契約電力との関係って?
- 制御の仕組みはどうなっているの?
- 導入にどんな機器が必要?
- 工事と運用で気をつけるポイントは?
上記の様な悩みを解決します。
デマンド制御は、高圧受電している商業施設・工場・ビルで電気代を抑える定番手段です。ただ「ピーク時に何かを止めるだけ」と思っていると、運用上の落とし穴にハマりやすい仕組みでもあるので、ここで一気に体系的に整理しておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
デマンド制御とは?
デマンド制御とは、結論「契約電力(最大需要電力)を超えないように電気の使用量をリアルタイムでコントロールする仕組み」のことです。
ここでいう「デマンド」は、30分間の平均使用電力(kW)のこと。電力会社は契約電力をこの30分平均デマンドの最大値で決めるので、瞬間ピークではなく「30分間ならして高い時間帯」を抑え込めば、契約電力=基本料金を下げられる、という仕組みです。
デマンド制御の主な目的
- 契約電力を下げて基本料金を削減
- 設備容量内での運用を維持
- 過大デマンドによるブレーカー遮断を回避
- 電気主任の負担軽減(自動化)
高圧受電(50kW以上)の建物では契約電力=最大デマンド値で1年間決まるので、たった一度のピークで翌12カ月の基本料金が決まってしまう、というのがデマンド制御の必要性の根本ですね。
受電・受変電の基礎知識はこちらにまとめています。



デマンド料金の仕組みと契約電力
デマンド制御を理解するには、まず電気料金の仕組みから押さえる必要があります。
| 料金区分 | 計算方法 | 削減ポイント |
|---|---|---|
| 基本料金 | 契約電力(kW) × 単価 | デマンド制御で削減 |
| 電力量料金 | 使用量(kWh) × 単価 | 省エネで削減 |
| 燃料費調整 | 使用量(kWh) × 調整単価 | 削減困難 |
| 再エネ賦課金 | 使用量(kWh) × 単価 | 削減困難 |
このうちデマンド制御がターゲットにするのは「基本料金」。基本料金は契約電力に直接比例するので、契約電力を下げれば年間で確実に下げられます。
契約電力の決まり方
高圧受電(500kW未満)の場合、契約電力は「直近12ヶ月のうち最大デマンド値」で決まります。
たとえば:
- 7月のある日、30分平均デマンドが200kW出た
- それまでの最大は150kW
- → 契約電力が翌月から200kWに更新される
- → 以降12ヶ月、契約電力は200kWのままで、基本料金200×1,800円≒36万円/月
このとき7月のあの30分のピークがなければ、契約電力は150kWのまま、基本料金は27万円/月で済んでいた。1ヶ月の差額9万円×12ヶ月=108万円を、たった30分の油断で失う、というのがデマンドの怖いところです。
30分平均値の意味
電力会社は計測時刻を「00:00〜00:30、00:30〜01:00、…」と区切って、その30分間の使用電力量(kWh)を「kWh × 2 = kW」で平均値に変換します。
なので「瞬間1,000kWまで上がったけど他の時間帯は0kW」みたいな短時間ピークは平均化されて埋もれます。逆に「30分間ずっと300kW」のような持続ピークは丸ごと契約電力に反映されてしまうわけです。
デマンド制御の方法
デマンド制御には大きく3つのアプローチがあります。
主なデマンド制御の方法
- 警報・表示のみ(手動制御)
- 段階的な負荷遮断(自動制御)
- 蓄電・自家発による補完
警報・表示のみ(手動制御)
デマンド警報器でピーク予測を表示・警報し、人が判断して空調を緩めたり機器を止めたりする方式。導入コストが安く、小規模施設で多用されます。
段階的な負荷遮断(自動制御)
デマンドコントローラがピーク予測を行い、設定したしきい値を超えそうになったら、あらかじめ優先度を決めた負荷を順番に遮断していく方式。中規模〜大規模施設の標準パターンです。
優先度の例:
- 最初に切れる:休憩室のエアコン、装飾照明
- 次に切れる:オフィスエアコン1部分
- 切らない:サーバ室、保安照明、安全設備
蓄電・自家発による補完
ピーク時間帯に蓄電池や自家発電機から放電・発電して、買電量そのものを抑える方式。近年は太陽光発電+蓄電池との組み合わせも増えています。
V2H(電気自動車を蓄電池として活用)も一種のデマンド対策として注目されています。
デマンド制御に必要な機器
デマンド制御システムを構成する主な機器を整理します。
デマンド制御システムの主要機器
- デマンド監視装置(デマンドコントローラ)
- 計器用変圧器(VT)・変流器(CT)
- パルス発信機能付き電力量計
- 警報盤・表示盤
- 制御出力ユニット(リレー)
- 監視通信装置(クラウド連携用)
デマンドコントローラ
中心となる制御装置。電力量計からのパルス信号を受けて、30分平均デマンドを予測しつつ、契約電力に近づきそうなら警報出力・遮断指令を出します。
計器用変圧器(VT)・変流器(CT)
高圧受電の電圧・電流を低圧側で計測できるように変換する機器。デマンドコントローラに渡すための計測の出発点ですね。
パルス発信機能付き電力量計
電力量計(kWhメーター)にパルス出力を付けたもの。1kWh=何パルス、というルールでパルスを出し、デマンドコントローラがこれをカウントして電力使用量をリアルタイム把握します。
制御出力ユニット
しきい値超過時に各負荷の電源を遮断するリレー。電灯・動力それぞれの分電盤・動力盤に組み込みます。
電気盤関連の知識はこちらにまとめています。



デマンド制御の効果と運用の注意点
導入後の効果と、運用で陥りやすい落とし穴を整理します。
期待できる効果
- 契約電力 10〜20%削減(典型例)
- 基本料金 10〜20%削減
- 年間電気代 5〜10%削減(基本料金が全体の約半分の場合)
- 過大デマンドによる遮断事故の防止
- 電気使用量の見える化
運用上の注意点
| 落とし穴 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| しきい値が緩い | 警報後にすぐピーク到達してしまう | 余裕を3〜5%確保した設定 |
| 切る順番が不適切 | 重要負荷が先に切れる | 優先順位を再整理 |
| 季節要因で当てはまらない | 真夏/真冬で挙動が変わる | 季節別のパラメータ設定 |
| 自動制御が信頼されず手動運用 | 結局人が止めて回る | 運用教育・実績の蓄積 |
| 通信エラーで制御不能 | 制御信号が届かない | 通信ネットワーク冗長化 |
特に「しきい値設定」と「優先度設計」がデマンド制御の生命線。導入時はメーカー任せにせず、施工管理として「この負荷は絶対切れちゃダメ/これは切ってOK」のリストを建物管理者と一緒に作っておくのが重要です。
僕も電気の施工管理時代、デマンドコントローラの新設工事を経験したとき、しきい値を設計値ピッタリで設定したらピーク到達アラームが鳴り続けて、結局3%下げて運用したという経験があります。理論値と実運用は意外と差が出るので、最初の3ヶ月は試行錯誤の期間と覚悟しておくほうがいいですね。
力率改善との組合せ
デマンド削減と並んで電気代削減で効くのが力率改善(進相コンデンサの設置)。両方をセットで検討すると効果が大きくなります。
力率改善の詳しい話はこちらをどうぞ。

デマンド制御の施工管理ポイント
導入工事を進める上で施工管理として押さえておきたいポイントです。
デマンド制御工事の施工ステップ
- 既存受電設備の調査(CT/VT流用可否、空きスペース)
- 既存負荷一覧の作成と優先度設定
- デマンドコントローラの選定(容量・通信機能)
- 制御回路の設計(接点・配線・盤改造)
- 既存盤の改造工事 or 新設盤の設置
- 試運転(しきい値・優先度の動作確認)
- 運用教育・マニュアル整備
既存受電設備への組込み
新築なら最初から組み込んで終わりですが、既設改修だと既存配電盤・動力盤の改造が発生します。停電工事のスケジュール調整、テナントへの周知、改造後の絶縁・接地確認などが施工管理の主な仕事になりますね。
絶縁関連の試験はこちらに詳しいです。

通信設備との連携
最近のデマンドコントローラは、クラウド経由でPC・スマホからリアルタイム監視できるタイプが主流。通信用の配線(LAN・無線)も追加施工が必要になるため、構内LANや既存セキュリティとの調整も必要です。
デマンド制御に関する情報まとめ
- デマンド制御とは:契約電力を超えないよう電気使用量をリアルタイム制御する仕組み
- デマンド料金:30分平均使用電力(kW)の最大値が契約電力=基本料金を決める
- 削減対象:電気代の中の「基本料金」をターゲットにする
- 制御方法:警報のみ/自動遮断/蓄電・自家発による補完の3種
- 必要機器:デマンドコントローラ、VT/CT、パルス出力電力量計、警報盤、制御出力リレー
- 効果:契約電力10〜20%削減、年間電気代5〜10%削減が典型例
- 注意点:しきい値設定の余裕、切る優先度、季節調整、運用教育
以上がデマンド制御に関する情報まとめです。
一通りデマンド制御の基礎知識は理解できたかなと思います。「30分平均値の最大ピークが12ヶ月の基本料金を決める」これが分かれば、なぜたった1回のピークが大事故なのかがピンとくるはずです。
電気料金・受変電・力率関連の周辺知識は以下も合わせてどうぞ。










