- 材料強度って具体的にどの値のこと?
- 「F値」と材料強度は同じ?違う?
- 許容応力度との関係はどうなってる?
- 鋼・コンクリ・鉄筋・木材の値の目安は?
- 設計図書の数字とミルシートの数字、どっちが正?
- 長期と短期で材料強度は変わるの?
上記の様な悩みを解決します。
材料強度とは、結論「鋼材・コンクリート・鉄筋・木材など各材料が、壊れる・降伏するまでに耐えられる応力の大きさ」のことです。建築構造設計の出発点になる値で、ここから F値(基準強度)→ 許容応力度 → 部材設計へと一連の計算が続きます。材料強度を 「JIS規格で保証される最低値」として押さえ、そこから建築基準法のF値、長期・短期の許容応力度に組み替えていく流れが分かれば、構造計算書・ミルシート・設計図書の数字の繋がりが立体的に見えてきます。本記事ではSS400・SD345・Fc24・木材樹種別の具体値も整理して、施工管理として 「どの数字を見ればOKか」まで持っていきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
材料強度とは?
材料強度とは、結論「材料が破壊・降伏に至るまでに耐えられる応力の大きさ」のことです。
英語では material strength。単位は N/mm²(=MPa)。
「強度」と一口に言っても複数ある
材料強度という1つの言葉が指す中身は、実は複数あります。
- 引張強さ(σB):引っ張ったときに破断する応力(最大応力)
- 降伏点(σy):弾性域を抜けて永久変形が始まる応力
- 圧縮強度(Fc):圧縮で破壊する応力(コンクリート・木材で重要)
- せん断強度(τB):せん断破壊時の応力
- 疲労強度:繰り返し荷重で破壊する応力(疲労限度)
- クリープ強度:長期荷重で破壊するまでの応力
「材料強度」と言ったときに どの強度を指しているかは文脈によりますが、建築では 降伏点と圧縮強度が中心。鋼材なら降伏点、コンクリートなら圧縮強度、というのが基本姿勢です。
材料強度の決まり方
材料強度の値は、
- JIS規格で『最低値』が保証されている
- 実物の鋼材・コンクリ・鉄筋・木材を 引張試験・圧縮試験して値を確認
- ミルシートや試験成績書に 実測値が記載される
- 設計には JIS最低値を採用(実測値ではない)
つまり、設計で使う材料強度は『JIS規格の最低値』 = 「これより低くは絶対にならない、と国が保証する値」を意味します。
構造強度の3階層モデルでの位置
構造設計を読み解くには 「材料強度 → 部材強度 → 構造体強度」の3階層モデルが便利。
| 階層 | 対象 | 単位 |
|---|---|---|
| ①材料強度 | 鋼材・鉄筋・コンクリ・木材 | N/mm²(応力度) |
| ②部材強度 | 梁・柱・スラブ1本ずつ | kNm(曲げ耐力)、kN(軸耐力) |
| ③構造体強度 | 建物全体 | Is値・保有水平耐力 |
材料強度は 最下層、すべての出発点。ここの値が間違うと、上位の部材設計・構造設計がすべてズレるので、施工管理として最初に押さえるべき数字です。
構造強度の全体像はこちらに整理しています。


主要材料の材料強度一覧
建築でよく使う材料の 代表的な材料強度(JIS規格値)を一覧で整理します。
①鋼材(鉄骨)
| 鋼種 | JIS規格 | 降伏点(N/mm²) | 引張強さ(N/mm²) | 主用途 |
|---|---|---|---|---|
| SS400 | JIS G 3101 | 235 | 400〜510 | 一般構造 |
| SM400A/B/C | JIS G 3106 | 235 | 400〜510 | 溶接構造 |
| SM490A/B/C | JIS G 3106 | 325 | 490〜610 | 高強度 |
| SN400A/B/C | JIS G 3136 | 235 | 400〜510 | 建築構造 |
| SN490B/C | JIS G 3136 | 325 | 490〜610 | 高層建築 |
| SM570 | JIS G 3106 | 460 | 570〜720 | 超高強度 |
板厚で値が変わる点に注意(SS400は16mm超で215、40mm超で205)。鋼材の場合、設計で使うのは「降伏点」が基本。
②鉄筋
| 鋼種 | JIS規格 | 降伏点(N/mm²) | 引張強さ(N/mm²) |
|---|---|---|---|
| SR235(丸鋼) | JIS G 3112 | 235 | 380〜520 |
| SD295A(異形鋼) | JIS G 3112 | 295 | 440〜600 |
| SD345 | JIS G 3112 | 345 | 490〜620 |
| SD390 | JIS G 3112 | 390 | 560〜720 |
| SD490 | JIS G 3112 | 490 | 620〜760 |
主流はSD345。高層・特殊構造ではSD390・SD490も使われます。
③コンクリート(圧縮強度)
コンクリートは引張強度が低く(圧縮強度の1/10程度)、設計では 圧縮強度のみを評価するのが原則。
| 設計基準強度 Fc | 値(N/mm²) | 主用途 |
|---|---|---|
| Fc18 | 18 | 小規模建築・土間 |
| Fc21 | 21 | 一般住宅 |
| Fc24 | 24 | 一般建築(標準) |
| Fc27 | 27 | 中規模建築 |
| Fc30 | 30 | 中高層建築 |
| Fc36 | 36 | 高層建築 |
| Fc42 | 42 | 超高層建築 |
| Fc60 | 60 | 超高強度(特殊) |
引張強度はFcの約1/10〜1/13、せん断強度はFcの約1/6〜1/10、ヤング率はFcから算定式で求めます(後述)。
④木材(樹種別)
木材は 繊維方向と直角方向で強度が大きく異なる(異方性)。建築基準法施行令で樹種別の基準強度が定められています。
| 樹種 | 圧縮Fc(N/mm²) | 引張Ft(N/mm²) | 曲げFb(N/mm²) | せん断Fs(N/mm²) |
|---|---|---|---|---|
| スギ | 17.7 | 13.5 | 22.2 | 1.8 |
| ヒノキ | 20.7 | 16.2 | 26.7 | 2.1 |
| ベイマツ | 22.2 | 17.7 | 28.2 | 2.4 |
| カラマツ | 20.7 | 16.2 | 26.7 | 2.1 |
| エゾマツ | 17.7 | 13.5 | 22.2 | 1.8 |
繊維直角方向の強度はこの 1/10〜1/30程度しかないので、設計では繊維方向の使用が原則。
⑤その他材料の参考値
- アルミ合金A6061-T6:降伏点 245 N/mm²、引張強さ 295 N/mm²
- ステンレスSUS304:耐力 205 N/mm²、引張強さ 520 N/mm²
- PC鋼線(SWPR):引張強さ 1,720 N/mm²(!)
- 高張力ボルトF10T:降伏点 900 N/mm²、引張強さ 1,000 N/mm²
PC鋼線・高張力ボルトは 鋼材の約4倍の強度を持ちます。プレストレストコンクリート・鉄骨高力ボルト接合に使われる理由がここに。
各鋼種の詳細はこちらに整理しています。



F値(基準強度)と材料強度の関係
材料強度から 設計で使えるF値までの変換ルールが、建築基準法施行令で決まっています。
①F値とは
F値(=基準強度)は、 「設計で使う材料強度の基準となる値」で、建築基準法施行令第90条〜第94条に規定されています。単位は N/mm²。
鋼材の場合のF値の決め方:
F = min(降伏点、引張強さの0.7倍)
たとえばSS400なら、
- 降伏点:235 N/mm²
- 引張強さ:400 N/mm² × 0.7 = 280 N/mm²
- F = min(235, 280) = 235 N/mm²
→ SS400のF値は235。降伏点が低い鋼材は降伏点で決まり、引張強さに比べて降伏点が高い鋼材(高張力鋼)は 「引張強さの0.7倍」で決まるという仕組み。
②なぜ「引張強さの0.7倍」を上限にするのか
降伏点が引張強さに近づくほど、降伏後の塑性変形余地が小さくなる(=脆性的に壊れやすい)。これを防ぐため、引張強さの0.7倍を上限にして、降伏後にも一定のひずみ余裕を残す設計になっています。
③コンクリートのF値(=設計基準強度Fc)
コンクリートの場合は 圧縮基準強度 Fc がそのままF値として扱われます。
- Fc24なら F = 24 N/mm²
- Fc30なら F = 30 N/mm²
④鉄筋のF値
鉄筋は 降伏点 = F値が原則。
- SD295A:F = 295
- SD345:F = 345
ただし、設計では F=345以下に制限されることがある(SD390・SD490の場合)ので、構造設計者が選定。
⑤F値の使い道
F値が決まれば、 許容応力度・断面検定・部材設計が芋づる式に決まります。
長期許容引張応力度 = F/1.5
短期許容引張応力度 = F
F値は 「材料強度を設計用に整理した数値」と覚えておけばOK。
許容応力度の周辺はこちらに。

材料強度と許容応力度の関係
施工管理が最も実務で触れるのは 「許容応力度」。F値・材料強度との関係を整理します。
①許容応力度の定義
許容応力度とは、「部材が安全に負担できる応力の上限値」のこと。F値に 安全率を掛けて算定します。
長期許容応力度 = F / 1.5
短期許容応力度 = F
- 長期:自重・積載荷重など 常時かかる荷重を想定
- 短期:地震・台風・積雪など 稀に起こる荷重を想定
②鋼材の許容応力度(SS400の場合)
| 応力種類 | 長期(N/mm²) | 短期(N/mm²) |
|---|---|---|
| 引張 ft | F/1.5 = 156 | F = 235 |
| 圧縮 fc | F/1.5 = 156 | F = 235 |
| 曲げ fb | F/1.5 = 156 | F = 235 |
| せん断 fs | F/(1.5√3) = 90 | F/√3 = 136 |
せん断応力度は √3で割るのがポイント(フォン・ミーゼスの降伏条件)。
③コンクリートの許容応力度(Fc24の場合)
| 応力種類 | 長期(N/mm²) | 短期(N/mm²) |
|---|---|---|
| 圧縮 fc | Fc/3 = 8 | Fc × 2/3 = 16 |
| せん断 fs | 0.49 + Fc/100 = 0.73 | 1.5倍 = 1.10 |
コンクリートの場合、長期は Fc/3、短期は Fc×2/3で安全率が大きめに取られている。引張強度は実質的にゼロとして設計(=鉄筋に持たせる)。
④鉄筋の許容応力度(SD345の場合)
| 応力種類 | 長期(N/mm²) | 短期(N/mm²) |
|---|---|---|
| 引張 ft | 215(D29未満)/195(D29以上) | 345 |
| 圧縮 fc | 同上 | 同上 |
| せん断 ft(あばら筋として) | 195 | 295 |
注意点として、SD345の長期許容引張は F/1.5 = 230 ではなく、215 に キャップされていること。鉄筋径が太いと(D29以上)さらに 195 に下げられます。これは 「鉄筋に大きな応力がかかるとひび割れが大きくなる」ことを抑制するための安全側の調整。
⑤許容応力度設計の流れ
材料強度(降伏点 or 圧縮強度)
↓ JIS規格・建築基準法
F値(基準強度)
↓ 安全率(1.5)で除す
許容応力度(長期・短期)
↓ 部材設計に使用
発生応力 ≤ 許容応力度 を確認
この 「材料強度 → F値 → 許容応力度」の流れが分かれば、構造計算書のあちこちに散らばる数字が一気に繋がります。
許容応力度の詳細はこちらに整理しています。


ミルシートと材料強度
現場で 材料強度を確認する書類が ミルシート(鋼材検査証明書)です。
①ミルシートに記載される機械的性質
製品仕様:SS400 板厚 12mm
機械的性質:
YP(降伏点) 260 N/mm²
TS(引張強さ) 430 N/mm²
EL(伸び) 30 %
YR(降伏比) 60.5 %
- YP(Yield Point)= 降伏点(下降伏点)
- TS(Tensile Strength)= 引張強さ
- EL(Elongation)= 破断伸び
- YR(Yield Ratio)= YP/TS(降伏比)
②規格値と実測値の関係
- 規格値:JIS規格の最低保証値(SS400なら降伏点235以上)
- 実測値:実物を引張試験した結果(規格値より大きくなるのが普通)
設計に使うのは 規格値(=F値)で、実測値はそれを 上回っているかの確認用。実測値が規格値を下回るミルシートが見つかったら 不良材として返品対象。
③ミルシートで施工管理が確認すべき項目
- 規格値をクリアしているか(SS400なら降伏点235以上、TS400〜510)
- 化学成分が規格範囲内か(C含有量、Mn含有量など)
- 板厚に応じた降伏点規格値が正しく適用されているか
- 製造ロット・トレーサビリティが追跡可能か
- 製造日が新しすぎる/古すぎることはないか
④高層建築・特殊用途での追加試験
通常のミルシートだけでなく、
- シャルピー衝撃試験(じん性確認)
- 超音波探傷検査(内部欠陥確認)
- ラメラテア試験(板厚方向の延性確認)
など、用途に応じて 追加試験が要求されることがあります。SN材は通常のミルシートで建築基準法に必要な情報がほぼ揃っていますが、SM490C・SM570など溶接が多い鋼種ではシャルピー試験が必須。
ある現場でキュービクル架台用のSS400アングル(L-75×75×6、長さ4m × 8本)を受け入れた際、添付ミルシートの YP(降伏点)が240 N/mm²、TSが425 N/mm²だったのを見て、現場ノートに「規格値235に対して+5 N/mm²、TS400〜510範囲内、化学成分Cも0.18%で範囲内」とそのまま転記しました。書類整理の事務作業のつもりでしたが、後で気付いたのは 「この数字をそのままノートに書けるかどうか」が施工管理としての品質確認になっているということ。ミルシート=紙切れではなく、設計値の根拠を裏付ける一次資料として 数字単位で読む習慣を持つと、不良材・規格外材の検知精度がぐっと上がります。
ミルシートの読み方の詳細はこちらに。

長期と短期で材料強度は変わるか
「材料強度自体は変わらないが、許容応力度は変わる」というのが結論。整理しておきます。
①材料強度は物理量、許容応力度は設計値
- 材料強度(降伏点・引張強さ・圧縮強度):材料そのものの物理特性 → 長期・短期で変わらない
- F値(基準強度):材料強度を設計用に整理した数値 → 長期・短期で変わらない
- 許容応力度:F値に安全率を掛けた設計値 → 長期と短期で異なる
②長期と短期の使い分け
| 項目 | 長期 | 短期 |
|---|---|---|
| 想定荷重 | 自重・積載・常時 | 地震・台風・積雪 |
| 安全率 | 大きい(1.5倍) | 小さい(1倍) |
| 許容応力度 | F/1.5 | F |
| 設計フィロソフィー | 長く使うので余裕大 | 稀な事象なので余裕小 |
③なぜ短期は安全率が小さくていいのか
短期荷重(地震・台風)は 稀にしか起こらない+発生時間が短いため、
- 一時的に許容応力度を超えても、すぐに荷重が解除される
- 短時間なら材料も追従できる
- 経済性を考えると、短期で安全率を取りすぎるとコストが跳ね上がる
という設計上の判断で 安全率1倍(=F値そのもの)を許容しています。
④コンクリートのクリープと材料強度
注意点として、 コンクリートは長期荷重下でクリープ変形を起こすため、「長期=弾性応答だけ」で済まないケースがあります。クリープ係数φ=2〜3を別途考慮するのが標準。鋼材ではクリープは無視できるレベル。
⑤温度・湿度の影響
材料強度は 温度・湿度でも変化します。
- 火災時(高温):鋼材は500℃で強度が半減、コンクリートは中性化と剥落
- 寒冷時:鋼材は低温脆性破壊リスク(SN490Cなど低温じん性鋼種を選定)
- 多湿環境:木材・腐食・中性化加速
設計上は 常温(20℃前後)の材料強度を基準にしており、極端な温度環境では別途補正が必要。
施工管理として、長期と短期の使い分けは「許容応力度の段階」で発生する、材料強度そのものは変わらない、と押さえておけばOKです。
材料強度に関する情報まとめ
- 材料強度とは:材料が破壊・降伏に至るまでに耐えられる応力の大きさ
- 含まれる強度:引張強さ/降伏点/圧縮強度/せん断強度/疲労強度/クリープ強度
- 主要鋼材:SS400=235/SM490=325/SN490B=325(降伏点)
- 鉄筋:SD295=295/SD345=345/SD390=390(降伏点)
- コンクリート:Fc24=24/Fc30=30(圧縮強度)
- 木材:スギ22.2/ヒノキ26.7(曲げ強度)など樹種別
- 流れ:材料強度 → F値(基準強度) → 許容応力度(長期F/1.5・短期F) → 部材設計
- ミルシート:YP(降伏点)・TS(引張強さ)が記載、規格値をクリアしているかを確認
- 長期・短期で材料強度は変わらない、許容応力度の安全率が変わる
以上が材料強度に関する情報のまとめです。
材料強度は 構造設計の最も土台にある数値で、ここから F値 → 許容応力度 → 部材検定へと一連の計算が流れていきます。施工管理として 「ミルシートの数字 ≧ 規格値」を確認できる目線を持っておけば、不良材・規格外材の見落としをぐっと減らせます。一通り基礎知識は網羅できたかなと思います。
合わせて、F値・許容応力度・降伏点・構造強度の3階層モデルも復習しておくと、「材料 → 部材 → 建物全体」の数字の繋がりが立体的に見えてきますよ。






