- 丸鋼ブレースってなに?
- 普通のブレースと何が違うの?
- ターンバックルってなに?
- 圧縮には効かないって本当?
- どんな場所で使うの?
- 施工管理として何を見ればいい?
上記の様な悩みを解決します。
「丸鋼ブレース」は鉄骨造で、φ径の細い丸鋼を「引張専用のブレース」として使う水平・鉛直構面の補強材のことです。ターンバックルで張力を調整して使うのが特徴で、圧縮に効かない代わりに軽量・低コスト・施工性が良いという性質をもちます。屋根面ブレース・壁面ブレースとして大量に使われますが、「張りすぎ・緩みすぎ」が出やすく、施工管理として押さえるべき検査項目が多い部材です。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
丸鋼ブレースとは?
丸鋼ブレースとは、結論「鉄骨造の水平・鉛直構面に使う、丸鋼の引張専用ブレース」のことです。
「丸鋼」は断面が円形(φ)の棒鋼で、JIS規格で各種径のものがあります。これを両端にネジ加工とターンバックルを取付けて使うことで、引張方向の補強材として機能します。屋根面・壁面・床面などの面の対角線に張って、水平荷重(地震・風)に対する変形を抑える役割を担います。
→ ざっくり、「鉄骨造の構面に対角線で張る、ターンバックル付きの細い丸鋼」が丸鋼ブレース、というイメージです。
基本仕様と「引張専用」の理由
丸鋼ブレースの基本仕様は、断面がφ16〜φ32程度の丸鋼、材質はSS400・SR235・SR295(一般構造用丸鋼)、配置は構面の対角線にX字型・V字型、両端処理はネジ加工+クレビス+ターンバックル、張力はターンバックルで引張張力を導入、というあたり。
「引張専用」と呼ばれる理由は、丸鋼が細長い棒で圧縮力を加えると即座に座屈するため、圧縮には効かない前提で設計、X字配置の片方が引張で反対側は遊んでいる状態が基本、「引張専用=圧縮ゼロ」で安全側に設計する、ということ。ターンバックルは中央に右ネジと左ネジを備えた回転金具で、回すと両端を引き寄せて丸鋼に張力を導入する装置です。
使用場所と他ブレースとの違い
丸鋼ブレースが使われる典型場所は、屋根面ブレース(トラス間に張るX字ブレース)、壁面ブレース(S造の桁行方向の壁面)、床面ブレース(床下の振動制御用)、クレーンランウェイのブレース、というあたり。
他のブレース材との違いを表で整理しておきます。
| 種別 | 主な特徴 | 圧縮対応 | コスト |
|---|---|---|---|
| 丸鋼ブレース | 引張専用、軽量、施工性◎ | × | 低 |
| 山形鋼(アングル)ブレース | 引張+限定的圧縮 | △ | 中 |
| H形鋼ブレース | 圧縮も効く、重量大 | ◎ | 高 |
| CT形鋼(カットT)ブレース | コンパクト、座屈に強い | ○ | 中 |
| 鋼管ブレース(座屈拘束含む) | 座屈拘束ブレースで耐震 | ◎ | 高 |
メリット・デメリット
メリットは、軽量で取扱い・搬送が楽、低コスト(材料費・加工費が安い)、施工性◎(高所での組立てが楽)、張力調整可(ターンバックルで現場調整)、建物の自重を増やさない(地震時の慣性力を抑える)、というあたり。デメリットは、圧縮に効かない(構造設計上の制限)、張力管理が必要(施工誤差の影響大)、疲労寿命の懸念(振動下での緩みリスク)、腐食しやすい(細い棒鋼は腐食代の余裕が小さい)、という制約があります。
「鉄骨ブレース」は丸鋼・アングル・H形・鋼管などをすべて含む総称で、丸鋼ブレースはその1種類、という位置づけです。

丸鋼ブレースの役割と力学
丸鋼ブレースの役割を整理します。水平荷重の伝達と変形抑制がメインです。
水平荷重の引張伝達と変形抑制
最大の役割は、地震・風による水平荷重を引張方向で伝達して構面の剛性を高め、変形を抑える=建物全体の安定性を確保すること。ブレースなしの構面は菱形に変形しやすいので、対角線にブレースを張って変形を拘束し、X字配置で両方向の変形に対応します。
ブレース構面は剛性が高く、ラーメン構面より地震時の変形が小さいため、中小規模S造で多用されます。圧縮側は遊ばせる前提で、X字ブレースの片方は引張、反対側は圧縮になるが、丸鋼は圧縮で座屈するので遊ばせる、引張側だけで設計荷重を負担、というのが力学の基本です。
初期張力と多重防御
施工時にターンバックルで初期張力を入れることで、緩んでブラブラの状態を防ぎ、引張方向の応答開始を即座に立ち上げます。屋根・床は水平構面として水平力を伝達するので、屋根面ブレースは屋根剛性、床面ブレースは床剛性を確保。大地震時に主構造が損傷してもブレースが残れば倒壊防止、「多重防御」の一翼を担います(ただし耐力が小さい点には注意)。
丸鋼ブレースは軽量で建物自重を増やさないので、地震時の慣性力(質量×加速度)を抑え、結果として全体の応答低減につながります。H形鋼ブレースより安価・軽量で、中小規模工場・倉庫でコスト面の優位があります。
→ X字配置で両方向に対応、V字配置で片側集中、K字配置で開口部・通路を確保、というのが配置パターンの基本です。
役割を表で整理すると次のようになります。
| 役割 | 具体的な機能 |
|---|---|
| 水平荷重の引張伝達 | 地震・風荷重を引張で伝達 |
| 変形抑制 | 構面の菱形変形を拘束 |
| 剛性確保 | 構面剛性UP |
| 軽量化 | 建物自重を抑える |
| 経済性 | H形鋼より安価 |
丸鋼ブレースの種類と規格
丸鋼ブレースの種類と規格を整理します。径・材質・両端金具の組合せで仕様が決まります。
径と材質
丸鋼の代表的なサイズと耐力(参考)を表で整理しておきます。
| 径 | 用途目安 | 引張耐力(参考) |
|---|---|---|
| φ16 | 小規模・屋根面 | 約45kN |
| φ19 | 中規模・屋根面 | 約65kN |
| φ22 | 中規模・壁面 | 約90kN |
| φ25 | 中〜大規模 | 約115kN |
| φ28 | 大規模・主要構面 | 約145kN |
| φ32 | 大規模・特殊 | 約190kN |
→ 上記耐力はSS400クラスを想定した参考値で、実際の設計値は材料規格・安全率・断面欠損で変動します。
丸鋼の材質は、SS400(一般構造用圧延鋼材・代表的)、SR235・SR295(丸鋼用・鉄筋系規格)、SD295A・SD345(異形鉄筋系・特殊用途)、と複数。設計図書で材質指定があります。
ねじ加工と両端金具
ねじ加工は、丸鋼の両端をねじ切り加工、メートル並目ねじ(M16・M20・M24等)、ねじ部の有効断面積で耐力決定、太径ねじで断面欠損を抑える設計が望ましい、というあたり。
両端金具の種類は、クレビス(U字金具・丸鋼両端に取付け、ガセットプレートとピン接合)、アイ(リング・環状金具、ボルトで接合)、ターンバックル(張力調整器・両端ねじ機構)、ロックナット(緩み止め用)、というラインアップ。
ターンバックルのタイプは、枠型(四角い枠・最も一般的)、パイプ型(パイプ状・長尺向け)、オープン型(開放型・点検容易)、というバリエーション。JIS B 1071でターンバックル規格が定められています。
1セットの構成と規格・表面処理
丸鋼ブレース1セットの構成は、丸鋼本体(指定径・長さ)+両端のねじ加工部+クレビス×2+ターンバックル×1+ロックナット×2、という6点セット。規格類は、JIS G 3101(一般構造用圧延鋼材)、JIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)、JIS B 1071(ターンバックル)、JASS 6(鉄骨工事)、というラインアップ。
表面処理は、黒皮(無処理・屋内・短期)、錆止め塗装(標準的処理)、溶融亜鉛めっき(屋外・長期)、エポキシ塗装(高耐食仕様)、を選びます。設計図書では「φ19 SS400 ターンバックル付」のように表記され、架構図で配置位置、ガセットプレートとの接合詳細図、で位置決めします。
用途別の代表的な仕様例
用途別の代表仕様は、一般工場の屋根面でφ19 SS400 ターンバックル付、中規模工場の壁面でφ22 SS400 ターンバックル付、倉庫の小屋面でφ16 SS400 ターンバックル付、高耐食仕様でφ19 溶融亜鉛めっき、というあたり。耐震設計上、圧縮抵抗が必要な場面(高層建築の主要構面・大スパン・重量物のメイン構面)では、丸鋼ブレースは使われず、座屈拘束ブレースなどに置換されます。
丸鋼ブレースの施工方法
丸鋼ブレースの施工方法は、鉄骨建方時に取付け → ターンバックルで張力導入 → 緩み止め固定、の流れです。
製作・搬入・取付け順序
鉄骨製作前の準備は、設計図書で仕様を確認、鉄骨製作工場でねじ加工・両端金具取付け、構面ごとに部材リスト作成、出荷時に部位ラベルを貼付、という流れ。現場搬入・保管は、雨ざらしを避けて屋内・シート養生で保管、ねじ部に保護キャップを装着、部位ごとに整理棚で管理、を行います。
鉄骨建方時の取付け順序は、鉄骨主架構(柱・大梁)の建方完了 → ブレース対角線のガセットプレートを確認 → 丸鋼ブレースを所定位置に配置 → ピン or ボルトでガセットプレートに接合 → 反対側も同様に接合(仮固定状態)→ ターンバックルで張力導入 → ロックナットで緩み止め、というステップです。
張力導入と管理方法
ターンバックル張力導入の手順は、両端を仮固定後にターンバックル中央のリングを回す → 丸鋼が徐々に引っ張られる → 設計図書の初期張力値まで張る → トルクレンチ or 張力計で確認 → ロックナットで固定、という流れ。
初期張力の管理方法は、トルク管理法(ターンバックルのトルクで間接管理)、張力計法(丸鋼に直接張力計をあてて測定)、音波法(丸鋼を叩いて固有振動数で張力推定)、と複数あり、設計図書の初期張力値を厳守します。
→ X字ブレースの施工順序では、2本を順次取付けるが、1本目を仮張力 → 2本目を取付け → 両者調整、で2本同時に最終張力まで張るのが理想、というのが現場での王道。一方だけ強く張ると他方が緩むバランスに注意します。
ロックナット・塗装・検査
ロックナットの締付けはターンバックルの両側ロックナット、適正トルクで緩み止め、ナットのペイントマーキングで確認可能化、というのが標準。塗装・防錆処理は工場製作時に錆止め塗装または亜鉛めっき、取付け後に現場仕上げ塗装、ねじ部・ナット部の塗装注意(緩み・ねじ込み困難リスク)、を意識します。
検査項目は、配置位置(図面通りか)、取付角度、張力値(所定の初期張力)、ロックナット(緩み止め完了)、塗装、ガセットプレートとの接合(ボルト・ピン状態)、というあたり。現場での施工誤差は丸鋼の長さ調整をターンバックルで吸収、大幅な不一致は鉄骨業者と協議、現場でのねじ追加加工は原則禁止、というルールです。
屋根面・壁面ブレースと施工管理者の視点
屋根面ブレースの施工は、高所作業(足場・親綱・フルハーネス)、トラス間の取付けは安全帯フック先確保、屋根葺き前にブレース完了が原則、という流れ。壁面ブレースの施工は、壁面の外側または内側に配置、外装材との取合い確認、仕上げ材との離隔確保、を行います。
施工管理者の視点では、製作前(設計図書の確認、部材リスト整備)、建方前(搬入・仮置き状況の確認)、建方時(取付け位置・接合確認)、張力導入時(張力値の測定・記録)、検査時(写真記録・寸法記録・張力記録)、と工程を見ます。
電気の打合せで工場の鉄骨建方現場に立ち会った時、屋根面ブレースのターンバックルを締める音が現場のあちこちで響いていたのを覚えています。「あと半回転、もう少し」と棟梁が指示しながら、鉄骨工が4mほどの位置でブレースに馬乗りになって回す姿は迫力ありました。「片側だけ強く張ったら反対側が暴れる」と棟梁が言っていて、X字の両本を同時に調整しないとダメという現場の知恵を体感しました。
丸鋼ブレースの注意点
丸鋼ブレースはシンプルだが施工誤差が出やすい部材です。注意点を整理します。
張力管理・腐食・疲労
最大の注意点は張力管理です。圧縮力をかけない(丸鋼は圧縮で座屈、X字ブレースの圧縮側は遊ばせる)、過大な初期張力に注意(締めすぎは降伏・破断リスク、設計図書の初期張力値の上限を守る)、張力不足にも注意(緩みすぎは地震時の応答開始遅延・風によるバタつき・疲労)、「ピンと張った状態」が基本、というあたり。
張力測定の精度は、トルク法が摩擦の影響で誤差が出やすく、張力計法が精度高いが手間、重要構面は張力計法を推奨。ロックナットの確実な締付けが緩み防止の鍵で、ペイントマーキングで緩み確認可能化、定期点検で緩み発見、を仕組み化します。
ねじ部の腐食では、屋外露出の場合は腐食リスク、亜鉛めっき・エポキシ塗装で長期保護、ねじ部の防錆処理を怠らない、を徹底。疲労破壊への注意として、振動・繰返し荷重でねじ部の疲労、ねじ底は応力集中部、重要構面は疲労解析が望ましい、というあたりも意識します。
両端金具・塗装・取合い・ガセット
両端金具のピン・ボルト管理は、クレビス・アイのピン・ボルトの緩み・脱落リスク、割ピン・ナイロンナットで緩み止め、定期点検対象、というのが基本。塗装の傷管理として、取付け時の傷・剥がれは腐食起点、工事中の保護と補修塗装徹底、引渡し前の塗装検査、を行います。
外装材・配管・配線との取合いは、屋外露出ブレースは外壁との離隔確保、配管・配線との干渉回避、設計図書通りの位置と離隔、を守ります。ガセットプレートの設計強度として、ブレースとガセットプレートの接合部強度、ガセットの断面欠損・座屈注意、ブレース耐力>ガセット接合耐力にならない設計、を確認。
増設・撤去・部材識別・点検
増設・撤去時は、既存ブレース撤去で他構面への影響確認、撤去前後の応力解析、仮設の代替補強も視野、というあたり。部材識別の確実性として、径・材質が異なる丸鋼の取り違え注意、出荷ラベル・施工写真で履歴管理、取り違えは設計耐力低下、を意識します。
定期点検の仕組み化として、引渡し後のロックナット緩み点検、塗装の補修サイクル、異常発見時の早期対応、を計画。類似部材との混同注意(丸鋼ブレース、CT形鋼ブレース、アングルブレース、鋼管ブレースはそれぞれ役割と取扱いが異なる)も大事なポイントです。
施工管理者として押さえる視点
施工管理者の視点では、施工計画書(張力導入手順・検査基準・記録様式)、作業手順書(高所作業・張力測定・ロックナット締付け)、品質管理(張力値・ロックナット・塗装の3点を写真記録)、不適合管理(張力不足・過大時の是正手順)、引渡し(定期点検計画書・ロックナット位置図)、と一連の管理になります。
→ 丸鋼ブレースは「シンプルだが現場精度に左右される部材」なので、張力管理を徹底できる施工体制が、鉄骨造の耐震性能を担保するコツですね。
丸鋼ブレースに関する情報まとめ
最後に、丸鋼ブレースの重要ポイントを整理します。
- 丸鋼ブレースとは:鉄骨造の水平・鉛直構面に使う、引張専用の丸鋼ブレース
- 役割:水平荷重の引張伝達、変形抑制、剛性確保、軽量化、経済性
- 主な構成:丸鋼本体+両端ねじ加工+クレビス×2+ターンバックル×1+ロックナット×2
- 代表サイズ:φ16・φ19・φ22・φ25・φ28・φ32(用途で選定)
- 材質:SS400、SR235・SR295(一般構造用丸鋼)
- 施工:建方時に取付け→ターンバックルで張力導入→ロックナット固定
- 張力管理:トルク法・張力計法・音波法、設計値厳守
- 注意点:締めすぎ防止・緩み防止・腐食対策・疲労管理
- 検査項目:配置位置・取付角度・張力値・ロックナット・塗装
- 施工管理者の役割:施工計画書・作業手順書・品質管理・引渡し点検計画
以上が丸鋼ブレースに関する情報のまとめです。
丸鋼ブレースは「軽量・低コスト・施工性◎の引張専用ブレース」で、中小規模S造の屋根面・壁面の水平構面補強として広く使われます。ターンバックルで初期張力を導入する独特の施工性が特徴で、締めすぎ・緩みすぎが品質を左右します。設計上は圧縮を負担しない前提なので、圧縮側を遊ばせる設計思想を施工管理者も理解した上で、張力管理・ロックナット・塗装の3点を徹底するのが、鉄骨造の耐震性能を担保するコツですね。
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