第一種電気工事士の免状は試験に合格した日には交付されず、交付を受けるには3年以上の実務の経験が要ります。そして免状で従事できるのは、電気工事士法が定義する自家用電気工作物までです。
- 第一種を取ったら、いま第二種でやってる仕事とどこが変わるの?
- 試験に受かったのに免状がまだ来ない。これ、転職の応募には書けないの?
- 求人票の「第一種電気工事士」って、合格者でもいいの?免状必須なの?
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- 実務経験の年数って、前に変わったって聞いたけど本当?
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- 転職したら講習の期限はリセットされる?前の会社で受けた分はどうなる?
- ビルメンと電気工事会社、第一種を活かすならどっち?
上記の様な悩みを解決します。
第一種電気工事士は、第二種で経験を積んだ人が次に目指す、自家用電気工作物まで手が届く資格です。ただし試験に合格しただけでは免状はまだ交付されず、免状の申請には3年以上の実務経験が要るため、合格と同時に転職市場での価値がすぐ確定するわけではありません。今回は免状交付の条件や実務経験の数え方といった基本を押さえた上で、5年ごとの定期講習の扱いや、求人媒体や資格講座の記事では出てこない「最大電力500kW以上の需要設備が電気工事士法上の自家用電気工作物の定義から除かれている」という上限まで、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、免状の交付を待っている段階の方にも読みやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
第一種電気工事士の免状は、試験に合格した日には交付されない
結論から言うと、第一種電気工事士は試験に合格した時点ではまだ免状を持っておらず、免状の交付には試験の合格に加えて実務の経験が要ります(法第4条第3項第1号の場合)。転職活動の日程を組むときは、合格発表日ではなく免状が手元に来るまでの流れで考えておいたほうが安全です。
まず交付する相手が誰かというところから押さえます。電気工事士法(昭和35年法律第139号)第4条第2項は「電気工事士免状は、都道府県知事が交付する。」と定めています(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000139 /2026-09-09確認)。国がまとめて出すのではなく、都道府県の窓口が出す仕組みだという点は、あとで住所や勤務地が変わる話にも関わってきます。
交付の条件は同条の第3項です。同法第4条第3項は「第一種電気工事士免状は、次の各号の一に該当する者でなければ、その交付を受けることができない。一 第一種電気工事士試験に合格し、かつ、経済産業省令で定める電気に関する工事に関し経済産業省令で定める実務の経験を有する者 二 経済産業省令で定めるところにより、前号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有していると都道府県知事が認定した者」と定めています(同法第4条第3項)。第一号を読むと、試験の合格と実務の経験が「かつ」でつながれています。片方だけでは足りない、という書き方です。なお第二号には、都道府県知事が同等以上の知識及び技能を有すると認定する道も書かれています。この記事では、試験に合格して免状を目指す第一号の場合を見ていきます。
その実務の経験の長さは省令にあります。電気工事士法施行規則(昭和35年通商産業省令第97号)第2条の4第2項は「法第四条第三項第一号の経済産業省令で定める実務の経験は、三年以上の従事とする。」と定めています(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/335M50000400097 /2026-09-09確認)。現在は学歴にも受験の時期にも触れず、三年以上の従事と一本で書かれています。
「5年から3年に短縮された」という説明は正確ではない
ここは実際の条文を並べて確認しておきます。改正前の同項、つまり令和3年3月31日まで有効だった条文は「2 法第四条第三項第一号の経済産業省令で定める実務の経験は、次のとおりとする。一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による大学若しくは高等専門学校又は旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学若しくは旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校において第十一条に定める電気工学に関する課程を修めて卒業した者(当該課程を修めて同法による専門職大学の前期課程を修了した者を含む。)にあつては、卒業後(同法による専門職大学の前期課程を修了した者にあつては、修了後)三年以上の従事 二 前号に規定する者以外の者にあつては、五年以上の従事」でした(e-Gov法令API https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/335M50000400097?asof=2021-03-31 /2026-09-09取得)。
つまり改正前も、大学や高等専門学校で電気工学に関する課程を修めて卒業した人は、卒業後3年でした。5年が要ったのはそれ以外の人です。この区別を撤廃して全員を三年以上の従事に揃えたのが、令和三年三月一〇日経済産業省令第一二号で、その附則第一条は「この省令は、令和三年四月一日から施行する。」としています(経過措置の定めはありません/同API ?asof=2021-04-01 /2026-09-09取得)。
だから「全員が5年だったものが3年に短縮された」という説明は、正確ではありません。正しくは学歴による区別が無くなった改正です。高卒や、現在の専修学校専門課程を出て現場に入った人にとっては実質的に2年分の前倒しですが、大学の電気系を出た人にとっては年数そのものは変わっていません。自分がどちら側だったかで、この改正の意味は変わります。
転職の時間軸のどこに効くのか
ここまでの条文を、応募から入社までの流れに当てはめます。免状が要るのは作業に従事する場面です。同法第3条第1項は「第一種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第一種電気工事士」という。)でなければ、自家用電気工作物に係る電気工事(第三項に規定する電気工事を除く。第四項において同じ。)の作業(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない。」と定めています(同法第3条第1項)。名宛人は「免状の交付を受けている者」であって、試験の合格者ではありません。
そのうえで、免状の交付までにどれくらいの期間がかかるかは、この記事では書きません。交付するのが都道府県知事である以上、手続きの流れも標準的な処理期間も窓口ごとに決まる話で、全国共通の日数を示した公表資料が見当たらないからです。入社日が決まっている人ほど、ここは早めに交付先の都道府県に直接確認しておいてください。
免状の交付に関して、応募の前に自分の側ではっきりさせておきたいのは次の4つです。
- 第一種電気工事士試験に合格しているか(法第4条第3項第1号の前半)
- 省令で定める実務の経験が三年以上あるか(施行規則第2条の4第2項)
- 免状を交付するのは都道府県知事であること(法第4条第2項)
- 自家用電気工作物の作業に従事できるのは「免状の交付を受けている者」であること(法第3条第1項)
なお、求人票に「第一種電気工事士」とある場合に合格者でも応募できるかどうかは、会社ごとの募集条件の話であって、法令が決めていることではありません。条文から言えるのは、作業に従事する段階では免状が必要だ、というところまでです。応募書類にどう書くかまで法令が指図してくるわけではないので、そこは募集要項と面接で確認する項目になります。
免状の種類と試験の区分そのものは、資格の解説記事の側で扱っています。

合格率だけを見ると難関ではない。人数を絞っているのは実務経験のほう
第一種は難関だから価値がある、という書かれ方をよく見かけます。ただ、公表されている合格率を並べると、少なくとも試験そのものは極端に人を落とす作りにはなっていません。
最新の結果から見ます。電気技術者試験センターの公表資料によると、令和8年度上期の学科試験は「学科試験の受験者数は14,507人でした。第一種電気工事士試験委員会において決定した合格基準(60点以上)に基づき、合格者数は8,307人、合格率は57.3%となりました。」とされています(実施は令和8年4月1日から5月8日、発表は令和8年5月22日/https://www.shiken.or.jp/ecee-overview/press/upload/2026_P_kamikigakka_849562.pdf /2026-09-09確認)。
技能試験も同じ傾向です。同センターの令和8年度上期技能試験の資料は「上期技能試験(学科試験免除者及び学科試験合格者対象)の受験者数は12,514人でした。…合格者数は7,019人、合格率は56.1%となりました。」としています(実施は令和8年7月4日、全国52試験地57試験会場、発表は令和8年7月24日、合格基準は「欠陥がないこと」/https://www.shiken.or.jp/ecee-overview/press/upload/2026_P_kamikiginou_66338.pdf /2026-09-09確認)。
年ごとのぶれも小さい範囲に収まっています。上期の学科試験の3年ぶんは次のとおりです(各資料末尾の参考表/2026-09-09確認)。
- 令和6年度上期学科:受験者11,997人・合格者7,112人・合格率59.3%
- 令和7年度上期学科:受験者13,524人・合格者7,643人・合格率56.5%
- 令和8年度上期学科:受験者14,507人・合格者8,307人・合格率57.3%
技能の上期も令和6年度57.0%、令和7年度55.1%、令和8年度56.1%と、同じ幅で動いています(同参考表)。過去の下期の実績としては、令和7年度下期の学科試験が受験者22,630人(CBT方式4,569人、筆記方式18,061人)・合格者13,092人・合格率57.9%でした(発表は令和7年10月20日/https://www.shiken.or.jp/ecee-overview/press/upload/2025_P_shimokigakka_665287.pdf /2026-09-09確認)。なお令和8年度下期の結果は2026年9月9日時点で公表されていないので、この記事では扱いません。
半分以上が受かる試験を難関と呼ぶかどうかは人によりますが、少なくとも「合格率が低いから持っている人が少ない」という説明は、この数字とかみ合いません。人数を絞っているのは試験ではなく、前の章で見た免状の側の要件、つまり三年以上の実務の経験(電気工事士法施行規則第2条の4第2項)だと考えるほうが条文にも数字にも合います。試験対策の量よりも、実務の年数をどう数えて証明するかのほうが、転職の時期を決める要素になりやすいということです。
学科と技能のどちらで止まったかで次の動きが変わる話は、別の記事にまとめています。

免状を待っている間も、第一種の合格者にできることがある
実務の経験が三年に届かないまま試験に受かった人にとって、免状が来るまでの期間は宙ぶらりんに見えます。ただ、制度の側を見ると、この期間は必ずしも待つだけの空白ではありません。
鍵になるのが認定電気工事従事者という別区分です。電気工事士法施行規則第4条の2第2項は「法第四条の二第四項の認定は、次の各号の一に該当する者について行う。一 第一種電気工事士試験に合格した者」と定めています(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/335M50000400097 /2026-09-09確認)。ここが重要なところで、条文の基準は「第一種電気工事士免状の交付を受けている者」ではなく「第一種電気工事士試験に合格した者」です。免状の有無ではなく、試験に受かったかどうかで書かれています。
この認定で従事できる工事の範囲も条文にあります。同施行規則第2条の3は「法第三条第四項の自家用電気工作物に係る電気工事のうち経済産業省令で定める簡易なものは、電圧六百ボルト以下で使用する自家用電気工作物に係る電気工事(電線路に係るものを除く。)とする。」としています(同上/2026-09-09確認)。経済産業省の「認定電気工事従事者」のページも「この資格が必要な工事は、電圧600V以下で使用する自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)です。」と説明しており、あわせて「本資格は国家試験による取得制度はありません。」と書かれています(https://www.meti.go.jp/information/license/c_text27.html /2026-09-09確認)。試験を受け直す話ではなく、要件に当てはまる人に交付される認定証だということです。
申請の窓口も条文で決まっています。同施行規則第5条の2第2項は「法第四条の二第四項の認定を受けようとする者は、様式第一の五による申請書に第四条の二第二項各号のいずれかに該当する者であることを証明する書類を添えて、産業保安監督部長に提出しなければならない。」としており、認定証の交付申請先も「当該認定証の交付を受けようとする者の住所地を管轄する産業保安監督部長」と定められています(同規則第9条の2第1項/2026-09-09確認)。都道府県知事が出す免状とは窓口そのものが違うので、混ぜないでください。
免状待ちの期間に確認しておける項目を挙げます。
- 認定の第一号が「第一種電気工事士試験に合格した者」であること(施行規則第4条の2第2項第1号)
- 認定で従事できるのは電圧600V以下で使用する自家用電気工作物に係る電気工事で、電線路に係るものは除かれること(同規則第2条の3)
- 申請先が産業保安監督部長であり、免状の窓口とは別であること(同規則第5条の2第2項・第9条の2第1項)
- 免状に必要な三年以上の実務の経験を、この期間も数え続けられること(同規則第2条の4第2項)
認定の申請にかかる費用や手続きの所要期間は、今回一次資料で確認していないので書きません。制度そのものの成り立ちはこちらが詳しいです。

第二種の免状から認定に進む場合の要件は条文の号がそもそも別で、そちらは第二種の側の記事で条文ごと扱っています。

第一種が効く職場は、扱う電気工作物で分かれる
活かせる仕事の一覧を業種名で並べた記事は多いのですが、業種名からは自分の免状が要る職場かどうかが決まりません。決めているのは会社の名前ではなく、その会社が触る電気工作物の区分です。ここは条文から逆算するのが一番早いところです。
線は電気工事士法第3条の第1項と第2項の間にあります。第1項は「第一種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第一種電気工事士」という。)でなければ、自家用電気工作物に係る電気工事(第三項に規定する電気工事を除く。第四項において同じ。)の作業(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない。」としています(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000139 /2026-09-09確認)。一方の第2項は「第一種電気工事士又は第二種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第二種電気工事士」という。)でなければ、一般用電気工作物等に係る電気工事の作業(一般用電気工作物等の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない。」と定めています(同法第3条第2項)。
読み替えると、一般用電気工作物等の側は第二種でも足りる領域で、第一種でなければ入れないのは自家用電気工作物の側だけです。第一種を取って変わるのは、この自家用の領域が開くことです。逆に言えば、扱う設備が一般用電気工作物等に収まっている職場では、第一種を持っていても仕事の中身は第二種と同じところに落ち着きます。第二種で数年やってきた人が「取ったのに何も変わらない」と感じるとしたら、資格ではなく職場の設備の側が理由になっている可能性があります。
条文の書き方として押さえておきたいのは、第2項の名宛人に第一種電気工事士も含まれている点です。第一種の免状を取っても、一般用電気工作物等の工事ができなくなるわけではありません。第2項の「一般用電気工作物等」という語がどこまでを指すかは、第二種の側から見たほうが分かりやすいので、第二種電気工事士の転職記事の定義の節にまとめてあります。

自家用電気工作物を持っているのは、電気を使う側の需要家です。受変電設備を構内に持つビル、工場、商業施設、病院、学校といった建物がそれにあたります。そう考えると、第一種の免状が効く職場は「その設備の工事を請けに行く側」と「その設備を持っている側で維持管理する側」の2通りに分かれます。前者は電気工事会社や設備工事会社、後者は建物や工場の管理部門と、そこから業務を受けている設備管理の会社です。どちらに就いても、自家用電気工作物に係る電気工事の作業に従事する場面では同じ法第3条第1項が掛かります。求人を見るときは、業種の名前より先に「この募集は需要家側なのか、請け負う側なのか」を切り分けたほうが、自分の免状との距離が測れます。
ビルメンと電気工事会社を業種名で比べても答えは出ない
「ビルメンと電気工事会社、第一種を活かすならどっち」という問いは、そのままでは答えが出ません。どちらの業種にも、自家用電気工作物を持つ建物や工場を担当する職場と、一般用電気工作物等で完結する職場の両方があるからです。同じビルの設備管理でも、受変電設備の保守を自社の担当範囲として持っている現場と、一次側を外部に委託していて日常点検までしか触らない現場とでは、免状が要る場面の数が違います。工事側も同じで、年間を通して自家用の改修に入る部署と、竣工後の軽微な手直しが中心の部署では、第一種の出番の頻度が変わります。
求人票の資格欄だけから、その会社がどちらの領域で回っているかが読み取れるとは限りません。面接まで進んだら、扱う設備の受電電圧を直接聞いてしまうのが早いと思います。数字が返ってくれば、あとは条文の側と突き合わせるだけです。
設備管理という職域の中身は、次の記事に分けてあります。

作業に従事する側から、管理する側へ移る道もある
もうひとつ、第一種を持っている人の選択肢に、作業に従事する立場から作業を管理する立場へ移る道があります。施工管理の側は電気工事士法ではなく別の資格体系で動いているので、第一種電気工事士だけでその職に就けると断定はできません。ただ、電気の設備を条文の区分で理解している人が管理側に回ると、図面と現場の突き合わせで効くのは確かです。範囲を広げる方向に進むのか、管理側に回る方向に進むのかを先に決めておかないと、判断の軸が毎回ぶれます。
管理側の求人がどう見えるかは、こちらで解説しています。

自分で登録して独立する道を考えている場合は、電気工事士の免状とは別に電気工事業の登録という制度が関わります。免状があれば自動的に登録できるという話ではないので、要件はこちらで確認してください。

募集要項を読むときに、条文の側から確かめられることを並べます。
- 応募先の需要設備が最大電力500kW未満に収まるか(次の章で見る法第2条第2項の定義の内側かどうか)
- その設備の工事に、いま誰が従事しているか(法第3条第1項)
- 募集の中心が一般用電気工作物等の領域に収まっていないか(法第3条第2項)
- 三年以上の実務の経験(施行規則第2条の4第2項)を、いつからいつまで、誰に証明してもらえるか
手当の金額と、年齢による採否については、この記事では数字を出しません。手当は会社ごとの制度で、公表された相場が存在しないためです。年齢と採否の関係も、今回の一次資料からは何も言えません。
扱う電気工作物で職場が分かれるとして、では実際にどこで求人を探すか、という話が残ります。求人媒体やエージェントごとの得意分野は、この記事では扱わず、比較の記事に寄せてあります。

第一種にも上限がある。最大電力500kW以上の需要設備は範囲外
第一種を取ると範囲が広がる、という説明はよく見ますが、その広がった先にも天井があります。電気工事士法の中の「自家用電気工作物」という言葉が、最初から一部を除いた形で定義されているためです。
同法第2条第2項は「この法律において「自家用電気工作物」とは、電気事業法第三十八条第四項に規定する自家用電気工作物(小規模事業用電気工作物及び発電所、変電所、最大電力五百キロワット以上の需要設備(電気を使用するために、その使用の場所と同一の構内(発電所又は変電所の構内を除く。)に設置する電気工作物(同法第二条第一項第十八号に規定する電気工作物をいう。)の総合体をいう。)その他の経済産業省令で定めるものを除く。)をいう。」と定めています(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000139 /2026-09-09確認)。かっこ書きの中に「除く」が並んでいるのが読みどころで、最大電力500kW以上の需要設備は、そもそもこの法律の「自家用電気工作物」に入っていません。
末尾の「その他の経済産業省令で定めるもの」の中身は施行規則にあります。同施行規則第1条の2は「法第二条第二項の経済産業省令で定める自家用電気工作物は、発電所、蓄電所、変電所、最大電力五百キロワット以上の需要設備、送電線路…及び保安通信設備とする。」としています(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/335M50000400097 /2026-09-09確認)。定義から外れている主なものを並べると次のようになります。
- 小規模事業用電気工作物(法第2条第2項)
- 発電所(法第2条第2項・施行規則第1条の2)
- 蓄電所(施行規則第1条の2)
- 変電所(法第2条第2項・施行規則第1条の2)
- 最大電力500kW以上の需要設備(法第2条第2項・施行規則第1条の2)
- 送電線路および保安通信設備(施行規則第1条の2)
ここで気をつけたいのは、この500kWという線が「第一種では通用しない」という意味ではなく、「電気工事士法の作業範囲の話がそこから先には及んでいない」という意味だという点です。定義から除かれているので、電気工事士法第3条第1項の縛りもそこには掛かりません。その領域を誰がどんな資格で扱うかは、電気工事士法ではなく電気事業法の側の仕組みになります。電気事業法側の主任技術者の選任要件は今回一次資料で確認していないので、この記事では断定しません。
第一種の次に何を目指すかを考えるとき、この天井の存在は知っておく価値があります。電験三種という選択肢が話題に上がるのは、範囲の続きがそちら側にあるからです。難易度の実像はこちらから確認できます。

免状の交付から5年以内ごとの定期講習は、会社を変えても付いてくる
最後は、転職を考えている人がいちばん見落としやすいところです。第一種電気工事士には、免状を持ち続けている限り定期的に受けなければならない講習があります。しかも、その義務は勤務先ではなく免状の側に付いています。
電気工事士法第4条の3は「第一種電気工事士は、経済産業省令で定めるやむを得ない事由がある場合を除き、第一種電気工事士免状の交付を受けた日から五年以内に、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣の指定する者が行う自家用電気工作物の保安に関する講習を受けなければならない。当該講習を受けた日以降についても、同様とする。」と定めています(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000139 /2026-09-09確認)。読み取れるのは3つです。起算点が「免状の交付を受けた日」であること、期限が五年以内であること、そして最後の一文があるので1回受けて終わりではないことです。3つ目の「当該講習を受けた日以降についても、同様とする。」は、受講した日を新しい起算点にして同じ五年を数え直す、と読めます。つまり2回目以降の期限は、免状の交付日ではなく直近に受けた講習の日から数えることになります。
条文の主語が「第一種電気工事士」である点にも注目してください。会社に義務を課す書き方ではなく、免状を持っている本人に課す書き方になっています。実務では会社が受講の案内や費用を出す例もありますが、それは会社ごとの運用であって、条文が名指ししているのは本人です。だから、勤務先が変わっても義務そのものは自分に残ります。
「転職したら期限はリセットされるのか」という疑問については、条文が答えを出してくれます。起算点として書かれているのは「免状の交付を受けた日」であって、入社日でも退職日でもありません。実際、法にも施行規則にも、勤務先の変更に応じて受講の期限を扱う規定は置かれていません。ただ、実際の運用が転職先でどう扱われるかまでは条文の外の話なので、この記事では断定しません。確実なのは、期限の計算に必要な日付が自分の免状に書いてあるということです。
例外もきちんと条文になっています。施行規則第9条の8は「法第四条の三の経済産業省令で定めるやむを得ない事由」として、海外出張をしていたこと、疾病にかかりまたは負傷したこと、災害に遭つたこと、法令の規定により身体の自由を拘束されていたこと、社会の慣習上または業務の遂行上やむを得ない緊急の用務が生じたこと、その他経済産業大臣がやむを得ないと認める事由があつたこと、の6号を列挙しています(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/335M50000400097 /2026-09-09確認)。転職の準備が忙しいことは、この6号のどれにも当てはまるとは考えにくいところです。
細かい手続きの所在も確認しておきます。同施行規則第9条の24は「第九条の九から前条までに定めるもののほか、定期講習について必要な事項は、経済産業大臣が定める。」としています(同上/2026-09-09確認)。受講期間の細目は施行規則に書かれておらず、大臣が定めるものに委ねられている、という構造です。したがって、期間の根拠として確実に示せるのは法第4条の3の「五年以内」までです。
受講にいくらかかるか、どこが実施しているか、受けなかったらどうなるかについては、この記事では書きません。費用と実施団体は今回一次資料で確認していませんし、法第4条の3には受講しなかった場合の効果が書かれていないからです。免状が失効すると説明している記事も見かけますが、条文にその定めは見当たりません。ここは自分の免状を交付した都道府県と、指定された講習の実施機関に直接確認してください。
僕の見方では、この定期講習は転職の面接で意外と効きます。免状の交付日と直近の受講日をすぐ答えられる人は、資格を持っているだけの人ではなく、資格を管理している人として見えるからです。日付は免状に書いてあるので、応募の前に一度確認しておいてください。
※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
【PR】次の一歩:第一種の先をどう積み上げるかを決める
第一種電気工事士を取ったのに、500kWの壁や定期講習の負担に頭を抱えていませんか。
- 500kW以上の需要設備に関わりたいが、第一種の範囲だけでは足りないと分かった
- 免状をもらうまでの実務経験のカウントや、5年ごとの定期講習など、確認する項目が想像より多い
- 次にどの国家資格を目指せば天井を越えられるのか、比較する材料が少ない
第一種電気工事士の転職に関する情報まとめ
- 免状の交付:試験の合格と三年以上の実務の経験の両方が要る。令和3年4月1日の改正は学歴区分の撤廃で、全員が5年から3年になったわけではない(法第4条第3項第1号・施行規則第2条の4第2項)
- 合格率:令和8年度上期は学科57.3%・技能56.1%。絞っているのは試験ではなく免状の側の要件
- 免状待ちの期間:認定電気工事従事者の認定の第一号は「第一種電気工事士試験に合格した者」で、免状の有無が基準ではない(施行規則第4条の2第2項第1号)
- 効く職場:第一種でなければ入れないのは自家用電気工作物の側だけ。業種名ではなく扱う電気工作物で決まる(法第3条第1項・第2項)
- 範囲の上限:最大電力500kW以上の需要設備は、電気工事士法上の自家用電気工作物の定義から除かれている(法第2条第2項・施行規則第1条の2)
- 定期講習:起算点は免状の交付を受けた日で、五年以内ごと。義務は会社ではなく本人に付く(法第4条の3)
以上が第一種電気工事士の転職に関する情報のまとめです。
第一種電気工事士の転職で最初に手を付けるべきなのは、求人を眺めることではなく、自分の免状に印字されている交付日を確認することだと考えています。そこが決まれば、定期講習の期限は五年で数えられますし、実務の経験を何年ぶん証明できるかも、その日を基準に組み立て直せます。合格発表を待っている段階の人にも、認定電気工事従事者という動ける道が制度の側に用意されています。免状が来るまでの期間を、ただ待つだけの空白にしなくていいということです。
学科から組み立て直す人向けに、独学の進め方は別記事にしてあります。

