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弾塑性とは?弾性・塑性との違い、応力ひずみ曲線、計算、降伏など

  • 弾塑性ってなに?
  • 弾性・塑性とどう違うの?
  • 応力ひずみ曲線でどう表す?
  • 設計でどう使われている?
  • 弾塑性解析って何をする?
  • 数値の目安はどれくらい?

上記の様な悩みを解決します。

弾塑性とは、結論「降伏点を境に、弾性挙動から塑性挙動に切り替わる材料の性質」のことです。鋼材は典型的な弾塑性材料で、降伏点まで(弾性域)は荷重を抜けば元に戻る、降伏点を超えた後(塑性域)は変形が残る、という2段階の挙動を示します。この性質を「弾塑性」と呼び、構造設計の根幹をなす考え方。耐震設計の現代版である保有水平耐力計算・限界耐力計算は、すべて弾塑性の考え方で組み立てられています。本記事では、弾塑性の意味・弾性/塑性との違い・応力ひずみ曲線でのモデル化・構造設計での使い方・弾塑性解析まで、施工管理の視点で初心者向けに整理します。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

弾塑性とは?

弾塑性とは、結論「降伏点を境に、弾性挙動から塑性挙動に切り替わる材料の性質」のことです。

英語では elasto-plasticity。「弾性」と「塑性」を合成した名前で、両方の性質を併せ持つ意味。

2つのフェーズで挙動が変わる

弾塑性の材料は、応力レベルによって振る舞いが変わります。

領域 応力レベル 挙動
弾性域 降伏点未満 荷重を抜くと元に戻る(フックの法則)
塑性域 降伏点以上 変形が残る(ひずみが解放されない)

→ つまり、「降伏点」が弾性と塑性の境界線になっていて、弾塑性材料はこの境界を行ったり来たりする。

鋼材は典型的な弾塑性材料

建築の主要構造材で最も理想的な弾塑性挙動を示すのが鋼材。SS400は降伏点235N/mm²で弾性→塑性に切り替わる、SN400Bは降伏点235N/mm²で靭性に優れる、SD345(鉄筋)は降伏点345N/mm²、といったあたりが代表例。

→ 鋼材は、降伏後も大きな塑性変形に耐えられるため、地震エネルギーを吸収して建物を粘り強く保つ性質があります。これが現代の耐震設計の根幹。

コンクリートは「不完全な弾塑性体」

コンクリートは弾塑性挙動を示しますが、鋼材ほどきれいではありません。弾性域と塑性域の境界が不明確、圧縮では塑性変形できるが引張ではすぐ破壊、塑性域の変形能力が小さい(脆性的)、という3つの弱点があります。

→ RC造の設計では、コンクリートの欠点を鉄筋で補う形で弾塑性挙動を活用します。

弾性・塑性の基礎概念はこちらに整理しています。

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弾性・塑性との違い

「弾性」「塑性」「弾塑性」の3つの言葉の使い分けを整理しておきます。

①3つの違いの本質

用語 範囲 意味
弾性 降伏点未満の挙動だけ 戻る変形
塑性 降伏点以降の挙動だけ 戻らない変形
弾塑性 降伏点をまたぐ全体の挙動 弾性+塑性の合成

→ 「弾塑性」は弾性と塑性を含む上位概念。実材料の挙動を表すときは、ほぼすべての場合「弾塑性」と表現するのが正確です。

②応力ひずみ曲線で見ると

弾塑性の応力ひずみ曲線は、原点から直線(弾性域、フックの法則 σ=Eε)、降伏点で折れ曲がる、降伏後はほぼ水平または緩やかに上昇(塑性域、応力一定で変形)、という3段階の挙動になります。

→ この「折れ曲がった一本の曲線」全体が弾塑性挙動で、上半分(折れ曲がり後)だけ取り出すと塑性、下半分(折れ曲がり前)だけ取り出すと弾性になります。

③除荷時の挙動

弾塑性材料の特徴は、荷重を抜いたとき(除荷)の挙動にあります。弾性域内で除荷すれば荷重ゼロでひずみゼロに戻る(OA直線に沿って戻る)、塑性域内で除荷すると荷重ゼロになっても残留ひずみが残る(弾性の傾きで除荷線が下降)、というように除荷後の挙動が違います。

→ 一度塑性域に入ると、ひずみは永久変形として残ります。これが「鉄が曲がったら戻らない」現象の本質。

応力ひずみ曲線の詳細はこちらに整理しています。

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応力ひずみ曲線でのモデル化

弾塑性挙動を数式・グラフで簡略化したモデルがいくつかあります。設計実務で使い分けが必要です。

①完全弾塑性モデル

最も単純な弾塑性モデル。弾性域は σ=Eε(直線、傾きE)、塑性域は σ=σy(一定、水平)、という形。降伏点まで直線、降伏後は応力一定で「完全弾塑性」と呼ばれ、手計算の弾塑性解析で使われ、鋼材の挙動を保守的に近似します。

→ シンプルで使いやすいが、降伏後のひずみ硬化を無視するのでやや保守的な評価になります。

②バイリニア(二線形)モデル

完全弾塑性をより現実的にしたモデル。弾性域は σ=Eε(傾きE)、塑性域は σ=σy + E’ × (ε − εy)(傾きE’)、という形。塑性域に緩やかな傾きE’(=ひずみ硬化係数)を導入していて、E’は通常Eの1/100程度。中規模解析・建築の保有水平耐力計算で多用されます。

→ 鋼材の「降伏後も少し応力が上がる」現象(ひずみ硬化)を表現できる。実務で最もよく使われるモデル。

③トリリニア(三線形)モデル

3つの直線を組み合わせたモデル。RC部材で使われます。1段目はひび割れまで(初期剛性)、2段目は降伏まで(剛性低下後)、3段目は降伏後(塑性域)、というように剛性が3段階で変化します。

→ RC部材はひび割れ・降伏・終局の3段階で剛性が変わるので、トリリニアが現実的。

④モデルの使い分け

モデル 適用 用途
完全弾塑性 鋼材の概略評価 手計算・概算
バイリニア 鋼材の精密評価 保有水平耐力計算
トリリニア RC部材 詳細弾塑性解析
多直線・曲線 高精度解析 限界耐力計算・FEM

→ 設計レベルが上がるほど、より精密なモデルが必要になります。

ひずみ硬化の話はこちらに詳しく整理しています。

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構造設計での弾塑性の扱い

現代の構造設計は、弾塑性挙動を活用する前提で組み立てられています。

①保有水平耐力計算(ルート3)

中高層建築の耐震設計の主流。大地震時に建物が塑性ヒンジを形成して粘り強く変形することを許容し、降伏耐力 ≦ 大地震時応力でも保有水平耐力が必要量を上回ればOK、というかたち。ひと言で言えば「降伏してから粘れば壊れない」。

→ 弾塑性挙動を積極的に活用する設計思想。鋼材の塑性変形能力を発揮させる。

②限界耐力計算

性能設計・耐震診断で使われる、より高度な手法。建物全体を弾塑性モデル化し地震エネルギーを動的に評価、安全限界・損傷限界の2レベルで検証、応答スペクトルと応答変位の関係を直接評価、というのが基本構成。

→ 計算は複雑ですが、性能設計の本流。

③塑性ヒンジ(プラスチックヒンジ)

弾塑性設計のキーコンセプト。部材が降伏した位置で塑性変形が集中する箇所を「塑性ヒンジ」と呼び、鋼骨ラーメンの梁端・柱頭で塑性ヒンジを意図的に発生させる設計(弱梁強柱)が定石。ヒンジでエネルギーを吸収して、骨組全体の崩壊を防ぐ仕組みです。

→ 「地震で建物が壊れずに済む」のは、塑性ヒンジが各所でエネルギーを吸収するから。これは弾塑性設計の真髄。

塑性変形の詳細はこちらに整理しています。

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④終局強度設計の考え方

弾塑性設計の終着点が「終局強度」。要求 ≦ 終局強度 ×(安全率)、で評価します。終局強度は部材が完全に壊れる直前の最大強度(弾塑性挙動の全領域を使う)、弾性域だけで設計するより2〜3倍経済的、鉄骨・RC・木造すべてで採用される現代設計法、というのが特徴。

→ 現代の建築構造設計は「弾性で持たせる」のではなく、「弾塑性で粘らせる」が基本姿勢。

降伏点・応力ひずみの基礎はこちら。

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弾塑性解析

実務で行う弾塑性解析の流れを整理します。

①静的弾塑性解析(プッシュオーバー解析)

最もポピュラーな弾塑性解析。建物に水平力を漸増載荷し、各部材が順次降伏していく過程を追跡、塑性ヒンジの発生順序・崩壊メカニズムを確認、保有水平耐力を直接算出、というステップで進めます。

→ 「プッシュオーバー」という名前は、建物を横から押してどんどん変形させていくイメージから。

②動的弾塑性解析(時刻歴応答解析)

入力地震波に対する建物の実時間挙動を追跡。加速度時刻歴を入力し、0.01秒刻みで建物の応答を計算、塑性化の進行・残留変形まで再現、高層建築・免震建築で必須、という構成。

→ 計算は重いですが、最も精密な解析手法。

③解析モデルの作り方

弾塑性解析では、部材ごとに降伏耐力・初期剛性・降伏後剛性を設定します。

部材 モデル化
鉄骨梁 M-θ関係(モーメント-回転角)
鉄骨柱 M-N相関(軸力影響)
RC梁 M-φ関係(モーメント-曲率)
RC柱 M-N-φ三次元相関
耐震壁 M-θ相関+せん断弾塑性

→ それぞれの部材で応力ひずみ曲線(バイリニア/トリリニア)を作って、骨組全体の挙動を組み立てる。

④解析ソフト

実務で使われるソフトは、SS3 / BUS-7(構造設計)が標準的な保有水平耐力計算、MIDAS GENが詳細な弾塑性解析、STERA 3Dが研究・診断向け、OpenSEESが研究用オープンソース、といったところ。

→ 施工管理者は使う機会は少ないですが、設計者の出力を読めるレベルになっておくと、図面や構造計算書の理解度が上がります。

構造力学の基礎はこちらに整理しています。

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SS400の弾塑性数値

代表的な鋼材SS400の弾塑性挙動を具体的な数値で確認します。

①SS400の応力ひずみ曲線の数値

パラメータ 数値
ヤング率 E 205,000 N/mm²
降伏点 σy 235 N/mm²(板厚40mm以下)
引張強さ σu 400〜510 N/mm²
破断ひずみ 21%以上
降伏ひずみ εy σy / E = 235/205,000 ≈ 0.115%

→ 重要な数値感覚として、降伏ひずみは0.1%強でこれを超えると塑性域へ、破断ひずみは21%以上で降伏ひずみの200倍まで耐える、σu / σy ≒ 1.7〜2.2で降伏後の余力(ひずみ硬化)、という3点を押さえておきましょう。

②靭性比(粘りの指標)

靭性比 = 破断ひずみ / 降伏ひずみ ≈ 200。

→ SS400は200倍も塑性変形できることになります。これが鋼材の粘り強さの正体。地震時にこの200倍の余力で建物を守ります。

③設計での扱い

項目
長期許容応力度 F値 / 1.5 = 235/1.5 = 156 N/mm²
短期許容応力度 F値 = 235 N/mm²
降伏比 (σy/σu) 0.6〜0.7程度

→ 降伏点σyがそのまま設計のF値になる。SS400は弾塑性設計の基準鋼材として最もよく使われます。

④板厚での降伏点の変化

板厚40mm以下なら σy=235 N/mm²、板厚40mm超なら σy=215 N/mm²、というように厚板は降伏点が若干下がるので設計で注意します。

SS400の規格詳細はこちらに整理しています。

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弾塑性に関する施工管理の注意点

施工管理者が弾塑性の知識をどう活かすかを整理します。

①構造計算書の読み方

構造計算書には、応力度比(検定比)=許容応力度に対する応力の比、塑性ヒンジ位置=保有水平耐力計算でのヒンジ発生箇所、降伏層・崩壊メカニズム、といった情報が記載されています。施工管理者として、柱・梁の重要度(塑性ヒンジが発生する位置の部材は施工品質に特に注意)、接合部の重要度(塑性ヒンジ近傍の接合部は完全溶け込み溶接が必須)、特殊配筋(プラスチック化が想定される部位は追加配筋・補強が指定)、というあたりを読み解きます。

→ 構造計算書の「ここは塑性化させる箇所」が読めると、施工管理の優先度が決まります。

②施工不良が弾塑性挙動に与える影響

施工不良の影響としては、溶接欠陥(塑性ヒンジ発生時に脆性破壊を起こすリスク)、コンクリの強度不足(RC塑性ヒンジでの粘り低下)、鉄筋の配筋ズレ(塑性域での応力集中)、というあたりが代表的。

→ 一見「許容応力度ギリギリで持っている」場合でも、施工不良があると地震時の塑性化能力が損なわれる。これが施工管理の重要性の根拠。

③材料選定の確認

設計図で「SS400」「SN400B」などと指定された鋼材は、弾塑性挙動を期待しての選定。ミルシートで降伏点を確認、降伏比(σy/σu)はSN材で0.8以下が規定、シャルピー衝撃試験値で靭性をチェック、というのが基本動作。

→ 「同等品」「相当品」での代替は弾塑性挙動が変わるリスクがあるので、設計者承認なしで変更しないのが鉄則。

ミルシートの確認方法はこちら。

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④高力ボルト接合での注意

塑性ヒンジ部の接合は完全溶け込み溶接が標準(高力ボルトでは不可)、塑性化を想定しない部位は高力ボルト摩擦接合でOK、というように接合方法の使い分けが弾塑性設計の前提を支えます。

高力ボルトの詳細はこちらに整理しています。

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弾塑性に関する情報まとめ

  • 弾塑性とは:降伏点を境に弾性挙動から塑性挙動に切り替わる材料の性質
  • 弾性・塑性との違い:弾性は戻る変形、塑性は戻らない変形、弾塑性は両方を含む全体挙動
  • モデル化:完全弾塑性・バイリニア・トリリニアの使い分け
  • 構造設計:保有水平耐力計算・限界耐力計算で活用
  • 塑性ヒンジ:エネルギー吸収の核心メカニズム
  • SS400の数値:σy=235、E=205,000、破断ひずみ21%、靭性比200
  • 施工管理の要点:塑性ヒンジ位置の品質管理、ミルシート、接合部の方式選定

以上が弾塑性に関する情報のまとめです。

弾塑性は「現代の構造設計の根幹をなす」重要な概念で、鋼材の粘り強さが地震大国・日本の建築を支えている、と言っても過言ではありません。施工管理として、構造計算書を読むときに「ここは塑性化させる箇所」が分かるようになると、優先順位の付け方が変わります。降伏点・応力ひずみ曲線・塑性ヒンジ…という関連用語と合わせて、まとめて押さえるのが理解の近道。

合わせて、降伏・応力・ひずみ関連のテーマをまとめてあるので、構造力学・材料力学の理解を深める参考にしてください。

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