- 丸鋼ブレースって結局なに?
- 図面の「TB付ブレース」ってターンバックルのこと?
- なんで必ずX型(たすき掛け)に入れるの?
- 筋交いとは違うもの?
- JIS規格って何を確認すればいい?
- ターンバックルはどこまで締めればいいの?
- たわんでるブレースは不良?
- 設備屋に「一回外していい?」と言われたけど大丈夫?
上記の様な悩みを解決します。
丸鋼ブレースは、鉄骨造の倉庫・工場・店舗など、中小規模の鉄骨物件ならほぼ確実に登場する耐震部材です。図面では「TB付ブレース」「M20ブレース」のようにサラッと書かれているだけなので、若手のうちは「何の部材で、現場で何を確認すべきか」が分からないまま建方当日を迎えがちです。今回は定義・役割・規格・メーカーといった基本を押さえた上で、施工管理目線で「建方時の取付の流れ」「締め具合とたわみの判断」「勝手に外してはいけない理由」など、現場で実際に判断を迫られるポイントまで整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
丸鋼ブレースとは?
丸鋼ブレースとは、結論「丸鋼・羽子板・ターンバックルで構成された、引張力専用の耐震部材」のことです。
鉄骨造の柱と梁で組まれた四角いフレームに、対角線状(斜め)に取り付けて、地震や強風による水平力に抵抗します。図面や現場では「ターンバックルブレース」「TBブレース」「丸鋼筋交い」などとも呼ばれますが、指しているものは同じです。
構成部品は次の3つです。
| 部品 | 内容 | 役割 |
|---|---|---|
| 丸鋼(軸部) | 断面が丸い棒鋼。片端にねじ加工 | 引張力を負担する本体 |
| 羽子板(はごいた) | 丸鋼の端部に溶接された板状の金物 | ガセットプレートやブレースシートとのボルト接合部 |
| ターンバックル胴 | 右ねじ・左ねじを両側に切った金物(建築用は枠式が主流。パイプ式もある) | 回すことで張力(長さ)を調整する |
片端にねじを切った丸鋼+羽子板のセットが2組あり、それを真ん中のターンバックル胴でつないだ形が標準形です。ターンバックル胴を回すと両側のねじが同時に締まる(緩む)ので、取付後に張りを調整できるのが最大の特徴ですね。
ターンバックル自体の種類や使い方はこちらで詳しく解説しています。

ここで重要なのが「引張力専用」という点です。丸鋼は細長い棒なので、圧縮力(押す力)が掛かると一瞬で座屈して(たわんで)抵抗力を失います。つまり「引っ張られる方向にしか効かない」部材として設計されています。僕の整理では、丸鋼ブレースは「建物を支える突っ張り棒」ではなく「建物が変形しないように引っ張るワイヤー」に近いイメージで捉えると、後述するX型配置の理由もスッと頭に入るはずです。
丸鋼ブレースの役割とX型に入れる理由
丸鋼ブレースの役割は、結論「地震・強風の水平力を受け止めて、フレームの変形を防ぐこと」です。
柱と梁だけの四角いフレームは、横から力を受けると平行四辺形に潰れようとします。ここに斜め材が1本入っていると、フレームが変形しようとした瞬間に斜め材が引っ張られ、変形を食い止めます。ブレースが水平力を負担してくれるおかげで、柱・梁の断面を小さくできて経済的な設計になる、というのが鉄骨造でブレース構造が多用される理由です。
X型(たすき掛け)にする理由
丸鋼ブレースは原則X型に2本入れます。理由はシンプルで、引張専用だからです。
- 地震力は右からも左からも来る
- 右から力が来たとき効くのは一方のブレース(もう一方は圧縮側になり座屈して効かない)
- 左から力が来たときは逆のブレースが効く
つまり、1本だけだと片方向の力にしか抵抗できないので、両方向に対応するために必ずペアで入れる訳です。「2本入っているけど、常に働いているのは1本だけ」という割り切った設計思想で、構造計算でも引張側の1本だけを評価するのが基本です。
建方時の倒壊防止という役割
もう1つ、施工管理として知っておきたいのが建方時の役割です。鉄骨建方の途中は、柱と梁をボルトで仮留めしただけの非常に不安定な状態です。この段階で強風を受けると倒壊事故につながるため、建方の進行に合わせてブレースを早めに取り付けて構面を固めていくのがセオリーです。本ブレースの取付が間に合わない場合は、ワイヤーなどの仮ブレースで養生します。
建方の流れ全体はこちらで解説しています。

現場目線で言えば、ブレースは「完成後の耐震部材」であると同時に「建方中の命綱」でもあります。建方計画書をチェックするときは、ブレース取付のタイミングが工程に明記されているかを必ず見るようにしましょう。
丸鋼ブレースの種類と取付場所
丸鋼ブレースは取り付ける場所によって呼び方が変わります。
| 種類 | 取付場所 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 壁ブレース(鉛直ブレース) | 柱と柱の間の壁面にX型 | 水平力に抵抗し建物の変形を防ぐ |
| 水平ブレース(屋根・床ブレース) | 梁と梁の間の屋根面・床面に水平に | 屋根面・床面の剛性を確保し、水平力を壁ブレースのある構面まで伝える |
壁ブレースが「耐える」担当、水平ブレースが「力を運ぶ」担当という分担です。水平ブレースが無いと、せっかく壁ブレースを入れても屋根面がグニャッと変形して力がうまく伝わりません。倉庫や工場の屋根を見上げたときに張られている細い丸鋼は、この水平ブレースですね。
X型交差部の納まり
「X型に交差してるけど、部材同士が当たらないの?」というのは現場でよくある疑問です。実は、丸鋼ブレースは同じ高さのガセットプレートに取り付けても、径が細いためわずかなたわみで互いにかわすことができ、中小物件では基本的にそのまま交差させて納めます。ただしターンバックル胴は太いので、胴が交差部に来ないよう長さを調整して発注するのが鉄則です。アングルやH形鋼のブレースだとこの手は使えないので、交差部で片方を分断して接合プレートを設けるなどの処理が必要になります。
丸鋼ブレースの規格とメーカー
建築で使う丸鋼ブレースは、結論「JIS規格品を使うのが大前提」です。
関連するJIS規格は次の通りです。
| 規格 | 内容 |
|---|---|
| JIS A 5540 | 建築用ターンバックル(胴1個+ボルト2本のセット全体の規格。羽子板付きターンバックルボルトの規定もここに含まれる) |
| JIS A 5541 | 建築用ターンバックル胴 |
JIS規格品はボルトの呼びでM6〜M33まであり、構造設計者が計算で必要な呼び径を決めて構造図に明記します。施工側が勝手にサイズを変えることはできません。
JIS品の丸鋼ブレースで押さえておきたいのが、ねじ部が「転造ねじ」で作られている点です。軸部の直径は実はねじの呼び径より細く(例えばM20なら軸径は約18.1〜18.3mm)、これは地震時にねじ部が破断する前に軸部全体が先に降伏して伸び、エネルギーを吸収するための意図的な設計です。「軸が細いのは不良品では?」と心配になるかもしれませんが、むしろ正しい姿なので安心してください。
主要メーカー
| メーカー | 商品名 |
|---|---|
| フルサト工業 | フルブレース |
| コンドーテック | コンブレース |
この2社が全国的に有名で、どちらもJIS A 5540準拠品です。鉄骨ファブ経由で手配されることが多いですが、発注時に必要な情報は「呼び径(M20など)・芯々長さ・本数・塗装仕様」の4点。特に塗装は鉄骨本体と同色指定にするのが通例なので、別途手配する場合は塗装仕様の伝え漏れに注意しましょう。
なお、納品時の品質確認は製品検査成績書とミルシート(鋼材検査証明書)で行います。材質はSS400やSNR400系が標準です。

丸鋼ブレースと筋交い・他のブレースとの違い
「ブレースと筋交いって何が違うの?」は定番の疑問ですが、答えはシンプルで「役割は同じ。業界慣習として木造は筋交い、鉄骨造はブレースと呼び分けている」だけです。
| 項目 | 筋交い | ブレース |
|---|---|---|
| 主な構造 | 木造 | 鉄骨造 |
| 材料 | 木材(厚1.5〜9cm×幅9cm程度) | 丸鋼・アングル・H形鋼など |
| 圧縮への抵抗 | 断面によっては圧縮も負担 | 丸鋼は引張専用 |
| 法的な扱い | 建築基準法で寸法規定あり | JIS規格品の使用が前提 |
木造の筋交いについてはこちらで詳しく解説しています。

また、ブレースの中にも種類があります。
- 丸鋼ブレース:引張専用。安価で軽量。中小規模の倉庫・工場の定番
- アングル(山形鋼)・フラットバーブレース:引張専用だが丸鋼より耐力大きめ
- H形鋼・角形鋼管ブレース:圧縮にも抵抗。大規模物件向け
- 座屈拘束ブレース:芯材を鋼管やモルタルで拘束し圧縮でも座屈しない高性能品。制振部材としても使われる
規模が大きくなるほど「引張専用→圧縮も負担→座屈拘束」と高級になっていくイメージです。実務だと、中小鉄骨物件で目にするのは圧倒的に丸鋼ブレースなので、まずはこれを完璧に押さえておけば十分です。
丸鋼ブレースの施工方法
丸鋼ブレースの施工は、ひとことで言うと「ブレースシートに羽子板をボルト接合し、建入れ直し後にターンバックルで張りを調整する」という流れです。
手順を整理すると次の通りです。
- 鉄骨製作時:梁・柱にブレースシート(ガセットプレート)を工場溶接しておく
- 建方時:ブレースシートに羽子板をボルトで取り付ける(このとき張力はまだ掛けない)
- 建入れ直し:柱の倒れ・出入りを修正する。ブレースのターンバックルを微調整しながら建入れを追い込むことも多い
- 本締め:建入れ精度が確認できたら、ターンバックルを締めて適度な張りを与える
- 緩み止め:ロックナット(現場では「ダブルナット」と呼ばれることもあります)をターンバックル胴の端面に密着させて締め、胴が回らないように固定する
接合部の部材について補足すると、梁や柱側に溶接された受け側の板がブレースシート(ガセットプレート)、ブレース側に付いている板が羽子板です。名前がごっちゃになりやすいですが、「受けがガセット、ブレース側が羽子板」と覚えておきましょう。


締め具合の考え方
「どこまで締めればいいか」は図面に明記されないことが多く、現場で一番迷うポイントです。基本の考え方は次の通りです。
- 目安は「手で揺すってガタつかず、自重による緩やかなたわみが残る程度」
- 締めすぎはNG。フレームに余計な初期張力が入り、建入れ精度が狂ったり、接合部に無理な力が掛かったりする
- 建入れ直し前に本締めするのもNG。フレームが拘束されて建入れ修正ができなくなる
個人的には、ターンバックルの締め忘れより「建入れ直し前の締めすぎ」の方が現場ではトラブルになりやすいと感じます。鳶さんと「どの構面から建入れを決めて、どの順番でブレースを締めるか」を建方前に打ち合わせておくのが一番の予防策です。
丸鋼ブレースの注意点【現場チェックリスト】
最後に、施工管理として現場で確認すべきポイントをまとめます。検査や巡回でブレースを見るときはこのリストをなぞってください。
- 呼び径・本数が構造図通りか(M20指定の箇所にM16が付いていないか)
- JIS規格品か(製品検査成績書・ミルシートの確認)
- ターンバックル胴が交差部に干渉していないか
- 全箇所締め付け済みか(締め忘れで1本だけダラリと垂れているのは典型的な指摘事項。後述する自重による緩やかなたわみとは別物)
- 緩み止めナットが効いているか
- 羽子板とブレースシートの接合ボルトに本数不足・締め忘れがないか
- 塗装の剥がれ・損傷がないか(建方時の接触でよく剥がれる)
「ちょっと外していい?」は絶対NG
現場で本当に注意してほしいのが、後工程の業者からの「ダクト(配管)が通らないからブレース一回外していい?」という相談です。これは施工管理の独断で許可してはいけません。
丸鋼ブレースは構造耐力上主要な部分です。1本外せば、その構面は片方向の水平力にほぼ抵抗できなくなり、施工中に地震や強風が来れば重大事故につながります。竣工後に勝手に切断すれば建築基準法違反です。どうしても干渉する場合は、必ず設計者(構造設計者)に確認し、補強や盛り替えの指示をもらってから対応してください。これは新人のうちに体に叩き込んでおくべきルールです。
たわみの判断
「ブレースがたわんでるけど大丈夫?」というのも現場で定番の疑問です。判断の軸はこうです。
- 自重による緩やかな垂れ → 正常の範囲。丸鋼は細長いので多少のたわみは必ず出る
- 手で大きく揺れる・明らかに張力ゼロ → 締め付け不足。ターンバックルの増し締めを指示
- 局部的な曲がり・折れ → 部材損傷。交換が必要(叩いて直すのはNG)
正直なところ、ピンと一直線に張られたブレースより、わずかに自然な垂れがある方が健全なことも多いです。「たわみ=即不良」と脊髄反射で指摘すると職人さんに苦笑いされるので、上記の3パターンで切り分けて判断しましょう。
丸鋼ブレースに関する情報まとめ
- 丸鋼ブレースとは:丸鋼・羽子板・ターンバックルで構成された引張力専用の耐震部材
- 役割:地震・強風の水平力に抵抗。建方中は倒壊防止の役割も担う
- X型に入れる理由:引張専用のため、両方向の水平力に対応するにはペアが必要
- 種類:壁ブレース(耐える担当)と水平ブレース(力を運ぶ担当)
- 規格:JIS A 5540(建築用ターンバックル)。呼び径M6〜M33。ねじは転造で軸部はあえて細い
- メーカー:フルサト工業「フルブレース」、コンドーテック「コンブレース」
- 施工方法:ブレースシートに羽子板をボルト接合→建入れ直し後にターンバックルで張り調整→緩み止め
- 注意点:締めすぎ・締め忘れ・交差部の干渉を確認。後工程都合での撤去は設計者承認なしに絶対NG
以上が丸鋼ブレースに関する情報のまとめです。
一通り基礎知識は網羅できたかなと思います。ブレース周りは「ターンバックル」「ガセットプレート」「ブレースシート」と関連部材の名前が連発するので、下記の記事もあわせて読むと部材の関係が立体的に理解できるはずです。






