A種接地工事は建物の重要な設備を接地するのに使われます。
ここで施工不良が発生すれば直で人の命に関わってしまう部分ですので、施工方法や接地抵抗値、注意点などについて正しく理解しなければなりません。
本記事では新卒で業界大手の電気設備施工管理を経験し、1級電気工事施工管理技士の国家資格を取得した私がA種接地工事について徹底解説します。
この記事で分かることは下記です。
- A種接地工事とは?
- A種接地工事を施工する目的と注意点
- 接地線の太さと接地抵抗値
特に新築工事で基礎工事から入ると絡む内容になりますので、新築工事を担当しているもしくは新築工事を担当する予定のある施工管理の方は必読です。
とはいいつつも、ほとんどの技術者が新築工事を一度は経験するものだと思いますので、是非最後まで読んでみてください。それではいってみましょう。
A種接地工事とは?目的についても解説
A種接地工事は、キュービクルやPAS、VCB等の一瞬の感電でも命取りになるような高圧機器を接地するのに使われます。
前提として、接地工事は人体を電気から守るために施工されます。人が活線部に触れた際、接地工事がなされていれば地面へと電気が流れ、感電事故を防ぐことができますよね。
その為の接地工事ですが、A種接地工事からD種接地工事まで4種類あります。
A種に近づけば近付くほど重大な設備(一次側)の接地となり、D種に近づけば近付くほど簡易的なもの(二次側)の接地工事です。つまりA種接地工事をするということは、建物の中で最重要な設備の接地をするというイメージで問題ないでしょう。
さて、A種接地工事ですが、下記の様な設備を接地されるのに使われます。
- キュービクル(受変電設備)
- PAS(電柱のバケツ)
- UGS(PASの地中版)
- 避雷器
- トランス
- VCB(真空遮断器)
- LBS(高圧交流負荷開閉器)
より高圧側、より上流の設備が並んでいますね。
A種接地工事の施工方法は?
A種接地工事の施工方法は、結論「地上より75cm以上に接地極を打設する」です。
施工する際、どれだけの深さに施工しなければならないと決まっている訳です。75cm。750mmは実際にやってみると分かりますが、長くもなければ短くもない。。。といった感じです。
特に地盤が緩い様な地域で施工するとなると、楽です。接地極がグイグイ入っていくので、特に問題もなく施工できるかなと思います。
ただ、地盤が固い場所だと750mm埋設するのは大変かもしれません。
1箇所目で入らなければ場所を変えて、次も入らなかったら場所を変えて、といった形で場所を変えていく訳ですが、ここで一点大事な注意点があります。
「鉄柱や金属体に沿って施工する場合は、地中でその金属体から1m以上離さなければならない」というルールが決まっています。
要するに、近くに金属あったらダメだよ?ってことです。
接地極の打設が大変な地域の場合、色々と場所を変えて試行錯誤している場合など、注意しなければ施工不良になってしまうので注意しましょう。
A種接地工事における接地線の太さ
A種接地工事における接地線の太さは「直径2.6mm(5.5sq)以上の軟銅線」です。
低圧で頻繁に使われるFケーブルが2.0mmであることを考えると相当太い接地線を利用することが分かりますよね。A種接地工事ともなると、それくらいの太さが必要になります。
また、避雷器用の接地線の場合は14sq以上であることが決められています。
注意点としては、A種接地工事を分岐する際、ボルコンの使用をしないことです。
A種接地工事とはいえ、複数の負荷に分岐することがあるかと思いますが、ボルコンを使って分岐するとよくありません。ネジの緩みが原因になって、接地が取れなくなってしまう場合があります。
特にA種接地工事の様に大きな電気を扱う様な場合、それはもう確実に接地が取れていなければなりません。ボルコンが緩んで、万が一にでも接地が取れないなんてことになれば一大事です。
勿論、D種接地工事だからといって気を抜いて良い訳ではありません。
ただA種接地工事の場合は、接地する設備が設備ですので、ボルコンを使用して分岐しない様に注意しましょう。
A種接地工事における接地抵抗値
A種接地工事における接地抵抗値は、結論「10Ω以下」です。
100Ω以下で許容されているD種接地工事と比較して見ても、接地抵抗値の基準が高いことが伺えます。それほど大事な設備の接地をするのだから、条件も厳しいということです。
ちなみに、接地抵抗値を測定する際の注意点ですが、季節ごとに接地抵抗値が変化するので注意しましょう。
夏と冬では違った抵抗値になることがあります。それぞれ、数ヶ月おきに測定した際に抵抗値が基準をクリアしていなければならないので、間違えない様にしましょう。
最初接地極を打設する際にギリギリだった場合、後から測定したら基準の接地抵抗値を上回ってしまった。。。といったケースも余裕で考えられます。
ある程度、接地抵抗値には余裕を持って接地極を連続で打ち込んだりしましょう。
A種接地工事に関する情報のまとめ
- A種接地工事とは:キュービクルやPAS、VCB等の一瞬の感電でも命取りになるような高圧機器を接地するのに使う
- 目的:人体の安全を確保するため
- 施工方法:地上より75cm以上に接地極を打設する
- 接地線の太さ:直径2.6mm(5.5sq)以上の軟銅線
- 接地抵抗値:10Ω以下
以上がA種接地工事に関する情報のまとめです。
A種接地工事以外にもB種接地工事、C種接地工事、D種接地工事がありますが、特にB種接地工事とD種接地工事がよく用いられます。
接地抵抗値や接地対象などが異なりますので、違いについて理解しておきましょう。
下にリンクを貼っておくので、よかったら読んでみてください。それでは。