- ナースコールってどんな仕組み?
- 種類がいろいろあるけど何が違う?
- 病院と介護施設で違いはある?
- 設置基準(法令)はあるの?
- IP化って結局なに?
- 施工で気をつけるポイントは?
上記の様な悩みを解決します。
ナースコールは「患者・入居者がボタンを押すと、ナースステーションや担当スタッフのPHS/スマホに連絡が飛ぶ」設備のこと。電気施工管理の中では弱電工事に分類されますが、ここ数年でアナログ式からIP方式・無線連動へと 施工の中身が大きく変わった 設備でもあります。新築や改修案件では、引込・配線・盤の段取りまで含めて押さえておきたいところ。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
ナースコールとは?
ナースコールとは、結論「患者や入居者がベッドサイドのボタンを押すと、ナースステーションの親機や、看護師のPHS/スマートフォンに着信を知らせる呼出設備」のことです。
医療法施行規則上は 病室への設置が義務 で、介護施設でも事実上の標準装備。停電時にも使えるように 専用の予備電源(バッテリー) を持つのが普通で、火災報知設備と同じ「自動火災報知設備に準じた信頼性」を求められる弱電設備のひとつです。
電気設備全体の中での位置づけはこちらの記事を参照。

ナースコールのシステム構成
ナースコールは、大きく 5つの要素 で成り立っています。
| 要素 | 役割 | 設置場所の例 |
|---|---|---|
| 子機 | 呼出ボタン | ベッドサイド、トイレ、浴室、廊下 |
| 廊下灯 | 部屋ごとの呼出表示 | 病室入口の上部 |
| 親機 | 呼出受信/応答 | ナースステーション |
| 制御装置 | システム全体の統括 | ナースステーション奥/弱電盤 |
| 連動端末 | PHS/スマホ/PHS/院内電話 | 看護師携帯 |
最近は 制御装置がIP化 していて、院内LANに乗せるタイプ(=ネットワーク型)が増えています。これに伴い、PHSの代わりに看護師がスマートフォンを持ち、ナースコールがアプリの通知として飛ぶ運用も普及してきました。
弱電(電話・LAN)配線の話はこちらにまとまっています。

ナースコールの種類
メーカー(アイホン・ケアコム・パナソニックなど)と方式で大別できます。
1. アナログ式(従来型)
ボタン子機 → 廊下灯 → 親機までを 専用線(多芯ケーブル) で結ぶタイプ。配線量が多くなる代わりに、機器がシンプルで停電時のフェイルセーフ性が高い。中小規模の介護施設では今も主流。
2. デジタル式(IP方式)
各機器をLANで結び、IPパケットで呼出情報をやり取りするタイプ。配線数が減り、院内Wi-Fiやスマホ連動 がスムーズ。中〜大規模病院ではこちらに更新が進んでいます。
3. 無線式
子機〜廊下灯間、または子機〜親機間を 特定小電力無線(429MHz帯など) で結ぶタイプ。既存施設の改修で配線が引けないときに採用。電池交換と電波障害の管理が必要。
| 種類 | 配線量 | スマホ連動 | 改修向き | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| アナログ式 | 多い | 不可 | × | 中小規模、新築 |
| デジタル/IP | 少ない | ◎ | △ | 大規模病院、ICT病院 |
| 無線式 | 最小 | △ | ◎ | 既存施設改修 |
メーカー別には アイホン(介護施設のシェア最大)、ケアコム(大規模病院)、パナソニック(中規模病院)あたりが3強です。
ナースコールの設置基準(法令と運用基準)
ナースコール自体に直接の建築基準法の規定はありませんが、医療法施行規則 や 消防法 などでの間接的な要求があります。
医療法施行規則(病院・診療所)
「病室には、入院患者が必要なときに呼び出せる装置を設けること」と規定。具体的な台数や仕様は記載されていませんが、運用上は 病床ごとに1個の子機が必須。
個別基準(各自治体・運営基準)
- ベッドサイドだけでなく トイレ・浴室にも防水仕様の子機 を設ける
- 廊下灯は 部屋ごとに1台、入口直上に設置(看護師が遠目でも認識できる位置)
- 親機は ナースステーション の見やすい位置に配置
介護保険施設運営基準
特養・老健などでは 入居者ごとに呼出装置の設置 が運営基準で求められます。
停電時動作
非常電源として 直流電源装置(蓄電池) で 30分〜数時間の動作を確保するのが標準。火災時の自動通報や、停電後の継続呼出ができないと、設備として認められない地域もあります。
ナースコールの施工の流れ
実際の施工は、設備工事の中でも 後半から終盤 に組まれることが多いです。
- 設計/系統図の作成: メーカーに台数・系統数を伝え、機器構成図と結線図をもらう
- 配管・配線の先行: 内装工事の前に、CD管/PF管を天井・壁内に通しておく
- 機器の取付: 内装が終わった後、子機・廊下灯・親機を所定位置に取付
- 配線結線: メーカーの結線図に従い、子機〜廊下灯〜親機を結線
- 動作試験: 全室分の呼出→応答→終了のフルパターン試験
- 連動試験: PHS/スマホ連動、火災報知設備との連動(必要時)
- 取扱説明・引渡し: ナース長や施設長に操作レクチャー
ポイントは 配管の先行。ナースコールは内装屋さんが入った後だと配線できないので、CD管・PF管を必ず内装より先に仕込みます。電線管の話はこちらの記事も合わせて。


ナースコールに関する注意点
1. メーカー指定ケーブルを使う
ナースコールは メーカー指定の多芯ケーブル(例: 東日京三のNCケーブル、富士電線のVCTFKなど)を使うのが原則。一般的なTIVケーブルやVCTで代用すると、ノイズや動作不良の温床に。設計図に「メーカー指定品」とだけ書かれているケースは、必ず元メーカーに問い合わせて型番を確定させましょう。
2. 廊下灯の位置で混乱が起きる
廊下灯は 病室入口の真上、もしくは少し廊下側 が定石。「真上」と「廊下側」のどちらに付けるかでナース側からの視認性が変わるので、現場の配置確認会で施設運営者と必ず擦り合わせます。後から付け直しが効かない位置の代表選手。
3. トイレ・浴室の防水子機
水回りに付ける子機は IP44以上の防水等級 が必須。防水パッキンが経年で劣化するので、改修案件では既存子機の更新が前提だと考えたほうが安全。プルスイッチ(紐タイプ)が定番ですが、最近は人感センサーや無線式も増えてきました。
4. 改修工事の停止計画
既存施設の改修では、ナースコールを 数時間でも停止できない のが原則。仮設のナースコール(一時的な携帯型呼出機)を準備して、切替日の運用フローを病院側と密に詰めるのが鉄則です。「停電時間と切替時間を分ける」のがコツ。
5. 火災報知設備との連動
中規模以上の病院では、ナースコール親機が 自火報 と連動して、火災時に病室の表示色を変えたり、自動で全館放送を打つケースがあります。連動の有無で配線量が大きく変わるので、設計初期段階で必ず確認。煙感知器・熱感知器の話はこちらの記事も合わせて。


6. PHS廃止トレンドへの対応
各キャリアの PHSサービスは2023年に終了。これに伴い、ナースコール連動端末を スマートフォン+院内Wi-Fi に置き換える更新工事が一斉に発生しています。スマホ連動には MDM(モバイルデバイス管理) やセキュリティ要件が絡むので、IT部門との調整工程を必ず工程表に入れましょう。
ナースコールに関する情報まとめ
- ナースコールとは: 患者・入居者がボタンで呼び出すと、ナースステーションやスマホに通知される弱電設備
- 構成: 子機・廊下灯・親機・制御装置・連動端末の5要素
- 種類: アナログ式/IPデジタル式/無線式の3方式
- 法令: 医療法施行規則で病室への設置義務、運営基準で台数・位置を規定
- 施工: 配管先行→内装後の機器取付→結線→動作試験→連動試験
- 注意点: メーカー指定ケーブル、廊下灯の位置、防水子機、改修時の運用停止計画、PHS終了対応
以上がナースコールに関する情報のまとめです。
ナースコールは「単純な呼出設備」のように見えて、実は配線量・連動仕様・運用切替のすべてが現場を苦しめる弱電設備。アナログ→IP→スマホ連動への流れを押さえながら、設計初期で機器メーカーと運営者を巻き込むのが、結局いちばんトラブルを減らす近道ですよ。
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