- 電力会社との契約ってなに?
- 低圧、高圧、特別高圧って何が違うの?
- 契約電力ってどう決まる?
- 申込みの流れはどう進むの?
- 電気需給契約と託送契約って違うの?
- 施工管理は電力会社との打合せに何を持っていく?
上記の様な悩みを解決します。
電力会社との契約は建物が電気を使うための「インフラ接続契約」で、新築工事では設計初期から電力会社と協議が始まる重要工程。「契約区分(低圧・高圧・特別高圧)の判定が遅れると、引き込み計画から見直し」になることもあるので、施工管理として基本知識を押さえておきたい領域です。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
電力会社との契約とは?
電力会社との契約とは、結論「建物の電気設備を電力会社の電力系統に接続して電気を使用するための契約」のことです。
英語ではPower Supply ContractやElectricity Service Agreementと呼ばれます。電気を使うために電力会社と「需要家(建物所有者)」との間で結ぶ契約で、契約種別・契約電力・支払条件などを定めて電気を継続的に供給してもらうための仕組み。
→ ざっくり、「建物に電気を引いてもらうための電力会社との約束ごと」が電力会社との契約、というイメージです。
契約に含まれる主な事項と流れ
契約に含まれる主な事項は、契約電力(最大需要電力の予測値)、契約種別(従量電灯A・業務用電力・産業用電力など)、受電方式(低圧・高圧・特別高圧)、電気料金体系(基本料金+使用量料金)、契約期間(通常1年単位の自動更新)、支払条件、解約条件、託送契約の有無(新電力経由の場合)、というあたり。
新築工事での契約の流れは、基本計画段階(必要な電気使用量を予測し受電方式を決定)→設計段階(電力会社と引き込み方法を協議)→施工段階(引き込み工事の実施)→完了段階(竣工検査・系統接続・電気需給契約の締結)→運用段階(契約に基づき電気を使用)、という流れです。
新電力との関係(小売電気事業者)
2016年の電力小売自由化以降、「電力会社」は単一の会社ではなく、送配電会社(一般送配電事業者・送電線の運用、託送業務)と小売電気事業者(実際の電気販売)の2層構造になっています。
需要家との直接契約は小売電気事業者と結びますが、送配電網の使用については送配電会社との託送契約が基礎にあります。一般家庭・小規模法人では意識する必要は薄いですが、大型施設では託送契約の理解が必要になります。電気設備全般の話は別記事を参照してください。

低圧・高圧・特別高圧の違い
電力会社との契約を理解する上で最も重要なのが「受電方式」の区分。低圧・高圧・特別高圧の3種類に分かれており、契約電力の規模で決まります。
低圧・高圧・特別高圧の特徴
低圧(LV:Low Voltage)は受電電圧が交流600V以下(単相100V/200V、三相200V/400V)で、契約電力50kW未満が対象。一般家庭・小規模事業所が大半で、電力会社の柱上トランスから直接受電し、引き込み線・電力量計(メーター)が直接設置されます。
高圧(HV:High Voltage)は受電電圧が交流600V超〜7,000V以下(一般的に6,600V)で三相3線式、契約電力50kW以上〜2,000kW未満が対象。中規模ビル・工場・店舗で採用され、キュービクル(自家用受変電設備)が必要で、主任技術者の選任義務があります。
特別高圧(EHV:Extra High Voltage)は受電電圧が7,000V超(22kV、66kV、154kV等)で、契約電力2,000kW以上が対象。大型工場・大型商業施設・データセンターで採用され、専用の特別高圧受変電設備が必要で、主任技術者の選任・保安規定の届出が必要になります。
受電方式の比較
3区分を整理しておきます。
| 項目 | 低圧 | 高圧 | 特別高圧 |
|---|---|---|---|
| 受電電圧 | 600V以下 | 600V〜7kV | 7kV超 |
| 契約電力 | 50kW未満 | 50kW以上 | 2,000kW以上 |
| 受電設備 | メーター | キュービクル | 特別高圧設備 |
| 主任技術者 | 不要 | 必要 | 必要 |
| 工事費 | 低 | 中 | 高 |
| 電気料金 | 単価高 | 単価中 | 単価安 |
受電方式の選び方と境界値
受電方式は契約電力の予測で決まり、50kW未満なら低圧、50kW以上は高圧(強制的に)、2,000kW以上は特別高圧、というのが基本ルール。増設の可能性も加味して計画する必要があります。
境界値での運用感覚としては、48kWなら低圧で運用を見て50kW超になる予測なら高圧へ移行、49.5kWは低圧だが運用次第で高圧への変更を検討、51kWなら必ず高圧で計画、というあたり。
→ 低圧で契約していて後から負荷が増えて50kWを超えると、強制的に高圧契約への変更が必要で、変電設備の新設・引き込みのやり直しが発生するので、最初から高圧で計画しておく方が安全です。
受電方式の話は受電全般の解説と直結します。

契約種別と契約電力の決め方
電力会社との契約には契約種別があり、用途・需要パターンに応じて選びます。
主な契約種別
主な契約種別を整理しておきます。
| 種別 | 主な対象 | 受電方式 |
|---|---|---|
| 従量電灯A・B・C | 一般家庭・小規模 | 低圧 |
| 低圧電力 | 商店・工場(小規模) | 低圧 |
| 業務用電力 | 商店・事務所(中規模) | 低圧・高圧 |
| 業務用季節別時間帯別電力 | 大型商業施設 | 高圧 |
| 産業用電力 | 工場 | 高圧・特別高圧 |
| 産業用季節別時間帯別電力 | 大型工場 | 高圧・特別高圧 |
| 高圧電力A・B | 中〜大規模ビル・工場 | 高圧 |
| 特別高圧電力 | 大型施設 | 特別高圧 |
従量電灯と業務用の違いとしては、従量電灯が単相2線式・3線式で家庭・小規模商店、業務用が三相3線式で商店・事務所・小規模工場、というのが性格。
契約電力の決め方
低圧の場合、契約電力=各機器の容量合計×設備係数で、設備係数は機器の同時使用率を考慮(一般的に60〜80%程度)。アンペア(契約アンペア)でも決められます。
高圧の場合、過去の最大需要電力(デマンド値)で決まり、30分間の平均需要電力の最大値、過去12ヶ月の最大値で決まる、というのが基本ルール。新規契約時は予測値で契約します。
新築工事では実績がないため予測値で契約しますが、予測の根拠は、負荷リスト(建物に設置する電気機器の一覧)、設備容量の合計、同時使用率(負荷率)の見込み、建物用途別の電気使用量目安、というあたり。電気設備の容量計算と契約電力の関係は、許容電流・電圧降下の話とも直結します。


電力会社との申込み・引き込み工事の流れ
新築工事で電力会社と契約・引き込み工事をする際の流れを整理します。
申込みの基本フロー
設計初期の基本計画では、建物の電気使用量を予測し、受電方式を仮決定、電力会社の管轄エリアを確認、というあたりがスタート地点。設計中期の事前協議では、電力会社と引き込み方法の打合せ、引き込み柱の位置・ケーブルルート、必要な工事内容の確認、を進めます。
設計後期の申込書類提出では、電力会社所定の申込書、建物配置図、電気設備図、受電設備の単線結線図、想定使用電力量、を提出。施工初期の電力会社の現地調査では、引き込み柱からの距離測定、必要な電柱・トランスの追加確認、工事費見積りの提示、が行われます。
施工中期の引き込み工事では、電力会社側の工事(電柱建柱、引き込み線敷設等)と需要家側の工事(受電設備、引込口配線、メーター取付台座)を通常両者並行で進めます。施工後期の竣工検査では、受電設備の絶縁抵抗試験・絶縁耐力試験、接地抵抗の測定、検査合格証の発行、を実施。運用開始時には電力会社による系統接続、電気需給契約の最終締結、通電開始、という流れになります。
申込み時の書類と費用負担
申込み時に必要な書類は、電気使用申込書、建物配置図、電気設備図(一般用 or 自家用)、単線結線図、受電設備容量計算書、工事担当者の届出書、というあたり。
引き込み工事の費用負担は、道路上の電柱・引込線が電力会社負担(標準的な範囲)、敷地内の引込線・受電設備が需要家負担、特殊工事(電柱新設等)は協議による、というのが基本ルールです。
→ 新築では「電力会社にいつ申込むか」のタイミングが重要で、設計確定後すぐに申込みしないと、電力会社の工事スケジュールに引っ張られて建物全体の引き渡しが遅れるケースが頻発します。
施工要領書とのスケジュール調整も大事な視点です。

施工管理が押さえる電力会社との協議ポイント
施工管理として電力会社との協議で押さえておきたいポイントを整理します。
初期協議と設計段階
初期協議で確認すべきは、契約電力の妥当性(予測値に対して電力会社が許容するか)、引き込み方法(架空引込み・地中引込みの選択)、引き込み柱の位置(敷地内・敷地外の負担区分)、メーターの位置(建物側・敷地境界側)、引き込みのルート(他の埋設物との取り合い)、工事費の負担区分(電力会社負担・需要家負担)、というあたり。
設計段階での重要事項は、受電設備の容量(契約電力に対して余裕を持つ)、受電設備の設置場所(屋外・屋内、雨水・浸水対策)、保安規程の作成(高圧・特別高圧の場合)、主任技術者の選任(高圧・特別高圧の場合)、を確実に押さえます。
施工段階の協議とトラブル対策
施工段階での協議事項は、電力会社の工事日程(引き込み線・電柱の工事日)、送電開始日(仮送電・本送電のタイミング)、検査日程(受電設備の竣工検査)、通電試験のタイミング(建物側設備の試運転)、というあたり。
ありがちなトラブルと対策は次の通り。
- 契約電力の見積もり過小(建物完成後に増設が必要)→ 設計段階でピーク電力を実測機器で算出
- 電力会社の工事遅延(引き渡しに影響)→ 早期申込み+定期的な進捗確認
- 引き込み柱の位置変更(敷地計画と干渉)→ 早期協議で位置を確定
- 受電設備の場所不足(建物の有効スペース減)→ 設計段階で受電設備の必要面積を確保
高圧・特別高圧では保安規定の作成・届出が義務付けられます。電気主任技術者の選任とセットで進めるべき業務。電気設備の責任者に関する関連記事もぜひ。


電力会社との契約に関する情報まとめ
- 電力会社との契約とは:建物の電気設備を電力系統に接続して電気を使用するための契約
- 受電方式の3区分:低圧(〜50kW)、高圧(50〜2000kW)、特別高圧(2000kW〜)
- 契約種別:従量電灯、業務用、産業用、季節別時間帯別など用途別
- 契約電力:低圧は設備容量、高圧は最大需要電力(デマンド)で決定
- 申込みの流れ:設計→事前協議→申込書→現地調査→引込工事→竣工検査→契約締結
- 施工段階の協議:契約電力、引込方法、メーター位置、工事費負担
- 小売自由化以降:送配電会社と小売電気事業者の2層構造
- 施工管理の役割:契約電力の妥当性確認、電力会社との協議、引込み工事の進捗管理
以上が電力会社との契約に関する情報のまとめです。
電力会社との契約は「建物が電気を使うための前提インフラ」で、施工管理として直接的に書類作成するわけではないものの、契約電力の予測・引き込み計画・電力会社との協議が遅れると、建物全体の引き渡しが大きく遅れる原因になります。「設計段階で契約電力を仮決定→設計確定後すぐに申込み→引き込み工事は電力会社の工程に合わせる」という流れを意識しておくと、電気設備工事が建物全体のクリティカルパスを引っ張ることを防げるかなと思います。
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