- なぜうちの会社は、ここまで1級持ちにこだわるんだろう
- 監理技術者になれると言われても、実際に何が変わるのかが分からない
- 電気って、建築や土木と条件が違うのか同じなのか
- 資格者証は持っているが、講習の期限が切れていたらどうなるんだ
- 年収の数字がサイトごとにバラバラで、どれを信じればいいのか分からない
- 兼任できるようになったと聞いたけど、本当なのか
上記の様な悩みを解決します。
1級電気工事施工管理技士は、電気工事業が建設業法の指定建設業7業種のひとつであることから、求人側の事情が資格に直結する立場です。指定建設業の監理技術者は一級施工管理技士等の国家資格者か大臣認定者に限られていて、実務経験を何年積んでも代わりが利きません。ところが求人の解説を読み比べると、監理技術者を置く下請5,000万円の線を建築工事業の8,000万円と取り違えていたり、令和7年2月1日の改正前の旧金額のまま更新されていない資料を引いたままだったりする説明が、今回こちらで検索上位を確認した範囲では残っていました。今回は求人が出る理由・年収の見方・応募前に確かめることといった基本を押さえた上で、検索上位を占める求人検索サイトやエージェントの自社メディアの見出しには一度も出てこない経営事項審査の技術職員数の点数と、資格者証と講習という別物の有効期限まで、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、制度の条文や改正の追いかけが苦手な方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
電気工事業は指定建設業なので、監理技術者の席は実務経験では代われない
結論から書きます。1級電気工事施工管理技士に求人が付き続ける根っこは、電気工事業が指定建設業だという一点にあります。建設業法施行令 第5条の2(e-Gov法令検索)は指定建設業として「一 土木工事業 二 建築工事業 三 電気工事業 四 管工事業 五 鋼構造物工事業 六 舗装工事業 七 造園工事業」の7業種を挙げており、電気工事業はその3番目に置かれています。そして監理技術者制度運用マニュアル(最終改正 令和7年1月28日国不建技第147号・令和7年2月1日施行)p.2 は、指定建設業に係る建設工事の監理技術者は「一級施工管理技士等の国家資格者又は建設業法第十五条第二号ハの規定に基づき国土交通大臣が認定した者」に限られる、と明記しています。会社が現場に監理技術者を置かなければならなくなったとき、その席に座れる人が制度上ごく限られている、というのが求人の出どころです。
順番に条文を追っていきます。いちばん手前にあるのは主任技術者の義務です。建設業法 第26条第1項(e-Gov法令検索)は、建設業者が請け負った建設工事を施工するときは、その工事現場における施工の技術上の管理をつかさどる者として主任技術者を置かなければならない、と定めています。請け負って施工する以上、現場には必ず技術者が要る。ここまでは業種を問わず共通です。
その上に乗るのが監理技術者です。建設業法 第26条第2項(e-Gov法令検索)は、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者について、下請契約の請負代金の額が政令で定める金額以上になる場合には監理技術者を置かなければならない、と定めています。この条文には括弧書きがあり、当該建設工事に係る建設業が指定建設業である場合は「同号イに該当する者又は同号ハの規定により国土交通大臣が同号イに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者」に限る、と書かれています。指定建設業以外なら選べる第三の道が、電気には無いということです。
その第三の道が何だったのかは、比べてみると輪郭がはっきりします。監理技術者制度運用マニュアル p.16 は、監理技術者になり得る者について、指定建設業7業種は一定の国家資格者または国土交通大臣認定者に限られるのに対し、指定建設業以外の22業種では「一定の指導監督的な実務経験を有する者も監理技術者になり得る」と整理しています。22業種の側にある実務経験というルートが、電気工事業には用意されていません。長く現場を回してきた人を昇格させて穴を埋める、という社内でよくある解決策が、この席についてだけは使えないわけです。
では、その「イに該当する者」に電気で当たるのは誰かというと、告示で決まっています。建設業法第十五条第二号イの国土交通大臣が定める試験及び免許(昭和63年6月6日建設省告示第1317号・最終改正 平成14年3月29日国土交通省告示第268号)は、電気工事業について「一 建設業法による技術検定のうち検定種目を一級の電気工事施工管理とするもの」を掲げています。1級電気工事施工管理技士という資格名が、業種と紐づいた形で名指しされている状態です。
ここまでを整理すると、会社があなたを手放したがらない理由は次のように説明がつきます。
- 請け負った工事を施工するときは、現場ごとに主任技術者を置かなければならない(建設業法 第26条第1項)
- 元請の特定建設業者は、下請契約の請負代金の額が政令で定める金額以上になる場合に監理技術者を置かなければならない(建設業法 第26条第2項)
- 電気工事業は指定建設業7業種に含まれる(建設業法施行令 第5条の2)
- 指定建設業の監理技術者は、一級施工管理技士等の国家資格者か国土交通大臣認定者に限られる(監理技術者制度運用マニュアル p.2)
- 指定建設業以外の22業種にある「指導監督的な実務経験を有する者」というルートは、電気には無い(同 p.16)
そもそもの主任技術者がどういう立場で、監理技術者と何がどう違うのかは、次の記事で押さえておくと以降の話が読みやすくなります。

席は現場だけではありません。建設業法 第15条第2号(e-Gov法令検索)は、特定建設業の許可の要件として営業所ごとに特定営業所技術者を専任で置くことを求めた上で、指定建設業の許可を受けようとする者については、営業所ごとに置く専任の者はイに該当する者か大臣認定者でなければならない、と定めています。一般建設業の側は建設業法 第7条第2号(e-Gov法令検索)が営業所技術者の専任配置を定めており、その要件として建設業法施行規則 第7条の3(e-Gov法令検索)が電気工事業について「一 技術検定のうち電気工事施工管理に係る一級又は二級の第二次検定に合格した者」を挙げています。現場に置く駒としても、営業所に置いて許可を維持する駒としても数えられる。ただし営業所側は専任なので、原則として、現場と営業所を1人で同時に埋められるという意味ではありません。
1級を取ったのに社内の扱いが変わらない、という話はよく聞きます。ここまでの条文を踏まえると、その理由も見えてきます。指定建設業では有資格者を置けないと現場そのものが成立しないので、1級は評価の対象というより、案件を受けるための前提として先に埋められる枠になっているからです。枠が埋まっている間は誰も困らず、埋められなくなった瞬間に初めて金額の話になる。電気は実務経験での代替が効かないぶん、この落差が他の22業種より大きく出ます。
監理技術者を置く線は下請5,000万円、専任が必要になる線は請負代金4,500万円
前の章で「政令で定める金額」と書いたところに、電気工事業の数字を入れていきます。ここが求人記事でいちばん取り違えられている箇所なので、2つの金額を分けて押さえてください。
1つめが、監理技術者を置くかどうかの線です。建設業法施行令 第2条(e-Gov法令検索)は「法第三条第一項第二号の政令で定める金額は、五千万円とする。ただし、同項の許可を受けようとする建設業が建築工事業である場合においては、八千万円とする。」と定めています。ただし書きの8,000万円は建築工事業の場合の数字であって、電気工事業はただし書きに当たりません。つまり電気は本文側の5,000万円で読みます。元請として下請に出す金額の合計が5,000万円以上になるときに、その現場へ監理技術者を置く、という線引きです。
2つめが、その技術者を専任にするかどうかの線です。建設業法 第26条第3項(e-Gov法令検索)は、公共性のある施設もしくは工作物または多数の者が利用する施設もしくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、置くべき主任技術者または監理技術者は工事現場ごとに専任の者でなければならない、と定めています。その政令が建設業法施行令 第27条第1項(e-Gov法令検索)で、「工事一件の請負代金の額が四千五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、九千万円)以上のもの」としています。ここでも括弧内の9,000万円は建築一式工事の場合で、電気工事業は本文側の4,500万円です。
ただし、この専任には例外が付いています。同じ建設業法 第26条第3項(e-Gov法令検索)には、第1号として請負代金が政令で定める金額未満であることなどの要件を満たす場合、第2号として監理技術者補佐を専任で置く場合、というただし書きが置かれています。第1号の金額は建設業法施行令 第28条(e-Gov法令検索)で1億円(建築一式工事は2億円)とされているので、4,500万円以上1億円未満の帯は「専任の対象ではあるが、要件を満たせば兼任できる」という位置づけになります。この例外の中身は記事の後半で扱います。
金額を並べると、こうなります。
| 何を判定する線か | 根拠条文 | 電気工事業に適用される金額 | 括弧・ただし書き側の金額 |
|---|---|---|---|
| 監理技術者を置くか(元請の下請契約の総額) | 建設業法 第26条第2項・建設業法施行令 第2条 | 5,000万円 | 8,000万円(建築工事業の場合) |
| 専任にするか(工事1件の請負代金) | 建設業法 第26条第3項・建設業法施行令 第27条第1項 | 4,500万円 | 9,000万円(建築一式工事の場合) |
※金額はいずれも令和7年2月1日施行の改正で引き上げられたもので、e-Gov法令検索の現行版で確認しています。括弧・ただし書き側の条件語は行ごとに違い、第2条は「建築工事業」、第27条第1項は「建築一式工事」です。
ここで注意してほしいのは、この4つの数字が混線しやすいことです。建築の解説を読んで「4,500万円と9,000万円」というセットを覚えてしまうと、専任の線だけを見ていることになります。逆に「5,000万円と8,000万円」だけを覚えると、監理技術者を置くかどうかの線しか見ていない。電気工事施工管理として自分の現場に当てはめるなら、下請合計が5,000万円以上か、工事1件の請負代金が4,500万円以上か、という2つの問いを別々に立てる必要があります。
そして、この専任という言葉の中身も条文の外で定義されています。監理技術者制度運用マニュアル p.10 は、専任について「他の工事現場に係る職務を兼務せず、勤務中は常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事していること」と説明しています。ただしこれも言い切りにはできません。同じマニュアル p.10 は専任について「専任特例の場合を除く」と断っており、さらに p.11 ④では、専任の者であっても必ずしも当該工事現場への常駐を必要とするものではなく、研修や休暇の取得その他の合理的な理由があり、その間も適切な施工ができる体制を確保できる場合は、短期間(1〜2日程度)工事現場を離れても差し支えない、と説明しています。無条件で抜けられるという話ではありません。原則としては他の現場の職務を持てない働き方になりますが、兼任特例の帯に当たるか、常駐までは求められない場面かで実際の縛られ方は変わります。求人票を見るときに、この定義と例外を頭に置いておくと条件の重さが読めます。
この2つの金額は、応募先を見るときの物差しとしてそのまま使えます。求人票の文言から会社の本音を推測するより、金額の線に自分を当てはめたほうが早いです。
- 電気工事業について特定建設業の許可を持っているか。持っていなければ、下請へ一定額以上を出す元請の立場に立てない(建設業法 第16条・第3条第1項第2号)
- 元請として下請に出す合計が5,000万円以上になる案件があるか。あるなら、その現場の監理技術者は指定建設業の要件で選ぶことになる(建設業法施行令 第2条)
- 工事1件の請負代金が4,500万円以上で、かつ公共性のある施設や多数の者が利用する施設に関する重要な建設工事に当たるものがあるか(建設業法 第26条第3項・建設業法施行令 第27条第1項)
3つめは金額だけでは決まらないので、外から数えることができません。ここは面接で「専任が必要な現場は年間どれくらいありますか」と聞くのが早いです。答えが多いほど自分の資格が使われる会社ですが、同時に自分の拘束も強くなります。どちらを取るかは、この数字を聞いてから決められます。
特定建設業の許可そのものと5,000万円の線引きは、この記事で通して追えます。

会社側の損得は、経営事項審査の技術職員数で説明がつく
前の章までは、現場に置けるかどうかという話でした。もう1つ、会社が入札の場面で使う数え方があります。経営事項審査では技術職員が資格区分ごとの点数に換算されるので、1級を持つ人が社内に何人いるかが、そのまま評点に効いてきます。経営事項審査の事務取扱いについて(通知)(国総建第269号・平成20年1月31日/最終改正 令和8年2月6日国不建第177号)Ⅰの2の(1)のハ p.7〜8 は、技術職員数値の求め方を、一級監理受講者の数に6を乗じ、一級技術者であって一級監理受講者以外の者の数に5を乗じ、監理技術者補佐の数に4を乗じ、基幹技能者またはレベル四技能者であって一級技術者および監理技術者補佐以外の者の数に3を乗じ、二級技術者の数に2を乗じ、その他の技術者の数に1を乗じて得た数値の合計、と定めています。人の数をそのまま足すのではなく、資格区分ごとの重みを掛けて足す仕組みです。
区分と点数は国土交通省の資料にも表の形で示されています。国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和3年4月1日改正)」p.1 の①技術職員数(Z1)に係る改正は、次のとおりです。
| 点数 | 区分 |
|---|---|
| 6点 | 1級監理受講者(技術者を対象とする国家資格の1級又は技術士法に基づく資格を有し、かつ監理技術者資格者証の交付を受けている者) |
| 5点 | 1級技術者(技術者を対象とする国家資格の1級を有する者/技術士法に基づく資格を有する者。いずれも上記を除く) |
| 4点 | 監理技術者補佐 |
| 3点 | 基幹技能者等 |
| 2点 | 2級技術者 |
| 1点 | その他技術者 |
※国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和3年4月1日改正)」p.1
4点の監理技術者補佐は後から入った区分です。国土交通省 関東地方整備局「(補足)技術職員数(Z1)に係る改正(監理技術者補佐)について」p.1 は、令和2年10月1日の建設業法改正により新設された監理技術者補佐について、令和3年4月1日より経営事項審査においても加点対象となり、有資格区分コード005・点数4点として評価される、と説明しています。
6点の区分の中身は、通知の側でもう少し細かく決まっています。同通知 Ⅰの2の(1)のロ① は、一級監理受講者を、建設業法第15条第2号イに該当する者であって、かつ同法第27条の18に定める監理技術者資格者証の交付を受けているもので、登録講習を受講した日の属する年の翌年から起算して5年を経過しないものに限る、と定義しています。1級に合格しただけでは5点の区分で、資格者証の交付と講習の期限まで満たして初めて6点の区分に移る、という構造です。
もう1つ、転職の場面で効いてくる制約が同じ通知に書かれています。Ⅰの2の(1)のハ p.8 のただし書きは「一人の職員につき技術職員として申請できる建設業の種類の数は二までとする」としています。1人が何業種でも数えられるわけではないので、電気の1級を持つ人を電気工事業の欄で数えたい会社にとって、その席は人数分しかありません。
ここから読み取れる会社側の見え方は3つです。
- 技術職員数値は人数の単純合計ではなく、一級監理受講者6・一級技術者5・監理技術者補佐4・基幹技能者等3・二級技術者2・その他1の重みを掛けて合計する(経営事項審査の事務取扱いについて(通知)Ⅰの2の(1)のハ p.7〜8)
- 6点の区分に入るには、1級であることに加えて監理技術者資格者証の交付と講習の期限が要る(同 Ⅰの2の(1)のロ①)
- 1人の職員を技術職員として申請できる業種は2つまでで、席の数には上限がある(同 Ⅰの2の(1)のハ p.8)
ここから待遇の話に直結させたくなりますが、点数と給与の関係を示した公表資料は、今回の確認範囲では見当たりませんでした。何点だから月いくら、という換算は成り立ちません。使えるのは、自分が5点の区分にいるのか6点の区分にいるのか、その差が資格者証と講習だけで埋まるのか、という事実の側だけです。
評点項目の全体像や申請の流れは、次の記事にまとめています。

資格者証と講習は別物で、期限の数え方まで違う
前の章の6点の条件に出てきた資格者証と講習は、名前が似ているせいで一括りにされがちですが、根拠条文も期限の数え方も別々です。
資格者証の側は条文が一行です。建設業法 第27条の18第4項(e-Gov法令検索)は「資格者証の有効期間は、五年とする。」と定めています。期間そのものは5年と決まっていますが、起算日の数え方まで条文が書いているわけではないので、この記事では踏み込みません。
講習の側は条件の付き方が違います。建設業法施行規則 第17条の21(e-Gov法令検索・見出し「講習の受講」)は、法第26条第5項の規定により選任されている監理技術者は、当該選任の期間中のいずれの日においても、登録を受けた講習を受講した日の属する年の翌年から起算して5年を経過しない者でなければならない、と定めています。選任されている期間中のどの日を切り取っても条件を満たしていること、という書き方になっている点が資格者証と違います。
起算日はさらに具体的に示されています。監理技術者制度運用マニュアル(令和7年1月28日改正)p.16 四(3)① は、令和3年1月1日以降は監理技術者講習の有効期限の起算日が講習を受講した日の属する年の翌年の1月1日となり、同日から5年後の12月31日が有効期限になる、としています。受講日そのものではなく翌年の1月1日から数えるので、実質的な期限は受講した月によって変わります。
順番に並べると次のようになります。
- 1級電気工事施工管理の技術検定に合格する(建設業法第十五条第二号イの国土交通大臣が定める試験及び免許・建設省告示第1317号)
- 監理技術者資格者証の交付を受ける。有効期間は5年(建設業法 第27条の18第4項)
- 登録を受けた講習を受講する。選任期間中のいずれの日においても、受講した日の属する年の翌年から起算して5年を経過していないこと(建設業法施行規則 第17条の21)
- 講習の有効期限は、受講した年の翌年1月1日から5年後の12月31日(監理技術者制度運用マニュアル p.16 四(3)①)
受講料や実施機関、申請の手順は今回の確認範囲外なので、この記事では触れません。実務上ここが効くのは、合格しているかどうかと、いま選任できるかどうかが別だという点です。資格者証の交付を受けていない人と、講習の期限が切れている人は、条文の上ではどちらも専任の監理技術者にできません。自分がどの状態にいるのかは、合格証書ではなく資格者証と講習の受講年で決まります。
求人票の年収は、公的統計と突き合わせてから読む
求人票の金額を何と比べるか、という話に移ります。先に区分の話をしておくと、厚生労働省の賃金統計で電気に最も近い職種名は「電気工事従事者」で、施工管理だけを抜き出したものでも、1級の保有者に絞ったものでもありません。以下の数字は、電気工事に関わる人全体の並びとして読んでください。
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表の「電気工事従事者」(産業計・企業規模計10人以上・男女計)は、次のとおりです。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 年齢 | 41.6歳 |
| 勤続年数 | 14.3年 |
| 所定内実労働時間数 | 163時間 |
| 超過実労働時間数 | 17時間 |
| きまって支給する現金給与額 | 411.5千円 |
| 所定内給与額 | 361.5千円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 1,343.1千円 |
| 労働者数 | 21,961(十人) |
※厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表(公表 令和8年3月24日・e-Stat)。労働者数の単位は同表の表記どおり十人です。
この表を見るときに、いちばん先に確認してほしいのは、載っていない項目の方です。同表の表頭に実際に並んでいる項目名は「年齢」「勤続年数」「所定内実労働時間数」「超過実労働時間数」「きまって支給する現金給与額」「所定内給与額」「年間賞与その他特別給与額」「労働者数」の8つで、「年収」という文字を含む項目は1つもありません。求人の解説記事でよく見る「平均年収◯◯万円」は、誰かが月額と賞与を独自の前提で足した合成値であって、この調査が公表している数字ではありません。前提の置き方で答えが変わるものを1つの数字として出すと比較の役に立たないので、この記事では足しません。
項目の定義も押さえておくと、比べるときにずれません。令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況は、本概況に用いている「賃金」を、令和7年6月分として支払われた所定内給与額の平均をいう、としています。その所定内給与額については、同概況が、労働契約等であらかじめ定められている支給条件と算定方法により6月分として支給された現金給与額(きまって支給する現金給与額)のうち、時間外勤務手当・深夜勤務手当・休日出勤手当・宿日直手当・交替手当として支給される超過労働給与額を差し引いた額で、所得税等を控除する前の額をいう、と定義しています。つまり所定内給与額361.5千円は超過労働給与額を含まない額、きまって支給する現金給与額411.5千円はそれを含む額です。差にあたる部分は残業代だけではなく、深夜勤務手当や休日出勤手当なども入ります。
ここが施工管理にとっては大きい差になります。同じ表に超過実労働時間数17時間が別項目で並んでいるとおり、2つの金額の間には残業に相当する部分が挟まっています。求人票に書かれた金額が固定残業代を含むのか含まないのかで、比べる相手が変わるわけです。統計の側が月額を2種類に分けて公表しているのは、まさにここを混ぜないためだと僕は受け取っています。
この表から言えることと、言えないことを分けておきます。
- 「電気工事従事者」は電気工事の施工管理に限定した区分ではなく、資格保有者に絞った区分でもない(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表)
- 同調査の第1表に「年収」を含む項目は存在せず、月額と年間賞与その他特別給与額が別々に公表されている(同)
- 所定内給与額は超過労働給与額を差し引いた額、きまって支給する現金給与額はそれを含む額(同 結果の概況)
- きまって支給する現金給与額と所定内給与額は、令和7年6月分として支払われた額が基準(同 結果の概況 利用上の注意1)
- 年間賞与その他特別給与額だけは対象期間が違い、原則として令和6年1月から令和6年12月までの1年間が対象(同 調査の概要4)
まとめると、求人票のレンジは相場ではなく、その会社がその募集に付けた条件です。統計側から言えるのは、この調査の対象範囲でどのあたりに金額が並んでいるかまでで、そこから個人の適正額は出てきません。比べるときは、レンジの上限ではなく、固定残業代の有無と賞与の扱いを月額2種類のどちらに対応させるかを見るほうが実になります。
なお、応募前に自分の側で確定させておきたいのが実務経験の中身です。年数と証明のしかたは、次の記事で確認できます。

求人の多さを見るなら「電気工事従事者」の欄で見る
求人がどれくらい出ているかは、職業分類の一次データで確認できます。ただし電気は、建築や土木とは別の欄に並んでいます。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」参考統計表6(公表 令和8年8月28日)の職業分類は「建設・採掘従事者/建設躯体工事従事者/建設従事者(建設躯体工事従事者を除く)/電気工事従事者/土木作業従事者/採掘従事者」という並びで、電気工事従事者はこの中の1区分です。建築・土木・測量技術者とは別の欄なので、どちらの数字を見ているかで印象がかなり変わります。
令和8年7月・全国計・常用(パート含む)・原数値の有効求人倍率は、次のとおりです。
| 区分 | 有効求人倍率 | 有効求人 | 有効求職 |
|---|---|---|---|
| 職業計 | 1.05 | 2,038,005 | 1,949,781 |
| 建築・土木・測量技術者 | 5.46 | 59,678 | 10,931 |
| 電気工事従事者 | 3.26 | 21,770 | 6,668 |
※厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」参考統計表6(公表 令和8年8月28日)・全国計・常用(パート含む)・原数値
同じ月でも、パートを除いた系列を見ると数字が動きます。同資料の参考統計表7-2(全国計・常用・除パート)では、職業計1.16、建築・土木・測量技術者6.65、電気工事従事者3.70です。ここで挙げた3区分ではいずれも除パートの方が高く出ますが、どの区分でもそうなるとは限りません。倍率を引用するときはどちらの系列かを必ず一緒に書かないと、比較になりません。
区分そのものについての注記も付いています。同参考統計表の脚注は「(注)上記の数値は、平成21年12月改定の「日本標準職業分類」に基づく区分である。」としています。電気工事従事者という区分は施工管理だけを取り出したものではない、ということです。
読むときの注意点をまとめます。
- 電気を見るなら「電気工事従事者」の欄。建築・土木・測量技術者は別区分で、数字も5.46と3.26で違う(令和8年7月・全国計・常用(パート含む))
- 倍率は有効求人を有効求職で割った値。電気工事従事者は求人21,770・求職6,668という内訳から出た数字で、求人が多いから高いのか求職が少ないから高いのかは、倍率だけでは分けられない
- 電気工事従事者の値は、常用(パート含む)で3.26、常用(除パート)で3.70。どちらの系列を見ているかで0.44ポイント動く
- 集計されているのはハローワークを通った求人と求職だけ。求人媒体やエージェント経由の募集はここに入っていない
倍率が職業計の1.05を上回っているのは事実ですが、それは環境の説明であって、個々の求人の良し悪しとは別の話です。倍率が高いから条件を選べる、と直結させないほうがいいと僕は考えています。
令和6年12月13日の専任合理化で、1人が見られる現場の数が変わった
専任は原則ですが、その原則に例外が加わりました。国土交通省【建設業法】令和6年12月24日HP掲載 p.1 は「【建設業法】現場技術者の専任合理化(R6.12.13施行)」として、主任技術者・監理技術者の専任工事現場の兼任(建設業法第26条第3項第1号、第4項)と、営業所技術者等の専任工事現場の兼任(建設業法第26条の5)の2つを挙げています。1人の技術者が複数の現場に関われる道が、条件付きで開いたということです。
条件付き、というところが要点です。同資料 p.2 は兼任の要件として、全てに適用する必要があるものとして次の8つを挙げています。
| # | 要件 | 定めている法令 |
|---|---|---|
| ① | 請負金額1億円(建築一式工事の場合は2億円)未満 | 政令 |
| ② | 兼任現場数2工事現場以下 | 政令 |
| ③ | 工事現場間の距離が1日で巡回可能かつ移動時間が概ね2時間以内 | 省令 |
| ④ | 下請次数3次まで | 省令 |
| ⑤ | 連絡員の配置 | 省令 |
| ⑥ | 施工体制を確認する情報通信技術の措置 | 省令 |
| ⑦ | 人員の配置を示す計画書の作成、保存等 | 省令 |
| ⑧ | 現場状況の確認のための情報通信機器の設置 | 省令 |
※国土交通省【建設業法】令和6年12月24日HP掲載 p.2
このうち政令側の2つは条文でも確認できます。建設業法施行令 第28条(e-Gov法令検索)は「法第二十六条第三項第一号イの政令で定める金額は、一億円とする。ただし、当該建設工事が建築一式工事である場合においては、二億円とする。」と定め、同 第30条は法第26条第4項の政令で定める数を二としています。電気工事業は建築一式工事ではないので、金額はただし書きではなく本文の1億円で読みます。
もう1つ、専任義務そのものを外す道が監理技術者補佐です。監理技術者制度運用マニュアル(令和7年1月28日改正)p.2 ③ は、監理技術者補佐は工事現場ごとに専任で置かなければならないとした上で(法第26条第3項第2号)、その要件を、請け負った建設工事の種類に係る主任技術者の資格を有する者のうち一級の技術検定の第一次検定に合格した者、としています。つまり、当該建設工事の種類に応じて指定された検定種別の一級施工管理技士補です。検定種別を問わず技士補ならよい、という話ではありません。称号の根拠は建設業法施行令 第40条第1項(e-Gov法令検索)にあり、第一次検定に合格した者は級および検定種目の名称を冠する技士補、第二次検定に合格した者は級および検定種目の名称を冠する技士とされています。
制度の整理は次のとおりです。
- 現場技術者の専任合理化は令和6年12月13日施行で、現場どうしの兼任と、営業所技術者等の兼任の2本立て(国土交通省【建設業法】令和6年12月24日HP掲載 p.1)
- 兼任の要件は8つあり、全てを満たす必要がある。金額と現場数だけでは判定できない(同 p.2)
- 政令が定めているのは、請負金額1億円(建築一式工事は2億円)未満と、現場数2まで(建設業法施行令 第28条・第30条)
- 監理技術者補佐は工事現場ごとに専任で置く必要があり、一級の第一次検定合格者、すなわち一級施工管理技士補が該当する(監理技術者制度運用マニュアル p.2 ③・建設業法施行令 第40条第1項)
判定の話をしたいわけではありません。1人の1級技術者が条件付きで2現場まで見られる制度があるなら、採る側にとっての1人あたりの価値は「1現場ぶん」では計算されなくなる、という需要の形の話です。同時に、要件が8つ並んでいるということは、実際に兼任が成立する現場はそう多くないという読み方もできます。求人票の「兼任可」という一言だけでは、何も確定していないと考えておいた方が安全です。
なお、ここで扱ったのは配置技術者の話で、現場代理人は別の立場です。常駐や兼任の扱いを混同しやすいので、違いはこの記事で整理しています。

ここまでは、電気の1級がなぜ制度上ほしがられるのかという話でした。実際に動くかどうかは、それとは別に決める話です。ただ求人を見比べる段になると、年収を上げて施工管理を続けたいのか、残業や拘束時間を減らしたいのかで、向いているサービスが変わります。その軸ごとに転職サービスを整理した記事を別に用意しているので、登録先を決める前に、自分がどちらを優先するのかをそこで確かめてみてください。

1級電気工事施工管理技士の求人・転職に関する情報まとめ
- 求人の根っこ:電気工事業は指定建設業7業種の1つで、監理技術者は国家資格者か大臣認定者に限られる。指定建設業以外の22業種にある実務経験のルートが無い
- 金額の線:監理技術者は下請合計5,000万円、専任は工事1件の請負代金4,500万円。8,000万円と9,000万円は建築側の数字なので混ぜない
- 会社側の損得:経営事項審査の技術職員数値は一級監理受講者6・一級技術者5の重みで合計し、1人が申請できる業種は2つまで
- 資格者証と講習:資格者証は有効期間5年、講習は受講した年の翌年1月1日から5年後の12月31日まで。数え方が別々
- 年収の読み方:賃金構造基本統計調査の第1表に「年収」の項目は無く、所定内給与額361.5千円は超過労働給与額を含まない額、きまって支給する現金給与額411.5千円はそれを含む額。年間賞与その他特別給与額だけは対象期間が前年1年間で、月額2項目と基準が違う
- 求人倍率:令和8年7月・全国計・常用(パート含む)で電気工事従事者3.26、職業計1.05。建築・土木・測量技術者の5.46とは別区分
- 専任の合理化:令和6年12月13日施行。兼任には8つの要件があり、政令側は請負金額1億円未満・現場数2まで
- 応募前に確かめること:特定建設業の許可、下請5,000万円級の元請案件の有無、専任が必要な現場の年間本数
以上が1級電気工事施工管理技士の求人・転職に関する情報のまとめです。
電気工事業が指定建設業だという一点が、この記事のほぼ全部を説明しています。実務経験で代われない席がある以上、席に座れる人の数は制度の側で先に絞られていて、会社はその枠を埋めるために動きます。だからこそ、いま自分がその席に座れる状態なのかを確かめておく価値があります。合格しているだけなのか、資格者証の交付まで受けているのか、講習の期限は生きているのか。ここが揃っているかどうかで、専任の監理技術者として選任できるかも、経営事項審査で5点として数えられるか6点として数えられるかも変わります。求人を眺めるより先に、この3つを確かめるほうが早いと僕は考えています。

